捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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真夏の扉 ♯3

 

 食事を無事に終え、何とか皆と合流した。まあ、見てくれはいいので(性格に癖のあるのが殆どだが)、目立ちやすい。それに俺のようなステルス機能も持っていない。

「もう、ヒッキーと絢瀬さんったら急にいなくなるから!」

「二人共、どこ行ってたん?」

「ちょっとね」

「…………」

 絵里さんはキラキラと満足げな笑顔を見せ、亜里沙の頭を撫でている。片や俺は小町に怪訝そうな目を向けられていた。真似して頭を撫でようとしたら拒否された。

「お兄ちゃん、何してたの?」

「察してくれると助かる……」

「うん、わかった」

 俺と絵里さんを見比べて何かを察したのか、小町は苦笑いを浮かべ、俺の肩に手を置いた。さすがは可愛い妹。お兄ちゃんの気苦労を労ってくれるなんて。

「お兄ちゃん、そろそろ覚悟を決めちゃいなよ!」

「…………」

 前言撤回。

 可愛い妹は割とこの状況を楽しんでいた。

「そっちは昼飯はすんだのか?」

「うん!午後からはまだまだ遊んじゃうよ!」

「比企谷君!」

 戸塚がぴょこんと横に並んでくる。

「おう、どした?」

「急にいなくなっちゃったからびっくりしたよ」

「そ、そうか。悪い……」

 俺が謝ると、戸塚は切なそうに上目遣いを向けてきた。

「ちょっと寂しかったかな……」

 うわ、何この健気な美少女ぶり。危うく恋に……

「あ、エリチ!?」

「絢瀬さん!?ダメだよ、流れるプールをバタフライで逆走しちゃ!危ないから!迷惑だから!」

 東條さんと由比ヶ浜の言葉に反応し、プールに目を向けると……うわ、マジかよ。

「比企谷君、捕まえて!」

「え、俺?」

「もちろん♪」

「くっ……」

 俺は流麗なフォームで人並みをかき分けながら泳ぐ絵里さんを捕獲に向かった。

 

「はぁ……どうしたんすか、いきなり……」

 何とか絵里さんを捕まえ、休憩所のベンチで一息つく。

 幸い大した騒ぎにはならなかった。周りの人間は、『美しい』とか『可憐だ』などと見とれて、自然と道を空けていた。むしろ、絵里さんを捕獲した俺が不審者みたいな目で見られてしまった。おい、どういう事だよ。

「だって……八幡君が戸塚君に見とれてるから」

「いや、そんな事は……」

「男の子だと思って油断していたわ。でも、八幡君だもん。油断は禁物よね」

「あの、いらん誤解を招くような事を言わんでください」

「じゃあ、戸塚君の事どう思う?」

「……可愛い」

「私には言わない癖に……」

「いや、あのですね……」

「( ̄^ ̄)」

「その……絵里さんは……いと思います」

「聞こえな~い」

「……絵里さんは可愛い……」

「……っ」

 絵里さんの顔が紅くなる。

「ポンコツですけど」

「……っ!」

 さらに紅くなるが、これは別の感情だろう。

 すると、すかさず唇を塞がれた。

「……んっ」

「……っ」

 今までで一番短い口づけは僅かな温もりを残して離れていった。

 少し物足りなさを感じたのはきっと気のせいだろう。

「ちょ……こ、こんな場所で」

「ポンコツって言ったお返しよ」

「ぐっ……」

「それと、今日で半分ね」

「……そう、ですね」

「折り返しはどんな激しいのにしようかしら……ふふっ」

 俺はキスの回数よりも、絵里さんと出会ってからの時間の経過に驚きながら、皆の元へ戻った。

 

 

 





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