それでは今回もよろしくお願いします。
どうやら絵里は、どこかから俺の匂いがしたらしく、それを辿っている内に皆とはぐれたらしい。……絶対に頭おかしい。
「あ、いた!」
絵里の指し示す方角を見ると、μ'sのメンバーが集まって辺りをキョロキョロと見回していた。
二人でいた時間、μ'sのメンバーが絵里を探していたと思うと、かなり申し訳ない。俺も絵里と一緒に頭を下げよう。
「いた!エリチ~!比企谷く~ん!」
こちらに気づいたらしい東條さんが手をぶんぶん振っている。つーか、あのリアクション。あの人やっぱり気づいてたんじゃねーの?
皆を見つけたのがよほど嬉しかったのか、絵里が小走りに駆け出す。
「みんな~!」
「何をやっていたのですか!」
突然の怒声に、絵里がピタリと立ち止まる。その迫力に俺まで体がびくっと震えた。
その声の主は園田さんのようだ。彼女は心配そうな表情を浮かべ、頬は真っ赤に染まっている。
「海未……」
「こ、ここ、こんな所でも恋人と陰でこっそりイチャイチャするなんて……ハレンチすぎます!」
「海未……」
「…………」
なんか話の方向がおかしい。はぐれた事はどうでもいいのだろうか。園田さんってこんなんだったっけ?顔はやたらと火照っているし、目の焦点が合っていないような……。
「ふ、二人で……物陰で……イチャコライチャコラ……ふふ……ふふふ……」
「う、海未ちゃ~ん!しっかりして!戻ってきてよ~!」
「ムダだよ、ことりちゃん!海未ちゃんは最近、作詞の為に恋愛小説を読みすぎて、すぐ妄想の世界に入り込むようになっちゃったんだから!」
「ダ、ダレカタスケテアゲテェ……」
……どうしてこうなった。
「絵里……もしかして、絵里の影響か?」
「し、失礼ね!何で私が変な影響与えたみたいになってるのよ!」
しかし、他に理由が見当たらない。いや、これが理由っていうのもおかしな話かもしれないが。絵里のキャラ崩壊の影響がここまで及んでいようとは……恐るべし。
「それじゃあ、また日本に帰ってから……うぅ」
「いや、どうせすぐ会えるから。泣かないでいいですから」
涙ぐむ絵里の頭をポンポン撫で、なんとか宥める。
μ'sの方は予定が詰まっているらしく、こっちで会える時間を作るのは無理らしい。まあ、最初から予定にはなかったのだし、仕方ないだろう。むしろ、短時間でも会えただけマシだ。
「だってぇ……だってぇ……」
「いや、それにこっちには用事があって来てるんだろ?」
「うん……」
「ほら、エリチ行くよ」
「アンタのせいで予定狂ったんだからね。きっちり取り返すわよ」
両サイドからガッチリとホールドされ、それがしばしの別れの合図になる。
「そんなぁ、せめてキスくらい、キスくらい~!」
絵里はそのまま同級生2人に、ずるずると引きずられていった。
なんかこう、アメリカに来ても相変わらずなオチというかなんというか……まあ、なんか楽しい空気だからいいや。
その後は、珍しく家族4人であちこち見て回り、それなりに楽しく温かい時間を過ごした。
数日後、絵里より一足先に日本に帰った俺は、μ'sのライブ映像を観て、大きな衝撃を受けた。
「マジか……」
まさか絵里がセンターだとは知らなかった。てゆーか、あれ?ポンコツ感がない。曲の始まりの色気とかはないの!本当に絵里だよな……そうか、髪を下ろした時が本気か。衣装もかなり似合っている。
「……もう一回観るか」
この後、百回以上繰り返して観てしまった。
読んでくれた方々、ありがとうございます!