それでは今回もよろしくお願いします。
相模が隠れていそうな場所はすぐに見当がついた。とは言ってもこの場所じゃなく、女子トイレの個室とかだったらどうしようもないわけだが。
そして、その場所に辿り着いた俺は、錆びついてギイギイ鳴るドアを開く。
「……っ」
やはり相模はそこにいた。
驚いた顔はすぐに落胆の色を見せる。どうやら来て欲しかったのは俺ではないらしい。まあ、わかる。だが、今はそんな事はどうでもいい。
「おい、そろそろ戻れ」
「嫌よ」
あぁ、まあこうなるわな。
数回同じようなやり取りを交わして、お互いに苛立ちだけが積み重なっていく。……手詰まりか。さて、どうしたものだろうか。
すると、相模は思ってもない事を口にした。
「女が皆、アンタの事好きだなんて思わないでよね」
「……は?」
「金髪の彼女がいるってのに、雪ノ下さんや結衣ちゃんに手を出して、次は平塚先生や事務員にまで……」
事務員さんは五十代のおばさんだ……!!
「次はウチ!?すけこましのすけ谷とはよく言ったものね!」
「お、おい……」
「ふん!アンタなんてお断りよ!」
「あ、おい!」
そう。この時の俺は判断ミスをした。
本来ならこのまま相模を行かせてもよかったのだ。だが、その時は柄にも無く誤解を解こうとしてしまった。
相模に話かけようとして駆け寄ると、慌てていたせいか、足がもつれてしまう。
そして、相模を巻き込んで転倒した。
「っと!」
「きゃっ!」
痛みはあまりないが、相模の顔が近くにある事に焦ってしまう。
「な、何よ……」
危ねえ。叫ばれるかと思ったが、どうやらその様子はない。じゃあ、早くどこう……
「相模さ……ん」
「さ、さがみん!」
「あ、こ、こいつ!あの、有名な……」
相模を探しに来たらしい葉山と相模の友人二人がこちらを驚いた顔で見ている。……何故だろうか。冷たく乾いた風が寂しげに吹き抜けていった気がした。
「ひ、比企谷……何をやってるんだ」
「……俺もよくわからん」
ひとまず相模からどいて制服を整える。
それとほぼ同時に相模は立ち上がり、友人の元へと駆け寄っていった。
「ウチ……ウチ……!」
「さがみん、大丈夫?」
「ほら、あんなケダモノほっといて行こ?」
あっという間に相模達はいなくなり、葉山も俺に背を向けた。
「どうして……そんなやり方しかできないんだ」
「いや、いつもこんな事やってるわけじゃ……てか、何もやってないんだけど」
葉山は俺の言葉が聞こえなかったのか、そのまま立ち去っていった。
「…………」
「八幡君、お疲れ様」
いつの間にか背後に立っていた絵里さんに肩を叩かれ、思う事は一つ。
……なんか納得いかない。
読んでくれた方々、ありがとうございます!か