学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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新章スタート!

ようやく《獅鷲星武祭》が始まるぞおおおおおっ!


第八章《獅鷲乱武》
チーム・ヘリオン


 「へぇ・・・ずいぶん変わったな」

 

 シリウスドームの観客席からステージを見下ろし、感嘆の声を上げる俺。

 

 季節は移り変わって秋・・・俺達は《獅鷲星武祭》の開幕日を迎えていた。

 

 「観客の安全性を高める為とはいえ、随分と思い切って改修したもんだな」

 

 「でしょうね」

 

 溜め息をつくクローディア。

 

 「何処かの誰かさんが、学園祭の時に怒り狂ってステージを破壊してしまいましたからね。万が一にも観客に危害が及ばないよう、運営委員会も随分と気を遣ったんでしょう」

 

 「・・・すいませんでした」

 

 クローディアにはメッチャ怒られたんだよなぁ・・・

 

ステージを破壊したことによる苦情の電話や修理費用の請求が、全て星導館にきたらしい。俺とシルヴィの交際宣言の影響もあり、学園祭終了直後から生徒会は多忙を極めたそうだ。

 

 生徒会の皆さん、本当にすいませんでした・・・

 

 「だが、それを考慮しても大袈裟すぎないか?」

 

 首を傾げているユリス。

 

 「それに観客を守る為なら、何故もっと早く改修しなかったのだ?」

 

 「・・・実は他にも事情がありまして」

 

 声を潜めるクローディア。

 

 「次の《王竜星武祭》には、統合企業財体の最高幹部が観戦に来るそうですよ。ですから、万全の安全対策をとっているのでしょう」

 

 「あぁ、次の《大会談》をアスタリスクで開催することになったんだっけ?だから《王竜星武祭》の観戦と式典への参加が検討されてるんだよな?」

 

 「あら七瀬、よくご存知ですね?」

 

 「シルヴィが愚痴ってたからな。生徒会長として、面倒な仕事が増えそうだって」

 

 《大会談》とは、各統合企業財体の首脳会議のことだ。それぞれの代表者が出席し、長期の利害調整を行なうとされている。

 

 何年かに一度開催されているのだが、アスタリスクで開催されるのは約四十年ぶりだそうだ。

 

 「《大会談》をアスタリスクで開催することを提案したのは、マディアス・メサ委員長らしいな。余計なことをしてくれたって、シルヴィが怒ってたぞ」

 

 「マディアス・メサが?」

 

 ユリスが不思議そうな表情をしている。

 

 「《星武祭》の運営委員長に、そこまでの影響力があるのか?」

 

 聞くところによるとマディアス・メサ委員長は、星導館のOBらしい。星導館の学生だった頃に《鳳凰星武祭》を制し、卒業後の運営委員会入りを望みとしたそうだ。

 

 現在の立場は、あくまでも銀河の中堅幹部・・・普通なら、《大会談》の開催地決定に関わることなど出来ないだろう。

 

 「《星武祭》の運営委員長というのは、例外的に強い立場にあるのですよ」

 

 苦笑するクローディア。

 

 「六つの統合企業財体が共同で開催している、唯一無二のイベント・・・それが《星武祭》です。運営委員会のメンバーは各統合企業財体からの出向ですし、人数も一定の比率になるよう調整されています。その中で運営委員長を輩出するということが、どれほどのアドバンテージになるか・・・容易に想像がつくでしょう?」

 

 「なるほど・・・統合企業財体に大きな利益をもたらす立場だからこそ、それに応じた強い影響力を持ってるってわけか」

 

 「そういうことです。もっとも、何か問題が起きた時は即座に寝首をかかれるポジションでもありますけどね。前委員長は政治的手腕で回避していたようですが、マディアス・メサ委員長は非の打ちどころのない結果で周囲を黙らせています」

 

 「へぇ・・・ずいぶん有能な人なんだな」

 

 一度だけ顔を合わせたが、物腰の柔らかい穏やかな人って印象だったな・・・

 

 ああいう人だからこそ、波風を立てずに物事を進められるのかもしれない。

 

 「さて、もうそろそろ開会式が始まる時間なのですが・・・綾斗達は何処へ行ってしまったのでしょう?」

 

 「綾斗なら、飲み物を買いに行ったきり戻ってこない紗夜と綺凛を探しに行ったぞ」

 

 「・・・まさか紗夜のヤツ、例のごとく迷子になったのか?」

 

 呆れる俺。それを心配したから、綺凛にもついて行ってもらったんだけど・・・

 

 人ごみではぐれたのか?

 

 「俺も探しに行ってくるよ。クローディアとユリスは先に行っててくれ」

 

 「了解しました。お気をつけて」

 

 二人を探す為、まずは綾斗への連絡を試みる俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「・・・ホント人が多いな」

 

 俺はげんなりしながら、シリウスドームのエントランスを歩いていた。綾斗と連絡をとったところ、綾斗は既に綺凛と合流していた。

 

 その綺凛によると、紗夜は『トイレに行く』と言ったきり戻ってこなかったらしい。通信も繋がらないので心配になって探していたところ、綾斗からの通信がきたそうだ。

 

 今は二人で紗夜を探しているらしく、俺は二人とは別の場所を探すことにしたのだった。

 

 「全く・・・何でアイツ出ないんだよ・・・」

 

 さっきから何度も連絡を試みているのだが、一向に繋がらない。溜め息をつきつつ、エントランスをキョロキョロと見回していた時だった。

 

 「くだらなくないッ!」

 

 聞き覚えのある声がした。そちらへ視線を向けてみると・・・

 

 「・・・美奈兎?」

 

 学園祭で知り合ったクインヴェールの生徒・・・若宮美奈兎が、見知らぬ少女と何やら口論していた。

 

 美奈兎の後ろには九美・ソフィア・柚陽・ニーナ・クロエの姿もあり、少女の後ろには男性一人と女性一人が控えている。

 

 何事だ・・・?

 

 「チッ、どいつもこいつも気に食わない目をしてやがる・・・ミネルヴィーユが腑抜けた原因はお前らか・・・!」

 

 「ミネルヴィーユじゃないッ!クロエだッ!」

 

 「美奈兎先輩、落ち着いて下さい!」

 

 少女の言葉に反論する美奈兎。それを九美が宥めようと前に出た瞬間・・・少女が一瞬で起動させた大剣が、九美の首を目掛けて突き出される。

 

 だが・・・

 

 「止めろ」

 

 「ッ!?」

 

 瞬時に間に入り、《神の拳》で剣先を掴む。驚愕に目を見開く少女。

 

 「誰だテメェ!?」

 

 「七瀬兄さん!?」

 

 九美も驚いている。俺は少女を睨み付けた。

 

 「人の可愛い妹に手を出そうとは・・・いい度胸してんな、阿婆擦れ女」

 

 「ぐっ・・・テメェ・・・!」

 

 少女は力を込めているようだが、この程度では俺を打ち負かすことなど出来ない。それが分かったのか、少女の後ろにいた長身の男性が静かに声を発した。

 

 「ロヴェリカ、これ以上は止めておけ。あの方に迷惑が及ぶ」

 

 「チッ・・・!」

 

 少女・・・ロヴェリカは忌々しそうに舌打ちすると、大剣を待機モードに戻した。

 

 「珍しいの持ってんな・・・《虚渇の邪剣》か」

 

 純星煌式武装の一つ・・・代償は確か、『常に飢餓感に苛まれること』だったか?

 

 「なるほど・・・それでそんな凶暴な性格してんのか」

 

 「いえ、それは元々です」

 

 眼鏡をかけた女性が溜め息をついた。

 

 「まぁもっとも、代償のせいで元々の性格がさらに悪化しているのですが」

 

 「んだとメデュローネ!テメェもオレをバカにすんのか!?」

 

 女性・・・メデュローネに食ってかかるロヴェリカ。

 

 まぁそれはおいといて・・・

 

 「で?お前はいつまで隠れてるつもりなんだ?」

 

 男性の隣に視線を向ける俺。一見誰もいないように見えるが・・・

 

 「ほう・・・砕の隠形を見破るか」

 

 男性が感心したように呟いた途端・・・隣の空間が歪み、背の低い少年が無言で姿を現した。

 

 やっぱり姿を隠してやがったか・・・

 

 「どうやら、なかなかの実力者のようだ。名前を教えてもらえるか?」

 

 「・・・星導館学園の星野七瀬だ。アンタは?」

 

 「私はネヴィルワーズ・・・レヴォルフ黒学院から、今回の《獅鷲星武祭》に参加することになっている傭兵生だ」

 

 「あぁ、アンタらがチーム・へリオンか」

 

 《星武祭》に外部の人間を参加させる為の制度・・・それが傭兵生制度だ。PMCと契約を結び、傭兵生を自分の学園の生徒扱いで《星武祭》へと参加させることが出来る。

 

 今回レヴォルフがその制度を利用し、『チーム・へリオン』という傭兵生チームを参加させていることはクローディアから聞いていた。

 

 コイツらがそうなのか・・・

 

 「開会式の前に問題を起こすのは、あまりオススメしないぞ。大会が始まる前に参加資格を剥奪されたら、アンタらの所属してるPMCの看板に泥を塗りかねないからな」

 

 「忠告痛み入る」

 

 「ロヴェリカには、後でよく言い聞かせておきます」

 

 ネヴィルワーズとメデュローネが頷く。どうやら、この二人は話が分かるようだ。

 

 「チッ・・・ここは引いてやるよ」

 

 ロヴェリカは舌打ちすると、俺の後ろの美奈兎を睨み付けた。

 

 「若宮美奈兎・・・テメェはオレが斬り刻んでやる。覚えておけ」

 

 「いいよ。アンタなんかに負けないから」

 

 睨み返す美奈兎。ロヴェリカが俺へと視線を移す。

 

 「星野七瀬・・・テメェにも借りは返させてもらう。覚悟しとけよ」

 

 「そういうセリフは、勝ち進んで俺達と当たってから言え。その程度の実力で楽に勝ち進めると思ってんなら、お気楽にも程があるぞ」

 

 「ッ!テメェ・・・!」

 

 ロヴェリカは悔しそうに俺を睨むと、踵を返して立ち去った。

 

 「では、我々もこれで失礼する」

 

 「お騒がせしました」

 

 ネヴィルワーズにメデュローネ、そして無言の少年・・・砕もその場を後にする。

 

 やれやれ・・・

 

 「皆、大丈夫だっt・・・」

 

 「兄さあああああああああああああああん!」

 

 「ぐはっ!?」

 

 九美が勢いよく抱きついてくる。

 

 「カッコいいです兄さん!何回九美のハートを打ち抜いたら気が済むんですか!?」

 

 「いや、そんな覚えは一切無いんだけど」

 

 そんなツッコミを入れつつも、幸せそうな顔をしている九美の頭を撫でる。

 

 「怪我が無くて良かったよ。まぁ俺が間に入らなくても、九美ならあの程度どうにでも出来たと思うけど」

 

 「兄さんが助けてくれたことに意味があるんです!『俺の愛する妹に手を出すな!手を出していいのは俺だけだ!』なんて・・・キャーッ!兄さんったら大胆ですぅ!」

 

 「おい待て。セリフ脚色しすぎだろ」

 

 「アハハ・・・相変わらず仲良しだね・・・」

 

 苦笑している美奈兎。

 

 「ゴメンね、七瀬。変なことに巻き込んじゃって・・・」

 

 「気にすんな。それより、皆大丈夫か?」

 

 「えぇ、大丈夫です」

 

 「七瀬のおかげで助かったよ」

 

 「流石は七瀬さんですわ」

 

 柚陽、ニーナ、ソフィアが頷く。と、クロエが申し訳なさそうにしていた。

 

 「ゴメンなさい、七瀬・・・」

 

 「何でクロエが謝るんだ?」

 

 「・・・彼らは私の知り合いなの。だから私達に絡んできたのよ」

 

 クロエが説明してくれる。

 

 「こうなってしまったのは私のせいなの。本当にゴメンなs・・・」

 

 「ストップ」

 

 「っ・・・」

 

 クロエの唇に人差し指を添え、それ以上の謝罪をさせないようにする。

 

 「別にクロエが悪いわけじゃないだろ。悪いのはアイツら・・・もっと言うなら、九美を攻撃しようとした阿婆擦れ女だ。お前が謝る必要は無い」

 

 「で、でも・・・」

 

 「まぁどうしてもって言うなら仕方ない・・・身体で償ってもらおうか」

 

 「えぇっ!?」

 

 慌てて自身の身体を抱くクロエ。俺は思わず笑ってしまった。

 

 「そういう意味じゃないから。俺のチームメンバーが迷子になっちゃってさ・・・探すの手伝ってくんない?開会式まで時間も無いし」

 

 「っ・・・そ、そういうことね・・・」

 

 顔を赤くしているクロエ。九美がニヤリと笑みを浮かべた。

 

 「クロエ先輩、意外とムッツリなんですね」

 

 「なっ!?九美!?」

 

 「言ってやるなよ九美。大人しそうなヤツに限って、実はエロかったりするんだから」

 

 「七瀬!?貴方が紛らわしい言い方するからでしょ!?」

 

 「・・・この兄妹、ホント息ピッタリだよね」

 

 美奈兎の言葉に、苦笑しながら頷く柚陽・ニーナ・ソフィアなのだった。

 




どうも~、ムッティです。

シャノン「ようやく《獅鷲星武祭》に入れるね」

ホントそれな。誰だよ、メッチャ遠回りしたヤツは。

シャノン「作者っちでしょ」

あ、スイマセン・・・

シャノン「それより、またチーム・赫夜が出てきたね」

『クインヴェールの翼』と絡めていきたくて。

ただ『クインヴェールの翼』って、開会式が始まる前で終わってるんだよね。

今のところ続きが出てないから、どうしたもんかなと・・・

シャノン「アスタリスクの原作で、結果は分かってるんだけどね」

そうそう。ただ、詳細な内容は分からないからさぁ。

だから執筆してる最中に、新巻が出ることを期待してるんだよね。

シャノン「どうだろうねぇ・・・でも早く続き読みたいよね」

そうなんだよ。三屋咲先生、よろしくお願いします。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」

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