それでは今回もよろしくお願いします。
絢瀬さんは俺の頭を挟み込むように持ち、そのまま啄むように口づけてくる。その熱い感触だけが鮮明で、近い距離にいるはずの小町達の話し声がやけに遠く聞こえた。
「……ん……んく」
「…………っ」
自然と手が絢瀬さんの髪へと伸びる。金髪の髪は滑らかに指と伝い、いつまでもそうしていたいような感覚に包まれる。
頭がぼんやりしてきて、もうこのままどうなってもいいような気分になってきた。
そのまま欲求に任せ、絢瀬さんの胸へとゆっくり手を伸ばす。
「二人共、どうしたん?」
「「!」」
からかうような東條さんの声に反応し、ばっと離れると、もう既に近くでニヤニヤしていた。……新しいオモチャを見つけた子供の様な顔をしていて怖い。あと怖い。
「え~と、の、飲み物はどこだったかな」
「いや、冷蔵庫から取ればええやん」
東條さんは冷蔵庫から飲み物を出す。そりゃ誤魔化すのは無理だ。ここからでは毛利小五郎すら騙せない。
「どうかしたの?」
「エリチが飲み物零しただけよ」
「もうお姉ちゃんってば、またポンコツ披露して……」
「あ、亜里沙……」
絢瀬さんは両手をついて落ち込んでいた。
「それにしても、二人して……元気やね」
「いや、顔を赤らめながら言わないでくださいよ……」
「…………」
いつもなら真っ先に反応するはずの絢瀬さんが黙っているので振り向くと、頭を抑えて俯いている。
「……どうかしましたか?」
「…………」
何かボソボソ呟いているが、全く聞き取れない。耳を少しだけ近づけようとすると、いきなり顔を上げた。
「髪……撫でてくれた」
「え?」
「もう一回」
そのまま頭をこちらに向けてくる。
「は、はい?」
「もう一回」
「…………」
俺は絢瀬さんに言われるまま、頭を撫でる。さっきみたいに髪の感触を確かめながらじっくりと頭の曲線をなぞった。そこにはさっきと同じ感触があるが、少し温度を増しているように思えた。
「……もういいですか」
「まだ」
「…………」
「……ん」
目を細めるその表情が猫っぽくてつい頬が緩んでしまう。さすがにカマクラと一緒にするのは失礼か。
「じゃあ、そろそろ終わります」
「そういえばさっき胸を触ろうとしてたでしょ」
「…………」
……やばい。気づかれている。
でもね、その場の空気ってものがあると思うの!だって男の子なんだもん!
「触ろうとしてたでしょ♪」
「何で嬉しそうなん……。ほら二人共、もうええやろ」
「「はい」」
思う事はただ一つ。
とんでもない弱みを握られた気分だ。
「まさか、こんな衝動的に3回目を使うとは思わなかったわ。次はちゃんとセッティングしないと」
その言葉を聞かなかった事にして、俺は飲み物をリビングへと運んだ。
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