それでは今回もよろしくお願いします。
「…………んん?」
「すぅ……すぅ……」
苦しい。やけに呼吸がしづらい。
あと視界が暗い。
な、何だこれ?
顔が何か柔らかいものに圧迫されているみたいだ。
もしかしてまだ夢の中だろうか。夢でもし逢えたら素敵な事なのだろうか。誰とだよ。
俺は苦しみから逃れようと手を伸ばそうとすると、むにゅっと何か柔らかいものを掴んだ。
「……んっ」
妙に艶のある声が漏れ聞こえる。
……どこか聞き覚えのあるような、ていうかこの声は間違いなく……。
俺は体を捩らせ、頭をがっしりとホールドしていた彼女から逃れ、起き上がる。さっきまで視界を塞がれていたので気がつかなかったが、もう既に陽は昇っている。
「すぅ……すぅ……」
「…………」
やっぱりか……いつの間に侵入してきたんだよ。
すやすや安らいだ寝息をたてる絢瀬さんの顔を眺める。その寝顔は思ったより幼くて、自然と口元が緩んでしまう。
「……さま……」
小さい寝言が漏れてきたので、少しだけ顔を近づけて耳をそばだてる。
「……おばあさま」
その言葉には甘えるような響きがかなり含まれていた。不覚にも今ならどんな願い事でも叶えてやりたいとか思ってしまった。……反則すぎんだろ。
そっと手を伸ばし、金色の髪を撫でる。さらりとした優しい感触が気持ちいい。同時に甘い香りがふわふわ漂ってきて、気持ちが和んでくる。
待てよ……そういや俺、さっき絢瀬さんの…………。
急いで手を離し、さっきの事を思い出すように見つめる。えっと、こんな感じだったっけ?い、いや、やらしい事考えてるんじゃないよ?現場検証だよ?ハチマン、ウソ、ツカナイ。
「ん……ん~」
絢瀬さんがどうやらお目覚めのようだ。
目をうっすらと開け、ゆっくり寝返りをうつ。
どうでもいいすが、スタイルいい割に、無防備な恰好しすぎじゃないですかね。
「あら、八幡君、おはよ」
「何でここで寝てるんですか?」
「間違えちゃった♪」
寝ぼけ眼のまま、ペロリと舌を出し、悪びれもせずに言う。タンクトップの左肩の方がズレ落ちてるのはわざとでしょうか?
「いや、そんなんじゃ……っ」
いきなり唇を強く塞がれる。湿った温もりがうねるように絡んでくる。
「……ん……んくっ……ぁっ……んんっ」
「……っ……っ……っ……っ」
絢瀬さんの舌が口の中で暴れ始め、こちらには為す術もなくなり、完全にこの場を支配された。
舌と舌が絡みあい、唾液が注がれてくる。
そのまま仰向けに倒れた後も、絢瀬さんはしばらく覆い被さっていた。
数秒後、ようやく離れる。
「はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……」
何だか運動したような気分になりながら、二人してぐったりする。
やがて、絢瀬さんが口を開いた。
「私ね、昨日小町さんから色々と聞いたのよ」
「……何をですか?」
「あなたの事よ」
「…………」
「あなたが小町さんの為にしてあげた色んな事……ご両親に対しての捻くれた優しさ……」
「捻くれたって……」
「私ね……」
絢瀬さんが手をきゅっと握ってくる。
「家族想いなあなたが好き」
その言葉も表情も何もかも、朝聞くには甘すぎて、胸の高鳴りを抑えるのに必死だった。
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