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それでは今回もよろしくお願いします。
食事を無事に終え、何とか皆と合流した。まあ、見てくれはいいので(性格に癖のあるのが殆どだが)、目立ちやすい。それに俺のようなステルス機能も持っていない。
「もう、ヒッキーと絢瀬さんったら急にいなくなるから!」
「二人共、どこ行ってたん?」
「ちょっとね」
「…………」
絵里さんはキラキラと満足げな笑顔を見せ、亜里沙の頭を撫でている。片や俺は小町に怪訝そうな目を向けられていた。真似して頭を撫でようとしたら拒否された。
「お兄ちゃん、何してたの?」
「察してくれると助かる……」
「うん、わかった」
俺と絵里さんを見比べて何かを察したのか、小町は苦笑いを浮かべ、俺の肩に手を置いた。さすがは可愛い妹。お兄ちゃんの気苦労を労ってくれるなんて。
「お兄ちゃん、そろそろ覚悟を決めちゃいなよ!」
「…………」
前言撤回。
可愛い妹は割とこの状況を楽しんでいた。
「そっちは昼飯はすんだのか?」
「うん!午後からはまだまだ遊んじゃうよ!」
「比企谷君!」
戸塚がぴょこんと横に並んでくる。
「おう、どした?」
「急にいなくなっちゃったからびっくりしたよ」
「そ、そうか。悪い……」
俺が謝ると、戸塚は切なそうに上目遣いを向けてきた。
「ちょっと寂しかったかな……」
うわ、何この健気な美少女ぶり。危うく恋に……
「あ、エリチ!?」
「絢瀬さん!?ダメだよ、流れるプールをバタフライで逆走しちゃ!危ないから!迷惑だから!」
東條さんと由比ヶ浜の言葉に反応し、プールに目を向けると……うわ、マジかよ。
「比企谷君、捕まえて!」
「え、俺?」
「もちろん♪」
「くっ……」
俺は流麗なフォームで人並みをかき分けながら泳ぐ絵里さんを捕獲に向かった。
「はぁ……どうしたんすか、いきなり……」
何とか絵里さんを捕まえ、休憩所のベンチで一息つく。
幸い大した騒ぎにはならなかった。周りの人間は、『美しい』とか『可憐だ』などと見とれて、自然と道を空けていた。むしろ、絵里さんを捕獲した俺が不審者みたいな目で見られてしまった。おい、どういう事だよ。
「だって……八幡君が戸塚君に見とれてるから」
「いや、そんな事は……」
「男の子だと思って油断していたわ。でも、八幡君だもん。油断は禁物よね」
「あの、いらん誤解を招くような事を言わんでください」
「じゃあ、戸塚君の事どう思う?」
「……可愛い」
「私には言わない癖に……」
「いや、あのですね……」
「( ̄^ ̄)」
「その……絵里さんは……いと思います」
「聞こえな~い」
「……絵里さんは可愛い……」
「……っ」
絵里さんの顔が紅くなる。
「ポンコツですけど」
「……っ!」
さらに紅くなるが、これは別の感情だろう。
すると、すかさず唇を塞がれた。
「……んっ」
「……っ」
今までで一番短い口づけは僅かな温もりを残して離れていった。
少し物足りなさを感じたのはきっと気のせいだろう。
「ちょ……こ、こんな場所で」
「ポンコツって言ったお返しよ」
「ぐっ……」
「それと、今日で半分ね」
「……そう、ですね」
「折り返しはどんな激しいのにしようかしら……ふふっ」
俺はキスの回数よりも、絵里さんと出会ってからの時間の経過に驚きながら、皆の元へ戻った。
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