Fate/XXI   作:荒風

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ACT28:『世界』の運命(下)

 

 それは、ちょうど言峰綺礼が、人であることをやめたのと同じ時刻。

 

 モズのはやにえとされた虫のように、ブチャラティはアサシンに腹を貫かれていた。

 まず誰が見ても致命傷。たとえこのままとどめを刺されなかったとしても、出血多量によりいずれは死に至る。長くは持つまい。

 

(く……だが、まだできることはある……!)

 

 だがそれでも、彼は激痛の波に掻き消されそうな意識を必死で保ちながら、自らを貫く吸血鬼の腕に手をかける。

 

「む!」

 

 その手の動きに、アサシンは追い詰められたものが藁をもすがるような無意識の行動とは、違うものを感じた。

 

(こいつの能力はどんなものでも切断できる。この期に及んで、我が腕を切り落とそうとしている? あるいは、押さえつけて、ランサーの攻撃を防げぬようにするつもりか? その根性は褒めてやるが……無駄だ)

 

 アサシンは素早く腕を引っこ抜き、もう一方の腕を振り上げる。

 膝を突き、背後を振り向こうとするブチャラティ。その眼にはまだアサシンへの戦意が滾っており、諦めは無い。だが、彼がスタンドを繰り出すよりも、アサシンが腕を振り下ろし、止めを刺す方が早いだろう。

 

「死ぬがいい!」

 

 グッ!

 

「!?」

 

 思わぬ抵抗。アサシンが見ると、振り下ろそうとした腕に、【ムーディー・ブルース】が組み付いていた。

 

「させねぇ…」

 

 本体であるアバッキオが呟いているのが、アサシンの鋭敏な耳に届く。しかし、アサシンはそんなアバッキオの行為を鼻で哂った。

 

「それが、どうしたぁッ!!」

 

 アサシンは腕により力を込め、しがみついている【ムーディー・ブルース】を持ち上げる。【ムーディー・ブルース】の力は人間並みであり、吸血鬼の怪力には及ぶべくもない。スタンドがスタンドでしか傷つけられないとはいえ、スタンドの力を超えた力を押さえ込むことはできない。【ムーディー・ブルース】は振り回され、鞭のように、ブチャラティへと叩きつけられた。

 

「がはっ!!」

「ブチャラティ!!」

 

 殴打されて呻くブチャラティへと、アバッキオが走り出そうとする。

 

「フン! 無駄だ無駄ぁ! 貴様らごときに、このDIOが止められるものかぁ!!」

 

 アバッキオの決死の行動をアサシンは嘲る。アサシンは【世界(ザ・ワールド)】を出現させ、【ムーディー・ブルース】を殴りつけた。【ムーディー・ブルース】は紙のように吹き飛び、ブチャラティを巻き込み、宙を舞う。

 スタンドを吹き飛ばされたアバッキオもまた、己が肋骨を圧し折られる衝撃を受け、吹き飛ぶ。

 

「く! 『死髪舞剣(ダンス・マカブヘアー)』!」

 

 ウェイバーは髪を長く伸ばし、ネットのように広げる。髪の毛の網に、飛んできた二人の体が叩き込まれた。

 どうにかそれ以上の負傷を負わせずに、二人を受け止めることができ、ウェイバーは安堵する。それを見て、アサシンは余裕の素振りで、ウェイバーを評価する。

 

「ほう。中々に素早く動けるのだな。貴様の先祖、ブラフォードよりも速いのではないか?」

「な、なんで、お前がそれを知って、しかもまるで見てきたように……」

 

 ウェイバーは、アサシンが、タルカスとの戦いでウェイバーが自分の先祖がブラフォードであると言ったのを、念写で見ていたことを知らない。黒騎士ブラフォードが、DIOの血によって魔物として黄泉還り、手下となっていたことを知らない。

 

「ブラフォードの血、ジョースターの友……貴様はこのDIOとの宿命に関わり過ぎている。最後の相手が貴様であったこともまた、運命なのかもしれん。だからこそ、完璧に始末しなくてはならない」

 

 アサシンはウェイバーに答えることなく、一人呟くと、ハンカチでも出すかのような自然な動きで、一度に5本のナイフを掴み出す。これから人を殺すという気負いも何も無く、無造作に投げ放った。人体に深く突き刺さる速度と威力が、少年魔術師を襲う。

 

「『死髪舞剣(ダンス・マカブヘアー)』!!」

 

 ついに意識を失ったらしいブチャラティとアバッキオの体を地に降ろし、黒髪を限界まで伸ばす。5メートル以上に伸びた髪の毛で、厚さ5センチの繭のような壁をつくる。魔力を帯びて鋼線以上に強化された髪の毛の束でさえ、ナイフは切り抉っていこうとしたが、ウェイバーは髪の毛を揺らめくように動かしてナイフを絡め取り、横方向から力を加えることで推進力を奪って、動きを止めた。5本のナイフは蜘蛛の巣にかかった羽虫のように、髪の毛の壁に引っかかって、ウェイバーの身には届かずに終わった。

 

「く、うう!」

 

 しかし、ウェイバーの魔力も大分消耗していた。一人前の魔術師ならばどうということもない術だが、見習い風情のウェイバーにとっては十分な魔力の消費だ。これ以上の攻撃を受けると危うい。まして、直接アサシンに殴りかかられでもしたら、髪の毛の壁など一瞬と持たずに突き破られるだろう。

 それはアサシンもわかっている。わかっているからこそ、そのとおりにしてやろうと、動き出した。

 

「Wryy……」

 

 ウェイバーとの距離は現在、15メートルほどである。アサシンの速度、跳躍力なら2秒はかかるまい。ブチャラティ、アバッキオは既に意識が無い。雁夜もバーサーカーへの魔力供給で消耗しており、宝石の魔力によって回復するまでは、蟲を操るのも難しいだろう。バーサーカーも戦場には復帰していない。

 つまり、ウェイバーへの助けとなるのは、ただ一人。

 

 ジャラララララ!!

 

 金属が鳴る音と共に、蛇のようにしなる物が、アサシンへと躍りかかる。

 

「む!」

 

 アサシンはそれを叩き落とそうとしたが、曲線状に動くそれはアサシンの手をすり抜け、アサシンの体へと巻き付く。アサシンの両腕を束縛し、それの先端は首へと辿り着いた。

 

 ガッシィィィン!

 

「ヌウウウゥゥ!! こいつは!」

「【双首竜の鎖(デスマッチ・チェーン)】!」

 

 アサシンの首に嵌ったそれは、アサシンの胴体を縛る鎖と繋がったリング――首輪であった。首輪から伸びる鎖は、もう一つの首輪に繋がっており、その首輪は、ウェイバーの助けとなるただ一人、ランサーの手の中にある。ランサーはナイフで受けた傷が治りきらぬままアサシンを見据えていた。

 

「こいつは……タルカスの宝具か」

 

 ランサーがタルカスより譲り受けた【双首竜の鎖(デスマッチ・チェーン)】。本来はただの鋼鉄の鎖だが、幾人もの騎士が逃れられなかったという逸話によって、【約束された勝利の剣(エクスカリバー)】に比する対城宝具の力でも無ければ破壊できない、頑丈さを生み出していた。いかにアサシンといえど、対城宝具級の破壊力は有していない。

 

「『令呪を以て命じる! アサシンに勝て! ランサー!!』」

 

 ウェイバーは、ライダーとの戦いに続き、2番目の令呪を消費した。

 ランサーに魔力が注がれ、傷が癒え、万全の状態となる。ランサーは首輪を地に落とすと、鎖の輪の中に【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】を突き刺し、大地に縫いとめる。これで、アサシンはそう簡単には移動できなくなった。

 

「……我が主、ウェイバー・ベルベットに栄えある勝利を!!」

 

 ランサーは【他が為の憤怒(モラルタ)】を両の手で握り、アサシンに対して構える。

 

 さて、接近戦において、ランサーとアサシン、どちらに軍配が上がるか。

 

 速度はランサーが上回るものの、打撃の破壊力と規模はアサシンの方に分がある。ましてアサシンはほとんど不死身。癒えぬ傷を与える【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】が失われている今、有効な攻撃手段が無い。セイバーのように大規模な火力を持たないランサーが頼みとするのは、速度による手数の多さのみ。

 ランサーは今のところ『優勢』どまりだ。【太陽神の指輪(アポロン・リング)】も、直接攻撃から身を護るだけで、武器を使われたら抵抗できない。時を止められたら、それこそ打つ手がない。

 けれど、今ならば、

 

(今ならば、時を止めても、まずは鎖を解かねばならない。ただ巻き付いただけの鎖など、すぐに解けるだろう。だがほんの少しであっても手間はかかる。その後で、この【他が為の憤怒(モラルタ)】から繰り出される百の斬撃を全てしのげるか――!!)

 

他が為の憤怒(モラルタ)】の攻撃射程距離は20メートル。アサシンの【世界(ザ・ワールド)】の射程距離は長く見積もっても10メートル程度。ランサーは安全圏から攻撃できる。

 しかも、今のランサーは令呪によって全力以上の攻撃が可能だ。

 

「【他が為の(モラ)――)」

 

 ランサーは、アサシンから15メートル離れた距離で【他が為の憤怒(モラルタ)】を振りかぶる。対してアサシンは、まだ動くそぶりを見せない。

 ただランサーを睨みつけるだけ。

 

(……いや、違う)

 

 だがランサーは、その眼差しに違和感を覚えた。その視線は、こちらを殺意や敵意をもって睨みつけているというよりは、

 

(狩人が冷静に、弓矢の狙いをあわせているかのような――)

 

 ランサーが【他が為の憤怒(モラルタ)】を振り下ろす直前、

 

「くらうがいい!」

 

 アサシンの眼から、圧縮された体液が光線のように放たれる。双眸から離れたそれは、ランサーの両肩を、苦も無く撃ち抜いた。

 

 ――『空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)

 

 極めて高い圧力をかけられて弾き出された液体は、ウォーター・カッターとなって、大理石さえ切断する。

 かつてアサシンが、宿敵ジョナサン・ジョースターを殺した技であった。

 

「ッ――憤怒(ルタ)】!!」

 

 しかしランサーもまた英雄として、その名を世界に刻みつけた存在。身を撃ち抜かれてなお、振り下ろす剣を止めることなく、百の斬撃を生み出した。

 痛みを凌駕する精神と技に、アサシンは驚きの表情を見せるが、すぐに次の行動に移る。

 

「時よ止まれ! 【王の世界(ザ・ワールド)】!!」

 

 アサシンの宝具の真名が高らかに叫ばれる。

 そして、一瞬さえ経過せず、ランサーの目に移るものは姿を変えていた。

 

 アサシンのいない空間を、無意味に切り刻む百の斬撃。

 立ち上がる土煙と、散乱した石畳の破片。

 耳を打つ破砕音や落下音。

 そして、アサシンの立っていた場所に開いた、大きな穴――アサシンに絡んでいた鎖が、穴の中へ続いている。

 

(穴を掘って――!)

 

 ランサーはすぐに、アサシンのしたことを理解する。斬撃は周囲全体から襲いかかってくる。一つの方向から来る斬撃に対処していては、他方向から迫る斬撃によって刻まれる。

 それに対してアサシンは、足元の大地に穴を開け、その中に逃げ込んだのだ。下に逃げれば、側面からの攻撃はやり過ごせる。上からの攻撃に対しては、下に潜った後、更に横方向への穴を掘って進めば、上から降ってくる斬撃もやり過ごせる。

 アサシンの能力を持ってすれば、鎖をほどくのに2秒、穴を掘るのに3秒というところか。

 そして更に、

 

(まずい! おそらく次に奴は)

 

 ランサーは、足元から地面の震動を感じ取っていた。

 

(これは、こちらに向かって……速い!)

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ドッゴォッ!!

 

 ランサーの足元が爆発した。

 正確には、石畳が砕け飛び、地中からアサシンが飛び出してきた。衝撃でランサーの体も吹き飛ばされる。

 

(やはり! 穴を掘り進めて、死角である真下から襲って来たか!)

 

 アサシンの首には、既に首輪はかかっていない。

 首筋に、首を一周する、血のにじんだ生々しい傷ができていた。首輪の方ではなく、アサシン自身の首を一度切り離して、首輪を外した後、またくっつけ直したのだろう。

 不死身の怪物だからこそできる方法だ。

 

「甘かったなぁランサー!!」

 

 アサシンは地表に出ると同時にナイフを手にし、至近距離から投げ放つ。

 

「くっ!」

 

 着地したランサーは、飛来するナイフをかわすために身をかがめ、同時にアサシンの足に向けて、払うように回し蹴りを放つ。

 普通なら致命傷を期待できるほど重い蹴りではないが、【太陽神の指輪(アポロン・リング)】の力を帯びた足は、触れるだけでアサシンにとって手痛いダメージとなるはずだ。

 けれど、勿論それはアサシンもよく理解していた。

 

「無駄ァ!!」

 

 アサシンが地下から姿を現した時、アサシンは既に【世界(ザ・ワールド)】を放っていたのだ。アサシンから3メートルほど離れて動いていた【世界(ザ・ワールド)】。何をしていたのかというと、

 

 ジャラララララッ

 

「!! 【双首竜の鎖(デスマッチ・チェーン)】!?」

「今度は私が使わせてもらうぞ」

 

 アサシンの首から外れた鎖が、【世界(ザ・ワールド)】の手に掴まれ、ランサーに向けて投げられていた。

 鎖はランサーの足に絡まり、アサシンの足を蹴りつける前に【世界(ザ・ワールド)】に引っ張られ、動きを止められる。

 

「【他が為の(モラ)――)」

「遅い」

 

 自由を失ったランサーは、魔剣【他が為の憤怒(モラルタ)】によって再度攻撃しようとするが、その前にランサーを絡め取った鎖を、アサシンが掴む。

 すると、

 

 ビキビキビキッ

 

「なっ! 体が……凍りついて……ッ!」

 

 ランサーの足が凍てつき、石像のように固められていた。

 

 ――『気化冷凍法』

 

 水分は気化する時、同時に熱を奪っていく。アサシンはその作用を利用し、自分の体内の水分を瞬時に気化させることで、低温を造り出し、触れた相手の肉体を凍りつかせることができる。

 人間の片腕程度ならば触れた一瞬で、全身でも2秒で凍結させることができるのだ。

 アサシンが生み出したこの技術は、血液の流れによって太陽の光を生み出す波紋を、血液を凍らせることで発生させないようにするためのものだ。宝具から生み出される太陽の光は、波紋とは違い、血液の流れと関係が無い。ゆえに直接触れて凍らせるのは無理だが、こうして物体を通じて凍らせることはできる。

 

「癖の悪い足を封じたところで、とどめといこうか……」

 

 アサシンは鎖から手を離すと、両手にナイフを掴み、狙いをさだめる。全身を固められ、霜が降りたランサーを見降ろし、それでもなお、ランサーの動きを見逃さぬように見据えていた。

 

(これほどとは……こちらの策はすべて覆され、逆に利用されてしまうなど)

 

 戦闘力もさることながら、対応力、判断力が並みではない。一瞬の不意や油断を突くことはできても、一瞬程度では意味が無い。即座に反撃され、逆転される。刃がその身に届いたとしても、時を止められれば、すぐに体勢を立て直される。

 もっと確実な隙をつくらねばならない。時を止めることさえ忘れるほどの、致命的な、決定的な油断を誘わなければならない。だが、生憎とアサシンは誇り高く、驕り高ぶりながら、同時に狡猾で慎重だ。隙をつくるには、それこそ命を賭けなければならない。

 

「これでチェックメイトだ。消えよ、ランサー」

 

 凍結した肉体を砕き散らすに十分な力を込めて、ナイフが投げられようとした時、

 

 ギュオンッ!

 

 アサシンの背後から、鋭い音をたててサッカーボールほどの大きさの塊が飛来した。

 そのままなら、アサシンの後頭部に直撃する。

 しかし、

 

「気がつかぬとでも思ったか?」

 

 アサシンは敏感に音を聞き取り、背後へ振り向くと同時に、飛んできた物体を【世界(ザ・ワールド)】の手で受け止める。

 物体の正体は、寄せ集めて圧縮され、固められたバーサーカーの鎧の破片であった。

 

「懲りずに牙を向くか、バーサーカー。よかろう今度こそ……」

 

 嘲りながら、鎧の残骸が飛んできた方向に目を向けて、

 

「…………!!?」

 

 心の底から、驚愕した。

 

 鎧が飛来した方向にいた人物。

 鎧を飛ばしてきたその人物。

 

 それは心に思い描いた、鎧を着込み、黒い長髪を乱し、妄執の鬼のような形相をしたバーサーカーではなかった。

 

 コートを着込み、黒髪の上に帽子を被り、凛々しさと雄々しさ、冷静と情熱を兼ね揃えた、端正な顔つきの青年。泰然と立つ姿は不動の強さを思わせ、放たれる威圧感は、空気が唸っているのではないかと錯覚させる。

 

 アサシンの記憶にあるものとは衣服が違う。背丈もより高く見える。だが、その顔は決して忘れることのできないものだった。

 アサシンは、男の名前を呼ぶ。男の名前以外の、何もかもを忘却したように棒立ちとなって。

 

 

「承太郎――ッ!!」

 

 

空条(くうじょう)承太郎(じょうたろう)

 

 

 かつてアサシン――DIOを、殺した男の名前だった。

 

「なぜ貴様がッ!?」

 

 アサシンの動きが止まった時、相手は動いていた。10メートルはあった間合いが、一瞬にして詰められる。

 とても人間技ではなかった。

 

「な……!?」

 

 防御の反応さえできずにいたアサシンに対し、相手が右拳で殴りつけた。拳は、アサシンの左目を潰し、皮膚を裂き、骨を割り、奥歯を砕いた。

 ただの人間に、サーヴァントを傷つけるような打撃は放てない。

 

「????!!」

 

 脳にまで響く打撃によろめきながら、アサシンは相手の姿が、奇妙に歪むのを見た。相手の周囲に黒い霧のごときものが立ち昇り、同時に相手の姿がゆらぎ、変化していく。

 コートは硬質の鎧となり、象牙色の肌はより白くなり、帽子は消え、髪は長く伸びていく。

 

「貴様ッ! バーサーカーかッ!!」

 

 承太郎の姿は、狂える黒騎士のものに変わり、それと共に、騎士の剣が抜き放たれる。

 

 ――【無毀なる湖光(アロンダイト)

 

 ドンッ!

 

 強い断裂音が空気を叩く。

 アサシンの左腕は、魔剣が抜き離れたと同時に、切り分かたれていた。

 

「GUAHHHHH!?」

 

 ――【己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)】。

 

 バーサーカーの持つ宝具の一つ。サー・ランスロットが、自分の正体を明かさずに数々の武功をたてた逸話が、具現化したものであり、姿形を任意の人物に変化させられる。

 バーサーカーとして召喚されたゆえ、その力は劣化し、自分の情報を隠すための偽装にすぎなくなっているが、令呪の力を借りれば、その真価を発揮することもできる。

 

 ウェイバーたちがアサシンに対して行った作戦は、この宝具を活用したものであった。

 

 まず、彼我の戦力を比べて、ランサーとバーサーカーの二人がかりであれば、アサシンに勝てるであろうか?

 

 ウェイバーたちは、否、と判断した。

 

 そもそもバーサーカーは他者と連携して戦えるような、まともな精神状態にはない。だからこそのバーサーカーなのだ。ランサーがバーサーカーに合わせて行動することはできるが、そんなものは連携とは言えない。アサシンには通用するまい。

 それでは二人がかりであっても、結局は1対1となってしまう。そして、1対1では、まず勝てない。単純な戦闘能力だけならば互角くらいであろうが、時間停止は流石に打つ手がない。

 勝利する道があるとすれば、時間停止をすること間に合わないような、大きな隙をつくりだすしかない。

 

 どうやって隙をつくるか?

 

 アサシンが、驚きであれ、恐怖であれ、悦びであれ、我を忘れるほど心に衝撃を受け、隙を見せてしまうような、重大な事柄とは何か。

 

 ウェイバーたちが出した結論は、アサシンが聖杯に、その滅びを願おうとするほどの、不倶戴天の敵対者――『ジョースターの血族』。

 

 だがこの時点で彼らを呼び寄せることは、もちろんできない。そこで使われたのが、バーサーカーの宝具であったわけである。

 ただ変身させた姿を見せるだけでは、十分な動揺を誘えない。

 ある程度は戦いを行った上で、タイミングを見計らって繰り出す必要があった。

 

 実行は、ランサーが【双首竜の鎖(デスマッチ・チェーン)】でアサシンを縛ったときから始まった。

 あの直後、ランサーがアサシンの意識を引き付けている間に、ウェイバーは雁夜に対し、メイクを行った。以前、ケイネス相手に使った、『勝利をもたらす幸運のメイク』だ。これにより、雁夜はある程度ご都合主義とさえ言える幸運を、短時間であるが手にすることができるようになった。

 そして次に、雁夜は軋む肉体と、朦朧とする意識を揺り動かし、令呪を以て命じた。

 

「『令呪を以て命じる。ここに来い、バーサーカー』」

 

 それにより、傷つき倒れたバーサーカーが、ウェイバーと雁夜の前に、音も無く転移した。もちろん、アサシンに気付かれることも無かった。

 先ほどまで暴走状態だったバーサーカーだったが、精神はともかく、余力が無く、ただ双眸だけに憎しみを滾らせ、横たわる体を必死に動かそうとしていた。だが、まだ解き放つわけにはいかない。雁夜も、魔力を補給してやることなく、バーサーカーの魔力の要求を拒み、耐えていた。

 その横合いから、ウェイバーはバーサーカーにもう一度、残ったメイク道具の全てを費やし、『勝利をもたらす幸運のメイク』を施した。次に、写真をかざし、バーサーカーに『空条承太郎』の姿を見せつける。

 そして命じる。

 

「『令呪を以て命じる。この写真の男の姿に変身しろ、バーサーカー』!!」

 

 そして【己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)】により、姿を変えたバーサーカーは、雁夜から魔力を与えられ、また戦場に戻った。

 

 危険はあった。

 

 いきなり作戦の要であるバーサーカーがいきり立ち、アサシンに酷く傷つけられたことも。

 アサシンが予想より用心深く、【太陽神の指輪(アポロン・リング)】すぐさま気付かれたことも。

 ブチャラティたちが想定以上に深い傷を負ったことも。

 

 あと少しで、隙をつくる前の準備段階で敗北してしまっても、おかしくなかった。

 

 だが、結果として、成功した。

 

 ウェイバーたちの持つすべてを費やし、ようやく今、勝利への一歩が踏み出せた。

 

 その一歩、止めるわけにはいかない。

 

「『令呪を以て、再度命じる! アサシンに勝て! ランサー!!』」

 

 ウェイバーの最後の令呪が発動する。重複した命令は、通常以上の効果となり、凍りついたランサーを動かした。

 

「ぬ、ううっ、御意のままにっ!!」

 

 凍てついた肉体に魔力を通わせ、腕を伸ばし、鎖を取り払う。枷を外したランサーは立ち上がると、まだ冷たい体を、熱く滾る騎士の戦意と忠誠心で動かし、跳ぶ。降り立った場所には、【双首竜の鎖(デスマッチ・チェーン)】を固定するために、大地に突き刺した【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】があった。

 

「――――ッ!!」

 

 ランサーが行動する一方で、元の姿に戻り、二つの宝具を封印して【無毀なる湖光(アロンダイト)】を抜いたバーサーカーは、全ての力を上昇させた。加速した剣撃により、更にアサシンを刻んでいく。

 

「この……貴様など、このDIOにとっては猿も同然の、下等生物がッ、このDIOに、このDIOにィィィィッ!!」

 

 叫ぶアサシンは、動揺のあまりに出すことも忘れていたスタンドを出現させる。切り落とされた左腕以外の傷は、戦闘を行ううちに癒えていくが、アサシンの心につけられた屈辱は癒えず、沈殿し、更に怒りを燃やす燃料となる。

 

「【王の世界(ザ・ワールド)】ォォォッ!!」

 

 ズドッ!!!

 

 時が止まり、渾身の拳によってバーサーカーの霊核が貫かれる。

 

(今度こそ致命傷! こいつはもはや死んで――)

 

 バーサーカーの死を確信したアサシンだったが、時が動き出した直後、アサシンの左胸に、【無毀なる湖光(アロンダイト)】が突き刺さっていた。

 

「な……!? 貴様ッ!!」

 

 激昂したアサシンのスタンドが、バーサーカーを殴りつける。首が吹き飛ぶほどの打撃を顔に受ける。肋骨、胸骨が折れ、剣を握る腕の骨が裂ける。それでもバーサーカーは退くことなく、腕を捻ってDIOの霊核を完全に粉砕しようとする。

 死ぬしかない傷を負ってなお、バーサーカーは戦うことをやめなかった。

 それほどにバーサーカーを動かすのは、怒り。

 

 セイバーを、アーサー王を、かつての主君を、運命の中で分かたれ、筋違いの恨みを抱いてなお、愛さずにはいられない朋友を、侮辱したことへの怒り。

 アサシンと、バーサーカー自身への怒りが、死の傷を超えて、バーサーカーを突き動かしていた。

 

「がっ、はっ……この、死にぞこないが……この、DIOにまたしてもォォ……!!」

 

 たまらず、DIOはまた時を止める。

 

「【王の世界(ザ・ワールド)】!」

 

 時を止めている間に【無毀なる湖光(アロンダイト)】を抜くアサシンだったが、内心は焦っていた。

 

(時を止めるのは、これで5回目だ。ランサーの攻撃をしのぐために3回、バーサーカーを殺すために1回、そして今で5回目。心臓の霊核も再生させねばならん。これ以上は、魔力が持たない。次は消滅する覚悟がいる)

 

 綺礼もまた戦闘中で、呼びかけに応じる余裕は無い。

 

「ひとまず、バーサーカーの始末だ。WRYYY!!」

 

 ゴウッ!!

 

 スタンドの拳が、今度こそバーサーカーを吹き飛ばす。数メートルを飛んでいったバーサーカーは、流石にもう戦線復帰はできないだろう。心臓部の霊核が破壊されることはギリギリ防いだ、が、かなりの消耗である。

 

「……あとは、ランサー!」」

 

 時を止められなくても、腕が一本だけになっても、それでもなお、ランサー1体を葬る自信がアサシンにはあった。

 そう、かつて宿敵を殺した時、彼には首一つだけしか残っていなかったのだ。

 

(それに比べれば、槍兵との戦いなど、ろうそくの火を吹き消すように容易い!)

 

 ランサーの方を見れば、彼は槍一本のみを握り、剣は腰に納められていた。

 現在、ランサーとアサシンの間合いは5メートル程度。どうにか動けるとは言え、凍った腕で【他が為の憤怒(モラルタ)】を振るったとしても、斬撃がアサシンを斬るより前に、距離を詰めたアサシンのナイフがランサーの霊核を抉るだろう。それよりは、より速い槍に賭けた方が、分がいい。

 

(この距離でなら、時を止めていれば俺を確実に殺せている。それをしないのは、おそらくもう、時を止められるだけの魔力が残されていないからだ。令呪の加護を受けても、もはや消耗が大き過ぎる。一撃でアサシンを仕留める。それ以上は振るえない)

 

 両者はまみえ、そして同時に動いた。

 

「うおおおぉぉぉぉぉッ!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄――ッ!!」

 

 ランサーが一歩、力強く踏み込み、DIOに穿たれ、凍らされた腕が悲鳴を上げるのを無視して、全力を振り絞って投げる。全てを注いだ投擲であった。投げた後は、もはや動かすこともできないほどに、全てを注ぎ尽くした一撃。

 

 アサシンは、しかしそれをかわす。弾丸を見て、つまみ受けることも容易い【世界(ザ・ワールド)】の視力をもってすれば、『放てば必ず当たる』といった特殊効果があるわけでもない投擲など、どれほどのものでもない。

 

「こんな眠っちまいそうな攻撃で!!」

 

 アサシンは嘲笑う。だが、投げた後のランサーの眼を見て、その笑みが凍りついた。

 その眼は、避けられてなお、絶望してはいなかった。静かに、覚悟を湛えていた。

 

 ランサーは、落ちついて呟く。

 

「……『砕けた幻想(ブロークン・ファンタズム)』」

「―――ッ!!」

 

 狙いを悟ったアサシンが、その場を離れようとした時にはもう遅かった。

 

 通り過ぎた【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】が、内包した神秘を爆発させた。絶大な火力はアサシンの背後から迫り、その身を包みこんでいく。

 吹き荒れる閃光と爆風。石畳が砕け、大気が裂ける。

 

 ――『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

 宝具に込められた魔力を暴走、爆発力に変えて解き放つ。凄まじい破壊を実行できるが、英霊の象徴となる宝具を犠牲としなければならないため、それを行う者はまずいない。

 だからこそ、アサシンもランサーがそれを行うとは思ってもみなかった。

 

 ランサーやウェイバーたちは、身を伏せてその破壊力をやり過ごす。

 爆発自体は一瞬で終わったが、大気は唸り、残響はしばらく耳を刺していた。やがてそれも終わり、夜の静寂が戻る。

 そして、後にはクレーター状の破壊の跡が残るばかり。アサシンの姿はどこにもなかった。

 

「やった……! 勝ったぞ!! 勝ったぞ、ランサー!! よくやった!!」

 

 ウェイバーが心身の疲れも忘れ、跳びはねんばかりに喜びはしゃぐ。雁夜も、安堵のため息をついた。

 

「しかしランサー、お前、宝具を……」

 

 英霊にとって宝具はただの武具ではない。人生の象徴、英雄の誇り、肉体の一部も同様である。【必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)】に続いて、またもそれを失ったランサーの気持ちを慮り、ウェイバーは喜びを納め、気遣う表情になる。

 けれど、ランサーは微笑んで首を横に振った。

 

「確かに【破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)】は我が養父、ドルイドのアンガスより贈られた、我が誇りでした。けれど、そのためにもっと大切なものを失ってしまっては本末転倒というもの。貴方が教えてくれたことです。主よ」

「……ランサー」

 

 何を言っていいのか、ウェイバーは言葉に悩んだ。何を言っても、もはや無粋であると思えた。だから、結局はこう言った。

 

「ありがとう、ランサー」

「ご命令に従い、騎士の役目を果たしたまでのこと。お褒め頂くには及びません。ですが光栄に思い――」

 

 ランサーもまた清々しく、慎ましくも、喜びを表そうとする。

 

「確かに、褒めるのには及ばんな」

 

 ランサーの耳元で、声がした。

 

 ドス

 

 ごく小さな音がした後、ランサーは背中に強い熱を感じた。

 

「な、あ、うおおぉっ!!」

 

 歯を食いしばり、ランサーはよろめきそうな体を捻り、背後の存在へ殴りかかる。だが標的は空中に跳び上がり、それをかわした。

 ランサーの拳が届かぬ位置に着地したのは、

 

「惜しかったな……実に」

 

 軽度の火傷こそ負っているが、いまだに命を保つアサシンであった。

 

「ば、馬鹿な……」

 

 ランサーが青ざめた表情で、目の前の光景を否定する。その場の、アサシン以外の全員が、起きれば覚める、ただの悪夢であってくれと願う。だがそれはどうしようもなく現実だった。

 

「私も正直、もう駄目かと思ったよ。賭けだった。だが、本当にすれすれのところで……6回目の時間停止に成功した。もう少し、あとほんの小指の爪の先ほどの魔力が欠けていたら、私は消滅していただろう。しかし、私は賭けに勝った」

 

 まさに絶望であった。

 アサシンは、時間停止によって爆発の範囲外にまで逃げ延びていたのだ。そして霊体化し、ランサーたちが完全に油断する時を待っていた。

 もはやスタンドパワーも切れ、ろくに【世界(ザ・ワールド)】を使うこともできないが、ここまでくればアサシンの勝利はまず揺るがない。

 あとはランサーが消滅するのを待ち、ウェイバーたちの生命力を吸収して魔力を補充するだけ。

 ウェイバーと雁夜の顔から、色が抜け落ちる。真に絶望的な状況になると、人間は表情をつくることもできなくなるらしい。ただ呆然と、アサシンを見つめていた。

 

(なんと、いうことだ……)

 

 ランサーは、己の背中にナイフが突き刺されていることを理解し、それが霊核にまで届いていると認めざるを得なかった。このままでは10分も持たずに、自分が消滅することも。

 

(今、俺が消えれば、主が死ぬ。全ての想いが、水の泡と消えてしまう。その前に、せめて)

 

 右拳を強く握る。その右の人差指には、【太陽神の指輪(アポロン・リング)】が輝いていた。

 ランサーが最後の力を振り絞り、前に踏み込む。

 

「はっ! 無駄無駄無駄無駄ァッ!!」

 

 アサシンは反撃することはない。そんな労力は無駄だ。ただこの一撃をかわすだけで、ランサーは残った魔力を使い果たし、すぐに消滅する。

 勝負は既についている。

 

 そう、今度は、アサシンこそが油断していた。

 

 ドンッ!

 

「ッ!?」

 

 かわそうとしたアサシンの背後を、衝撃が走った。衝撃と言っても、少し押す程度の軽いもの。だが、退いてランサーの拳をかわそうとしていたアサシンにとって、その衝撃は回避を完全に阻害する致命的なものだった。

 首を捻ったアサシンが背後に見たのは、ウェイバーだった。恐怖にひきつり、目じりに涙まで浮かべながら、それでも死地に臨んだ少年がそこにいた。

 髪の毛を地に着くまで伸ばし、第3の足として使って、踏み込みを行い、突進力を増して、全力でアサシンにぶつかっていた。ウェイバーは、ランサーが拳を握りしめたのを見た瞬間、ランサーがアサシンに殴りかかることを理解し、その拳をアサシンが避けることだけでも邪魔するために動いていたのだ。

 どれほど消耗しているとはいえ、アサシンを倒すような力など無論、ウェイバーには無い。けれど、ほんの少し、体を押しやって、動きを邪魔するくらいなら、できないことじゃない。

 そんなことをされるなど全く予想していなくて、抵抗が無かったのなら――それくらいなら、できないことじゃない。

 

「こ、こんなッ!」

 

 もはやかわすことはできない。ならばと、アサシンは右腕を動かし、拳を防ごうとする。太陽の光で腕は砕けるが、消滅は防げる。

 だが、

 

(う、動きが……遅いッ!)

 

 その右腕は、セイバーによって消滅させられ、ンドゥールの右腕を代わりに繋げたもの。まだ、馴染みきっていない。

 魔力が十分であった時にはあまり意識していなかったが、ほぼ魔力が尽きかけた今では、本来の右腕よりやや遅い。

 そのことが、致命的な遅れとなる。

 

 ドッグアァァァッ!!

 

「うぐおおぉああぁあ!! なあぁぁぁぁッ!!」

 

 バギィィイイッ!! バキ、キ、キ、ドォッシュウウウゥゥゥッ!!

 

 太陽の光をまとった右拳が、DIOの顔面に直撃する。吸血鬼の肉体は、耐えきることなどできず、煙が立ち昇り、熔け砕け、灰と化していく。

 

「ば、馬鹿なァァァァァッ!? このDIOがッ!! このDIOがァァァァァッ!!」

 

 最初は、ジョナサン・ジョースターに。

 次は、空条承太郎に。

 そして、今、ディルムッド・オディナに。

 

 常にディオ・ブランドーは、正義の拳によって滅ぶのだ。

 

「あああああああああああッ!!」

 

 パアァァァァァァンッ!!

 

 最後に閃光が弾け、アサシンの頭部が砕け散る。やがて、肉体の方も光の粒となって消えていき、何も残るものは無かった。

 奇しくも、アサシンの消滅は、言峰綺礼の命が絶たれたのと同時であった。

 

 こうして、第4次聖杯戦争を荒れ狂わせた、魔性のサーヴァントが脱落した。

 

 タルカスから贈られた【双首竜の鎖(デスマッチ・チェーン)】。

 ライダーから託された【太陽神の指輪(アポロン・リング)】。

 アーチャーが見抜き、遠坂時臣が伝えた時間停止の情報。

 間桐雁夜とブチャラティたち、バーサーカー陣営の協力。

 セイバー陣営の功績である、アサシンの真の右腕の消滅。

 そして、ランサーの闘志とウェイバーの勇気。

 

 どれか一つ、欠けていても世界王に勝利することはできなかった。

 まさに、全てを費やしたことによる勝利であった。

 

 

 

 アサシン『DIO』:【世界(ザ・ワールド)】――完全敗北……消滅(リタイア)

 マスター『言峰綺礼』――完全敗北……死亡(リタイア)

 

 

 

 ……To Be Continued

 

 




 次回、エピローグ。

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