捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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BEAUTIFUL DREAMER ♯4

 

 店内はそれほど混み合っておらず、すぐに座る事ができた。しかし、軽く食事をして終わりかと思ったら、そうではなく、エレン先生がデザートまで注文し始め、奢りという言葉に釣られ、俺も頼んでしまった。

 ……この選択が後の修羅場を生む事になるとは知らずに……

「ヒキガヤ君のケーキ、一口チョウダイ」

「……どうぞ」

 エレン先生に向けてケーキを皿ごと差し出すと、フォークで少しだけ削り取っていった。そのまま美味しそうに頬張る姿を眺め、それに倣い、自分もケーキを頬張る。……か、間接キスとか意識してないんだからね!

「ドウカシタ?顔赤いワヨ」

「な、何でもないれす」

「フフ。その顔、キュートね」

「……は、はあ」

 噛んだりしながら、しどろもどろになる俺に、エレン先生は優しく微笑み、自分のチョコレートパフェをスプーンで掬う。

 そして、それをこちらに差し出してきた。

「はい、ア~ン」

「え、あ、いや、さすがにそれは……」

「こういうのは日本語でゴホウビって言うんでショウ?」

 その笑顔からはあまりからかいの色は見られず、純粋に俺を労ってくれているようだ。これを断るのは流石に失礼な気がする。いや、失礼だ!失礼に違いない!べ、別に変な意味とかねーし?ハチマン、ウソ、ツカナイ。

 意を決した俺が口を開いたその時……

「は、八……幡……君……」

「は、はい?」

 そこには驚愕の表情を浮かべた絵里さんがいた。

「あれ~比企谷君やん?」

 その後ろには東條さんを始めとしたμ'sメンバーがいる。何という偶然。つーか、東條さんのニヤニヤ顔が怖い。だっていいネタ見つけたって顔してるんだもん。

「あ、あんた……!」

 矢澤さんの表情は険しい。……まあ、この光景を見られたらこうなるのも無理はないか。

「絵里ちゃん、知り合いなの?」

 サイドポニーの女子……高坂さんだったか……が、絵里さんに尋ねた。

 すると絵里さんは踵を返し、すたすたと店を出た。

「ありがとうございましたー」

 ウエイトレスさんの挨拶が聞こえ、数秒後にまた入ってきた。

「いらっしゃいませー」

 再び俺の前に立ち、その顔を驚愕に歪める。

「は、八……幡……君……」

 また踵を返し、店を出た。

「……ありがとうございましたー」

 ウエイトレスさんが不審そうな目で見送り、μ'sメンバーは顔を見合わせ、エレン先生は小首を傾げる。

 数秒後、またまた入ってきた。

「い、いらっしゃいませー……」

 ウエイトレスさんはかなり対応に困っている。

 そして、俺の前に立ち……

「は、八……幡……君……」

 そして、また……

「エ、エリチ!落ち着こ!な!?」

「ど、どうしちゃったの!?絵里ちゃん!」

「ダ、ダレカタスケテェ……」

「こ、壊れたにゃ……」

 俺はこの状態をどう説明したものかと考えながら、内心の焦りのようなものを撫でつけるように抑えた。

  





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