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それでは今回もよろしくお願いします。
「…………」
「…………」
二人してソファーに腰掛け、何も言わずに寄り添っていると、意外なくらいに長い時間が過ぎた。お互いに何かを修復していたような、ひっそりとした時間だった。
外はいつの間にか、クリスマスの時よりも多くの雪が舞い降り、心の火照りを冷ましてくれている気がした。
「ねえ……」
絵里さんが手を握ってくる。
「雪……綺麗ね」
「……そうですね」
「去年、こんな風に雪を見てた時は、こんな出会いがあるなんて思わなかったわ」
「俺もですよ」
「あの日、千葉に行って本当によかった」
「……仮に……」
「?」
「あの日、千葉で会わなくても、何かの用事で、俺が東京に行って……出会っていたと思います」
「……わかりやすく言うと、あなたは私を必ず見つけてくれるって事?」
絵里さんの方は見ずに頷く。
「……あなたって本当に可愛いわね……いっそこのままどうにかしたいぐらい」
「どうぞ」
「絶対に出来ないと思ってるでしょ?」
「はい」
「まあ、その通りね」
肩にかかる重みが少し増した。
「私……八幡の前じゃ、もう強がれないわ」
「……別にいいんじゃないですか」
「どうしよう……これからあなたに……八幡にいっぱい甘えちゃうかも」
「出来る範囲で善処します」
「……そういう時は『絵里、わがままくらいいくらでも言ってくれ。絵里のわがままなら大歓迎さ』ぐらい言ってよ」
「……それは止めときます。しかも、その口調で俺が話すのが想像できない。呼び捨てになってるし」
「あ、じゃあお願いがあるんだけど」
「?」
耳元で誘うような声が響く。
「絵里って呼んで?」
「すぅ……すぅ……」
「そんなんじゃ騙されないわよ?」
頬を抓られる。
「わ、わふぁりまふぃふぁ……」
「さ、いつでもいいわよ!」
俺の絵里さんは、何故か目を閉じ、俺が呼び捨てで呼ぶのを、今か今かと待ちわびている。さっきあんな事があったのに、どうしてこんな無防備になれるんですかね、この人は。
隙ありと言わんばかりに、一瞬だけ唇を重ねた。
「え?あ、八幡?」
「……どうかしたんですか……絵里」
「……ずるい」
「何の事でしょうか」
「八幡ったら、意外と積極的になったわね。もしかしたら、卒業式の日に二次元キャラクターの恰好で、校門前で待ってたりするのかしら」
「しませんよ」
「私、ラッキーマンとか結構好きなんだけど」
「絶対にしませんよ」
運気は上がりそうだが。
「絵里さん」
「聞こえない」
「ぐっ……絵里。さっきまでの真面目な空気はどこに行ったんですかね」
「私はこっちの方が好きよ」
「……そうすか」
「強がる必要もないし」
「……それはタイトル回収の為に言ってるんですか?」
「だってこのままじゃポンコツとか残念で終わるじゃない」
「…………」
「八幡」
「何ですか?」
「これからもよろしく」
「……こちらこそ、よろしく……絵里」
あと、バレンタイン、卒業式、劇場版で終わります!
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