何事もなく……はないが、ゴールデンウィークを終え、再び学校生活が始まる一昨日から昨日までが騒がしかったせいか、やけに穏やかに晴れた朝だ。周りの生徒達がゴールデンウィークに起こった出来事などを話し合ったりして賑やかだが、それすらも小鳥の囀りみたいに聞こえる。周りに誰もいなければ、両腕を広げて深呼吸をしたい気分だ。
来月…………か。
絢瀬姉妹からお泊まりの誘いを受けたが、どうしたものか。いや、行くしかないだろう。どうせ絢瀬さんの事だから、行かないなんて言ったら、またこっちに泊まりにくるだけだろうし。
「ヒッキー、おはよう!」
またツイスターゲームをやるのだろうか。あれ、結構しんどいんだけど。まだ体が痛いし。
「ねえ、ヒッキー!」
また……キス……するのだろうか。
「ヒッキーってば!」
いきなり背中をバシッと叩かれる。衝撃で前につんのめりそうになった。
「……てて。はあ?」
「無視しないでよ!朝の挨拶は大事だよ!」
そう言ってぷんすか怒る女子は腰に手を当て、こちらを軽く睨んでいる。…………誰だっけ?
茶髪、お団子……胸……やっぱり見覚えはない。胸を見る限り、絢瀬さんの変装とかではないようだ。こんな心配しなきゃいけなくなるとか、あの人どんだけなんだよ……。
「ジ、ジロジロ見るなし!この変態!」
「うるせえよ、このビッチ」
「な…………ビッチじゃないし!マジありえない!」
由比ヶ浜の声が割と大きいせいか、周りの視線がこちらに集中する。ヒソヒソと話す声も聞こえてきた。
「また、あいつかよ……」
「本当に巨乳好きね……乳谷君と呼んで上げようかしら」
「ちくしょう……ぼっちの癖に」
「まただわ!また修羅場よ!」
俺は人の視線に晒される事については耐性が少しはあるが、由比ヶ浜はそうでもないらしく、頬を赤く染める。
「と、とりあえず来て!」
いきなり手を掴まれ、すたこらさっさとその場を後にした。
*******
「むむっ!」
今、ポニーテールが反応したわ。
まあ、それは冗談として……
今、彼の方から良からぬ気配がしたわ……。
それも中々の戦力ね。
「どうしたんですか?絵里」
「いえ、胸なら私の方が大きいわ」
「何の話ですか!?」
「絵里ちゃん、ダメだよ!海未ちゃん、気にしてるんだから」
「ほ、穂乃果まで……あなただって大して変わらないでしょう!?」
「あんた達、まだまだ子供ねえ。女の魅力はそこだけじゃないのよ」
「「ほっ……」」
「なぁによ!!そのリアクション」
「ねえ、私達本当に大丈夫なの?」
「絵里ちゃん……あんなキャラなんだ……」
「第一印象と違いすぎるにゃ~」
「ふふふ……次はどんなサプライズをしかけようかしら」
「エリチ、はよせんと遅刻するよ」
「はい」