捻くれた少年と強がりな少女   作:ローリング・ビートル

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HOWEVER ♯4

 

「え?」

 時間が止まったような感覚がする。

 しかし、今はあの甘い香りはない。

 背中に嫌な汗を感じる。

 口の中は渇き、喉の奥はヒリヒリしていた。

 今いる場所が現実なのかどうかも疑いたくなる。

 そんな俺の視線の先にはスマートフォンの画面があり、そこにはある物が映っていた。

 朝に届いたメール。

 差出人は東條さん。

 メッセージは添えられていない。

 そこにはロシア行きのチケットと、ロシアの大学のパンフレットが映っているだけだ。

 どういう……事だ?

 

 μ'sがラブライブ全国大会で優勝し、電話越しに喜びを語り合った。

「おめでとうございます」

「うん、ありがとう!!」

 祝いの言葉に、絵里は涙混じりの声で応えた。他には矢澤さんや高坂さんをはじめとしたメンバー全員の喜びの声が漏れ聞こえてくる。

 不覚にも、こっちの涙腺まで緩んでしまった。

「本当に、おめでとう」

「あれ?八幡、泣いてる?」

「いえ、違いますよ。そういや、卒業式は明後日ですよね」

「ええ、それさえ済めば落ち着いて八幡の部屋に連泊できるわ」

「それは俺が落ち着かないのでちょっと……」

「観念するチカ。何なら春休み中、こっちに泊まるチカ」

「本当に、おめでとう」

「あ、数秒前に戻った!」

 

「…………」

 絵里さんは電話に出ない。

 おかしい。

 昨日は普通に会話をして、春休みの予定を話していたのに……。

 そういえば絵里さんはどこの大学に進学するか、明言しなかった。

『そ、その内、教えるわ!』

 ……ロシアに帰るつもりだったのか。

 何で……。

 超特急で準備して、俺は家を飛び出していた。

 

「誰もいない……か」

 呼び鈴を何度か押したが、絵里さんも亜里沙も出てこない。

「待つか……」

 その日、日が暮れるまで待ったが、誰も帰ってくる事はなく、誰とも電話が繋がる事はなかった。

 

「お姉ちゃん、本当に言わなくていいの?」

「ええ、まだ……」

「お姉ちゃんが言わなくたって……いずれはわかるんだよ」

「そうだけど!……やっぱり、辛いじゃない……」

「絵里。アンタとアイツの間の事に口出しする気はないわ。でも、親友としてアンタに言わせてもらう……後悔だけはしないで。ちゃんと……まずは自分自身と向き合って。辛いのはわかったけど……」

「にこ……」

「エリチ……ウチはエリチの決めた事を応援するから」

「希……」

「お姉ちゃん、私がついてるよ!」

「亜里沙……」

 

「あなた……やけに嬉しそうね」

「そりゃそうさ。どんな事情であれ、久々に可愛い娘達に会えるんだから」

 

 

 

 

 





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