ジリリリ……ジリリリ……。
目覚まし時計のベルが騒がしく鳴り響く。
「お祖母さま……あと、5分……5分でいいから」
目覚まし時計を止めるべく、手を伸ばす。
ああ、もう……このっ!
ガンッと何か違う場所を叩いた。
「あうっ」
ど、どうやら違う物を叩いたみたい……。
ヒリヒリとした痛みで目が覚める。
「っ~~。何なのよ、もう」
なんて理不尽な痛みなの……。
とりあえず起きて、必要なくなった部屋の明かりを消す。
「……はぁ……高校生になっても怖いままなんて……恥ずかしくてお祖母様には言えないわね」
やはり暗闇は恐ろしい。何なら亜里沙に隣で寝て欲しいレベル。あの子なんで暗闇が平気なのかしら。ハート強すぎじゃない?
まあいいわ。それ以外のところで姉らしさを見せて、プラマイゼロね。
時計を確認する……あれ?
「よ、よっ、四時!?」
どうやらセットする時間がずれていたようだ。お、おかしいわね。
「……寝よ」
これはこれでラッキーかもしれない。あと2時間たっぷり寝よ♪
「お姉ちゃん?」
亜里沙がドアを開け、こちらを見ていた。
「あら、どうしたの?」
チェンジ!姉モード!
「お姉ちゃんこそどうしたの?さっきから騒がしいけど……」
「え?ああ、少しストレッチしてただけよ。うるさくしてごめんね」
「さっきお姉ちゃんがポン……」
「え?ポン酢がどうしたの?」
「……なんでもない」
亜里沙はドアを閉めた。
ふう……何とか誤魔化せたわ。
姉としてのささやかな尊厳を失うところだったわ。
『かしこい、可愛い、エリーチカ』
お祖母さまの言葉を思い出す。元気にしてるかなぁ。
……もうひと眠りしよ。
*******
「お兄ちゃん、おかえりー!無事に高校2年を始められたね!」
「お兄ちゃんが学校生活楽しくないみたいに言うな」
「楽しいの?」
「…………」
一言も言い返せねえ。いや、いじめられてなんかないろ!
「高校ではお兄ちゃんに素敵な出会いがあると思ってたんだけどなあ」
「いや、俺を養ってくれる人なら大学で探せばいいだろ」
「ゴミぃちゃん。いつまでも馬鹿言ってないで手を洗ってくれば?」
「へいへい」
我が妹は今日も世話焼きである。
*******
「もう少し、きちんと内容が説明できる段階で持ってきてもらえるかしら」
「……ダメね。もう少しまともな案はないの?」
厳しい言葉を突きつけるだけになってしまった生徒会会議が終わる。
「エリチ」
副会長の希が話しかけてくる。その声のトーンから、こちらを気遣っているのがわかり、申し訳ない気持ちになる。
「お疲れ様。でも、気持ちはわかるけど、カリカリしすぎやよ」
「……ごめん。今日はもう帰るわ」
私は逃げるように生徒会室を後にした。
*******
「あ~~~!私ってば何やってんのよ~!もう少し言い方があるでしょ~!!?」
ベッドの上を、制服姿のままゴロゴロと転がる。埃が散ったが、今はまったく気にならなかった。
「はあ……」
廃校問題。
その事が心に影を落としていた。
何とかしなきゃ……お祖母様のためにも。
*******
違う街で違う日常を送る二人。
そんな二人が出会うまであと3日間