それでは今回もよろしくお願いします。
雪ノ下の哀しい一面を見てしまった気がするが、気にしないでおこう。
美女達が去って、しばらくしてから俺達はウォータースライダーに乗ることにした。同年代の連中で混み合っているので、20分程待たされたが、こちらの連れが賑やかな分、そこまで長くは感じなかった。
「二人一組か……」
8の字型の浮き輪に二人で乗るという、あまりぼっちに優しくない仕様になっているが、今日の俺にはちっとも怖くない。
「よし、戸塚「八幡君、行くわよ!!!」は、はい……」
ほら、こうやって組んでくれる相手がいるんだぜ!…………ふう。
しかし、絵里さんとこれに乗るのは危険な気がする。俺が。
雪ノ下と由比ヶ浜。小町と戸塚。東條さんと亜里沙。俺と絵里さんの順番で滑る事になった。
皆が順番に滑るのを見送っていると、絵里さんがそっと手を握ってきた。その手はまだ濡れていて、いつもとは違う熱を持っていた。隣に目をやると、そこにあるのはいつもの笑顔だ。
「どう、楽しい?」
「……まあ、そこそこ。けっこう疲れますけど」
「ふふっ。楽しんでるなら良かった♪」
「……何よりタダですからね。楽しまないと損でしょう」
「え?私と一緒だから?も、もう!照れるじゃない!素直なんだから!」
「…………」
どこをどうツッコめばいいんでしょうか。
「とりあえず、頭の方か。耳の方か」
「残念ね。どっちも至って正常よ!」
「絵里さんが残念なのはわかりました。とりあえず自覚症状はないみたいですね」
「むむっ!八幡君の思考回路を読んだだけなのに。しかもツッコミきついわね」
「あ、次ですよ」
「こら、話を逸らさないの!」
「話が通じないよりマシですよ」
「ご、ごめんってばぁ~」
係員に誘導され、俺と絵里さんは浮き輪に乗っかった。
俺が後方に乗り、足の間に挟みこまれる形で、絵里さんが寄りかかってくる。普段より肌が剥き出しになっている分、この密着具合は危険だが、考えている内に滑り出してしまった。
「ふふっ。楽しいわね!」
「え、あ、はい……」
絵里さんから声がかかるが、それどころではない。
いや、別に怖いわけではない。
日常では体験できない疾走感。跳ねる水飛沫の清涼感。その感覚を共有できる一体感。どれを取っても楽しいと言えるだろう。しかし……
「あはっ♪」
そう、俺の意識の半分以上を持っていってるのは、前方ではしゃぐ絵里さんの……胸だ。
絵里さんは前にいるのだが、このウォータースライダーはそこそこの角度があるので、こちらからは絵里さんの胸を覗き込むような角度になってしまう。
水着を着ている状態だから、常時胸の谷間は開放している状態なんだが、正面から見るのと、上方から覗き込むように見るのは全く違う。しかも、僅かな震動で胸が揺れる。さっきから色々とやばいです。はい。
目のやり場に困るのではなく、刺激が強すぎて、目が離せない。おかしい。この前、事故とはいえ、裸を見たはずなのに……いつもと違う何かがあるのだろうか。こう、背徳感みたいな。
「……!」
やばいやばいやばい。
いくら俺がぼっちだろうが、自意識強かろうが、行動が理性的だろうが、思春期男子には変わりない。
興奮すれば、体に変化は現れるわけで……
「!」
そして密着している絵里さんはそこに気がつくわけで……
「も、もう、八幡君ったら♪」
絵里さんは耳まで真っ赤にしながら、笑顔を向けてきた。
だあぁぁぁ~~~~~~~~~!!!!!!!!
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