感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!
それでは今回もよろしくお願いします。
ハロウィンライブは想像を超える熱狂ぶりだった。μ'sは贔屓目なしに見ても、トップクラスの盛り上がりを見せたように思う。俺みたいなのでも、つい手拍子をしてしまった。
「お兄ちゃん、まだ顔真っ赤だね」
「ほ、ほっとけ」
まだ先程の絵里さんの言葉が頭の中で反響したままだ。どうしてなのかはわからない。いや、わかってはいるんだ。ただ、俺が目を逸らしてきただけだ。
「お兄ちゃん」
小町がそっと手を握ってくる。
「お兄ちゃんはね、いつもだらしなくて、目つきと性格が悪くて、捻くれてて……」
「いきなり何だよ……」
お兄ちゃん、傷つくんだけど。
「でも、たまにすっごく優しい世界一のお兄ちゃんだよ」
「…………」
「だからさ。自信持って」
「……ありがとな」
「何々?もう一回言って?」
「言わねーよ」
小町から目をそらし、辺りを見渡すと、祭りの盛り上がりは最高潮に達していた。うわぁ、あの4人組のコスプレのクオリティ高ぇ。まるで異世界から来たみたいだ。
「カ、カズマ!見ろ!まるでお前みたいにいやらしい視線をした、むくつけき男達が変な機械を向けてくるぞ!こ、この辱め……たまらん!!」
「バカヤロー!少しはこの状況に疑問を持て!何さっそく発情してんだ!このド変態!」
「カズマ、カズマ!向こうに見えるやたら高い塔は何ですか!?魔王の城ですか!?爆裂魔法で木っ端微塵にしていいですか!?」
「おい、止めろ!この世界に魔王なんていないから!つーか、この世界で爆裂魔法は使用禁止な」
「カズマー。ここ秋葉原でしょ?すた丼食べに行きましょうよ!」
「んな事言ってる場合か!金持ってねえだろ!くっ……悪そうな金持ち見つけてスティールするしか……」
「カ、カズマさん……いきなり泥棒を働くのはちょっと……」
何だアレ……コントか?
控え室の近くで待っていると、絵里さんが駆け寄ってきた。
「……お疲れ様です」
「八幡、見ててくれてありがとう。どうだった?」
「あー、やっぱり……すごいっすね」
「そ、そう?」
「普段の絵里さんに見せてやりたいですね」
「あれー?褒められてるのか、馬鹿にされてるのか、分からなくなってきたわね」
そう言いながら、じりじりとにじり寄ってくる。
「え?ち、ちょっと待ってください。さすがにここは……」
「誰も来ないチカ。観念するチカ」
絵里さんは狩りをする獣のように、鋭い動きで間合いを詰め、唇を重ねてきた。
甘い香りと感触が混ざり合い、周りの音がシャットダウンされる。
回を重ねる毎に、心の震えは大きくなり、抗いがたい欲求が、その爪を研ぎ澄ましていた。
「…………ん」
「…………」
そして、いつもなら離れていくその瞬間……
「は、八幡?」
思いがけない力で絵里さんの手を強く握っていた。
「絵里さん……その……」
「うん……」
絵里さんは柔らかく微笑んで、俺の言葉を待ってくれていた。その青い瞳を見つめ、さっきの小町の言葉を思い出し、なけなしの勇気を振り絞る。
自分でも何を言えばいいか分からないまま口を開きかけたその時……
「きゃっ!」
「うおっ!」
誰かがぶつかってきた。
突然すぎて、対応できなかった。絵里さんが誰も来ないように細工をしたみたいなので、安心しきっていた。
「ごめ~ん。大丈夫?」
「…………」
うっすら目を開くと、そこにはA-RISEの優木あんじゅがいた。
さらに、俺の手の平には、優木あんじゅの豊満な胸が乗っかっていた。後頭部の痛みよりもそちらの柔らかさに気を取られていた。
それは2、3秒で離れていった。べ、別に名残惜しいだなんて思ってないんだからね!
「ごめんね?でも君もいい思いしたからおあいこね」
そう言いながら、デコピンをしてくる。
「え、あ、はい……す、すいません」
「それじゃ、バイバイ」
優木あんじゅはひらひらと手を振りながら、足早に去って行った。その優雅な立ち振る舞いに、こちらも自然と手を振り替えしてしまう。まじか。俺の身にあんなギャルゲーみたいなラッキースケベが……。
「ふ~ん、嬉しそうじゃない」
その声にはっとして向き直る。やべえ、つい……。
目の前にはプルプル震える絵里さんがいた。
「いえ、今のは事故で……」
「チカーーーーーーーーーー!!!!!」
絵里さんから怒りのエクスプロージョンを喰らう羽目になった。
読んでくれた方々、ありがとうございます!