『最弱無敗の神装機竜』のクルルシファーみたいな。
もしくはブリドカットセーラ恵美さんかな。
『新妹魔王の契約者』の柚希みたいな。
「じゃあクロエは、アイツらと同じPMCにいたのか?」
「えぇ、彼らのチームの一員だったのよ」
説明してくれるクロエ。
俺はクロエと一緒に、行方不明の紗夜を探していた。九美達も別の場所を探してくれているので、すぐ見つかると思うのだが・・・
「それからクインヴェールに購入されて、《べネトナーシュ》の一員になったの」
「あぁ、クインヴェールの諜報工作機関か」
「えぇ。クロエ・フロックハートという名前は、理事長からもらった名前よ。彼らのチームにいた頃は、ミネルヴィーユという名前だったわ」
「そういや、あの阿婆擦れ女もそう呼んでたっけ」
それにしても『購入』か・・・アスタリスクでは、学園が学生の身柄を買い上げることは珍しくないけど・・・
あまり気分の良い話じゃないよな・・・
「それを知った美奈兎が、理事長と交渉したのよ。もし自分達が《獅鷲星武祭》で優勝したら、私を自由にしてくれって。シルヴィアの口添えもあって、交渉は成立したわ」
「シルヴィも絡んでんのかよ・・・」
アイツ色々と首を突っ込んでるよな・・・今度問い詰めてやろう。
「・・・そっか。それなら、クロエは負けられないよな」
「えぇ。でも、それは七瀬も一緒でしょう?」
「・・・まぁな」
俺も仲間の願いを叶える為、絶対に負けるわけにはいかない。たとえクロエにどんな事情があろうとも、優勝を譲るわけにはいかないのだ。
「ゴメンな、クロエ。俺は・・・」
「謝らないの」
クロエの人差し指が、俺の唇に添えられる。さっきと逆のパターンだな・・・
「七瀬には七瀬の事情があって、私には私の事情がある・・・それだけのことよ。私が七瀬を恨むことは絶対に無い。だからお互い頑張りましょう」
「・・・あぁ。そっちも俺達と当たるまで負けんなよ」
「フフッ、頑張るわ」
微笑むクロエ。自分の命運がかかっているというのに、随分と落ち着いているようだ。
そんなこんなで歩いていると・・・
「おや、七瀬じゃないか」
「ご機嫌よう」
前方から歩いてきたのは、アーネストとレティシア・・・いや、それだけじゃない。
「《銀翼騎士団》が勢揃いだな・・・」
《銀翼騎士団》・・・ガラードワースの《冒頭の十二人》だ。つまり、ランスロットとトリスタンのメンバー全員である。
「七瀬えええええっ!」
「左手は添えるだけ」
「ぐはっ!?」
駆け寄ってくる五和姉の腹部に、俺の左の拳が入った。
「ちょ、酷くない!?」
「ドントタッチミー」
「何で英語・・・ってこのくだり二回目だよねぇ!?」
「えっ、五和姉が一年も前のことを覚えてるなんて・・・六月姉、どう思う?」
「驚愕。アスタリスクは崩壊するのでしょうか・・・」
「バカにしてんの!?」
ギャアギャア騒ぐ五和姉。相変わらず面白いなぁ・・・
「五和、うるさいですよ」
溜め息をつく三咲姉。
「全く・・・貴方はもう少し《銀翼騎士団》の一員である自覚を持って下さい」
「その五和姉と学園祭の時にくだらないことで喧嘩して、反省文を書いていたのは何処の《絶剣》さんでしたっけ?」
「すいませんでした」
土下座する三咲姉。やれやれ・・・
「七瀬さん、お久しぶりです」
「ご無沙汰してます」
後ろからエリオとノエルが現れ、笑顔で挨拶してくれる。
「おぉ、可愛い後輩達よ!」
二人に抱きつく俺。
「ちょ、七瀬さん!?」
「はうっ!?」
「七瀬!?私とのハグは拒否したのに、何で二人には抱きつくのよ!?」
「五和姉は鬱陶しい。エリオとノエルは可愛い後輩。以上」
「ガーン・・・」
落ち込む五和姉。まぁ放置しておいて・・・
「あ、パーシヴァルさん。お久しぶりです」
「学園祭以来ですね、七瀬」
俺はパーシヴァルさんと握手を交わす。
「あの時はお世話になりました」
「いえいえ。こちらこそ、愚姉共がご迷惑をおかけしました」
「「愚姉・・・」」
三咲姉と六月姉も落ち込む。面倒だなこの人達・・・
「七瀬、私のことは呼び捨てで構いませんよ?私は敬語を使うのが習慣ですが、七瀬は使わなくて大丈夫ですので」
「そう?じゃあパーシヴァルで」
そんなやり取りをしていると、アーネストが前に進み出てきた。
「七瀬、先ほどはありがとう。ソフィア達を助けてくれて」
「何だ、見てたのか?」
「あぁ。僕が出て行く前に、七瀬が間に入ってくれて助かったよ」
苦笑するアーネスト。
「本当はあの場でお礼が言えたら良かったんだけど・・・ソフィアがいたからね。後で君の控え室にお邪魔して、お礼を言おうと思ってたんだ」
「・・・ソフィアと会いたくないのか?」
「いや・・・ソフィアが僕と顔を合わせたくないだろうと思ってね」
「ソフィアが・・・?」
アーネストの言葉に、俺は首を傾げた。
あれほどアーネストを想っているソフィアが、アーネストと顔を合わせたくないなんてことがあるのだろうか・・・
「そ、それより七瀬!そちらの方は!?」
事情を知っているのか、明らかに話題を変えにきたレティシア。
これ以上アーネストの事情に首を突っ込むのもマズいと思ったので、俺はレティシアに乗っかることにした。
「あぁ、クロエ・フロックハートだよ。九美・・・妹のチームメイトなんだ」
「え、九美の!?」
「驚愕。九美も出場するのですか?」
「今さら知ったんですか・・・」
驚いている五和姉と六月姉に、呆れている三咲姉。やれやれ・・・
「二人とも・・・妹が出場するかどうかぐらい把握しとけよ」
「七瀬も《鳳凰星武祭》の時、五和と六月の出場を把握してませんでしたよね?」
「すいませんでした」
今度は俺が土下座する番だった。あ、そうだ・・・
「そういやレティシア・・・いつもご苦労様」
「・・・急にどうしましたの?」
「いや、俺はお前が不憫で不憫で・・・」
「七瀬!?何で泣いてますの!?」
アーネストや三咲姉から仕事を押し付けられ、五和姉と六月姉には手を焼かされ・・・
本当に可哀想で仕方がない。特に愚姉共が迷惑をかけて、本当に申し訳ない。
「俺で良かったら愚痴とか聞くから・・・辛い時は無理すんなよ?」
「してませんわよ!?何で私が可哀想な子みたいな扱いをされているのですか!?」
「確かに・・・我々はレティシアに負担をかけすぎたかもしれないね・・・」
「アーネスト!?何を言い出しますの!?」
「レティシア、本当にすみません・・・責任を取って生徒会を辞めます」
「三咲!?それは私の負担が増えるので止めてくださいまし!」
「レティシア・・・私、優等生になるよ」
「五和!?気持ち悪いですわよ!?」
「決心。六月はレティシアの為なら、命を捨てる覚悟です」
「六月!?そこまでの覚悟は求めてないですわよ!?」
良かった・・・皆にはちゃんと伝わったようだ。
「お前ら!レティシアを大切にしろよ!」
「「「「「「「「「「「イエッサーッ!」」」」」」」」」」」
「こんな《銀翼騎士団》嫌ですわあああああああああああああああっ!」
レティシアの絶叫が響き渡るのだった。
*****
「・・・まさか《銀翼騎士団》が、コント集団だとは思わなかったわ」
呆れているクロエ。《銀翼騎士団》と別れた俺達は、再び紗夜を探していた。
「いやぁ、ノリが良いよな。俺、ガラードワースに入学しても良かったかもしれない」
「ノリの良さだけで判断するのはどうかと思うわよ・・・」
と、クロエが時計に目をやった。
「本当に時間が迫ってきてるわね・・・貴方のチームメイト、何処へ行ってしまったのかしら・・・」
「紗夜は極度の方向音痴だからなぁ・・・ドームの外に出たかもしれん」
「いや、いくら何でもそれは・・・」
クロエが言いかけたところで、俺の端末に着信が入った。
「あ、柚陽だ」
俺が端末を操作すると、空間ウィンドウに柚陽の顔が映し出される。
『もしもし、七瀬さん?』
「おう柚陽、どうした?」
『沙々宮さんが見つかりました』
「マジで!?」
あのバカ、やっと見つかったか・・・
「で、何処にいたんだ?」
『それが・・・』
柚陽が困り顔で、自身の背後を映す。そこには・・・
『沙々宮さん!?起きて下さいまし!』
『スピー・・・スピー・・・』
陽の当たる芝生の上で気持ち良さそうに眠る紗夜を、ソフィアが必死に起こそうとしていた。
おいおい・・・
「・・・ドームの外、だよな?」
『えぇ、念の為と思って探しにきたのですが・・・まさか本当にいるとは思いませんでした・・・』
「・・・すぐそっちに行く」
紗夜を一発ぶん殴ることを決意した俺なのだった。
どうも~、ムッティです。
シャノン「作者っち、この作品も遂に百話を突破したよ!」
いやぁ、感慨深いよね・・・
この作品を書き始めた時は、ここまで続けられると思わなかったもん。
シャノン「二度の《七ヶ月の空白》もあったもんね」
ホントすいませんでした・・・
いつもこの作品を読んでくださっている皆様。
お気に入り登録してくださっている皆様。
感想を書いてくださっている皆様。
評価を付けて下さっている皆様。
本当にありがとうございます。
これからもどうか、この作品をよろしくお願い致します。
シャノン「お願い致します(ぺこり)」
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」