スーパーメタルクウラ伝【本編完結】   作:走れ軟骨

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魅堂寺さん、N2さん、骸骨王さん、おとり先生さん、白黒パンダさん、
遅ればせながら誤字修正ありがとうございます。


宇宙を蝕む者

エイジ774年。

クウラ、ブロリーの襲来からすぐ後のこと……魔人ブウが孫悟空により倒された。

ブウの人類絶滅ホーミング弾を切り抜けた者の中に、

サイヤ人の瀕死復活でパワーアップしたブロリーと彼に守られたココがいたり、

元気玉の時間稼ぎにベジータだけでなくココにお願いされたブロリーが参戦しかけたが、

「カカロットォォ!!」とか叫びつつ孫悟空を襲おうとして、界王様経由でココに散々怒られて

仲良くしなさいと嫌々握手させられた後ようやくブウと戦ったり……

とまぁ色々あったがブウは見事悟空が退治し、伝説の超サイヤ人は幼女に手綱を握られ、

地球はめでたしめでたしで平和を獲得したのであった。

 

 

だが、宇宙はそうでもない。

ブウとの戦いから2年と少しの時が経った頃、

クウラはこの次元のビッグゲテスターと融合し新たなる力を手に入れた。

彼は直ちに自分の母船を改造し、ロボット生産機能を付け加え、

強化母船の生産能力でメタルクウラだけでなく作業メカも並行して製造、

更にそれらと食い尽くした荒廃星を使って移動要塞第2ビッグゲテスターをも生産……

さらにそこからメタルクウラと作業メカを。 そしてまた移動要塞第3ビッグゲテスターを。

恐怖の連鎖反応でメタルクウラと移動要塞は爆発的に増殖していった。

しかもマシーン達は異次元潜行し、数が揃うまで自分達の存在を隠蔽。

100万体のメタルクウラが揃うと同時に通常空間へ復帰し、一気に4大銀河に侵攻を開始した。

マシーン軍団は更に数を増やしつつ宇宙に深刻な災厄をばら撒き始めたのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリザード吹き荒れる極寒の星、惑星フリーザNo17。

コルドとフリーザ亡き後、残党の中でも比較的、統治能力に優れていた

准幹部・ソルベが本拠地に定めていた星である。

現在のコルド・フリーザ領国の首都星としての機能も果たしていたが……、

今、その星はブリザードではなく炎の海に沈んでいた。

 

ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ、

 

鋼鉄の足音が司令部に響く。

燃え盛る炎の向こうに揺らめく人影が、金属音を打ち鳴らしゆっくりと迫ってくる。

 

「あ、ああ、あ……! な、何故ですか…クウラ様ぁぁ! 何故我らを攻撃するのです!

 我らは…あ、貴方様を全軍の総司令官として…! 新たな王として迎え入れると…!

 そう言ったではありませんか!! 私達に敵対の意志などありませんですぅぅぅぅ!

 我々はクウラ様の忠実な部下として……ひ、ひぃぃぃっ!!? シサミ! タゴマぁぁぁ!」

 

「ギャアアアアア!!!」

 

「ク、クウラ様ァァァ!! ソルベ様、助けてくださ――うぎゃあああああああ!!」

 

白銀のメタルボディを怪しく光らせたクウラが、無表情のまま両手を彼らに差し向ける。

10本の指先から無数のケーブル触手が高速で射出されて

フリーザ軍残党兵士達を次々に雁字搦めに拘束してしまう。

 

「……使えぬお前達を再利用してやるというのだ。

 戦力としては話にならんが資源としてならばまだ価値がある。

 貴様らはメタルクウラ・コアの新たなエネルギーとして生まれ変わる……泣いて喜ぶがいい」

 

「ヒィィィィ、クウラ様、お、お助け下さい! このソルベ、か、必ずやお役に立ってみせます!

 フ、フリーザ様の復活計画も着々と進んでおりますぅぅぅ!

 クウラ様とフリーザ様が、御兄弟が力を合わせればサイヤ人など―――

 あぎゃあああ!!! や、やめっ! いぎゃああああ!!!!」

 

小柄なソルベの必死の命乞いも、メタルクウラには全く届かなかった。

マシーンの触手が微細なブレードを展開し超高速回転を始めると、

彼らの皮膚と肉はあっと言う間にミンチになって粉砕されていき、

生命エネルギーが一滴残らず搾り取られる。

今日この日、惑星フリーザNo17から生命体は消失し、新たなる移動要塞として生まれ変わる。

コルドとフリーザが築き上げた強大な勢力は、急速にこの世から姿を消していこうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しい青色と淡い桃色が散りばめられた空がどこまでも広がる界王神星。

魔人ブウと孫悟空との決戦ですら殆ど壊れなかった頑強な聖域の惑星で、

一人の若者と一人の老人が総身に汗をかいて恐怖に戦慄(わなな)いていた。

 

「ご、ご先祖様…! こ、これは…また星が…消えた!

 どういうことです! い、異常だ……異常な速度で、つ、次々と星が、命が消えていく!!」

 

若者……キビト界王神が、脂汗を幾筋も垂らしながら震える声を喉から絞り出す。

彼の隣に立つのは腰が曲がった老人、老界王神。

キビト界王神と同じように……いや、それ以上に強張った顔で、

 

「何ということじゃ! ほ、星喰じゃ! 星喰が生きていた!!」

 

声を上ずらせおたおたと慌てだした。

界王神よりもずっと経験豊富で老練な彼は、

キビト界王神よりも遥か遠く、より正確に事象を観測できる。

それが故の取り乱しようであった。

 

「なんなんじゃあ~~これは~~~~!!

 銀色のクウラがいっぱいおるぞぉ!!? 東西南北の銀河にうじゃうじゃおる!!

 あ、ああ! 星を……生き物を……破壊して生命エネルギーを食っておるぞ~~!!」

 

水晶球を覗き込みながら、眼球が飛び出さんばかりに目を見開いて白黒させていた。

キビト界王神も、

 

「ええええ!? ク、クウラが生きている!?

 界王達の封印が破れてから、地球で悟飯さん達に倒されたはずじゃ!?」

 

老界王神と一緒になって慌てっぷりを更に加速させるのであった。

 

「ううむ……わしゃそん時はまだゼットソードの中だったからよ~~、

 ワシの神眼でも正確には見えんかったんだな~~~~。

 でも、今クウラは確かに生きていて…宇宙を襲っておるのは間違いないぞ!」

 

見てみろ、と15代後の後輩界王神に水晶を見るよう促すと、

 

「あああ…! ほ、本当だ! 銀色のクウラが…ひい、ふう、みい………ゲゲッ!?

 一体何人いるんですかご先祖様! めちゃくちゃいっぱいいますよ!!」

 

先祖と子孫は一緒になっておぞましい映像に見入る。

星と、そこに息づく生命が蹂躙され、解体され、純エネルギーに変換されていく様子は、

生命創造を生業とする界王神達にはとてつもなく辛いものだ。

クウラの行為は生命の冒涜そのもので、神々の顔面にツバを吐くのと同義であった。

まだ、彼の弟・フリーザの方が、優しく御しやすい話の通じる人物だったと思えるほどだ。

 

「………な、なんという残酷な男じゃ……! とても見ちゃおれんわい…。

 と、とにかくこうしてはおれんぞ!

 クウラが新ナメック星を襲うのは時間の問題じゃ……!

 奴がドラゴンボールまで手に入れてしまったらそれこそ悪夢じゃぞ」

 

「彼らを助けに行くよう、悟空さん達にお願いしてはどうでしょうか。

 悟空さん達ならクウラにもきっと勝てますよ」

 

「新ナメック星にいるクウラを倒しても新しいクウラがまた来るだけじゃ。

 いくら孫悟空達でも、 あんなに沢山のクウラはめちゃくちゃ大変じゃぞ…。

 しかも一体一体の強さがよ~……魔人ブウがいっちゃん強かった時ぐらいじゃないか?

 下手に孫悟空達を呼んでしまっては、

 大きな気でかえってクウラの興味を引いて奴の動きを早めるかもしれんし……」

 

老界王神が難しい顔でウンウンと唸ると、

 

「な、なるほど…確かにそうですね。

 特にベジータさんあたりはわざとクウラを呼び寄せるかもしれませんね…。

 強い奴と戦いたがるのがサイヤ人ですし………うーん………、

 あ! ならば界王神界に避難させましょう!」

 

キビト界王神が、さも名案を思いついたという笑顔でそう提案する。

 

「む……一応、ここは聖域なんじゃが……まぁ今更か。

 しょうがない、ここにナメック星人達を運んでやるんじゃ!

 ナメック星人達は本人達の生命エネルギーも強い……クウラに喰わせてはならん!」

 

「え!? 運んでやれって……ナメック星人は100人くらいいるはずですが…、

 ひょっとして私が運ぶんですか?」

 

「当たり前じゃ。 他に誰がそんなこと出来るんじゃ…まさかこの老体に無理させる気か?

 幸いお前さんの強さなら気も大したことないし……

 一応気も消してこっそり行けばクウラも見落とすじゃろーて。

 それに、ナメック星人は宇宙でも稀に見る正直者で働き者達……

 彼らの作り出したドラゴンボールは危険な代物じゃが、

 何度か宇宙を救う助けになったのも事実じゃ。

 そんぐらいしてやってもバチはあたらんじゃろ」

 

「バチを当てる側は私達だし、運ぶのが私1人というのは………」

 

「いいからさっさといかんかい! ナメック星人が危ないんじゃぞ~~!!」

 

「は、はいっ! カイカイ!」

 

神が得意とする瞬間移動法、カイカイによって新ナメック星へと向かったキビト界王神。

付き人のキビトは東の界王神よりもカイカイに優れていたために、

ポタラ合体によってキビト界王神となった今の彼のカイカイは超一流である。

ナメック星人達に事情を説明すると、彼らはすんなりと移住に同意した。

界王神星と新ナメック星を何度も往復し、

ナメック星人達を一生懸命に運搬する彼の姿はとても高位の神様には見えないが、

人の良いただの青年に思える親しみやすさが彼の良い所である。

どさくさ紛れに、

 

「えへへ、折角ドラゴンボールが揃ったので2人に分けてもらっちゃいました」

 

こんな事をしてしまう天然なおちゃめさも魅力の一つ……。

宇宙のバランスを乱すからみだりに使っちゃイカンと老界王神が言っていたにも関わらず、

ドラゴンボールを使用し小柄なモヒカン頭の界王神と付き人キビトに分離しようとも、

彼の魅力は損なわれないのだ(威厳は損なわれるが)。

 

「……お、お主なぁ~~、折角のポタラも無駄にしおって。

 しかもクウラが暴れておるというのに、他に良い使い道あったじゃろうに!

 まったくもうっ、なにしとんじゃっ!!」

 

ドラゴンボールの気軽な使用とポタラの合体キャンセルという、

神としてそれはどうなのか?という行為をサラッとやってのける東の界王神に、

老界王神も思わず冷ややかな視線を向けてしまうのだった。

ナメック星人とドラゴンボールを無事保護できたのは、

東の界王神が頑張ったからなのは間違いないのだが…。

 

「い、いえ、その、確かにクウラが破壊した星と生命の復活も考えたんですが、

 もう何百と壊されてるし…それに今復活させてもどうせすぐ壊されますし…。

 そ、それに今ドラゴンボールを使ってしまえば万が一クウラに奪われても使えませんよ!?

 これで1年は安全です! ね!?」

 

一応、彼には彼の言い分があるらしい。

老界王神に怒られてしどろもどろになる彼だが、

長い間独りで界王神を務めてきた偉大な人……のはず。

 

「もうええわい……とにかく! クウラのこの暴れっぷりならばビルス様が動くじゃろう。

 クウラの奴、調子乗ったが最後じゃ! わしらは壊れた生命の穴を埋めるぞい!

 このままじゃ宇宙のバランスが崩れてしまう」

 

「は、はい!」

 

そう、やはり界王神は凄いのだ。

星と生命を生み出す切っ掛けを与える力は、破壊神すら持ち得ぬ偉大なパワーである。

今では2人きりになってしまった界王神……。

(老界王神は既に引退の身なので、正しくは東の界王神1人きり)

この日から彼らの怒涛の徹夜作業は続くことになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

枯れ果てた惑星。

その大荒野のど真ん中に2人の男がいて、

彼らの周囲には銀色の残骸が散らばっている。

 

「……くそ、きりがないな。 あのデッカイロボット星も破壊してるんだけどなぁ」

 

2人の内の1人……血色の悪い黒紫の肌をした、

コーニッシュレックス種の猫に似た宇宙人…いや破壊神が機嫌悪そうにそう言った。

 

「全部が宇宙中に散らばっていますからねぇ。

 しかも私達が行う探知・移動・破壊のサイクル……。

 これにかける時間とほとんど同じスピードで増えてるようですし」

 

返事をした男…ウイスは、サウザーやザンギャと似た青肌・端麗な造形で、

その美貌を台無しにするような超ロングの逆立ち白髪ヘアが特徴的である。

まるで風速20mの逆風を常に受けているような髪型だ。美的センスが疑われる。

 

「ボクが寝てる間に随分と好き勝手やってたんだな、フリーザの兄貴って奴は。

 色々と増えすぎだろう!」

 

うがーっ、と頭を掻き毟って苛立ちを露わにする破壊神。

そんなビルスを見ながら、付き人ウイスは

 

「まぁビルス様が寝てなければ良かっただけの話しなんですけどね。

 これも神様のお仕事ですよ……さぁ、きりきりいきしょう。

 このままじゃ破壊神の名が泣きますよ? 星喰クウラの方がうんと破壊してるなんて」

 

飄々と言いながら、手にした杖の先端の水晶球を覗き込んで次なるターゲットを探していた。

ビルスは片眉を釣り上げて、

 

「あのねぇ…ボクはちゃんと全体のバランスとそれが破壊に足るかどうかを考慮してるんだよ?

 はぁ~~……それにしても『破壊』したらアイツら全部連鎖してぶっ壊れればいいのに。

 あんなロボットの一体や二体が過去現在未来まで消し飛ぼうと意味ないし……。

 一々見つけて壊さなきゃ駄目って……ちょっとした罰ゲームだよコレは」

 

師匠兼付き人へと愚痴をよこすのであった。

 

「まぁそれは仕方ありません。

 栗まんじゅうを破壊した所で大福まで抹消できるわけじゃないんですから。

 ロボットも機械の星も一体一体が全部微妙に違うのが余計面倒なんですよねぇ~~。

 しかも本体が未だに見つかりませんし。

 …ん、新しいロボットさんを見つけました……じゃあ早速行きましょう。

 今日中に後5000体は潰しますよ~。

 なるべく早く星喰退治しないと、閻魔さんや界王神達が過労で倒れちゃいますからねぇ」

 

「ああ…そうだったな。

 ばんばか生命が死んで第7宇宙のバランス悪くなってるからなぁ。

 老界王神まで『創造』を頑張ってるらしいね」

 

軽々しい雰囲気でやる気なさげにそう言うビルスだが、

クウラの大破壊を止めようという気概は結構あって頑張っていた。

 

過剰破壊による宇宙のバランス崩壊が起きてもおかしくないレベルでクウラは活動している。

それが未だに防がれているのは界王神と愉快な界王達が頑張って創造を行い、

宇宙全体の調和が保たれているからだ。(界王神は過労でぶっ倒れそうだが)

一度失われたものと全く同じものはさすがの創造神達も創ることが出来ないが、

似た存在で穴埋めをし事無きを得ている。

(失われたものをそっくりそのまま復活させるドラゴンボールが、

 いかに宇宙の摂理に反したトンデモない物なのかが分かる)

 

だが、退治しようにも星喰クウラのやり方が狡猾・慎重でなかなかにうざうざしい。

とにかく数が多く、増殖力が強く、瞬間移動を多用し宇宙中をビュンビュンと移動しまくる。

しかも星を喰う直前まで気を限りなく0にし、おまけに機械人形であるから気配が掴みにくい。

元から断ってしまえば……つまりクウラ本体を『破壊』してしまえば一番良いのだが、

先述の通りクウラ本体も移動と潜伏を繰り返しているようで事は簡単ではない。

広範囲、大規模での『破壊』を行い空間ごと消滅させても良いのだが、

それをすると加減が出来ず壊したくない星々まで巻き込んでしまう。

クウラの破壊行為に自分の破壊までプラスさせてしまっては、

界王神達のキャパシティを完全にオーバーする。 バランス崩壊一直線だろう。

チマチマ破壊するしかないのだ……今の所は。

 

それに加えてもう一つ……ビルスとウイスが今ひとつ星喰の本体を発見しきれぬ理由……。

それは、最後の1人になってしまって負担激増・創造無双で頑張る東の界王神の存在だ。

大量に宇宙に存在しているメタルクウラが、いつ何時界王神の命を狙わないとは限らない。

東の界王神が死ねばビルスは死に、天使ウイスも機能を停止してしまう。

界王神達が居住している界王神星は、あの世とこの世の周りをまわる衛星世界の内に在る。

普通はその世界には誰も侵入できないのだが、

魔人ブウがやってみせた通り瞬間移動においてはその限りではない。

そしてメタルクウラが瞬間移動の使い手であるのは、

既に何万体かを破壊したビルス達は知っている。

界王神星の場所まで知っているとは思えないが、万が一が有り得る。

なのでビルスとウイスは、常にそれとなく界王神星の安全を気にかけていた。

その事が、クウラ本体の探索に小さくない障害となっていたのだった。

500万年前に眠りこけて界王神達が殺されてしまったツケが今になってやって来たらしい。

 

「寿命が縮むって文句言ってるらしいです」

 

しかし山積みの心配を少しも表には出さぬウイスが、

いつも通りののっぺりとした薄ら笑いで破壊神との会話を楽しむ。

 

「あのジジイの寿命ならどうでもいいよ。 まぁいいや。 行くよ、ウイス」

 

その瞬間、2人は気配の余韻すら残さず幻影のように掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

破壊神がメタルクウラ退治を始めてどれ程の時が無為に過ぎ去っただろう。

100万体どころか200万体は確実に葬り去っている筈だったが、

それでもメタルクウラは今も星々を攻撃しているという事実がビルス達に重く伸し掛かる。

破壊神達の予想すら大きく覆す、途方もない数のメタルクウラが宇宙に蠢いているらしい。

 

「……チマチマやるのは止めだ。 このままじゃコイツラの排除は出来ない」

 

目を細め、忌々し気にビルスが呟くと付き人ウイスも同調し、

 

「驚くべき繁殖力ですね………まさに宇宙のイナゴ…害虫そのものです。

 このままでは界王神達の負担が大きすぎますよ、ビルス様。

 本腰を入れて本体を探し出し破壊せねば、宇宙の秩序が確実に乱れます」

 

いつもの、どこかのほほんとした雰囲気をガラリと変えて真面目な顔である。

叡智を持つ神秘の少数民族、ナメック星人は辛うじて難を逃れたが、

宇宙の無頼者達の大集団、コルド・フリーザ軍。

そういった者達を取り締まる宇宙の警察、銀河パトロール。

賢者ズノーとその惑星。

フュージョン発祥の地、メタモル星。

コナッツ星、ヤードラット星、惑星448、惑星ワガシ、惑星ピタル……

文明を築ける程の生命を抱えた様々な星が機械軍団の侵攻によって大打撃を受け、

善悪問わず多くの文明と種族が滅んでいた。

ギリギリ、銀河パトロールが果敢に抵抗を続けていたが、それも時間の問題だろう。

 

「……第7宇宙ごとクウラを破壊するのも……視野に入れておいた方が宜しいかと」

 

事態を重く見たウイスの進言。

それを受けて数秒の沈黙の後にビルスが、

 

「どうやら冗談じゃないみたいだな…………確かにクウラは…まるで疫病だ。

 この宇宙に湧いてきたウイルス……増殖し、侵食し、やがて宿主を死に至らしめる病。

 ようやく『破壊神』という宇宙の抗体に相応しい奴が出てきたとも言える。

 …そう思わない? ウイス」

 

自分の付き人同様……普段とはまるで異なる恐ろしい笑みを浮かべ、答えた。

 

「宇宙の破壊は最終手段だ…………。

 その段階になったら対である第6宇宙のシャンパに連絡がとったほうが良いだろうけど、

 まだ連絡する必要はないぞウイス。 勿論、全王様にもな。

 ボクはクウラをこの手で破壊したくてしようがないんだ……………。

 働かされてろくに睡眠も出来ず……ボクの宇宙をボコボコにしてくれている彼……。

 破壊神をここまでコケにしてくれたのはコイツが初めてだ…………クククっ」

 

猫のように見える破壊神ビルス。

彼の今の笑みは、まさに獲物を狙う虎にも似た獰猛なものである。

 

「少し考えたんだけどさ…………星喰は命のエネルギーを吸っている。

 フリーザの身内なんだから、それが食料ってわけじゃないだろう?

 何のためのエネルギーか……………恐らく自己進化とか自己強化とかその類だ。

 クウラは一度、地球に行ったんだよね?」

 

「はい。地球でサイヤ人の生き残りと戦って引き分け、逃げ去ったとか」

 

「そうそう。そのサイヤ人達……ボクが予知夢で見たゴッドとも関係ありそうだよね。

 なにせ星喰と引き分けているんだからさ。

 クウラの狙いもボクと同じでゴッドなのかな?

 それとも違う何かか……どちらにせよおかしな話だ。

 地球は生命力に満ちている……星喰なんて呼ばれているアイツから見たら格好の餌だ。

 なのにクウラは地球を喰わずに放置している……。

 一度引き分けたから慎重になっているのかもしれないが、少し気になる。

 ボクみたいに”地球で成し遂げたい何か”があると思わない?」

 

ビルスが猫のように自分の手を一舐め二舐めし…その手で己の顔を洗いつつ、

だが頭のなかでは忙しくクウラ本体の破壊についての算段を練っていた。

 

「ゴッドを探しに行くつもりだったし………地球に行こうか、ウイス。

 ボクが地球を破壊しようとしたら……クウラは慌てて出て来るかもしれない。

 楽しみだ………星喰クウラ本人の顔と、超サイヤ人ゴッド……両方拝めそうだねぇ…」

 

ペロリ、とビルスは舌舐めずり。

久々に破壊し甲斐のありそうな獲物の登場に破壊神の心は躍っていた。

 


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