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それでは今回もよろしくお願いします。
「は、八幡君!楽しかったわね!」
「…………」
死にたい。最悪すぎる。
しかし、絵里さんは特に責めるでもなく、ひたすらピッタリと寄り添ってくる。そして、その状態から離れる気力もなく、皆の後ろをとぼとぼ夏バテした犬みたいに歩いていた。
当事者以外誰も知らないのが幸いである。もし知られていたら、その場で舌を噛み切るところだった。
「もう、元気出して!気にしてないから!」
「いや、そうは言われても……」
絵里さんのそんな優しい慰めも、今は少し辛い……いや、何を嬉しそうな顔してるんですかね、この人は。うわぁ、絶対にこの先ずっとネタにされてしまう。顔を赤くしながらも悪戯っぽく目を細めた笑顔を向けてくる絵里さんは、ちょっとだけ背伸びして、こっそり耳打ちしてきた。
「ねえ、ちょっと二人きりにならない?」
「…………」
一応、同意を求めようとしているが、目はそうではない。その宝石のように綺麗な碧眼はこう告げている。
観念するチカ。
いや、待て。いくら目は口ほどに物を言うとはいえ、それだけで勝手に判断するのは早計に過ぎるのではなかろうか。絵里さんも鬼ではない。きちんと話し合えばわかってくれる。
「あの、絵里さん……」
「観念するチカ」
「いや、でも……」
「観念するチカ」
「だから……」
「観念するチカ」
「…………」
「チカ」
どうやら話は通じないらしい。
ならば他の奴に話しかけて、二人きりにならなければいいだけだ。
「なあ、と……」
「はあ、背中が何か痛いわ。さっきウォータースライダーで何か当たったかしら?」
「はい、すいません。ごめんなさい」
「よろしい。まあ、既に離れているんだけどね」
「は?」
前方をキョロキョロ見渡すと、確かに小町達はいなくなっていた。話している内に、歩くペースを緩めていたからだろうか。
「いつの間に……」
「さあ、いつかしらね」
「…………」
「さ、こっち来て!」
そのまま為す術なく、絵里さんに手を引かれるまま、とぼとぼと歩いた。
「はい、あ~ん」
「…………」
施設内にある飲食店にて羞恥プレイ。
ちなみに俺が食べさせている。
そこそこオシャレな店内という事もあってか、客の割合はカップルが7割以上だが、男から食べさせているのは俺達だけだ。しかし、複雑な表情で目つきの悪い男が、金髪美女にふぉーくで一口一口食べさせているというのは、些かシュールに映るらしい。さっきから、視線を感じる。まあ、単に絵里さんを見ているだけかもしれないが。
「ほら、早く!あ~ん」
「は、はい……」
俺は考える事を止め、絵里さんの口にオムライスを運び続けた。
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