最終回が少しずつ見えてきました。
それでは今回もよろしくお願いします。
「…………」
「…………」
絵里さんの方をチラ見する。
すると、こちらを見ていたらしい絵里さんは…べっと小さく舌を出し、そっぽを向いた。かと思えば、チラチラと横目でこちらを窺ってくる。頬はほんのりと紅いままだ。
「ねえ、あの2人どうしたの?」
「見てるこっちが恥ずかしいにゃ~」
「ふふっ。まあ、仲良さそうやからいいんよ。そっとしておこう?」
「あはは……ですよね」
「むぅ~、もう付き合っちゃえばいいのに」
「ほ、穂乃果!いきなり何を言い出すのですか!」
「はあ……あとちょっとだと思うんだけどなあ」
色々と言われているが、あまり気にしないでおこう。それよか今は絵里さんだ。
別に険悪な空気はない。
ただ、お互い気恥ずかしいのだ。
今までの関係性が変わろうとしているその事実に、今さらながら戸惑ってしまっている二人がそこにいた。
「絵里さん」
彼女だけにしか聞こえないように小さく呼びかける。あまり引き延ばしたら、言葉がどこかに逃げてしまいそうな気がした。
「な、何?」
「その……俺、今度修学旅行で京都に行くんですよ」
「うん……」
「帰ったら……お土産渡しに行きます」
「……楽しみにしてるわね」
「その……それと……言いたい事があります」
「……ついでなの?」
不満そうに頬を膨らます。
「いや、そういう訳じゃなくて!」
「ふふっ、冗談よ。ちゃんと聞かせてね。……あなたの本当の気持ち」
どこか満足そうに微笑んだ絵里さんはほんの一瞬だけ、手をきゅっと握り、メンバーの輪の中へと戻った。
握られた手には、微かな温もりとひんやりした感触の二つが、何の矛盾もなく残っていて、心を何度も揺さぶっていた。もう一度、その手に触れたい衝動に駆られながら、ポケットに手を突っ込み、その気持ちを宥めた。
「…………」
「!」
そんな俺の様子を絵里さんがこっそり見ている事に気づき、つい焦って、あらぬ方向を向き、平静を装う。
や、やべえ。今さらになって、絵里さんを意識しすぎている。つーか、さっきまでの俺はどこへ行った?
「うんうん。青春やね、少年」
いつの間にか近くにいた東條さんがうんうんと頷いていた。
「うおっ、びっくりしたぁ……い、いきなり何ですか?」
「いや、比企谷君がエリチみたいな顔しとったから、ついからかいたくなっただけやよ」
「全然似てないっすけどね」
「似とるよ。もう、お互いにメロメロやね」
「メロメロって……」
東條さんはそっと俺の腕をとる。豊満すぎる胸が押しつけられ、体がびくっと反応した。な、何だよ、この感触……。
東條さんは悪戯っぽい笑みで絵里さんの方を指差す。
「それにほら、あんないい顔しとるやろ?」
「え?」
絵里さんはこちらを涙目で睨みつけていた。
「ふんっ!」
また絵里さんの怒りを買ってしまったようだ……東條希~~~~~!!!
読んでくれた方々、ありがとうございます!