捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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とまどい ♯4

「今日は楽しかったわ」

「そ、そうですか」

「どうかした?」

「いや、どうかしたも何も……」

 俺は一呼吸おいて言った。

「駅の構内で抱きつくのは止めてくれませんかね……」

 通りすがりの女子学生がこちらを見てキャーキャー言ってたり、野郎集団が舌打ちしたりと、ここ最近何度も見たような光景を見ながら、絢瀬さんを押し戻そうとする。しかし、今度は絢瀬さんも引かなかった。

「ダ~メ!次いつ会えるかわからないから充電させて」

「…………!」

 絢瀬さんが抱きつく力がさらに強くなる。

 その豊満な胸が強く押しつけすぎて潰れていようとお構いなしだ。

「あ、胸が当たってるのはご褒美ね」

「ぐっ……」

 わざとかよ。じゃあ、ありがたくそのままにしておきます!

「よし、充電完了!」

 仕方ないからその柔らかさを堪能しようとした瞬間、絢瀬さんはぱっと離れた。べ、別にあと少しだけ、なんて思ってないんだからね!

「じゃあ、次は………ゴールデンウィークにデートしましょう!」

「……もうすぐじゃないですか」

 充電とはなんだったのか。

「八幡君、どーせヒマでしょ?」

「さらっと失礼ですね……いや俺だって家族旅行とか」

「八幡君は絶対に家族旅行に行かないって小町さんが言ってたわ。コナン君が犯人を逃がすくらいあり得ないって」

 もっとマシな例えはないのかよ。お兄ちゃん恥ずかしいんだけど。

「スクールアイドルの活動はいいんですか?」

「もちろんやるわよ。でも二日間くらい休みを入れるから。……ふふっ、楽しみにしてて♪」

 それだけ告げると、スキップしながら改札をくぐり抜けていった。俺が同じ事をすれば頭のイタい馬鹿に思われるだろうが、絢瀬さんは好意的な視線を集めていた。

 おい駅員。ニヤニヤしすぎだっての。一番右の改札トラブってるぞ。

 

「ヒッキー、本当に付き合ってるんだ……」

 

 絵里さんの指摘通りに、ゴールデンウィークは何事もなく時間が経ち、今日を含めてあと二日しか残っていない。確か今日か明日にデートをするとか言っていたが、連絡が来ないという事は、二日間ゆっくり休んでね!という事だろう。実に素晴らしい。

「……朝飯でも食うか」

 あと二日しかないないのなら、その短い時間を有効に使うのが一番だ。それを朝食の時間に考えよう。

「あ、八幡君おはよう!朝御飯できてるわよ!」

「お兄ちゃん、おはよ~」

「お兄さん、お邪魔してます」

「ああ、おはよう…………は?」

 何故か台所にはエプロンをつけた絢瀬さんが立っている。そしてソファには、小町と並んで絢瀬さんの妹が座っている。

「あの……これは……」

「八幡君、二日間よろしくね♪」

「…………はあ!?」

 驚く俺を前に、ニコニコ笑顔の絢瀬さんを見ながら確信した。

 やはりこの人の行動は読めない。

 

 




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