それでは今回もよろしくお願いします。
「今日は楽しかったわ」
「そ、そうですか」
「どうかした?」
「いや、どうかしたも何も……」
俺は一呼吸おいて言った。
「駅の構内で抱きつくのは止めてくれませんかね……」
通りすがりの女子学生がこちらを見てキャーキャー言ってたり、野郎集団が舌打ちしたりと、ここ最近何度も見たような光景を見ながら、絢瀬さんを押し戻そうとする。しかし、今度は絢瀬さんも引かなかった。
「ダ~メ!次いつ会えるかわからないから充電させて」
「…………!」
絢瀬さんが抱きつく力がさらに強くなる。
その豊満な胸が強く押しつけすぎて潰れていようとお構いなしだ。
「あ、胸が当たってるのはご褒美ね」
「ぐっ……」
わざとかよ。じゃあ、ありがたくそのままにしておきます!
「よし、充電完了!」
仕方ないからその柔らかさを堪能しようとした瞬間、絢瀬さんはぱっと離れた。べ、別にあと少しだけ、なんて思ってないんだからね!
「じゃあ、次は………ゴールデンウィークにデートしましょう!」
「……もうすぐじゃないですか」
充電とはなんだったのか。
「八幡君、どーせヒマでしょ?」
「さらっと失礼ですね……いや俺だって家族旅行とか」
「八幡君は絶対に家族旅行に行かないって小町さんが言ってたわ。コナン君が犯人を逃がすくらいあり得ないって」
もっとマシな例えはないのかよ。お兄ちゃん恥ずかしいんだけど。
「スクールアイドルの活動はいいんですか?」
「もちろんやるわよ。でも二日間くらい休みを入れるから。……ふふっ、楽しみにしてて♪」
それだけ告げると、スキップしながら改札をくぐり抜けていった。俺が同じ事をすれば頭のイタい馬鹿に思われるだろうが、絢瀬さんは好意的な視線を集めていた。
おい駅員。ニヤニヤしすぎだっての。一番右の改札トラブってるぞ。
「ヒッキー、本当に付き合ってるんだ……」
絵里さんの指摘通りに、ゴールデンウィークは何事もなく時間が経ち、今日を含めてあと二日しか残っていない。確か今日か明日にデートをするとか言っていたが、連絡が来ないという事は、二日間ゆっくり休んでね!という事だろう。実に素晴らしい。
「……朝飯でも食うか」
あと二日しかないないのなら、その短い時間を有効に使うのが一番だ。それを朝食の時間に考えよう。
「あ、八幡君おはよう!朝御飯できてるわよ!」
「お兄ちゃん、おはよ~」
「お兄さん、お邪魔してます」
「ああ、おはよう…………は?」
何故か台所にはエプロンをつけた絢瀬さんが立っている。そしてソファには、小町と並んで絢瀬さんの妹が座っている。
「あの……これは……」
「八幡君、二日間よろしくね♪」
「…………はあ!?」
驚く俺を前に、ニコニコ笑顔の絢瀬さんを見ながら確信した。
やはりこの人の行動は読めない。
読んでくれた方々、ありがとうございます!