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それでは今回もよろしくお願いします。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
「どした?」
小町がやや興奮気味の笑顔を向けてくる。
「海外旅行なんて初めてだから緊張するよ!小町テンションMAXだよ!」
「そっか。じゃ、今の内に寝とけよ。時差ぼけで眠くなるぞ」
「お、お兄ちゃんはいつも通りだね」
「ばっか、お前。俺だってテンション上がってるっての。だからこうやって、体力温存してるんだよ」
「おお、お兄ちゃんがまともな事言ってる!」
「どうせ、3年になったら受験勉強で毎日ローテンションで過ごすからな」
「やっぱりいつも通りだ……てゆーか、お兄ちゃんは受験があろうがなかろうがテンション低いじゃん」
離陸まであと少しの飛行機の中で、小町と仲良し兄妹的なやり取りを交わしながら、初のアメリカに思いを馳せる。
別に、アメリカに行くまでの経緯が他のシナリオと被るからって省略したわけじゃないんだからねっ!
はい、とりあえず絵里に内緒でついていってます。
親父と母ちゃんは隣で寝ています。
μ'sのメンバーは後ろの席に座っています。
今期の春アニメで一番好きなのは『サクラクエスト』です。
「どしたの、お兄ちゃん?」
「いや、今変な電波を……」
「……アメリカに行ってまで、変な事しないでよ?」
「…………」
この前の事や、絵里と出会ってからの事を考えると、どうも反論しづらい。いや、9割ぐらい巻き込まれた話なんだが。
離陸してからしばらく時間が経ち、機内にリラックスした空気が流れ始めると、μ'sメンバーのひそひそ話が聞こえてきた。
「そういえばエリチ、比企谷君と二人っきりの時はどうなん?」
「あ、それ気になる!」
「そうねえ……」
……東條さん、後で覚えてろよ。ちなみに十中八九この人は俺の存在に気づいている。空港でもわざと近くに来て、『貯金を八万円下ろした』とか、わざとらしく呟いていったから。
俺の存在になど全く気づいていない絵里は、数秒の思考の末、得意げな声で言った。
「よく膝枕をねだってくるわ!」
さっそく盛りやがったよ、この人……ねだった事なんて……な、ないよね?多分……。
「へえ、意外やね」
「何か可愛い♪」
小町が『え?この兄、そんな恥ずかしい真似してんの?』みたいな目を向けてくるのがつらい。俺がそんな甘えん坊に見えるのだろうか、見えるのだろう。
あとでどうしてくれようか……。
「ハ、ハレンチです!」
「いや、膝枕だけでしょ」
「ほ、他には何かあるの?」
「う~ん、そうねえ。ご飯の時……」
「!?」
眠くなるまでの僅かな間、緩やかに羞恥の時間が流れていった。
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