『今回の《獅鷲星武祭》も、準々決勝までやってまいりました!本日最初の試合は、星導館学園のチーム・エンフィールド対クインヴェール女学園のチーム・ルサールカです!』
梁瀬さんの声が会場に響き渡る。俺達チーム・エンフィールドは、いよいよルサールカとの試合当日を迎えていた。
「さて、いっちょやりますか」
所定の開始位置につき、不敵な笑みを浮かべるミルシェ。
「前回の試合同様、また番狂わせをさせてもらおうじゃないの」
「そんなもの起こさせない」
紗夜が力強く宣言する。
「お前達に負けるつもりはない。勝つのは私達だ」
「へぇ・・・言ってくれるじゃん」
紗夜とミルシェが火花を散らす中、俺はマフレナに声をかけた。
「マフレナ、この間の怪我は大丈夫なのか?」
「えぇ、問題ありません」
笑みを浮かべるマフレナ。
「ちょっと頭を強く打って、意識が朦朧としてしまっただけですから。ご心配をおかけしました」
「ならいいけど・・・」
チーム・へリオンは参加資格を剥奪されるべきだよな・・・厳重注意で済んでる時点でおかしいと思う。
まぁルサールカも厳重注意で済んでるから、それは良かったけど。
「無理だけはすんなよ?」
「大丈夫です。七瀬さんも本気できて下さい」
挑戦的な目をしているマフレナ。
「ボク達は本気で七瀬さん達に勝つつもりですよ。手加減なんてしないで下さいね」
「言われなくてもしないさ。手加減して勝てるほど、お前らは甘い相手じゃない」
「そうだよ七瀬!こう見えてモニカは甘くないからね?」
「おい邪魔すんな腹黒ロリ年増。今はマフレナとの会話を楽しんでるんだから」
「アンタホント辛辣すぎない!?」
涙目のモニカ。と、四糸乃姉が近寄ってくる。
「・・・なーちゃん」
「・・・四糸乃姉」
一瞬見つめ合う俺達。言葉を交わさなくても、お互い言いたいことは分かっている。
軽く拳を合わせると、それぞれ所定の位置へと戻った。
「今回のリーダーは、ミルシェではなく四糸乃さんか・・・」
ユリスが呟く。
《獅鷲星武祭》では、試合に応じてリーダーを変えることが出来るのだ。リーダーの校章が破壊されたら試合終了なので、誰をリーダーにするのかよく考える必要がある。
ルサールカはここまでミルシェがリーダーをやっていたが、今回は四糸乃姉がリーダーらしい。その証拠に、胸の校章が発光している。
対する俺達も、これまではずっとクローディアがリーダーを務めていたが・・・
「頼んだよ、七瀬」
「任せとけ」
綾斗の言葉に頷く俺。今回リーダーを務めるのは俺だ。
試合前にクローディアから告げられた時は、俺も驚いたけどな。
「七瀬」
声をかけてくるクローディア。
「任せましたよ」
「あぁ」
頷く俺。
先日の一件以来、クローディアとは少しギクシャクしてしまっている。別に喧嘩をしたわけではないし、普通に会話だってするが・・・以前と比べると、多少ぎこちなくなってしまっているのだ。
他の皆も薄々気付いているようだが、あえて指摘しないでくれている。
「俺は作戦通り動く。そっちは任せたぞ」
「えぇ、大丈夫です」
それだけ会話した後、お互い試合に集中する。今は引きずっている場合じゃない。
『そろそろ試合開始時間が迫ってまいりました!』
梁瀬さんの興奮した声が聞こえてくる。
『果たしてどちらが準決勝へと進むのでしょうか!?』
そして次の瞬間、機械音声の宣告が響くのだった。
『《獅鷲星武祭》準々決勝戦第一試合、試合開始!』
*****
《綾斗視点》
試合が始まった途端、俺達を重苦しい衝撃が襲った。先制攻撃を仕掛けようとしていた俺は、思わず膝をつきかけてしまう。
「ふっふーん!どんなもんよ!」
ベース型の純星煌式武装を持ち、ドヤ顔をしているモニカさん。
「この《ライアポロス=メルポーネ》の阻害弱体化能力、たっぷり味わってね!」
これはモニカさんの純星煌式武装である、《ライアポロス=メルポーネ》によるものだ。相手の集中力を阻害した上、弱体化させてしまう能力・・・
予想以上に厄介だ。これでは識の境地が使えそうにない。
「ひゃっはーっ!」
「ぐっ・・・!」
トゥーリアさんが放ってきた破砕振動波を、何とか《黒炉の魔剣》で防ぐ。
「いやぁ、流石はマフレナ!身体の底から力が漲ってくるぜ!」
「だからって無茶しないで下さいね」
楽しそうに笑っているトゥーリアさんと、溜め息をつくマフレナさん。
トゥーリアさんの純星煌式武装である《ライアポロス=ポリムニア》はギター型で、トライデント型に刃を展開している。先ほどの破砕振動波が能力だが、それだけなら大した脅威ではない。
問題はマフレナさんの純星煌式武装である、《ライアポロス=タレイア》だ。空間放射キーボード型で、能力は活性強化・・・味方全員を強化することが出来るのだ。
こちらはモニカさんによって弱体化しており、あちらはマフレナさんによって強化されている・・・相当不利な状況だった。
と、マフレナさんが空間放射キーボードの上で指を躍らせる。周囲に無数の光弾が出現し、こちらへ向かって高速で飛んでくる。
「咲き誇れ!赤円の灼斬花!」
ユリスの放った戦輪が光弾を弾き返すも、どこか威力が弱々しい。
いくつかの戦輪がルサールカの方へ飛んでいくも、パイヴィさんが浮遊ドラムを叩くと消えてしまった。
「無駄よ。今の貴女の攻撃なら、私の音圧防壁で簡単に防げるわ」
淡々と告げるパイヴィさん。
パイヴィさんの純星煌式武装である《ライアポロス=エラード》はドラム型で、音圧防壁を展開する能力だ。
今の俺達の攻撃力では、突破することは難しいだろう。
「くっ・・・星辰力の集中が上手くいかん・・・!」
苦々しい表情のユリス。
確かに、この状況下で一番苦しいのはユリスと七瀬だろう。《魔女》や《魔術師》にとって、星辰力の集中が阻害されるというのは致命的だ。
それは試合前から分かっていたことだが、それでもクローディアは七瀬をリーダーに指名したのだ。
何か考えがあるのか・・・?
「あらあら、厳しいですね・・・!」
「予想以上に強いです・・・!」
「ふんっ、どうだ!」
声のした方を見ると、ミルシェさんがクローディアと綺凛ちゃんを一人で抑えていた。
いくら二人が弱体化してて、ミルシェさんが強化されてるとはいえ・・・相当な実力が無いと出来ない芸当だ。
「果たしていつまで避け切れるかな!」
ミルシェさんがギター型の純星煌式武装で、破砕振動波を放つ。
ミルシェさんの純星煌式武装である《ライアポロス=カリオペア》は、トゥーリアさんのものと同じ能力だ。ただしこちらは、剣型に刃を展開している。
ミルシェさんの攻撃を、何とか避けているクローディアと綺凛ちゃん。と・・・
「隙ありッ!」
「ッ!?」
トゥーリアさんが、七瀬に向かって破砕振動波を放つ。
マズい!今の七瀬じゃ、あの攻撃を避けるのは・・・!
「悪く思うなよ、七瀬!」
「そりゃこっちのセリフだ」
「ッ!?」
七瀬が一瞬にして姿を消し、トゥーリアさんの真正面へと姿を現した。
速い!?阻害弱体化されてて、何であんなに速く動けるんだ!?
「悪く思うなよ、トゥーリア」
《神の拳》を装着した七瀬の拳が、トゥーリアさんの校章へと放たれる。
しかしその拳を、間に入った四糸乃さんがマイク型の純星煌式武装で受け止めた。
「させないよ・・・なーちゃん」
「来ると思ってたよ・・・四糸乃姉」
ニヤリと笑みを浮かべる二人なのだった。
どうも~、ムッティです。
シャノン「いよいよ準々決勝が始まったね」
やっとルサールカ戦を書けるわ・・・
まぁそんなわけで、シャノンの出番は本格的に無くなったな。
シャノン「準々決勝に進んでるっていう設定とかどう?」
却下。シャノンは予選敗退がオチだろ。
シャノン「酷い!?」
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「私は諦めないぞおおおおおっ!」