彼と出会って約半年。
そこには、これまでの人生にはなかった全く新しい何かが詰まっていて、時間の流れも周りの風景も何もかもが違った流れ方をしているように思えた。
μ’sと同じくらい大事な宝物のような思い出を振り返ってみる。
「どうしたの?お姉ちゃん。さっきから……」
「亜里沙、静かに」
初めて目を合わせた瞬間、二人は恋に落ちた。
「いや、お姉ちゃんが一方的に片思い始めただけだよね」
「いえ……あ、うん……も、もしかしたらよ!」
「そうだね。もしかしたら、だね!さすがはお姉ちゃん!」
「褒められた気がしないわね……まあ、いいわ」
キスまでの距離は決して長くはなかった。
「出会ってから1時間も経ってないもんね」
「キューティーパンサーを発揮しちゃったわね」
「お姉ちゃん、ドヤ顔になっちゃってるよ」
そして、2回目は彼の学校の校門前でのキス。
「皆忘れてるかもしれないけど、プリキュアの格好してたよね」
「に、似合ってたからいいでしょ!」
「希先輩からプリキュア姿でのキスシーンが送られてきたよ」
「亜里沙、それ私にも送って。今すぐ。お願いします」
「お、お姉ちゃん、顔怖いよ……」
「ふふっ。この写真を見せた時の八幡君の反応が楽しみだわ」
「…………」
その後、二人はもう一度キスを交わし、ある約束を交わした。
その約束もあって、私はあと5回のキスの間に彼に好きになってもらわなければならない。果たして、彼は今私の事をどう思っているのだろうか。
「周りはもう付き合えばいいのにって思ってるけどね」
「亜里沙、何か言った?」
「何も言ってないよ」
観覧車でのキスは体力を使ったなぁ。観覧車一周って案外時間がかかるわね。
「え?な、何、お姉ちゃん……そんな事してたの?」
「若気の至り、かしらね」
まあ、そんな感じで既に5回を終えている。
果たして、私は正式に彼の恋人を名乗れるのだろうか。
「由比ヶ浜さんにはフィアンセとか言って、戸塚さんには妻とか言ってたけどね」
「ぐっ……さ、さて、そろそろ寝なくちゃ!」
「うん、おやすみ。それと……猛アタックもほどほどにね」
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「何……だと……」
眠りから覚めると、あり得ない事が起こっていた。
文化祭実行委員 比企谷八幡
あれ、まだ夢の中だったろうか。ほら、周りのクラスメイトは俺の事など気にもかけずにはしゃいでいるし。ああ、いつもの事だったな。自分で言ってて哀しすぎる。
また新しい騒動の予感を仄かに感じさせながら、2学期が幕を開けた。