「明けましておめでとう」
「……明けましておめでとうございます」
お互いに頭を下げる。周りも新年を祝う声で賑わっていた。周りを見渡すと、誰もが寒さなど忘れたかのように大事な人とまた過ごしていけることに思いを馳せていた。
絵里さんも頭を上げ、青い瞳と微笑みを向けてくる。
「末永くよろしくお願いします」
「今年も、じゃないんですか?」
「そうだったかしら?」
「まあ、別にいいですけど」
一応、こっちもそのつもりだ。
「エリチ」
振り向くと、巫女姿の東條さんと矢澤さんがいた。
「何やってるのかな~」
「いつまでいちゃついてるのよ」
からかうような表情の東條さんと呆れたような表情の矢澤さんに、絵里さんは慌てて仕事に戻ろうとした。
「ご、ごめん!」
「ふふふ……このまま二人を眺めるのも面白そうなんやけど」
「ちょっ……希!この忙しいのに!」
「じゃあ、二人共。もうひと頑張り!」
そう言うなり東條さんは、絵里さんと矢澤さんを連れ、仕事に戻っていった。
「お義兄ちゃん、私達も行こ?」
「ふふっ。いつまで絵里さんに見とれてるんですか?」
「……行くか」
初詣をすませた後、高坂の家に行く二人と別れ、俺は適当にぶらぶらしながら絵里さんを待とうと思っていたが、絵里さんから家で待つよう言われたので、絢瀬家のリビングで何をするでもなく彼女を待っていた。
やがて玄関の扉が開き、リビングへ駆けてくる足音が聞こえる。
「ただいま!」
「おかえりなさい……何故、巫女姿なんですか?」
「特別に借りたのよ!八幡が似合うっていってくれたから!早く見せたくて、全力疾走で帰ってきたわ!」
「…………」
朝焼けの街並みを巫女姿で全力疾走する金髪。
……シュールすぎる。
「どう?」
「いや、どうって……」
やばい。
さっきは人目もあったが、今は二人きり。
そんな状況に後押しされ、俺は絵里さんを抱きしめていた。
「え?あ、き、気に入ってもらえたの?」
「……ああ」
そのまま唇を重ねる。
「…………っ」
「…………ん」
そして、胸に手を伸ばした。柔らかいだけではなく、弾力のあるその部分は、欲求不満をさらに刺激した。
何度も接触した部分なのに、初めて触る気がした。
「は、八幡……!」
絵里さんから僅かな拒絶の意思を感じたが、それでも止める事ができなかった。
少し乱暴に前を開き、白い柔肌を見たところで、絵里さんと目が合う。
「……んっ……っ」
彼女は少しだけ泣いていた。
「あの……」
「…………」
絵里さんは何も言わない。
「ごめんなさい。すいませんでした」
「…………」
土下座で謝るが、正座して向こうを向いたままの絵里さんには届かない。
「な、何でもします」
「…………」
絵里さんは真っ赤な顔のまま振り向いた。
「その……私が悪い部分があるのはわかっているのよ?行き過ぎたアプローチを何度もしてたし……」
「はい」
「即答しないでよ!」
そんな事言われても……
「ふぅ……そ、それでね?八幡が私を欲しがってくれるのはとても嬉しいんだけど、もう少し待ってくれる?その時が来たら……」
絵里さんは青い瞳を潤ませ、それでもしっかりと告げた。
「全部……あなたにあげるから」
甘すぎる囁きは、外の雪を溶かしてしまいそうなくらい熱くて、俺の耳の奥深くにしっかりと焼き付いた。
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