学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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乃木坂46の新曲『サヨナラの意味』がメッチャ良い。


勧誘

 翌日、俺はクローディアの部屋へと引っ越した。その話はたちまち学校中に広まってしまい、クラスメイト達から質問攻めに遭ったのだった。

 

 「マジで勘弁してくれ・・・」

 

 机に突っ伏す俺。そんな俺を見て、ユリスが苦笑していた。

 

 「男子が女子寮で暮らすなど、前例が無いからな。しかも生徒会長と同居となると、噂されても仕方あるまい」

 

 「もう一つの噂では、七瀬がリースフェルトとエンフィールドに二股をかけていることになっている」

 

 「ハァッ!?」

 

 紗夜の発言に、思わず顔を上げる俺。

 

 「そんな噂になってんの!?」

 

 「この学内新聞を見ると良い」

 

 紗夜が開いた空間ウィンドウには・・・

 

 『《覇王》、女性関係も《覇王》の地位を確立か!?』

 

 「・・・やーぶーきー?」

 

 「ち、違うぞ七瀬!これはだな・・・」

 

 「言い訳無用おおおおおっ!」

 

 「ぐはっ!?」

 

 夜吹の腹をぶん殴る。そのまま、教室のドアごと廊下まで吹っ飛んでいく夜吹。

 

 「お前らー、席つけー・・・って、うおおおおおっ!?」

 

 ちょうどやってきた谷津崎先生が、慌てて避ける。

 

 「誰だ!?教室のドアをぶっ壊した奴は!?」

 

 「夜吹です」

 

 夜吹に罪を擦り付ける俺。

 

 「夜吹いいいいいっ!またテメエかあああああっ!」

 

 「ギャアアアアアッ!?」

 

 夜吹の断末魔の叫びが聞こえてくるが、無視して再び机に突っ伏した。

 

 「・・・七瀬、意外と容赦無い」

 

 「いや、夜吹の自業自得だろう」

 

 唖然としている紗夜と、呆れているユリスなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ハァ・・・疲れた」

 

 「お疲れ様でした」

 

 リビングの椅子にぐったりと座る俺を、クローディアが苦笑しながら労わってくれる。

 

 「クローディアは質問攻めに遭わなかったか?」

 

 「遭いましたよ。全部『はい』とお答えしておきました」

 

 「何でだよ!?適当に肯定すんの止めてくんない!?」

 

 「面倒でしたので」

 

 「気持ちは分かるけども!」

 

 マジかよ・・・メッチャ誤解されてそうだな・・・

 

 「まぁ良いじゃないですか、ダーリン」

 

 「誰がダーリンだ!」

 

 「では・・・あなた?」

 

 「だから何で旦那扱いなの!?」

 

 「フフッ、冗談です」

 

 楽しそうに笑うクローディア。ホントにコイツは・・・

 

 「ところで七瀬」

 

 クローディアが急に真面目な表情になる。

 

 「《鳳凰星武祭》に出場するおつもりは無いのですか?」

 

 「・・・ユリス次第だな。ユリスがパートナーを見つけられなかったら、一緒に出るさ」

 

 「ユリス以外と出るおつもりは無いと?」

 

 「あぁ、元々《鳳凰星武祭》に出るつもりも無かったしな。でもユリスが戦う理由を聞いて、俺で力になれるならなりたいと思ったんだよ。だからもしユリスがパートナーを見つけたら、俺に《鳳凰星武祭》に出る理由は無い」

 

 「そうですか・・・星導館としては、《冒頭の十二人》の一人である七瀬には出場していただきたいところですが・・・」

 

 「まぁ、まだどうなるか分からないけどな。期待に添えなかったら悪い」

 

 「いえ、出場はあくまでも本人の自由ですので。お気になさらず」

 

 笑うクローディア。生徒会長としては出てほしいんだろうが、一切強要せずに本人の意思を尊重してくれる・・・

 

 ホント、性悪だけど良い女だよ。

 

 「では生徒会長としてではなく、個人的に七瀬に考えていただきたい話があります」

 

 「と言うと?」

 

 「来年の秋に行われる《獅鷲星武祭》に、私のチームの一員として出場していただきたいのです」

 

 「・・・ずいぶんと気が早いな」

 

 苦笑する俺。

 

 「まだ《鳳凰星武祭》も始まってないのに、もう《獅鷲星武祭》を見据えてるのか?」

 

 「私は出場する《星武祭》を《獅鷲星武祭》に絞っていますので。今のうちからチームメンバーを集め、戦略を練らないといけないんです」

 

 「じゃあ、クローディアは《鳳凰星武祭》に出ないのか?」

 

 「えぇ、《獅鷲星武祭》一本と決めていますので。《獅鷲星武祭》はチーム戦ですから、優勝する為には頼りになるチームメンバーが必要なんです。そこで是非、七瀬に私のチームに加わっていただけないかと思いまして」

 

 珍しく熱を帯びた口調のクローディア。なるほどな・・・

 

 「話は分かったが・・・何で俺なんだ?俺より強い奴なんて、腐るほどいるだろうに」

 

 「私は『強い人』ではなく、『頼りになる人』を探していますので。七瀬のことは、本当に頼りにしているんですよ?」

 

 「俺を・・・?」

 

 「えぇ、勿論」

 

 微笑むクローディア。

 

 「七瀬は、ユリスの心を開いてくれました。私が七瀬を頼りにするには、十分すぎる理由です」

 

 「クローディア・・・」

 

 「それに、あのマクフェイルくんを一撃で倒した実力も買っています。ですから七瀬には、どうしても私のチームに加わっていただきたいのです」

 

 そう言って俺を見つめるクローディアの目は、真剣そのものだった。どうやらクローディアは、本気で《獅鷲星武祭》優勝を狙っているようだ。

 

 「今すぐ結論を出してくれ、とは言いません。検討していただけないでしょうか?」

 

 「・・・分かった、真剣に考えてみる。結論を出すまで、少しだけ時間をもらっても良いか?」

 

 「勿論です。《鳳凰星武祭》が終わってからで結構ですよ。一つ言っておくと、ユリスは勧誘するつもりです」

 

 「マジか」

 

 ユリスの目標は、今シーズンの《星武祭》の全制覇・・・グランドスラムだ。クローディアのチームへの勧誘なら、まず断ることは無いだろう。何せ星導館の序列二位が率いるチームだからな。

 

 「なら、俺も前向きに検討するかな」

 

 「フフッ、よろしくお願いします」

 

 この話はここまでというように、クローディアがパンッと手を打つ。

 

 「さて、そろそろ夕食時ですね。今日は街で外食でもしませんか?この間、良いお店を見つけたんです」

 

 「じゃ、そこに行ってみるか。ってか、クローディアって外食すること多いのか?」

 

 「時々、といった感じですね。最近は街を探索する為に、外食することが多いですが」

 

 「探索?中等部からアスタリスクにいるなら、街のことも詳しいんじゃないのか?」

 

 「勿論ある程度は知っていますが、全ては把握しきれませんよ。特にお店に関しては、入ったことの無いお店の方が多いですし」

 

 「へぇ、そういうもんか?」

 

 「そういうもんです。転入生もやって来ますし、生徒会長として色々と教えて差し上げたいじゃないですか。ですので、最近街を探索しているんです」

 

 「真面目だなぁ」

 

 苦笑する俺。

 

 「そういや、転入生ってどんな奴なんだ?」

 

 「この方です」

 

 クローディアが空間ウィンドウを開く。そこには、一人の男子の顔が映っていた。

 

 「天霧綾斗・・・何か優しそうな奴だな」

 

 「えぇ、私もそう思いました。実家は剣術道場のようですね」

 

 「へぇ・・・クローディアの先見の明が正しいと良いな」

 

 「これで間違っていたら、私の面目は丸つぶれですね」

 

 「ま、大丈夫だろ」

 

 何だかんだで、転入生が来るのを楽しみにしている俺なのだった。

 




二話続けての投稿です。

明日・明後日は、恐らく投稿できません。

ですので、次回の投稿日は明々後日になる予定です。

次回は綾斗と、あの大人気キャラが登場します。

それではまた次回!

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