捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

112 / 120
 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。


I LOVE YOUをさがしてる ♯4

 どうやら絵里は、どこかから俺の匂いがしたらしく、それを辿っている内に皆とはぐれたらしい。……絶対に頭おかしい。

「あ、いた!」

 絵里の指し示す方角を見ると、μ'sのメンバーが集まって辺りをキョロキョロと見回していた。

 二人でいた時間、μ'sのメンバーが絵里を探していたと思うと、かなり申し訳ない。俺も絵里と一緒に頭を下げよう。

「いた!エリチ~!比企谷く~ん!」

 こちらに気づいたらしい東條さんが手をぶんぶん振っている。つーか、あのリアクション。あの人やっぱり気づいてたんじゃねーの?

 皆を見つけたのがよほど嬉しかったのか、絵里が小走りに駆け出す。

「みんな~!」

「何をやっていたのですか!」

 突然の怒声に、絵里がピタリと立ち止まる。その迫力に俺まで体がびくっと震えた。

 その声の主は園田さんのようだ。彼女は心配そうな表情を浮かべ、頬は真っ赤に染まっている。

「海未……」

「こ、ここ、こんな所でも恋人と陰でこっそりイチャイチャするなんて……ハレンチすぎます!」

「海未……」

「…………」

 なんか話の方向がおかしい。はぐれた事はどうでもいいのだろうか。園田さんってこんなんだったっけ?顔はやたらと火照っているし、目の焦点が合っていないような……。

「ふ、二人で……物陰で……イチャコライチャコラ……ふふ……ふふふ……」

「う、海未ちゃ~ん!しっかりして!戻ってきてよ~!」

「ムダだよ、ことりちゃん!海未ちゃんは最近、作詞の為に恋愛小説を読みすぎて、すぐ妄想の世界に入り込むようになっちゃったんだから!」

「ダ、ダレカタスケテアゲテェ……」

 ……どうしてこうなった。

「絵里……もしかして、絵里の影響か?」

「し、失礼ね!何で私が変な影響与えたみたいになってるのよ!」

 しかし、他に理由が見当たらない。いや、これが理由っていうのもおかしな話かもしれないが。絵里のキャラ崩壊の影響がここまで及んでいようとは……恐るべし。

 

「それじゃあ、また日本に帰ってから……うぅ」

「いや、どうせすぐ会えるから。泣かないでいいですから」

 涙ぐむ絵里の頭をポンポン撫で、なんとか宥める。

 μ'sの方は予定が詰まっているらしく、こっちで会える時間を作るのは無理らしい。まあ、最初から予定にはなかったのだし、仕方ないだろう。むしろ、短時間でも会えただけマシだ。

「だってぇ……だってぇ……」

「いや、それにこっちには用事があって来てるんだろ?」

「うん……」

「ほら、エリチ行くよ」

「アンタのせいで予定狂ったんだからね。きっちり取り返すわよ」

 両サイドからガッチリとホールドされ、それがしばしの別れの合図になる。

「そんなぁ、せめてキスくらい、キスくらい~!」

 絵里はそのまま同級生2人に、ずるずると引きずられていった。

 なんかこう、アメリカに来ても相変わらずなオチというかなんというか……まあ、なんか楽しい空気だからいいや。

 その後は、珍しく家族4人であちこち見て回り、それなりに楽しく温かい時間を過ごした。

 

 数日後、絵里より一足先に日本に帰った俺は、μ'sのライブ映像を観て、大きな衝撃を受けた。

「マジか……」

 まさか絵里がセンターだとは知らなかった。てゆーか、あれ?ポンコツ感がない。曲の始まりの色気とかはないの!本当に絵里だよな……そうか、髪を下ろした時が本気か。衣装もかなり似合っている。

「……もう一回観るか」

 この後、百回以上繰り返して観てしまった。




 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。