「ほらエリチ。2年生が困っとるやろ」
いつの間にか私の傍に立った希が肩をポンポンと叩いてくる。
私は顔を上げ、2年生の顔を見た。
……うわぁ。昨日の亜里沙みたいな顔してるわ。
昨晩の亜里沙とのやり取りを思い出す。
『亜里沙、ちょっと付き合ってくれる?』
『どうしたの?お姉ちゃん』
『土下座の練習をしたいから付き合って欲しいの』
『土下座…………土下座!?何でなの!?』
『もちろん必要だからよ♪』
『…………う、うん……ダメだお姉ちゃん、早く何とかしないと……』
『どうかしたの?』
『な、何でもないよ』
『よし、始めるわよ!』
……亜里沙がもの凄く哀しそうな顔をしていたのが気がかりだわ。今日はプリンでも買って帰ろう。
「し、しかし、生徒会長……いいのですか?」
「あら、私では不満?」
私は立ち上がりながら膝についた埃を払い、開き直る事にした。
「いえ、そんな事は……」
「もちろん希も差し出すわ!」
「ウ、ウチも既に頭数に入っとるんやね。まあ、ええよ」
「私は大賛成!!」
高坂さんがしゅばっと手を上げ、園田さんに向き直る。
「皆でやった方が楽しいよ!」
「ほ、穂乃果がそう言うなら……」
「生徒会長さんはダンスの経験はあるんですか?」
「昔、バレエをやっていたから、柔軟性には自信があるわ」
「あとでエリチのバレエやってる動画見せてあげるよ」
「……何故そんな動画を持っているのかしら」
「この前、家に遊びに行った時にこっそり……」
「ああ、そっちね。ならいいわ」
「他に何かあるの?」
「いえ別に何もないわよ」
ふぅ……焦ったわ。この前福引きで炊飯器が当たった時、生徒会室で一人きりで歓びの舞いを踊ったのがバレたのかと思ったわ……セーフ。
「まあ方向性は違えど、経験者がいてくれるのは助かりますね」
「それに美人でスタイルいいから、女性ファンも獲得できるかもだね♪」
「そ、そうかしら……」
あと100回くらい聞きたいわね。
「エリチ。にこっちの事はどうするん?」
「考えがあるわ」
「にこっちって誰ですか?」
高坂さんが聞いてくる。
「実はこの学校には既にアイドル研究会があるの。ただし、現在は部員は一人しかいなくて、部室があるだけの状態なんだけど」
「このままほっとくつもりやないんやろ?」
「ええ、もちろん!」
「ど、どうするつもりなんですか?」
「決まってるわ」
私は南さんの肩に手を置き(少し引き気味な顔をしているけど気のせいよね?)、その場にいる皆に告げた。
「私達、スクールアイドル部とアイドル研究会が合体すればいいのよ!」
「「「「…………は?」」」」