「えへへ~」
「「…………」」
最近クラスメイトの様子がおかしい。
先日奉仕部に新しい部員が入ってきた。
そいつは俺のクラスメイトで、スクールカーストのトップに所属している由比ヶ浜結衣だ。
自己紹介を交わしたその日に、由比ヶ浜が奉仕部の部室に入ってきて……
『由比ヶ浜結衣です!奉仕部に入部させてください!』
『……どうすんだ?』
『え、ええ、平塚先生にも確認してみるけど、大丈夫だと思うわ』
その日の内に部員として承認されたのだが……
「なあ、やっぱりこの机小さくないか?」
「ええ、そうね。少し息苦しいわ」
これまで俺と雪ノ下は机を使わずに適当な椅子に腰掛けていた。しかし、今は中途半端な長さの机を3人で使っている。肩と肩が触れそうな距離はさすがに居心地が……悪くはないし、いい香りがするんだけど……。
「ほら、やっぱり仲良くなりたいじゃん!……ね?」
「「…………」」
そんな子犬のような目で見つめられると、無碍に出来ないのですが……最近の俺は女子に押しきられすぎだろ。
「ゆきのん、趣味とか教えてよ」
「……わかったわ」
どうやら先に女子二人が親交を深めるようだ。なら俺は邪魔にならないように置物として……!!
「ふふっ……♪」
な、な、何をしてらっしゃるのでしょうか、由比ヶ浜さん。
由比ヶ浜は雪ノ下と話をしながら、右手を俺の太股の上に置いている。さり気なさすぎて雪ノ下は気づいていない。な、何やってんだこいつ。危うく変な声出すところだったぞ。
そのまま右手をさすさすと滑らせている。や、やばい……ぞくぞくして変な気持ちになってきた。
「……♪」
由比ヶ浜の目が一瞬だけこちらを向く。その目は悪戯っぽく細められ、この状況を楽しんでいるように見える。ま、まさか、本物のビッチだったとか?
その混乱を遮断するかのように、ポケットの携帯が震えた。
何だろう……今度は寒気が……。
恐る恐るメールを確認する。
『チカ』
…………。
くっ!相変わらず俺の想像の斜め上を行きやがる。
チカって……Aqours結成は数年後……いや、止めておこう。
「どうかしたの?」
「……いや、何でもない」
どうかしてんのはお前と絢瀬さんだ。そろそろ止めないと勘違いしちゃいそうなんですけど。
再び携帯が震える。
今度はちゃんとしたメッセージだろう。
『もしかして浮気中?浮気は許さないチカ!』
「ふぅ……送ってしまったわ。私とした事が……」
まさか、自分がこんなに嫉妬深いなんて……。
「絵里ちゃん!どうしたの?」
「な、何でもないわ!さ、休憩上がったら、もう10セット行きましょう!」
「多いよ~!」
「そんなんじゃ観客は魅了できないわよ!さあ、早くやる!」
でもやっぱり嫉妬しちゃう!だって……女の子なんだもん!
……今晩、電話で謝ろうかしらね。