廊下にボランティア募集のポスターを貼っていると、変な奴に遭遇した。
「我が名は材木座義輝!総武高校二年C 組随一のラノベ作家にして、いずれラノベ業界を席巻する者なり!」
「あー、はいはい。わかったから」
二年C組限定かよ。やけに絞ったな。……自信あるのかないのか……ないんだろうなあ……そんなわけで、声だけは無駄に格好いい材木座の登場である。
「お前、最近書いてたのか」
「貴様にも渡したはずだが!?」
「冗談だよ、冗談。でもお前、雪ノ下に推敲してもらってるんだろ?よく心折れないよな」
「何故心を折られる前提なのか……し、しかし、あの罵倒もあれはあれでクセになるのでな……」
雪ノ下の罵倒が材木座にとって最高のときめきエクスペリエンスのようだ。顔を赤らめているのが、正直不快である。
「つーか、そろそろいいか。用があるんでな」
「ボランティアを探しているのだろう!安心するがいい!」
材木座はやたらドヤ顔を見せつけながら言った。
「我が来た」
「…………」
お前、それが言いたかっただけだろ。
「やあ、比企谷」
「お前が来るのは予想外だったな」
生徒会室には葉山隼人が来ていた。今日も相変わらずリア充イケメンオーラが眩しく、一刻も早く、成績を蹴落としてやりたくなる。
「君には迷惑かけたからな。このぐらいはやるさ」
予想だにしていない事を言う葉山にどう答えたものかと考えていると、雪ノ下が口を挟んできた。
「あら、気にしなくていいのよ。彼は自分の本能の赴くままに行動しただけなのだから」
「いや、いい話になりかけてたのに、そんな事いうの止めてくんない?」
「ははっ、そうかもしれない。しかし、どんな意図があったにせよ君は周りを変えたんだ。それに……」
葉山は雪ノ下の方を見て、小さく微笑んだ。
「俺も変わりたいんだよ」
「そう……」
雪ノ下も同じように小さく微笑んでそれに応えた。
この二人の間に何があったかは知らないし、知る事もないのだろうが、今がよりいい方向へと変わっていく小さな予感のようなものを微かに感じた。それはただの気のせいかもしれないが。
……それにしても今日はゆきのんモテモテじゃねーか。
「比企谷君、いきなりニヤニヤしないでくれるかしら。訴えるわよ」
「そう。八幡の生徒会活動も順調のようね」
「つっても、俺が何かしたわけじゃないですけど」
「確かに」
「そこは否定する所じゃないんですかね……」
「八幡はお世辞で喜ぶタイプじゃないでしょう?」
「いや、まあ、確かに」
「私が順調だって思ったのは、八幡が自分から何かをやろうとしている事についてよ」
「順調……なんですかね」
「私を信じなさい」
「はい」
「あなたが信じるあなたじゃない。私が信じるあなたを信じなさい」
「アニキ……」
「誰がアニキよ!!」