ハリー・ポッターと十六進数の女   作:‌でっていう

25 / 27
第19話 占い

「ねえ、ハーちゃん。この時間割、どうなってるの……?」

「どうって?」

 

ハーちゃんの時間割表を覗き込んで、困惑を隠しきれず尋ねた。本人はとぼけているが、どう見たっておかしいのである。

 

「だって……。一日に十科目もどうやって受けるの?」

「九時『占い学』、九時『マグル学』、九時『数占い学』」

 

キキちゃんも同じような顔で時間割を読み上げた。これでは、三つの授業に同時に出席することになる。そうハーちゃんに伝えると、彼女はそっけなく答えた。

 

「馬鹿言わないで。私の身体は一つしかないわ」

 

おかしなことを言ってるのはどっちだ、と突っ込みたいところであるが、隠したいワケがあるようなので、あまり追求しないことにした。

朝食を終えて自分の時間割も確認すると、三年生初の授業は『占い学』のようだ。場所は北塔の教室らしい。先の二年でそこに用があったことはなく場所も把握していないが、校内の地図はパメラが完璧に調査してくれていたので、案内を頼むことができた。

幸いにも隠し通路を駆使して最短経路を通ることができたが、それでも大広間から五分はかかった。

 

「で、教室はどこよ」

 

階段を上りきっても小さな踊り場があるだけで、教室に入る扉のようなものは見当たらなかった。教室が見つけられないのは自分たちだけでなく、先に着いていた何人かの生徒、そして後から駆け込んできたハリーたちも同じようだった。

 

「あ、上見て」

 

誰かが何かに気づいて声を上げると、みんな一斉に首を天に向けた。天井にある丸い蓋のようなものに「シビル・トレローニー 『占い学』教授」と書かれている。

まもなく扉が下に開き、金属製の梯子がそこから降りてきた。真下にいたわたしは慌ててそこから退く。ハリー、ロンに続いて梯子を登り、入った教室の空気は、真夏の満員電車のような暑苦しさだった。

 

 

「雲に突き刺さった短剣……?」

「これ、短剣と十字架の区別なんてつかないわよね」

 

キキちゃんのティーカップを覗き込んで思案していると、キキちゃんは『未来の霧を晴らす』を読みながら返した。続けてわたしのカップも受け取り、顔をしかめる。

 

「それで、あんたのはどうすればいいのよ。ほぼ何も残ってないわよ」

「あはは、ごめん。普通に飲んだはずなんだけどね……」

 

残った茶葉の形で占う、とのことだが、本当にこんなことでいいのだろうか。疑問に思いつつも、『未来の霧を晴らす』のなかから当てはまる図形を探し出した。

 

「えーっと、雲と短剣だとすると、『疑心暗鬼』『事故』。なんか物騒だよ……」

「占いって、信じれば信じるほど当たっちゃうものじゃない? だからあたしは信じないわ。ええ」

 

じゃあなんでこの科目をとったんだ、と言いたいところだが、自分自身もそんな問いに対する答えは持っていなかった。ここで、ミーティスの魔女が遺した本の中に、占いについてのものがあったことを思い出した。すこし探してみると、その内容は杖に保存してあった。

 

『——さて、「占い」という学問に関する研究で、まだ信憑性は薄いが、衝撃的な考察が導かれた。

仮に事実だった場合に、それが明るみに出ることで魔法社会に与える影響を考慮し、この文書は厳重な管理の対象とする。』

 

ここから先は記憶されていない。読んだ当時は興味を持たなかったのだろう。あとでアリスに——。

 

「アル、どうしたの?」

「あ、ちょっと考えごとしてただけ」

 

トム・リドルの記憶鑑賞魔法とは違い、こっちは現実の時間も経過してしまう。あとで落ち着いて考えることにしよう。トレローニーの姿を探すと、ちょうどハリーのカップを見て『グリム(死神犬)』に取り憑かれている、と指摘しているところだった。

 

「私にはそうは見えないわ」

 

その隣で否定したのはハーちゃんだ。トレローニーはすこし驚いたあと、不快だ、という感情を顔いっぱいに押し出して返した。

 

「あなたにはほとんどオーラが感じられませんわ。未来を見通す眼をお持ちでない」

 

二人はしばらく睨み合っていたが、やがて諦めて存在を認識するのをやめた、というように目を離した。

次の教室へ向かうネビルに、トレーローニーは彼が授業に遅れるだろう、との予言を告げた。これを実現するのは簡単だ。むしろ間に合う方が奇跡なのだから。

とりあえず、そんなハーちゃんの機嫌が最悪であることは間違いない。道を間違ったのか途中で見失ってしまったが、なんとか『変身術』の教室の直前で合流できた。

授業が始まってもみんなは解説そっちのけで、いつハリーが『死神犬』の呪いで死ぬのか、とそわそわしていた。マクゴナガル先生が『動物もどき』として猫への変身を実演しても、誰一人それを見てはいなかった。

 

「別にそれを目的としているわけではないのですが、私の変身がここで拍手を貰わなかったのは初めてです」

 

マクゴナガル先生が顔をしかめると、キキちゃんはトレローニーのことを説明しようとした。

 

「さっきの『占い学』で——」

 

言い終わらないうちに、先生は思った通りだ、とばかりに遮った。

 

「なるほど、そういうことでしたか。それで、今年は誰が死ぬことになったのですか?」

 

ハリーが拳銃を突きつけられたかのように、ゆっくりと手を上げた。 マクゴナガル先生はなるほど、と頷いた。

 

「シビル・トレローニーはここに来てから、毎年一人ずつに死の予言をしてきました。未だに誰一人として死んではいません。むしろ、すぐに死ぬことはない、という予言だったと思っておきなさい」

 

どういうことなのだろうか。教師として雇われたからには、多少なりとも才能が認められているものではないのか。それとも、あれは本当にただの演出で、占いとしての効果は意図的に抑えられているのか。

 

「『占い学』は魔法のなかでも不正確な分野の一つです。私がそれを苦手とすることを隠すつもりはありません。

……私が見る限りは健康そのものなので、ポッターから宿題を免除することもありません。もしも死んでしまったのなら、その時は提出しなくても構いませんが」

 

すこし教室が和やかになった。ハーちゃんの気分もいくらか楽になったようで、笑顔が戻っていた。もっとも、わたしはこの後で長々と愚痴を聞かされることになったのだが。

マクゴナガル先生はもう一度『動物もどき』の解説を始めた。一部の熱狂的な占い信者を除いて、こんどは皆しっかり板書を書き取った。

 

 

昼食を済ませ、『魔法生物飼育学』の授業が行われるハグリッドの小屋までたどり着いた。

 

「やあミーティス。君はこの新しい教師のこと、どう思うかい?」

 

ふと、後ろから声をかけられた。聞き覚えのあるそれの主はドラコ・マルフォイだったが、何故ここにいるのか。

 

「あれ、もしかして合同授業だった?」

「知らなかったのか?」

 

ドラコは呆れ顔で言った。時間割に書いてあったかもしれないが、そんなことまで気を配っていなかった。ドラコがもう一度ハグリッドについての質問を繰り返すと、答えたのはキキちゃんだった。

 

「そんなの分かるわけないじゃない。今日が初めての授業よ?」

 

ドラコが何を言いたいのかは分かりきっている。本人もそれを察したようで、この話はここで打ち切られた。

授業が始まると、ハグリッドはまず小牧場のようなところに生徒を連れていった。そして、教科書を開くように指示をする。教科書とは、もちろんあの『怪物的な怪物の本』のことだ。

 

「どうやって開くんだ?」

 

ドラコが馬鹿にするように言った。それが人にものを頼む態度か、と言いたくはなったが、質問の内容自体は納得できた。わたしたちはその答えを知っていたが、キキちゃんはからかうようにこう返した。

 

「表紙の布を右から左にもっていくのよ。日本語の縦書きだったら左から右だけどね」

 

そんなことは分かっている、とドラコはもう一度ハグリッドに問い直した。わたしが見つけた『撫でる』という方法で正解だったらしいが、ほかの生徒は全員知らなかったようで、本をベルトで縛ったりしてあった。

ドラコは言われた通り背表紙を撫でて『怪物的な怪物の本』を開くと、またこちらに話しかけてきた。

 

「どうだい? 授業を受ける前から僕たちをこんな危険に晒していたんだ」

「悪いのは本じゃない……?」

「そもそも、出版社から書店への説明が無いのがおかしいのよ。知ってないと扱えないんだから、本来は伝えるものなんじゃないかしら?」

 

いくらハグリッドといえど、これを落ち着ける方法を自力で見つけるのには苦労するだろう。生徒への説明が何もなかったのは、ハグリッドは書店でしっかりと取り扱いを聞いていたからではないのか、とキキちゃんは考えたらしい。

少しして、ハグリッドは教材となる魔法生物を連れてきた。それは、一言で言うなら四足歩行するでっかい鷲。前脚には巨大な鉤爪が生えている。ヒッポグリフという生き物らしく、名前からして馬、鷲と獅子の間ぐらいの生き物なのだろう。よく見ると、たしかに後ろ足と尻尾は馬のようだった。背丈の一・五倍ほどの高さに顔がある。

 

「どうだ、美しかろう?」

 

ハグリッドの言う通りだった。この科目に興味を持ってもらう、という意図があるのならば、完璧な選択と言えるだろう。数匹いて、美しいその毛並みは個体によって色が違うようだった。

 

「イッチばん最初に知ってもらわにゃならん事がある。こいつらは誇り高く、怒りっぽい。見りゃわかる通り、侮辱したりなんかすれば命はないと思え」

 

鋭い爪を指差しハグリッドはそう警告した。そして、我々はこの警告を最も破りそうな人物を知っていた。

 

「ドラコくん、絶対なんかやらかすよね」

「丁度いいんじゃない? 自分の愚かさを学ぶいい機会になるわ」

 

キキちゃんに耳打ちすると、そう返ってきた。言われている本人はハグリッドの話を聞いているのかいないのか、いつもの三人組で固まって何かを話している。わたしとしては『命はない』になられては困るので、良からぬことを企んでいないと良いのだが。

 

「ゆっくり近寄ってお辞儀をして、そして向こうから返してくるのを待つんだ。返してくれば触っても大丈夫だし、返す気配がないのならすぐに離れろ」

 

まずは手本として一番乗りのハリーが見事に成功させ、他の生徒もヒッポグリフと対面することになった。なかなかお辞儀を返してもらえず逃げ回る人も、すんなり認められて背中に乗せてもらえた人もたくさんいた。

わたしは腰から真っ直ぐに頭を下げ、キキちゃんは深々とカーテシーを披露したが、どちらも少し触らせてもらえた程度だった。というのは恐らく、ドラコがいつ襲われやしないかとチラチラ見ていたせいで、視線の安定しない怪しい奴だ、と思われてしまったからだろう。

ドラコはちょうどお辞儀をしたところだった。あのドラコ・マルフォイが他人に礼をする、貴重な光景である。

 

「なんだ、簡単じゃないか。ポッターに出来るんだもんな——」

 

ドラコは嘴を撫でる。どうやら思ったより順調にやっているようだ。安心して、自分の目の前のヒッポグリフに目を戻した。

しかし、すぐに再びドラコのほうに振り返るこにとなった。あれだけ注意されていたのにも関わらず、彼が「醜い獣物」などという言葉を放ったのが聞こえたからだ。

視認するころには、ドラコは血だらけになって地面に倒れていた。

 

「助けて! 死んじゃう!」

「そんなんで死んでたら、ポッターなんて命が十個あっても足りないわよ」

 

過剰に騒ぐドラコにキキちゃんが冷たく返すが、ハグリッドは慌てているようだった。すぐにドラコを担ぎ上げ、医務室のある城へと走っていった。

 

「さっきはああ言ったけど、怪我をするのはまずいかもしれないわね」

 

ハグリッドを目で追いながら、キキちゃんは深刻な表情でそう言った。自分にはその理由は分からなかった。

 

「えっ、何が? 流石にあれで死んじゃうことは——」

「別にそれはどうでもいいわ。問題はあいつの親が権力を持っていることよ。マルフォイが気に入らないハグリッドを訴えてもらう理由が出来てしまったことになるわ」

 

なるほど、それはあるかもしれない。魔法界において影響力が強いらしいドラコの親が「我が子に怪我を負わせた安全意識の低い教師です」なんて言えば、教師の一人や二人ぐらいはクビにできるだろう。考えたくないことではあるが、むしろドラコはそれを狙っていて、わざとヒッポグリフを罵ったのかもしれない。なんというか、魔法界は古典的な問題を抱えているようだ。

 

 

放課後、人気の少ない談話室。ホワイトボードにアリスへの伝言を書いていると、突然誰かが目の前に現れた。

 

「あらアルーペ、占いに興味があるの?」

「うわぁっ!」

 

すっとんきょうな声をあげてしまったが、すぐに怒りを表明して声の主に答えた。

 

「……なんだ、パメラか。もう、びっくりさせないでよ」

 

パメラ自体にはもう慣れているが、急に出てこられては、やはり驚かざるをえない。

 

「『なんだ』とは失礼ね。驚かすのが幽霊の本業でしょ?」

 

言っていることは何も間違ってない。反論の余地もないので、パメラが現れた目的を聞くことにした。

 

「ところで、なんか言いに来たんじゃないの?」

「そうだった。なんとなくだけど、最近時空に乱れが起きてる気がするのよ」

 

パメラは少し困ったような表情で言った。まれに聞かないこともない言葉だが、時空の乱れとはどういうことなのだろうか。

 

「時空の乱れ?」

「ええ。例えば過去に戻るだとか、時間を止めるだとか、そういうことをすると、目に見えないゆがみできるのよ」

「なるほど……。でもわたし、時間操作はできないよ。練習したとしても、一瞬時間を止める程度ができるかどうか……」

 

たとえ魔力が全部使えたとしても、時間操作は決して簡単なことではない。身体自体が大量の魔力に耐えられるかも怪しいところであり、失敗すれば大惨事だ。演算能力もまず人間の脳では基本足りていない。矛盾を起こしたらどうなるか、なんてことも解明されていない。それをこの学校の中でやっている人がいるのか。

 

「そう……。あたしも無理ね。でも、誰かがそんなことをする道具を作っていた記憶もあるわ」

「道具?」

「それを使えば、魔法使いじゃなくても少しだけ時間を止められるの。あたしが見たのはずいぶん昔の話だけれど、ここで使ってる人がいるのかもしれないわ」

 

でも誰が? 何のために? 考えたが、答えは見つからなかった。

 

「誰でも使える道具、か……」

 

しかし、この言葉は何か大きなヒントであると確信していた。自分が持っている杖はたとえ魔法使いであっても自分以外には使えない。それと正反対な何か、ということだ。ホワイトボードにもう一言付け足して、それを袋に仕舞った。

 

「最近、おかしなこととかなかったかしら?」

 

パメラが聞いてきた。何か問題が起きているのなら、普段との差異を見つけるのが近道だ。去年もそうだった。

 

「おかしなこと……。ううん、何も」

 

一応心当たりがあったが、それをパメラに話すことはしなかった。理由があるとすれば、本人はそれを知られたくない、ということを知っているからだ。それに、彼女は大きな問題を引き起こすような人ではない。ここで話さなくても大丈夫だ。そう信じていた。

 

 

二日後の朝、ようやく体が調子を取り戻してきた頃。朝食を食べている目の前に、封筒が落ちてきた。どうやらアリスからの手紙のようだ。何故ホワイトボードではなく時間のかかる手紙を使ったのか。それはすぐに分かった。

 

「その手紙、何も書いてないの?」

 

キキちゃんが何枚かの紙を見て言う。アリスからの手紙は、宛先の人以外には内容が見えないようにする魔法がかかった便箋が使われていた。ホワイトボードだと盗み見られる可能性があるので、機密性の高い文書を扱う時などに用いるのがこの方法だ。

 

「わたしにしか見えないように魔法がかかってるみたい。ここにはミーティスの全てが詰まって——。なんちゃって」

 

厳重に保護されたその内容は、アリスに確認するよう頼んだ『占い』についての研究文書の複写だった。コピー機のインクでも認識阻害は正常に働いているようだ。

 

『「占い」という学問に関する研究で、まだ信憑性は薄いが、衝撃的な考察が導かれた。

仮に事実だった場合に、それが明るみに出ることで魔法社会に与える影響を考慮し、この文書は厳重な管理の対象とする。』

 

ここまでは記録通りだ。ミーティスの人間にしか知ることが許されない機密文書。隣にいる親友に話すことも許されないだろう。その先を慎重に読み進めた。

 

『結論から示せば、「占い師」は「予言」を残す際に、無意識のうちに「運命操作」を行なっている可能性が高い。

現状では、術者がそのことに自覚的でなく、「運命」が先に存在し、自分は偶然それを知り得ただけだと認識している。

しかし、もしもこの説が事実で、「占い師」が自らに運命操作の力があると知った場合、乱用されれば魔法社会のみならず全人類、全宇宙の秩序が確かなものではなくなってしまう。』

 

一枚目はこれで終わっていた。すぐにこの文書が厳重に扱われているわけを理解した。なんだか、最近になって秘密にしておかなければならないことが増えてきた気がする。『開心術』とかそのへんの魔法に対抗する手段も必要かもしれない。時間がまだあることを確かめ、続きの書かれた二枚目に手を伸ばす。

 

『この仮説を裏付ける事象として、以下のものがある。

まず、予言の正確性は対象までの距離、時刻が近いほど高くなり、遠いほど低くなる。また、遠距離かつ直近の予言は、どんな高等な術者であってもほぼ確実に当たらない。予言の的中率と距離、その他の地理的な要因の関係性は、物理的なシミュレーションの結果と一致した。

我々は「運命操作」が電子よりも小さい魔法的な微粒子(ここでは「操運子」とする)を介して物質に「指示」を出すことで成り立っていると考えている。

時間が経つほど操運子は拡散、濃度は薄くなり、その結果、上記のような現象が起こると考えられる。そして、相反する内容の操運子が存在した場合、強力なものは弱いものを上書きしている可能性が高い。』

 

次の三枚目で終わりのようだ。暗号化の便箋は手紙サイズのものしか用意されていなかったので、長い文章には向いていない。

 

『また、操運子は「予言」以外によって、非魔法族でさえ生成している可能性がある。

近い距離、時間の予言では、その対象が予言と相反する結果を強く望んでいるほど予言の的中率は低下する。これは「望む」という行為によっても操運子が生成されることを示唆している。

ひとつ確実に言えるのは、予言は絶対ではなく、物事にはすべて因果関係が存在するということだ。これを読むミーティスの魔女がいるのなら、自分も世界の一部なのだと自覚し、この世の平和に向けて尽くしてほしい。

 

イングリド・ミーティス(1881)「予言とそれに付随する魔術に関する仮説」より複写

くれぐれも取り扱いに十分注意すること。

ミーティス家書庫副管理人 アリス』

 

最後にアリスの手書きで本の名前とサインまで書いてある。機密文書として扱う以上、事務的に書く必要があるのだろう。というか、アリスは『書庫副管理人』だったのか。初めて知った。となると、『書庫管理人』は自分か。どうやら知らないうちに色々な役職を与えられてしまっているらしい。

——そんなことはどうでもいい。問題はこの文書の内容だ。

トレローニーの言っていた、ハーちゃんから感じられない『オーラ』というのは、運命操作の微粒子とやらのことだったのか。トレローニーはそう言っていたが、そもそも彼女以外の人からは『オーラ』とやらが感じられたのだろうか。

 

「ああもう、訳わからないよ……」

「どうしたの?」

 

思わず頭を抱える。キキちゃんが心配してくれているが、これに限っては頼ることもできない。追求するのをやめればいいのかもしれないが、一度考え始めるとどうしても気になってしまう。

 

「大丈夫。たぶん」

「本当に? 無理はしちゃ駄目よ。

……そろそろ教室に向かった方がいいわ。初回の授業で遅刻なんて笑えないわよ」

 

手紙を袋に突っ込み、席を立った。知らない方が幸せなことって、本当にあるんだなぁ……。




毎月更新でも厳しいのに、毎日投稿とかしてらっしゃる方には頭が上がりません。一日どのくらい費やしているんでしょうか……。

予言の仮説
 原作では細かい設定がなかった(なぜか予言通りになる世界)ので、あくまでも仮説ですが、説明を用意してみました。
 仮説ですので、この世界において本当にそういったことが起きているのかは不明です。私が知らないだけで既に公式設定が存在しているかもしれませんし。
 でも、予言に絶対性はない、というのは確実だと思います。

操運子
 完全なる造語。漢字マジ便利。

イングリド・ミーティス Ingrid Meetith
 だいたい1830年ごろ生まれ。一代30年周期とするとアルーペの五代前(5世の祖って言うらしい)。
 普通に読めばイングリッド、ドイツ語読みではイングリットですが、ネタ元ではイングリドだったのでそちらを採用。

暑いと暑いで頭が働きませんが、寒いとこんどは指が働いてくれませんね(´・ω・`)(書いたのは11月です)
風邪ひいたりもしたけれど、私はげんきです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。