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それでは今回もよろしくお願いします。
「八幡、八幡、八幡、八幡、八幡!」
「は、はい……」
電話の向こうでやたら絵里さんがはしゃいでいる。
11月に入り、絵里さんのテンションがやたらと高いです。マイナスの駅にも余裕で突っ込んで行きそうなくらいです。
まあ、こんな感じで、先月のテンションのまま、お互いに11月に突入した。ハロウィン以来会えてはいないが、どちらかが取り決めをするでもなく、毎晩電話をするようになった。
「明日から修学旅行ね!」
「は、はい」
「楽しんできてね。準備は大丈夫?」
「小町がしっかりとやってくれました」
「くっ、抜かったわ!事前に聞いておけば、私が愛妻弁当まで用意したのに……!」
「いや、遠慮しときます」
「そ、そうよね!結婚したらいくらでも……」
「もしもーし、絵里さん?」
「子供の名前は、二人の名前から取って里八とかどうかしら?スポーツは何を……」
おい、ネーミングセンス何とかしろ。それと脳内でさっそく親バカになろうとするな。なんかこの人、通常攻撃が全体攻撃で、2回攻撃できるお母さんになりそう。
心のどこかで、話を終えるのが惜しいと思ってしまい、翌日は修学旅行だが、深夜2時までこの話を聞かされる羽目になった。
窓の外に目をやると、三日月が鋭くとんがって、いつもより明るく見えた。
京都に着いてからは、穏やかに時間は過ぎて行った……と言いたいところだが。
「とべっちと姫菜、いい感じだね」
「ああ、そうだな」
修学旅行の間、奉仕部に依頼が舞い込んだ。それは、戸部の告白のサポートだ。正直、成功率は低いと思う。それに加えて、海老名さんからその告白を阻止するように頼まれた。こちらははっきりとした依頼があった訳ではなく、それとなく暗示するような言い方だった。この依頼も難しいといえば難しい。戸部のあの勢いと、葉山のあの表情から察するに、告白を思いとどまる事はないだろう。……しばらくは戸部のサポートに徹して、様子を見る事にしよう。
碑文を読んでいると、由比ヶ浜が話しかけてきた。
「そういえばさ、ヒッキー」
「どした?」
「最近、絵里さんとはどう?」
「まあ、ぼちぼち……」
「答える気ゼロだっ!まあ、いいんだけどね。割と想像つくし……」
「え、まじで?ど、どんなイメージが……」
「んーとね、ヒッキーが押し倒されてるイメージ」
「そろそろ行くか」
「あ、逃げた!てゆーか図星なんだ!」
全く否定できなかった。
シリアスな空気は京都の街のどこかへ霧散して、しばらくは戻ってこなかった。
「エリチ……」
「何かしら、希」
「さすがに修学旅行にこっそりついて行くのはどうかと思うんやけど」
「何の事かしら?私は亜里沙を京都に連れて行きたいだけよ」
「お姉ちゃん……私を言い訳に使うなんて。自分が八幡さんと会いたいだけでしょ?」
「え?八幡は今京都にいるの?知らなかったわ」
「「白々しい!」」
「まったく、しょうがないわね~。せいぜい上手くやんなさいよ」
「あら、にこ。いたの?」
「いたわよ!てゆーか、アンタ達が誘ってきたんじゃない!」
「ほら、にこ。富士山よ」
「わぁ~、本当だ♪って誤魔化し方雑すぎない!?ったく、学校のアンタと本当にテンションが違うわね」
学校
『絢瀬先輩!おはようございます!』
『おはよう。ほら、前見ないと転ぶわよ?』
『あ、絢瀬さん。ここの問題教えてくれない?』
『いいわよ。あ、この問題はね……』
『生徒会長、こんにちは!』
『こんにちは』
『わぁ、相変わらず美人でクールだね!』
『ふふっ。ありがとう』
プライベート・八幡関連
『観念するチカ。目を閉じるチカ』
『痛い!痛いわ!タンスの角に小指ぶつけたの!』
『問おう!貴方が私のマスターか!……決まったわね』
「「「…………」」」
「何よ?」
そして修学旅行はさらに騒がしくなるのです。
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