学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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時間ができたので、続きを投稿します。

それにしても暑いな・・・


犯人

 「全く・・・ホント空気が読めないんだから・・・」

 

 「うぅ・・・悪かったわよ・・・」

 

 涙目の二葉姉。俺達は、治療院のロビーへと移動していた。

 

 「それで?どうして二葉がここにいる?」

 

 「あ、そうでした!」

 

 思い出したようにヘルガ隊長へ向き直る二葉姉。

 

 「再開発エリア付近で、立て続けに廃ビルが崩落している模様です。既に静薙が現場に向かっていますが、隊長の耳にも入れておこうと思いまして」

 

 「・・・通信での報告はダメだったのか?」

 

 「・・・姉から、七瀬も来ているとの連絡を受けまして」

 

 視線を逸らす二葉姉。ヘルガさんが溜め息をつく。

 

 「要は七瀬に会いたかっただけじゃないか・・・」

 

 「だって七瀬ったら、予選を突破したのに連絡の一つも寄越さないんですよ!?」

 

 「いや、連絡する必要ある?」

 

 「あるに決まってるでしょ!?寂しくて死んじゃうかと思ったわよ!?」

 

 「アンタはウサギか。そんな繊細な人間じゃないだろ」

 

 「私ってどんな人間だと思われてんの!?」

 

 「殺しても死なないような人間」

 

 「酷い!?」

 

 「まぁそれは良しとして・・・廃ビル崩落の原因は?立て続けということは、老朽化が原因ではないのだろう?」

 

 ヘルガさんの問いに、真剣な表情となる二葉姉。

 

 「どうやら何者かが、剣で廃ビルを斬ったようです。先ほど静薙から連絡がありましたが、怪我人は出ていないとのことでした」

 

 「なるほど・・・よし、私も現場へ行こう。二葉、案内してくれ」

 

 「了解です」

 

 「それでは七瀬、天霧くん、私達はこれで失礼する。また会おう」

 

 「お疲れ様です」

 

 一礼する俺と綾斗。二葉姉が俺に駆け寄ってくる。

 

 「七瀬、頑張りなさいよ。応援してるから」

 

 「あぁ。一織と二葉姉の無念を少しでも晴らせるように、絶対優勝してみせるよ」

 

 俺がそう言うと、二葉姉が俺を抱き締めてきた。

 

 「・・・ありがとね。でも七瀬は、もっと自分のことを考えなさい。私達の無念を晴らす為とか、仲間の望みを叶える為とか・・・それだけじゃなくて、自分の望みもちゃんと決めてほしいの」

 

 「二葉姉・・・」

 

 俺の望み、か・・・そういや、今回も考えてなかったっけ・・・

 

 「それじゃ、そろそろ行くわ。綾斗くん、七瀬をよろしくね」

 

 「あ、はい!」

 

 「またね、七瀬」

 

 俺に手を振り、ヘルガさんと共に去っていく二葉姉。

 

 やれやれ・・・

 

 「・・・何でこういう時だけ、姉らしさを発揮するのかね」

 

 「良いお姉さんじゃないか」

 

 俺の肩を叩く綾斗。

 

 「俺達もそろそろ帰ろう。組み合わせの結果も出る頃だし」

 

 「だな。コルベル院長、お邪魔しました」

 

 「あぁ、本戦も頑張れよ」

 

 そう言って踵を返すコルベル院長。何だかんだ優しい人だよな、この人も・・・

 

 「さて、行くか」

 

 「うん」

 

 そう言って歩き出そうとしたところで、綾斗の端末に着信が入る。

 

 「あれ?紗夜からだ」

 

 綾斗が空間ウィンドウを開くと、紗夜の顔が映し出された。

 

 「紗夜?どうしたの?」

 

 『綾斗、助けて』

 

 どことなく困り顔の紗夜。

 

 『道に迷った』

 

 「・・・どうやら、この間の拳骨が効かなかったみたいだなァ」

 

 ボキボキと拳を鳴らす俺。そんな俺に気付き、表情が固まる紗夜なのだった。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 「で、何か言い残す言葉はあるか?」

 

 「すいませんでした」

 

 土下座している紗夜。

 

 再開発エリア付近の銃専門店に来た結果、帰り道が分からなくなり綾斗に助けを求めたらしい。

 

 ホントにコイツは・・・

 

 「全く・・・だから一人で出歩くなって言ってんのに・・・」

 

 「煌式武装を仕上げる為に、どうしても必要な部品があって・・・」

 

 紙袋を大事そうに抱えている紗夜。

 

 そういや睡眠時間を削って作業してるらしいって、綾斗も言ってたっけか・・・

 

 「・・・まぁいいや。ほら、帰るぞ」

 

 「え、拳骨は?」

 

 「何?くらいたいの?」

 

 「滅相もございません」

 

 慌てて後をついてくる紗夜。と、綾斗が俺を見て笑みを浮かべていた。

 

 「・・・何だよ」

 

 「いや、七瀬はホントに優しいなって」

 

 「やかましいわ。綾斗なんか人の彼女を口説いて、学園中から嫌われて、ユリス狂になって、クローディアと紗夜に酷いことして、ティターニア狂に騙されて仲間を殺そうとして、仲間達から決別されて、学園を退学になって、姉からも見捨てられて、今何処にいるか分からない状況になってしまえ」

 

 「罵倒が長くて具体的なんだけど!?それ誰の話!?」

 

 そんな会話をしながら歩いていた時だった。轟音が響き渡り、瓦礫の崩れる音がする。

 

 まさか・・・

 

 「例の廃ビル崩落事件か?」

 

 「多分そうだと思う。二葉さんの言ってた現場って、この辺じゃなかったっけ?」

 

 「何の話?」

 

 紗夜は首を傾げているが、俺と綾斗は周囲を警戒していた。

 

 人為的に起こされたものなら、犯人が近くにいる可能性が高い。俺は周囲へと意識を集中させ、星辰力の波動を読み取る。

 

 綾斗と紗夜以外で、この付近にいる《星脈世代》・・・

 

 「ッ!?この波動は・・・!」

 

 「七瀬・・・?」

 

 間違いない・・・俺のよく知っている波動だ。

 

 「綾斗!紗夜を連れて先に戻ってろ!」

 

 「七瀬!?」

 

 全力で駆け出す俺。やがて少し開けた所へ出た瞬間・・・

 

 「おらぁっ!」

 

 ロヴェリカが大剣を振りかざしている光景が飛び込んできた。ロヴェリカが狙っている相手は・・・

 

 倒れているマフレナを、庇うように立ちはだかっている四糸乃姉だった。

 

 「死ねえええええっ!」

 

 「こっちのセリフだ阿婆擦れ女ッ!」

 

 「がはっ!?」

 

 星辰力を纏った拳を、ロヴェリカの顔面に思いっきりぶち込む。もろにくらったロヴェリカは、勢いよく近くのビルに突っ込んだ。

 

 「なーちゃん!?」

 

 「大丈夫か四糸乃姉!?」

 

 見たところ、四糸乃姉に怪我は無いようだ。だが・・・

 

 「マフレナ!?」

 

 「大丈夫!?」

 

 モニカ達がマフレナの側に駆け寄る。どうやら、マフレナは危害を加えられたらしい。

 

 「どういうつもりだ・・・傭兵生共」

 

 少し離れたところに、ネヴィルワーズとメデュローネが立っていた。ネヴィルワーズは無表情で、メデュローネは溜め息をついている。

 

 「開会式の日の忠告を忘れたのか?」

 

 「いや、私達は覚えている。ロヴェリカは忘れてしまったようだがな」

 

 淡々と答えるネヴィルワーズ。

 

 「だが、今回はロヴェリカだけの責任ではない。我々が立ち去ろうとしたところへ、そこの茶髪の娘が攻撃してきたのだから」

 

 「それはアンタ達が、何の謝罪も無しに立ち去ろうとするからでしょ!?」

 

 ミルシェが激怒している。

 

 「アタシ達が歩いてる時に、近くの廃ビルをいきなり壊すなんて!危うく瓦礫の下敷きになるとこだったじゃない!」

 

 「それについては申し訳ありません」

 

 謝罪の言葉を口にするメデュローネ。

 

 「ロヴェリカが人の言うことも聞かず、『ショートカットだ』と言って廃ビルを壊して進むものですから・・・」

 

 「・・・事件の犯人は阿婆擦れ女かよ」

 

 呆れる俺。何やってくれてんだホント・・・

 

 「それについて文句を言ったら、いきなり攻撃してきて!しかもそのまま立ち去ろうとするなんて!反撃するに決まってるでしょうが!」

 

 そう吠えるミルシェは、確かにボロボロだった。阿婆擦れ女にやられたのか・・・

 

 「それは悪手と言わざるをえないな」

 

 冷たい目でミルシェを見つめるネヴィルワーズ。

 

 「現に貴様ではロヴェリカに勝てず、やられそうになったところを倒れている娘が庇ったからこうなっているのだろう?」

 

 「っ・・・」

 

 唇を噛むミルシェ。それでマフレナがやられたのか・・・

 

 「確かに原因は我々だ。それについては謝罪しよう。だが貴様の仲間が傷付いたのは、貴様の勝手な行動のせいだ。それについて謝罪する気は無い」

 

 「・・・だったら早く失せろ。これ以上は手を出すな」

 

 「七瀬!?」

 

 ミルシェが叫ぶ。

 

 「コイツらを見逃すって言うの!?」

 

 「今ここで争ったら、《獅鷲星武祭》への参加資格を剥奪される可能性がある。そんなこと、お前らも望んでないだろ?」

 

 「そ、それは・・・」

 

 「それに今は、マフレナの手当てが最優先だ。争ってる場合じゃない」

 

 「っ・・・」

 

 悔しそうに俯くミルシェ。俺はネヴィルワーズへと視線を向けた。

 

 「阿婆擦れ女を連れて早く失せろ。お前らの顔を見るのも不愉快だ」

 

 「感謝する。すぐにこの場を立ち去ろう」

 

 「ふざけんなァッ!」

 

 ネヴィルワーズがそう答えた瞬間、ロヴェリカの突っ込んだビルが崩壊する。土煙の中から現れたロヴェリカは、目が血走っていた。

 

 「星野七瀬ッ!テメェはオレがぶっ殺すッ!」

 

 「止めなさいロヴェリカ!」

 

 メデュローネが止めようとするが、どうやらロヴェリカは頭に血が上っているようだ。大剣を構え、オレに向かって飛び掛ってくる。

 

 だが・・・

 

 「どーん」

 

 そんな気の抜けた声と共に轟音が鳴り響き、光の奔流がロヴェリカを呑み込んだ。

 

 おいおい、マジか・・・

 

 「・・・何で来たんだ、紗夜」

 

 「七瀬を置いていけるわけない」

 

 三十九式煌型光線砲・ウォルフドーラを構えた紗夜が親指を立てる。

 

 「星猟警備隊にも通報済みだ。すぐにここへやってくるはずだよ」

 

 紗夜の隣に現れる綾斗。お前まで来たのかよ・・・

 

 「・・・致し方あるまい」

 

 ネヴィルワーズが溜め息をつき、右手を高く掲げる。周囲の万応素が猛烈な勢いで渦を巻き、三十メートルを超える巨大な岩の塊が出現した。

 

 「上手く回避してくれ。まだ失格にはなりたくないのでな」

 

 躊躇うことなく腕を振り下ろすネヴィルワーズ。おいおい・・・!

 

 「全員退避ッ!」

 

 俺の叫びに、皆が一斉に退避する。岩が地面に激突した瞬間、地面に亀裂が走って穴が空く。

 

 そして・・・

 

 「キャアッ!?」

 

 「ッ!?ミルシェッ!」

 

 ミルシェの足場が崩れ、穴へと落ちていく。俺は穴へと飛び込み、落ちていくミルシェの手を掴んで抱き寄せた。

 

 「なーちゃんッ!ミーちゃんッ!」

 

 四糸乃姉の叫び声を聞きながら、俺とミルシェは地下へと落ちていくのだった。

 




どうも~、ムッティです。

シャノン「またチーム・ヘリオン出てきたね」

ぶっちゃけコイツら、名前が長くて面倒なんだよね。

ロヴェリカはまだ良いとして、ネヴィルワーズとかメデュローネとかさ。

クロエの前の名前もミネルヴィーユでしょ?

どいつもこいつも長いんだよ。もっと省略しろよ。

シャノン「いや、省略って・・・例えば?」

とりあえず、ネヴィルワーズはネビルでいい。

シャノン「ハリー・ポ●ターに出てきそうだね」

あと、メデュローネはメデューサで。

シャノン「怪物じゃん。っていうか省略されてる?」

ミネルヴィーユは・・・クロエになったから良しとしよう。

っていうか、クロエは可愛いから許されるわ。

シャノン「ホント浮気性だねぇ・・・」

可愛いは正義!

シャノン「じゃあ私も正義?」

自惚れんなモブキャラ。

シャノン「酷い!?」

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」

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