感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!
それでは今回もよろしくお願いします。
「え、絵里……」
「…………」
絵里がこちらにスタスタと早歩きで駆け寄ってくる。その一歩一歩が死へのカウントダウンのような気がして、背中を冷や汗が伝い、足は動かない。あれ?
俺、何かしたっけ?
動けずに戸惑っていると、絵里が目の前で立ち止まる。
「お、おう……」
「…………バカっ!!」
そう怒鳴るように言って、絵里は俺に背を向け……
「あうっ!」
転んだ。
「な、なあ、さっきのは別に浮気じゃないんだよ」
「……ふんっ」
「絵里さーん、もしも~し」
「……つーん」
どうしたものかと頭を抱える。
小さなベンチに二人で並んで座っているものの、絵里はこっちを向いてくれない。絵里曰く、さっきの女子にデレデレしていたそうだ。
何となくと絵里の方に目をやると、こっちをチラ見していたらしく、またさっと向こうを向いた。その動作はこちらの気配を窺う猫のようだ。
多分、絵里も早く仲直りしたいのだと思う。
「なあ、絵里。その……謝るから許して欲しいんだが。その……せっかく二人でいるなら……笑顔が見たい」
言葉を慎重に選びながら、不器用に紡いでいく。付き合う前後から謝ってばかりなので、だいぶ効力は薄れているかもしれないが。
「むぅ、仕方ないわね」
今回はどうやら許してくれるらしい。
彼女はそのまま距離を詰めてきて、肩に寄りかかってくる。金髪がさらさらと風に小さく揺れ、俺の首筋を優しく撫でていた。それを少しくすぐったく思いながら、手を重ねる。
「絵里」
「?」
「帰ったら……婚姻届にサインとハンコ押していいですか?」
「……もっとロマンチックな言い方はできないのかしら」
「わ、悪い……ただ、忘れてたなって思って」
「もう……でも、最高のプレゼントね。ありがとう」
「そりゃよかっ……っ」
こちらが心の準備をする時間すら与えずに、強引かつ乱暴に唇を塞いでくる。
「……ん……ん……っ」
そのまま口の中を舌が暴れ回り、次第に鼻や頬や首筋にも、貪るようなキスを重ねられる。
「……い、いきなりだな」
「おまじないよ」
絵里はトロンとした瞳で、俺を撫でるように見た。
「誰にも鼻の下を伸ばしたり、顔真っ赤にしたりしないようにする為の、ね」
「そうですか……」
どちらからともなく顔を離し、荒い息を整える。
勢いで言ったが、人目がなかったのが幸いだ……人目?そういえば……
今、ふと湧いた疑問を口にする事にした。
「ふう、八幡成分補充完了!」
「そういや、絵里……」
「どうかした?ま、まだ陽があるから、ここから先は……」
「もしかして、迷子になってた?」
「…………」
読んでくれた方々、ありがとうございます!