捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

114 / 120

 ラスト3話です!

 それでは今回もよろしくお願いします。



BE LOVED

 

「八幡よ。悪くないものだな、皆で祭りを盛り上げるのも」

「ああ、冒頭からお前の台詞じゃなきゃ、もっとよかったな」

 ライブ当日。

 空は雲一つ見当たらない澄んだ青空で、陽の光が秋葉原の街全体に優しく降り注いでいた。風も頬をそっと撫でていくくらいの柔らかい風で、何かの始まりを演出するにはぴったりの春の晴天に思えた。

 俺と材木座は、荷物を運んだり、重い物を持たされたり……力仕事でこき使われていた。

 正直かなりしんどいが、ここで頑張っておけば、絵里の……μ'sのライブが見れる。生徒会メンバーには賄賂を渡しておいたので、きっと大丈夫なはずだ。

「は、八幡。目が血走っておるぞ」

「気のせいだ」

 これでラストか。最近、運動を日課にしておいてよかった。

「「「お疲れ様です!」」」

 ひと息ついたところで、聞いただけでシャキッと背筋を伸ばしてしまうような凛とした声が、幾つか重なって響く。

 声のした方を向くと、そこにはA-RISEがいた。3人共、ステージ衣装に着替えて準備万端のようだ。

 そこで3人の視線が俺ではなく、材木座の方を向いているのに気がついた。

「あら、剣豪将軍」

「おや、剣豪将軍じゃないか」

「あら、剣豪将軍ね」

 ……何……だと……。

 なんでA-RISEの3人が材木座に親しげに声をかけた!

 え?何、この展開。最終回直前に、こんな謎展開いらないんですけど。

「……え?ちょ、いきなり声かけんなよ」

 テンパった材木座は素の口調に戻ってしまった。お前はお前で何なんだよ。顔真っ赤だぞ。

 その光景に呆気にとられていると、優木あんじゅの視線がこちらに向いた。

 彼女はそのイメージに違わぬ優雅な微笑みを見せ、こちらに一歩踏み出して、覗き込むようにこちらの顔を見る。

「あなたは確かハロウィンイベントで……」

「ど、どうも……」

「ふふっ、また私が転んだら助けてね?」

「……あ、はい」

「チカァ!!」

 金髪のポニーテールが割って入ってきた。

「八幡、何してるチカ」

「いえ、何も。いや、本当に」

「あら、絢瀬さん。ごめんなさいね。そんなつもりじゃないのよ」

「八幡、こっち!」

「あ、はい!」

 何が何だかわからないままに、俺は絵里によって連れ出された。

 

 外はスクールアイドルでごった返していて、特に目立つ事もなく移動できそうだ。

 絵里はというと、腕を組んで頬を膨らましている。

「まったく!八幡はまったく!」

「な、何かすいません」

「八幡は私というものがありながら「また、会えましたネ!」な、何!?」

 今度は、アメリカで偶然出会った謎の女性が俺の腕にしがみついてきた。

「これは運命デスネ!」

「チカァ!そうはさせないわよ!」

 

「八幡、あの子とはどんな関係なのかしら?」

「いや、何も」

 絵里にびくつきながら後退ると、後方を確認しなかったせいで、誰かにぶつかった。

「あ、すいません……」

「いえ、こちらこそ……ひゃわわっ!」

「どうかシタノ、美羽?くっ、あの目はすごいわネ!いけないわ、私ったら。ユウタという人がいながら……」

 ぶつかったのは小学生くらいの女の子だ。しかし、かなり整った美貌をしており、風に靡く長い金髪は、見た目とは不釣り合いな色気を感じた。

 一方、母親らしき女性は明らかに海外の女性で、モデルのような容姿をしていた。こちらも腰まで届くくらいに長い金髪だ。

 何故か二人して、顔を真っ赤にしてモジモジしている。

「あの、お母さん……私……」

「行きなさい、美羽!恋愛に年齢は関係ないワ!」

「チカァ!させるかぁ!」

 今、ライブ前なんだよな……。

 いつも通りの絵里に苦笑しながら、その姿はやけに頼もしかった。

「八幡、うまくまとめようとしてるけどムダよ。アフターストーリーでしっかりケジメをつけるわよ」

「……はい」

 





 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。