並盛町妖奇譚   作:雪宮春夏

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 難産でした!
 書き直すこと、数回!
 ……大変自慢してもしょうが無いんで、とりあえずこれで終わりにします。

 始まりが大きく変わりますが、これもこれで有りなんじゃ無いかと。

 気に入っていただければ幸いです。



第一譚 曙の社は 開かれる

 イタリアボンゴレ本部。ここ数年目立つ抗争も無く、穏やかの一言に尽きるこの屋敷の中で荒々しい靴音を響かせる男が居た。

 上にはねる薄い金色の短髪に、同色の瞳の色は彼がイタリアの血を含んでいることを雄弁に語っている。

 彼の名は沢田家光。ボンゴレ外部組織、チェデフの長にして、門外顧問と呼ばれる、緊急時においてはボスに次ぐ権限を発動できる、実質上のナンバー2である。

 そんな彼は、現在怒髪天の形相で、自らのボスの下に向かっていた。その殺気たるや、下手に道を塞ごうものなら、容赦なく殴り倒そうとするほどの勢いである。

「家光様! お待ちください!! 九代目は今……」

「相手はリボーンだろう! その用で来た!! さっさと道を開けろ!!」

 護衛の人間が阻もうとしても、まるで効果が無い。

 若い頃から歴戦の戦士としても名を馳せる男には、この程度の妨害は、そうとも成らないものであった。

「どけ!」

 その一声で護衛の人間を蹴散らした彼は乱暴な手つきで押し入り……そこで各々の武器を握る九代目の守護者たちの姿を認め、止まった。

「……なんのつもりだ? お前達は……!!」

 怒りを隠しもしない家光の姿に、守護者の面々も眉根を寄せる。

「それはこちらの台詞だ。門外顧問! 護衛を強行に突破するなど、どう言うつもりだ? 九代目に用があるのなら正当な手続きを踏むが良い」

 その内の一人、嵐の守護者であるコヨーテの言葉に、家光は眉を顰める。

「そんな時間は無い! ことは一刻を争うのだ! ボンゴレの将来にも関わる……!! あんなものに、後継者教育を施そうなどと……!!」

 周囲の様子を気にすること無く、苦々しい表情で言い捨てるに至っては、守護者達でさえ、言葉に迷い、顔を見交わす。

 無理も無かった。全容を知らない彼らでは、家光の心情は理解できなかったのである。

「……てめぇがどう喚こうがこれは九代目から俺に与えられた俺の依頼だ。……俺の好きにさせて貰うぞ。家光」

 音も無く、扉を開き、家光と逆側の入り口から出てきた影が、そう言い返す。

「リボーン……! 本気なのか……?!」

 それは家光の友にして、九代目が会談していた相手。超一流のヒットマンで有り、近頃は教育者としても一目置かれている黄のアルコバレーノ、リボーンだった。

 家光の睨みも気にすること無く、フッと肩を竦めるだけして、リボーンは言い放つ。

「九代目と話がしてぇんなら入ったらどうだ? ……俺は仕事へ行く支度があるからもう出てぇんだ」

 暗にそこをどけと求めるリボーンに、しかし道を塞いだまま、家光は尋ねる。

「その仕事、受けるつもりか……!? ボンゴレに厄災を呼ぶぞ……!!」

「俺は俺の矜持にかけて、依頼を全うするだけだ。文句なら九代目に言いやがれ」

 ニンマリと笑ったリボーンの顔には、どこか余裕げな笑み。家光の文句に、九代目がまるで聞き耳を持たないことを、この男は既に知っているのだろう。

「後悔することになるぞ……! リボーン……!!」

 最後はそう言い捨てる形で、沢田家光は踵を返した。

 その姿を見届けて、コヨーテは溜息をもらして、リボーンに頭を下げる。

「迷惑をかけたな。すまん、アルコバレーノ」

「そりゃあ、おめぇらもだろう。気にしてねぇから気に病むなよ」

 言い返して帽子の鍔を弄るリボーンは、今しがた九代目から聞いたものの、信じられないと思っていた言葉が真実であったことを、認めるしか無かった。

 即ち、門外顧問が九代目が選んだ次期十代目候補に反対している……と。

 

 イタリアという国は古くから支配と自由を繰り返し、多くの闇と光に彩られた国である。

 国内全域でも未だに影の部分は多く、そのバーもそんな場所の一つだった。

 今日も今日とてバーへ足を運ぶ公に名前を言えない脛に傷を持つ者達を軽口であしらっていたバーの店主は、扉を潜ってきた馴染みの客に声を上げた。

 その声に吊られるように、周りにいた友好的な者達も声をかける。

「よう! 人気者、次はどこだい?」

「ローマか? ベネチアか!?」

 軽く笑い声まで起きる中、客自身の発する空気はどこか重い。

「いや。……日本(ジャッポーネ)だ」

 重々しく告げられた言葉に、辺りの者達も言葉を無くす。それは店主も例外ではなかった。この土地を縄張りとするマフィア、ボンゴレファミリーのボスの信頼があつい彼への依頼は彼自身の腕の良さも相まって重大なものが多い。

 それは殺しに関しても。もう一方に関してもだ。しかしよりにもよって。

「おいおい、日本(ジャッポーネ)って言えば……!」

「ボスもとうとう腹決めやがったのか!!」

「だが……こりゃあ、間違いなく()は反発するぜ……!?」

 周りからの声に、既に受けたその反発を思い返して、彼……リボーンは溜息をこぼした。

「厄介な事になったもんだ」

 小さく呟いたきり、ジッとカウンターの上に出された飲み物を見つめていた。

 

 

 日本の並盛町に沢田家という一軒家がある。

 周囲の人々にとってはどこにでもいる単なる一家庭かも知れないが、ボンゴレファミリーにとっては、その家の人間は、単なる一般人ではなかった。

 沢田家の開祖は元々、ボンゴレファミリーの元となった自警団を設立した初代ボンゴレボス、ボンゴレ一世(プリーモ)であり、沢田家は唯一ボンゴレファミリー初代ボスの直系の血を継承している一家なのである。

 その家長、沢田家光の現在の地位も相成り、この家は敵対するファミリーに襲われるのを防ぐために、ボンゴレ側が護衛をかかすことは無かった。

 リボーンが今回依頼されたのは、その沢田家光とその妻、沢田奈々の間に生まれた、ボンゴレ十代目候補……沢田綱吉の教育である。

 そのためにリボーンは今沢田家の門の前に立っていた……が。

「こりゃあ……ひでーな」

 そう呟いたリボーンは、変わり果てた家を見回した。

 ろくに人も出入りしていないのだろう。埃の積もった玄関。雑草は庭先まで浸食している。カーテンは閉め切られ、当然のように人の気配はない。

 この家はもう何年も前からこの状態なのだといったのは、この家の近所に住むという婦人からの情報だ。

 今から数年前、近所で原因不明な事故に巻き込まれ重傷を負った沢田奈々は、夫の仕事場がある外国へ引っ越し、それに息子である綱吉もついていったと、彼らは聞かされているらしい。 

 しかし現実として、家光が保護したのは沢田奈々だけだ。正確には沢田奈々は保護。息子の綱吉は危険視するべき存在として幽閉しようとしたが、本人がそれに気づき逃走。……それ以来、ボンゴレの情報網を行使しても見つかっていない。

 何ともきな臭い事態だ、とリボーンは感じた。

 リボーンと沢田家光は若い頃からの友好関係を築いているが、今回は当てにすることは出来ないだろうと、先日の騒ぎで嫌になるほど思い知った。

 九代目自身も、育てていた十代目候補が次々と不幸に見舞われ、残った十代目候補として、沢田綱吉に目をやったところ、初めてこの事態に気づいたという。

 当然ながら、知った直後の九代目の激昂は凄まじいものだった。沢田家光は曰く、家庭の問題で有り、口出し不要としたが、それは初代ボンゴレの血統を絶やして良い理由にはならない。

 重傷を負った奈々は、現在も後遺症が残っており、既に子を望むことは絶望的とされているらしい。

 そうでなくても、三人の若い候補が変死した以上、血を少しでも多く残す必要があった。

 ここまでの一連の流れを聞いた上で、リボーンは、日本に渡ることを決意した。

 並盛から離れた可能性も考えはしたが、それは九代目の超直感が否定したらしい。

 どこにいるかは定かではないが、並盛のどこかで沢田綱吉は生存していると。

(後は地道に、目撃情報を探すしかねぇな)

 内心溜息をつきながら、リボーンは、とっていたホテルへと歩き出した。

 家に出入りしている可能性も考えて、一応は見に来たが、あの荒れ具合では可能性は低い。

 手がかりもないと考えるのが妥当だろう。

(……さて、どうするかな?)

 

 時間は変わって、翌朝。

 ここ、並盛神社では、一人の小さな影が動いていた。

 時間はまだ朝日も昇りきらない早朝。人通りもほとんどない。

 その影は本殿から鳥居に向かい、たまったゴミを掃き出していたようだ。ゴミを取り終わると、ゆっくりとした歩調ながらも階段の傍まで歩み寄った。

「うわぁ……鳥居の一部、見事にかけちゃってますけど……直せそうなんですか?」

 老朽化の影響だろうか、ひび割れた所からポロポロと零れている破片を目にして、少年は背後に問いかけた。その声はまだ幼い。声変わりもしていないのだろう。

「大事ない。主は至急清め終われ。すぐに夜が明ける」

 そう答えたのは本殿に備え付けられた賽銭箱の後ろ。開き戸と賽銭箱の間にある階段を椅子のように使い座る、一人の幼女のものだった。やけに大人びた、抑揚の少ない声は、しかし声変わり前の少年よりも明らかに幼い。それなのに、平淡とも淡白とも言えるその声音が、妙な凄みを生み出しているのは確かだった。

 その声に頷きながらも、少年は再び鳥居に目を向ける。

 鳥居を通して眺める街並みは、いつもと何ら変わらない。後数時間もすれば昇るだろう太陽を己は見ることを許されていなかった。そのことに僅かな悲しみを覚えるが、自分ではどうにも出来ないそれから目を反らすように、踵を返そうとして……それに気付いた。

 新たな影……本来なら居るはずのない、自分達以外の誰かが……石段を渡っているのだ。それを認識した途端、少年は知らず知らずに息をのんでいた。

「妖怪……ですか?」

 問いかけながらも持ったままだった箒を構えた少年に、制止の声がかかる。

「さてな。しかし徒人ではなさそうだ」

 囁くようなそれと共に、ふわりと艶やかに笑ったその姿は、明らかに見た目通りの、幼女でないことを認識させられる。

「姫様……? まさか戦う気何ですか!?」

 少年が問いかけた相手が向けた目は見た目にある幼さを削ぎ取ったような酷く老獪なものだ。

「お主はさがっておれ。我が結界を破る輩ぞ? お主に太刀打ちできるものではない」

 彼女の言葉は少年の実力、立場共に顧みれば、尤もなものだったが、彼の持つ僅かな矜持がその言葉を素直に飲み込ませなかった。

「でも……姫様に何かあったら!」

「それこそいらぬ世話じゃ!!」

 少年の抱いた心情ごと切り捨てた幼女は鋭い眼差しで少年を射抜く。ビクリと、その眼光に少年の体は震え上がった。

「妾はこの並盛神社の土地神! 夜薙(よなぎ)姫!!嘗ては鬼女として畏れられた存在ぞ!? 妾の怒りに触れるものには容赦はせん!! それは……貴様とて例外では無いぞ?」

 最後の一言をまるで反応を窺うように言葉を切り、幼女……夜薙姫は、怯えを見せた少年に、僅かな微笑を浮かべる。 

 言い返せない少年の様子に気が済んだのか、ふんと鼻をならしてから、幼女は少年を追い越した。

「下がれ……決して、社の外に出るで無い」

 断言に有無を言うことも出来ず、少年はただ社へ向けて歩を進めた。

 

 

 並盛町の山間部にそびえる並盛神社は、整備された入り口から石段を登り、一本道の作りになっている。石造りの古びた鳥居を抜けた先にこじんまりとした社があるだけの小さな神社であり、社務所なども存在せず、神を祀る祭祀の類ももう何年もやられていない。

 本来なら使われていない、廃れるだけの筈の場所に続く道が、常に綺麗に保たれているという事実に、リボーンは違和感を覚えた。

 おそらく何者かが整備しているのだ。しかし。

(なんのためにだ? ……この石段だけでも、かなりの距離があるのに、わざわざ整備し続ける理由。なんかあるはずだ……!)

 明らかに沢田綱吉とは関係の無い事柄である。

 しかしリボーンは躊躇無く、それを調べる気でいた。

 手がかり一つ無いのだから、こうなれば違和感を持ったところを虱潰しに調べるしか方法は無いのである。

「全く……難儀な話だ」

 沢田綱吉の最後の目撃情報は、家光から逃亡したというもの。

 彼曰く、彼の妻、沢田奈々に後遺症が残るほどの大怪我を負わせたのは息子である綱吉なのだという。そこまで危険を孕んでいた息子を一般人を守るために隔離。 ……実質、軟禁して殺そうとしたのでは無いかと言うのが、九代目の見解だった。その時点で事情を知り、保護できれば良かったと悔やみたいところだが、既に過ぎ去ったことは変えようも無い。

 しかしながら沢田奈々は沢田綱吉の手にかかったのでは無い、というのが、九代目の見解で有り、リボーンも同意見である。

 沢田奈々が重症を負った当時の事故の資料は、ボンゴレの方にも保存はされていた。

 調査の責任者は家光率いるチェデフだったが、ボンゴレ本部の諜報員も全く動いていないわけではないのである。

 その調査の真偽はどうあれ、その事件を皮切りに沢田綱吉は父親から猜疑の目を向けられた。その当時、幼少だった綱吉が自らの危険に察知して、単独で逃走したというのなら、もしかしたら「ボンゴレの血」にまつわる恩恵を既に受けていたのかもしれない。

(もしそうなら尚更、そいつが母親を害した可能性は低いな。死んでいる筈がねぇって言う九代目の言葉も頷けるってもんだ)

 リボーンは一人確信を深め……笑った。

 なぜなら、もし沢田綱吉が彼の恩恵を受けているというのなら、この現状……少なくとも、沢田家光には捕らえられていないということこそが、ボンゴレの血の意志でもあるのだ。もしその状態で真実己の手で親を殺したのなら、単なる逃亡ではなく、もっと穏便なおさめ方を導き出せるだろう。過激派辺りを説得すれば、超直感によってその相手がボンゴレにとっての害となる云々まで、誘導できたかも知れない。

 そんな好都合は起こらないと、事情を知らないものならば非科学的と笑うだろう。

 しかし一度でもその血にまつわる力を見たものは、決してそんな言葉は言えない。……それはリボーンも例外ではなかった。

 しかし改めて現状を整理しても、当然ながら手がかりと呼べるような代物は存在しなかった。

 その状況にリボーンも歯噛みしたい気持ちである。

 駄目で元々と、言う気持で確認したそこは予想通りながら嘗ては人がいたという話すら疑わしくなるほどの荒れ具合だった。社に取り付けられている鍵にしても完全に錆び付き、何年も明けられた形跡がない。

(やはり……ハズレか)

 わずかに期待していた分だけ、失望もそれなりである。

 はぁと溜息をつきながらも、他に並盛の中で怪しげなところは無かったかと、脳内の地図をひっくり返す。

 並盛山、並盛海岸、商店街など、大雑把に分ければ並盛の中はいくつかの区分には分けられるが。

(ここほどあからさまな所は他にねぇな……)

 浚ったことで更に確信を強めてしまい、しかし現実に何もない事で、リボーンは前途多難を認識した。

 ことがことであるだけに、急を要する作業であるが、急げば逆に見落としてしまうものもあるというものだ。

 自らを落ちつかせるためにも、一息ついて、序でに一服しようと思い至り、リボーンは片手に持っていたトランクから持ち運んでいるティーセット一式を取り出した。

 荷物のほとんどはホテルにおいてはあるが、一日町を巡ることを覚悟して、一服分のコーヒーは入れられるように持ち運んでいたのである。

(さて……次はどこへ向かうか)

 コーヒーを口に含みながら考えかけたリボーンは、そこでふと、何か気配を拾ったように感じた。

 ピタリと、カップを持つ手を止め、じっくりと辺りを見渡す。

 しかし、僅かに聞こえる鳥の声や、風の音以外は、至って静かなものである。

(……気のせい、か?)

 そう思いかけたとき、それが大きな誤りであったことに、リボーンは気づいた。

「……おしゃぶりが、点滅しているだと?」

 思わず声に出てしまったが、それを気にする余裕はリボーンには無かった。

 彼自身も見たことの無い反応に、ただ目を丸くする事しか出来ない。

 チカチカと瞬くようなおしゃぶりの中の炎の揺らぎに導かれるように、リボーンは腰を浮かした……瞬間。

 揺らいでいた炎が一筋の細い光線となって、社の入り口に当たる。

 鍵の錆び付いて動かない筈の扉には一見変化が見えないように見えるが、良く見ると、僅かな波紋が水たまりに投石した直後のように広がっていた。

「こいつは……どうなってんだ?」

 近づくと、ゆらゆらと揺れる水面は、ますます大きくなる。

 その幻覚を作り出したものの意図こそはわからないが……誘われている、それだけは分かった。

「面白ぇじゃねぇか」

 一息に言いきり、ニヒルな笑みを浮かべたリボーンが、出した答えは、単純であった。

 大きくなった波紋の中に、自ら飛び込んだのである。

 

「は………!?」

 一声上げた少年は、間違いなくその光景に絶句していた。夜薙姫の指示に従い、締め切っていた部屋の中で、僅かな、何かの声を聞いた気がした。

 もしや彼女の言っていた、侵入者かと、身構えるが、次の瞬間、目に飛び込んできたそれに、思わず固まってしまったのだ。

 しっかり閉じられている筈の扉。隙間一つ無いはずのそこから、黄色い光が漏れていた。

 しかもその光は床で無く、俺の胸に吸い込まれている。

(な……何? 新手のなんか? 侵入した妖怪の畏れ?!)

 内心パニックになった少年は、ワタワタと後退るが、後退っても、まるで接着剤でくっつけているかのように、その光が己の胸から離れることは無い。

(何だよこれ! まさか外で何か起きてるのか!? ……まさか、姫様……!!)

 グルグルと、思考は最悪の方向に回っていく。もしかしたらすぐにでも、ギィと音を立てて扉が開かれるのでは無いかと、震えていることしかできない。

 この数年、守られてばかりだった自分が、最後に殺されることになると覚悟はできていたのに、殺される相手を見るこの数秒が、何時間にも長く感じられた。

 ……そう、この少年は、扉が空く瞬間を待っていたのである。

 だからこそ、心の準備など土台無理な話だった。

 グワリと口が開くかのように大きな穴が空いた空間から、人が出て来る光景など完全に許容オーバーと言うものだ。

 本来ならあり得ない光景。しかしここが現世と別次元にある神域だからこそありえる光景に、理解する行為を手放したまま少年は情けない悲鳴で答えた。

「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 




 何とも情けない悲鳴……。
 まぁ、これが彼の本質ですね。
 変わりの無い姿に、喜べばいいのか嘆けば良いのか……。

 ではまた次回。

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