「それにしても、夜吹が《影星》の一員だったとはな・・・」
溜め息をつくユリス。
ユリス達と合流した俺は、夜吹から教えてもらった地下通路を通って港湾ブロックへと向かっていた。
「しかもクローディアを襲っている実働部隊が、アイツの一族だったとは・・・」
「すっかり騙された。帰ったらぶん殴る」
不機嫌そうな紗夜。夜吹、ドンマイ・・・
「まぁまぁ。その夜吹のおかげで、クローディアの居場所が分かったんだからさ」
「この地下通路も、夜吹先輩が教えて下さったわけですし」
ユリスと紗夜を宥める綾斗と綺凛。まぁ夜吹には感謝しないとな・・・
そんなことを思いながら歩いていた時だった。
「お、出口が見えてきたぞ」
通路の先がほんのり明るくなっていた。走って外へと出てみると・・・
「っ・・・酷い天気だな・・・」
激しく打ち付けてくる雨粒に、顔を顰めているユリス。
そういや、雨脚が強まるって天気予報でも言ってたっけ・・・
「ここが港湾ブロック・・・」
「・・・初めて来た」
辺りを見回す綾斗と紗夜。
巨大なクレーンや倉庫が立ち並び、向こうにはコンテナが積まれているのが見える。
既に周囲は薄暗く、辺りに人の気配は・・・
「・・・ざっと十人ってとこか」
「七瀬さん・・・?」
「《超電磁砲》」
首を傾げている綺凛をよそに、俺は《超電磁砲》を倉庫の一つに撃ち込んだ。
撃ち込まれた倉庫は爆発し、煙を上げて炎上している。
「七瀬!?何してんの!?」
「三人くらい屠っただけだよ」
「え・・・?」
驚いている綾斗にそう答えると、俺は声を張り上げた。
「ああなりたくなかったら、大人しく姿を見せろ!」
その直後、次々と人影が現れる。全員フードを被っており、顔を窺い知ることは出来ない。
中心に立つ人物が、苦々しい声で話しかけてきた。
「・・・容赦ないですね。死んではいないようですが、相当な重傷だと思いますよ?」
「命をかける覚悟も無い奴らが、俺達の前に立ちはだかるんじゃねぇよ」
声の主を睨み付ける俺。
「また俺の前に姿を見せるとは・・・良い度胸してんな、サイラス」
「「なっ!?」」
驚愕するユリスと綾斗。フードを取ったサイラスが、深く溜め息をついた。
「流石は七瀬さんですね・・・バレていましたか」
「・・・まさか、またお前と会うことになるとはな」
アルルカントと通じて星導館の有力な学生を襲い、ユリス・レスター・ランディに怪我を負わせた張本人・・・
《影星》が処理を一任されていたはずだが・・・
「コイツら《影星》だろ?何でお前が一緒にいる?」
「苦肉の選択というやつですよ」
忌々しそうな表情のサイラス。
「星導館が僕をダシにしてアルルカントと取引を行った以上、僕が自由になることは金輪際有り得ません。そんな時、《影星》に入らないかと誘われたんです。地下に繋がれたままでいるか、使い捨ての駒になるか・・・後者を選ぶしかありませんでした」
「そんなもの自業自得だ」
バッサリ切り捨てるユリス。
「お前のくだらない選択に興味は無い。大人しくそこを退け」
「それは出来ない相談ですね、ユリスさん」
サイラスが指を広げると、いくつかのコンテナが空中に浮かび上がった。
「銀河から『ナイトエミット』のバックアップを任されている以上、貴方達をここから先へ通すわけにはいきません。大人しく帰るか、我々《影星》とやり合うか・・・どちらを選びますか?」
「どどーん」
ヴァルデンホルト改を展開した紗夜が、浮かび上がったコンテナ全てに銃弾を撃ち込んだ。
爆発して崩壊するコンテナ。
「くだらない質問は止せ。私達は本気」
「・・・でしょうね」
サイラスは苦笑すると、別のコンテナを浮かび上がらせた。
「そうこなくては、こちらとしても面白くありません」
「・・・七瀬さん」
綺凛が小さく呟く。
「ここは私達が何とかします。七瀬さんは会長のところへ行ってください
「・・・良いのか?サイラスはともかく、他の《影星》は結構な手練っぽいぞ?」
「こんなところで、無駄に時間を使っている場合ではないからな」
ユリスが真剣な表情で俺を見る。
「お前なら、クローディアが何処にいるか分かるだろう?アイツも相当疲弊しているだろうし、早く合流してやらないと危ない」
「・・・分かった。ありがとな」
「内緒話は終わりましたか?」
サイラスが手を振り下ろす。
「なら・・・そのまま潰れてしまいなさい!」
コンテナが俺達に向かって落下してくる。紗夜がヴァルデンホルト改を構えた。
「どどーん」
コンテナが爆発すると同時に、俺はその場から駆け出した。
フードを被った《影星》達が止めようとしてくるが・・・
「はぁっ!」
「やぁっ!」
綾斗と綺凛が割って入り、相手の攻撃を受け止めてくれる。
「逃がしませんよ!」
サイラスが新たなコンテナを俺にぶつけようとするが・・・
「咲き誇れ!六弁の爆焔花!」
ユリスがコンテナを爆発させ、それを防いでくれる。俺はサイラスとの距離を詰めた。
「《雷華崩拳》ッ!」
「がっ・・・!?」
サイラスの顔面に、雷を纏った拳を叩き込む。
炎上している倉庫に吹き飛んでいくサイラスを見ることもなく、俺は雨の港湾ブロックを駆けるのだった。
*****
《クローディア視点》
「はぁっ・・・はぁっ・・・!」
私は水溜りの中に身体を沈め、荒い呼吸を繰り返していました。
全身に刻まれた傷から流れる血が水溜りに溶け、最早血溜まりのようになっています。
「・・・大したもんだわい」
少し離れた位置に立っている老人が、感心したように呟く。
「奇襲から逃げ、追っ手をかわし、儂の攻撃をここまで凌ぐとは・・・素直に賛辞に値するのう」
「フフッ・・・光栄です・・・!」
何とか力を振り絞り、ゆっくりと立ち上がる。
「『ナイトエミット』のご当主に・・・褒めていただけるとは・・・!」
そう、この老人こそが『ナイトエミット』の長・・・夜吹憮塵斎。
その名は襲名制であり、一族の中で一定の技量に達した者の中から選出されるそうです。場合によっては空位となることもあるらしいその名を、目の前の老人は四十年近く前に襲名したと聞いています。
自ずとその力量が窺い知れるというものですが、実際に対峙して痛感しました。
この老人は・・・相当強い。
「しかし分からんのう。そこまであがいて時間を稼いで、一体何になるというんじゃ?結末が変わらんことくらい、お嬢ちゃんも分かっておろうに・・・それとも、お嬢ちゃんほどの者でも生にしがみつきたくなるもんかの?」
「フフッ・・・それなら最初から・・・銀河を敵に回したりしませんよ・・・!」
私は今、胸の高鳴りが止まりませんでした。全身ボロボロだというのに、気分が高揚して仕方ありません。
「もうすぐです・・・もうすぐなんですよ・・・!」
「・・・お嬢ちゃん、相当イカれておるのう」
溜め息をつく憮塵斎殿。
「まぁ良い・・・すぐ楽にしてやるわい」
「こっちのセリフだクソジジイ」
私の耳に、聞き慣れた声が届きました。
あぁ、来て下さったんですね・・・!
「テメェの残り少ない命・・・今ここで終わらせてやるよ」
憤怒の表情を浮かべた七瀬が、私を庇うように立つのでした。
どうも~、ムッティです。
シャノン「久々にサイラスくん出てきたね」
まさかの再登場だよね。
原作を読んだ時は驚いたけど、また登場するのかなぁ・・・
シャノン「《影星》の一員なら、また登場するかもね」
っていうか、原作でランディが全然出てこないんだけど。
シャノン「確かに・・・って、それを言ったらこの作品もでしょ。レスターくんですら出てこないし」
完全に空気になっちゃったよね・・・
まぁ近々再登場する・・・はず。
シャノン「断言はしないんだね・・・」
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」