「じゃあ、ウチらがアイドル研究会に入って、再び部として復活させるって事でええかな」
「はい!」
「そうですね」
「じゃあ、早速行きましょう」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
話を勝手にまとめようとしている四人に対して、『待て待て待てーい!』とばかりに両手を広げて押しとどめる。
「はいはいエリチ、そんな方法メンドイだけやろ」
「さすがに非効率かと…………」
「むむ……」
合体はロマンだと思うのだけれど……まあ仕方ないわね。希に逆らうと変な過去をほじくり返されかねないわ。……今度希の携帯を調べられないかしら。
「よし、皆でアイドル研究会に入るわよ!」
「ねえ、海未ちゃん……生徒会長ってあんな感じだったっけ」
「わ、私には何とも……」
「私は明るくていいと思うな……明るくて」
「たまにウチの想像を遥かに超えるからね」
…………そういえば日頃のキャラを忘れていたわ。
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「はあ!?あ、あんた達が入部!?」
「ええ、お願いできるかしら」
アイドル研究会の部室にて、突然すぎる申し出に矢澤さんはひたすら驚愕している。彼女の事は一年の頃から知っているが、こうやってきちんとした会話をするのは初めてだ。
「な、何だってそんな急に……しかもあんた達二人は三年生じゃない!」
「あら、何か問題かしら?」
「あるわよ!大ありよ!ただの思い出作りで引っ掻き回されるのは迷惑だわ!」
「ウチらはそんなつもりじゃないんよ」
「あの……私達は廃校阻止の為に!」
「廃校阻止の為だけにやるっていうの?仮に廃校阻止したら、ハイ終わりってわけ?」
「ち、違います!」
高坂さんが目を見開き、反論する。
「どーだか」
「矢澤先輩の言いたい事はわかります。しかし、今は何とかして学校を……」
「だからといって思いつきでスクールアイドルやって成功すると思ってんの?」
その真剣な眼差しを見て、彼女のアイドルへの一途さが本物だとわかる。自分が昔捨ててしまったひたむきさを彼女は持っている。
「…………」
園田さんもその視線に押し黙ってしまう。
希はほんの数秒間瞑目した。私と同じように、過去の事を思い出したのだろうか。
沈黙の時が流れるのをしばらく見届けて、私は口を開いた。
「じゃあ、どうすれば認めてもらえるかしら?」
「え?」
「要するに、スクールアイドルへの本気度が確認出来ればいいのよね?」
「ま、まあ、そうね」
高坂さんも一歩前に出る。
「じゃあ、来週の新入生歓迎会でパフォーマンスをします!そこで判断してください!」
「……わかったわよ」
矢澤さんは小さく頷いた。
こうしてスクールアイドルとしての特訓が始まったのである……。
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「というわけなのよ!」
「はあ……」
俺は絢瀬さんから、今日の出来事を聞かされたのだが、色々とツッコミどころが多すぎる。まず、妹相手に土下座の練習とかアレすぎるし、生徒会室で一人で舞うのもアレすぎる。
「八幡君、応援よろしくね!」
「あ、はい……」
「あ、もうこんな時間!明日から朝練あるからもう寝るわね!じゃ、お休み!」
「え?あ……切れた」
こうして唐突にかかってきた電話は唐突に切られた。
……一体何だったんだ……俺も寝るとするか。