感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!
それでは今回もよろしくお願いします。
エレン先生が海外から赴任してきて、早くも三日が経った。彼女のフレンドリーな人柄と、拙い日本語の絶妙な可愛らしさは、すぐに学校中の人気を獲得した。
だが一つ問題があった。
「ヒキガヤ君、手伝ってもらえマスカ?」
「……はい」
先日の自己紹介の際、俺の悪印象が植えつけられたと思ったが、何が面白かったのか、ちょくちょく話しかけてくるようになった。
「っべーわ」
「ヒ、ヒキタニ君……トムの事はいいの?」
戸部と海老名さんの言葉は無視して、エレン先生と共に教室から出る。誰だよトムって。この前の男装版絵里さんの事か。うん、それしかないな。
まあ、こんな感じで冷たい視線を浴びながらの雑用をさせられたりもする。
「むぅ……」
「チッ……」
視界の端で、頬を膨らます由比ヶ浜と舌打ちをする相模が見えた気がしたが、恐らく二人共、英語が苦手なんだろう。
「ヒキガヤ君は人気があるのネ」
「いえ、そんな事はないです」
実際、ただ悪目立ちしているだけである。友達ができたわけではない。その証拠に、昼休みになっても『比企谷!一緒にメシ食おうぜ!』とか言って、机をくっつけてくる奴もいないし、この前校舎内の曲がり角で肩がぶつかった一年の女子から『すいません。先輩が男女問わず口説くのが上手いからといって、肩がぶつかったくらいで惚れると思わないでください。ごめんなさい』とか言われてしまった。
「ふふっ。照れてるのネ」
「い、いや、そんなんじゃ……」
「あ、そういえば平塚先生から聞いタのだケド」
少し顔を寄せられ、緊張で体が固くなる。ふわりと漂う爽やかな香りの中には、確かな大人の色香があり、教師ではなく女性と意識せずには「チカ」はい、ただの教師と生徒の関係です。
「どうかシタ?」
「あ、いえ、ぼーっとしてたんで……」
「ダイジョウブ?」
「あ、はい。それで何の話でしたっけ?」
「ヒキガヤ君はアニメやアイドルに詳シイと平塚先生から聞いたのだケド」
「はあ」
何だ。何を吹き込んだんだ。
「それで、今度秋葉原を案内シテくれるカシラ」
「あーすいません。その日は外せない用事が……」
「まだいつかも言ってないワヨ」
ジト目で見られる。
「いえ、流石に生徒と教師が……」
「大丈夫よ。平塚先生とはラーメンを食べに行ったんデショウ?」
「まあ、そうですけど……」
言い淀む俺に、エレン先生はウインクをした。それはアイドルのウインクとはまた違う何か秘密めかした大人の魅力が「チカ」すいません。くっ!絵里さんや東條さん、平塚先生のせいだろうか、年上には逆らえない。
「よし、キマリネ!それとアリガトウ!」
俺が運んだプリントを受け取り、エレン先生はさっきよりも明るさを増して職員室へと入っていった。
しかし、秋葉原か…………秋葉原?
『チカ』
思わず叫び声をあげそうになる。
やべえ。すっかり忘れてた……。
「むむっ!」
「どうしたん、エリチ?」
「今、嫌な気配が……ちょっと総武高校に行ってくるわね」
「エリチ」
「はい」
読んでくれた方々、ありがとうございます!