ハリー・ポッターと十六進数の女   作:‌でっていう

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第11話 アルーペ VS 桔梗

「今年もスリザリン戦はポッターがシーカーよ」

「大丈夫なの? ニンバス二〇〇一だっけ、あっちは全部最新の箒なんでしょ?」

「いくら最新の箒でも、使うのがあのマルフォイじゃ負けるのは難しいんじゃないかしら」

 

土曜日、グリフィンドール対スリザリンの試合当日。天気が良いとは言い難いが、選手たちの士気は上々だった。クィディッチは金じゃない、それを示すためには絶対にスリザリンに勝利を与えてはならないのだ。

キャプテン同士の必要以上に力の入った挨拶が終わると、いつもの通り、マダム・フーチの指示で試合が始まった。試合の進行もドラコ・マルフォイがハリーを煽っていること以外はいつも通りであったかのように思われたが、ひとつおかしなことがあることに気づいた。

できるだけたくさんの選手を撃ち落とすように魔法がかかっているはずの鉄球、ブラッジャーが何故かハリーのみを執拗に狙っているのだ。フレッド、ジョージがスリザリン選手に向けて打ち込んでも、ブーメランのように戻ってくる。

 

「あのブラッジャー、狂ってるわ」

「飛行性能で勝ってるのはキキちゃんだけだし、シーカーがあの状態じゃ厳しいんじゃないかな……」

 

確かにキキちゃんは相手チームのキーパーを巧くかわしてクァッフルをゴールに投げ込んでいたが、スリザリン・チームのチェイサーもグリフィンドールのキーパーを箒の力で破って得点している。キキちゃんが取りに行かなければ、クァッフルは永久にグリフィンドール・チームのもとへはやって来ないだろう。

得点は六〇対二〇で、スリザリンにリードを許している状態だ。ブラッジャーからハリーを守ろうとフレッドとジョージがすぐ横で棍棒を振り回しているため、ハリーはスニッチを探すことすらできない様子だ。見かねたオリバー・ウッドがタイムアウトを要求した。

再び試合が始まったあと、ハリーは頭が痛くなりそうなくらい不規則な動きを始めた。そして、ウィーズリーの双子はいつものようにブラッジャーをスリザリンの選手に叩き込み始めた。

どうやら、ハリーに襲いかかるブラッジャーをビーターの双子は無視し、本人に避けてもらうという選択をしたらしい。そう、ブラッジャーは一つではない。ハリーを追い続けるブラッジャーの他に、もう一つあるのだ。当然それはスリザリンのビーターによってキキちゃんたちの方に差し向けられることになる。こちらのビーターがハリーにつきっきりになっていれば、それを遮るものは何もない、というわけだ。

奇妙とすら言える動きでブラッジャーを華麗にかわしていたキキちゃんは、その必要がなくなった途端、ニンバス二〇〇一をものともしない機動力で開かれた点差をじわじわと縮めていった。

 

「時速百キロでの制動距離がいくつか知ってる?」

「知るかそんなもん! 百メートルぐらいじゃないのか!」

「残念、三センチよ!」

 

キキちゃんがスリザリンのキーパーを何やら煽っている。ギリギリまで最高速でゴールポストに突進し、クァッフルを慣性に乗せて思いっきり投げ込み、そしてそこから三センチでぴたりと止まった。

 

「七〇対八〇! ついにグリフィンドールがスリザリンを抜きました!」

 

ハリーのほうも、スニッチを発見したらしい。ブラッジャーをかわすための馬鹿らしい動きをあざ笑うドラコ・マルフォイの向こうだ。すぐさま、ハリーはそっちに突進した。

ドラコは二つの恐怖に顔を歪めることになった。突然超加速で自分のほうに向かってくるハリー・ポッター、そしてそれを追って飛んでくるブラッジャー。

この二つはドラコの頭上で衝突し、鈍い音を立てた。ハリーのほうは、片腕を不自然な方向にぶら下げ、もう片方の手でスニッチを掴んでいた。突然すぎてよくわからない。

 

「試合は終わったのよね?」

「うん。ちゃんとハリーがスニッチを取ったよ。

……わっ、危ないっ!」

 

ハリーはスニッチを握って地面に横たわっていたが、ブラッジャーはまだそれを叩き潰そうとしている。慌ててブラッジャーに緑色の光線を当てて弾き飛ばすと、フレッド、ジョージが捕まえて球を保管する箱に叩き込んだ。

しかし、ハリーをさらなる恐怖が襲うこととなった。

 

「ちょっと、こんどはあのロックハートが何かしようとしてるわよ」

「腕を治すために何か魔法をかけようとしてるみたいだけど、あの人じゃ……」

 

あの人物が『闇の魔術に対する防衛術』の教師であることが本当に『重大発表』であったことに、既に初回の授業で気づかされていた。彼の授業はピクシー妖精などという厄介な生き物に対処しろ、という内容だったが、対処できた人はわたしとハーちゃんだけだった。そう、教師も含めてだ。

そんな奴に呪文をかけられたら何が起こることやら、とハリーも必死に医務室に行かせてくれという拒絶の意を示すが、ロックハートは構わず杖を振り下ろした。

 

「あぁっ!?」

 

周りにいてそれを見た人たちの声は、恐れていた事態が起こったことを伝えるのに十分だった。コリン・クリービーのカメラのシャッター音がたくさん聞こえてきたので、わたしも観客席からハリーの様子をファインダー越しに伺うことにした。ハリーの腕から骨は消え去り、バルーンアート用の風船のようになっていた。ロックハートの慌てたような声がかすかに聞こえてきた。

 

「まあね、と、時にはこんなこともありますよ。でも、もう骨は折れていない。そうでしょう?」

 

 

「なぜ真っ直ぐ私の元に来なかったんですか! 骨折を治すだけなら一瞬ですよ、ええ。でも、骨をゼロから生やし直すだなんて——」

「で、できるんですよね?」

「ええ、できますとも。でも、痛いですよ。今夜はここに泊まることになりますね」

 

決してハリーが悪かった訳ではないのだが、マダム・ポンフリーは説教のように言った。もしかしたら、これはロックハートに向けたものなのかもしれない。

 

「ねえハーマイオニー、あなたこれでもロックハートの肩を持つつもり?」

「誰にだって、間違いはあるわ」

「まあ、どっちにしろグリフィンドールが勝ったんだし、喧嘩はしないで、ね? キキちゃんの動き、すごかったよ」

 

困った顔で言い合うキキちゃんとハーちゃんを仲裁したが、正直自分もロックハートはダメだと思う。とりあえず、グリフィンドールは勝ったし、ハリーはブラッジャーに殺されていない。

しかし、その安堵もわずか数時間で終わりを迎えることとなった。次の日の昼には、コリン・クリービーが襲われて石にされた、という噂がしっかりと学校全体に行き渡っていた。一人でいては危険だ、と集団で行動することが流行ったり、魔除けやらお守りやらの護身具(効果があるのかは不明である)が取引されたりと、校内の雰囲気は決して穏やかとは言えなかった。

 

「石になった人に話しかけてどうするんですか」

「コリンくん、調子はどう——って、いい訳ないよね」

「この腕の位置、最期までカメラを構えていたのね」

「ちょっと、死んじゃったみたいに言わないでよ」

 

キキちゃんと二人でコリンの様子を見に医務室へとやってきた。マダム・ポンフリーは渋々だが面会を許可してくれた。キキちゃんの言う通り、コリンの腕は顔の近くまで上げられた状態で固まっている。そして、そこに握られていたであろうカメラは、ベッドの横の棚に置かれていた。

 

「あれ、裏蓋が開いてる……。うわぁ、これはひどい」

 

既に取り出されていたフィルムには焼けたような跡があり、本体側のシャッター幕にはぽっかりと穴が開いていた。

 

「これ、スリザリンの怪物とやらがやったのかしら?」

「うーん。わざわざカメラを壊したのは、自分の写真を撮られちゃったから……とか?」

「ねえアル、このフィルム、どうにかならないかしら。もし写真が復活すれば、怪物の正体が分かるのよね」

「うーん。多分、ムリ。シャッター幕が破れちゃってるから、写真残ってても真っ白だと思うよ」

 

キキちゃんは少しだけ期待していたのか、やっぱりね、とうなだれている様子だ。

今してあげられることといえば……。カメラを手に取り、杖を振った。シャッター幕の穴はしっかり塞がり、新品同様の状態になった。自分のフィルムを装填し、適当な写真を一枚。問題なさそうだ。

 

「たまには手動巻き上げも悪くないね」

 

早く復活して写真を撮ってもらいたいものだ。なにしろ、まだ『動く写真』の現像方法が分かっていないのだから。

 

 

それから一ヶ月、クリスマス休暇まであと二週間。コリン・クリービー以来スリザリンの怪物による被害は出ておらず、ホグワーツは平穏な日々を送っていた。今日の『魔法薬学』の授業までは。

 

「アル、そんな計りも使わずに材料入れて、なんでいっつも完璧にできるの?」

「うーん。わかんない。お料理と同じようなものなんじゃない?」

 

だが、ハリーの釜を見てもそう言い切れるかは怪しいところだった。ダーズリー一家にこき使われて料理は下手ではないはずのハリーだが、魔法薬の出来はとても良いものとは言い難い。たった今、スネイプがそれを発見し、大鍋の中の不穏な液体を『消失』させたところである。

 

「『消失』させられるなんて、そうとう酷い出来だったんだな、ポッター」

「あら、あなたも人のことは言えないようだけど?」

 

ハリーを嘲笑うドラコに言い返したのは、その二つ隣の席のキキちゃんだった。

 

「うるさい、こいつが異常に上手いだけだ」

「あー、喧嘩はやめてね、ドラコくん、キキちゃん?」

 

どうやら、ドラコとある程度会話できるというのはグリフィンドールでは貴重なことらしい。だからこそ、こうしてドラコとキキちゃんの間に挟まれ壁となっている。言い返そうとするキキちゃんを制止しようとした時、どこからかシュウ、という音、続けて爆発音がした。とっさに杖を構えると、音のしたほう、ゴイルの大鍋から液体が勢いよく飛び出した。

 

「『ふくれ薬』が……。危ないっ!」

 

それを見て、慌てて防衛魔法をキキちゃんと自分の周りに展開、その直後に教室中に『ふくれ薬』が降り注いだ。隣で、魔法の傘に入りそこねたドラコの鼻が風船のように膨らみ始めた。

 

「あ、ごめん……」

 

ドラコの顔をどうにかしようと杖を持ち直した時、教室の扉からハーちゃんがこそこそと抜け出していくのが見えた。そういえば、ハーちゃんは図書室で『最も強力な魔法薬』なんて本を借りていたっけか。

まさかね、と思い空間探知の魔法を使ってみれば、予想どおり近くにはスネイプ先生の研究室があるようだ。十中八九、なんらかの調合材料を盗み出そうという魂胆だろう。

 

「薬を浴びた者は『縮み薬』をやるからこちらへ来なさい」

 

でもなぜハーちゃんが? この騒動はハーちゃんが脱出するために起こしたもの?

一目散にスネイプ先生の方へ向かうドラコを目で追うと、その答えは明らかとなった。ドラコを指差し、腹を抱えて笑っているハリーとロン。恐らくこのどちらかが騒動を起こし、ハーちゃんがその隙に抜け出したのだろう。それをハーちゃんが容認していたかどうかは確認しようがないが

いつのまにか、スネイプはドラコの隣の大鍋から花火の燃えカスのようなものを拾い上げていた。大方、フレッド、ジョージのどちらかが作った悪戯アイテムだろう。あんなものが鍋に投げ込まれるとは、ゴイルも災難である。

 

「これを投げ込んだのが者が判明した日には、間違いなくそいつを退学にさせる」

 

それから授業終了までの十分間、スネイプ先生はいつも以上にハリーのことを睨みつけているようだった。根拠もなく犯人だと思い込んでいるんだろうけど、今回に限っては図星である。

 

 

「『決闘クラブ』? 何よ、それ」

「そのまんまの意味みたいだよ。今日よる八時から、第一回目が始まるって。……練習の成果を確認できるんじゃない?」

「そうね。問題なのは、二十時まであと三分しかない、ということかしら」

 

十九時五七分を示す時計をちらっと見て大広間へと駆け出すと、前方にはハリー、ロン、ハーちゃんの三人が同じような格好で走っていた。

残り一分で大広間に飛び込むころには、三人と二人の差はほぼゼロになっていた。いつもの長机は取り払われ、金色のステージが松明の光を浴びて輝いていた。

 

「んで、あそこに立ってるのはギルデロイ・ロックハートに見えるけど、まさかあいつが教師じゃないわよね」

「一応スネイプ先生もついてるみたいだから、危ないことにはならないと思うけど……」

 

残念ながらそのまさかは現実であって、ロックハートと助手扱いのスネイプ先生が模範演技を行うようだ。結果は誰もが予想した通りで、 数秒後にはロックハートはスネイプ先生の『武装解除呪文』の直撃を喰らって吹き飛ばされ、床に大の字に叩きつけられることになる。

ロックハートはあまりにも模範すぎる模範演技を早々に切り上げ、生徒たちによる実演へと移った。

 

「では、ミーティス。あなたは……そうだね、渡邉と組みなさい」

 

杖を使ったいんちきではあるものの記憶力の良い自分は、ロックハートの本の内容を答える試験で誤って満点を取ってしまったためか、はじめに目をつけられてしまった。名前も知らないような人と組まされなかっただけまだ良いのだが。

 

「キキちゃん、手加減は?」

「要らないわ。なんのためにあんな練習をしてると思ってるのよ」

 

「相手と向きあって、礼!」

 

キキちゃんと目を合わせたまま礼をした。少なくとも、日本の剣道では試合の前の礼は十五度とされている。

 

「私が三つ数えたら、相手の杖を取り上げる術をかけなさい。取り上げるだけですよ。事故を起こされては悲しいですからね。

いち——に——さん——」

「『エクスペリアームス(武器よ去れ)』!」

 

始まった途端、呪文を叫んだ。つまり、学校で習う方の魔法で先制攻撃を仕掛けた。

詠唱で隙ができてしまったためか、キキちゃんは右に数センチメートル跳び、赤色の光線は簡単にかわされてしまった。

たとえ死の呪文だろうとなんだろうと、当たらないことには意味がない。キキちゃんとしていた『練習』とは、そういうことだ。

クィディッチが得意なキキちゃんならば、その力を伸ばすには素早さを活かすのが一番手っ取り早いと考え、アリスと協力して特訓メニューを考えたのである。まだ新しい呪文を作ることは叶っていないが、この素早さをさらに強化する方向のものを検討している。

——じゃあ、これは?

こんどは無詠唱。決して『無言呪文』を習得した訳ではなく、元から呪文が要らないほうの魔法だ。その閃光は先ほどの赤色の光線とは比べものにならないほど速かったが、やはりこれも避けられてしまう。

そして、隙を突こうという魂胆か、キキちゃんが武装解除を飛ばしてくる。避けられこそしないが、防衛魔法を纏った杖で難なく弾く。

そのままの勢いで杖を振り、無詠唱の武装解除を横に二本並べる。流石にこれは避けられないだろう——。

 

「あっ」

 

どうやらわたしは慢心していたらしい。キキちゃんは身体を屈めることでわたしの武装解除をかわし、そのままお返しをされてしなった。わたしの手を離れた杖は綺麗な放物線を描き、回転しながらキキちゃんの手へと向かっていく。

——だけど、まだ負けちゃいないよ。

 

「エクスペリアームス!」

 

杖を手にしないで叫ぶ。これは決して無駄な足掻きではない。宙を舞うわたしの杖はだんだんと回転の速度を落とし、進行方向へと向いた。そして、空中から赤い光線を発射、キキちゃんの杖を捕らえた。

結果として、わたしはキキちゃんの杖を、キキちゃんはわたしの杖を持っている状態になった。

 

「アルーペもキキも、どうしたらあんな動きができるんだい?」

 

生徒の群れの中に戻ると、同じくたった今戻ってきたロンが感嘆の声を上げた。

 

「もし君たちがロックハートと向かったら、あいつは百本杖を持っていたって足りないさ」

「そういうウィーズリーは、あの折れた杖でなにをやらかしたのかしら」

 

キキちゃんは床に横たわったシェーマス・フィネガンがスネイプ先生に何らかの処置を受けているのを見ながら言った。ロンは肩をすくめて返した。

 

「間違いなく『武装解除呪文』をかけようとしたさ。杖がこの有様じゃ、エクスペリアームスを唱えて『全身金縛り術』が発動したっておかしくないだろう?」

「あー、そうかもしれないわね、ええ」

 

こんどは、ハリーとドラコがステージに上がった。グリフィンドールとスリザリンを象徴するような犬猿の仲の二人だが、果たしてこの舞台に上げてしまって大丈夫なのか。

スネイプ先生がドラコに、ロックハートがハリーに耳打ちしている。恐らく、前者は何らかの有益な呪文を、後者は何の役にも立たないたわごとを聞かされているのだろう。これからどんな惨状がここに繰り広げられるのか。キキちゃんが隣にいることを確認し、何があっても良いよう杖を構えてステージを見守ることにした。

 

「さん——にい——いち——」

「『サーペンソーティア(ヘビ出でよ)』!」

 

先手はドラコだった。杖の先からは黒いヘビが生えるように出現し、ハリーのほうへ威嚇を始めた。流石に生物の生成がこんなに簡単にできるはずはないので、どこからか呼び出してきたのだろう。

ハリーや一部の生徒は、恐怖にその場に固まった。

 

「動くな、ポッター」

 

もともと動ける状態でもないのだが、スネイプ先生はこう言った。恐らく、この光景を楽しんでいるのだろう。しかし、この場にはもっと愚かな人間がいることを忘れていた。

 

「私にお任せあれ」

 

ロックハートだ。わたしは反射的に防衛魔法を展開した。

ロックハートが杖を振り下ろすと、ヘビは生徒たちのいる方に吹き飛ばされた。なんということだ。ヘビは余計に怒り狂い、近くにいたジャスティン・フィンチ゠フレッチリーに今にも噛みつきそうな様子だった。

防衛呪文を解除してヘビをどうにかしようと杖を向けたとき、何を思ったのか、ハリーがヘビのほうへ歩み寄ってきた。口を動かし、何やらヘビの鳴き声のような音を立てている。すると、ヘビはジャスティンへの威嚇をやめ、ハリーのほうを向いて大人しくなった。

ハリーのおかげかどうかは定かではないが、とりあえずジャスティンは助かったのだが、何故か顔に怒りを表していた。

そして、ロンは何故かハリーを無理やり引っ張って大広間から出ていこうとする。ジャスティン以外の何人かの生徒も、ハリーをなにか邪悪なものとするような目で見ているようだ。

 

「あの二人、どうしちゃったの? ハーちゃん」

「全く分からないわ。とりあえず、後を追いましょう」

 

ハーちゃんにも状況がわからないらしい。とりあえずロンに続いて大広間を後にした。ハリーは混乱した様子でこちらを何か訴えかけるように見てくるが、訳が分からないのはこちらも同じだ。

気づいた時には、人気のないグリフィンドールの談話室へたどり着いていた。

 

「君は『パーセルマウス』なんだ。どうして今まで教えてくれなかったんだ!」

「パーセル、なんだって?」

「パーセルマウス、ヘビ語使い!」

 

ロンはハリーを『パーセルマウス』だと指摘した。なるほど、さっき聞いたヘビの声のような音は、れっきとした言語だったのか。しかし、それがどう周りの生徒の反応と関係するのか。

 

「ねえロン、どうしてハリーが『パーセルマウス』だとあんな反応をされなくちゃいけないの?」

 

ハリーも同様の疑問を抱いていたのか、この質問にうなずいた。ハリーの言い分では、あの時は無意識のヘビ語でジャスティンを襲わないように、と言っていたらしい。それまでずっと口を開いていなかったハーちゃんが、意を決したように話し始めた。

 

「サラザール・スリザリンは、ヘビと話ができることで有名だったのよ」

 

そういえば、スリザリン寮のシンボルマークにはヘビが描かれていた。今話題になっているのはスリザリンが残したとされる『秘密の部屋』。そんなときに、ただでさえ事件の第一発見者となっていたハリーがヘビ語を使えると分かれば——

 

「今度は、学校中がハリーをスリザリンのひひひひ孫だとかなんとか言い始めるに違いないさ」

 

ロンが言った。残念ながら、千年も前の人物との血縁が一切ない、というのはそう簡単に証明できることではないだろう。ハリーもそう気づいているのか、相当落ち込んだ様子で自分の部屋へと戻っていった。

 

「ねえアル、ヘビ語ってさ」

 

こちらは女子寮、ベッドに腰かけたキキちゃんが話しかけてきた。指にはめた指輪——マクゴナガルに貰ったものだ——を気にしているようだ。

 

「こんな魔法で翻訳できたりするものなのかしらね?」

「どうだろうね。人間の言葉とヘビの言葉じゃ……。でも、一応言語として存在してるんだよね」

 

なるほど、それは確かに気になる。というより、キキちゃんが猫と話しているのはこれとは違うのだろうか。脳内の『ちょっと調べてみたい事柄リスト』に動物の言語を追加しておいた。




ちょっとあとがき長くなります。

アルーペvs桔梗、結果は引き分けでした。

それぞれどのくらいの強さかといえば、
桔梗vsハーマイオニーでは桔梗が勝ちます。ハーさんは盾の呪文で対処しますが、アルーペのように隙を突かれるでしょう。
アルーペvsハーマイオニーではハーマイオニーが勝ち。単純な魔法の上手さではハーマイオニーの方が上ですからね。
かといって桔梗の方が強いのかといえば、そう単純な話でもありません。

つまりは、みんな同じぐらいです。少なくとも今は、誰もチートを使っていません。

制動距離
 100km/hなら濡れた路面で99m。

誤って満点
 アルーペはあまりにも不名誉な10点に、魔法薬学の教室で惨事を引き起こそうとも思ったそうだ(要出典)。

エクスペリアームス
 iOSの変換「Xperia〜娘」

遠隔エクスペリアームス
 普通なら手を離した時点で持ち主との繋がりが断たれますが、アルーペの杖はそんなもんじゃありません。
 作中では向きを定めてから発射してますが、放り投げて空中で回転させたまま呪文を唱えれば無差別攻撃ができます。アルさんは多分やりませんけど。

素早さ全振りキキ
 各パラメーターの最大値を256とした各キャラの現時点のスペックはこんな感じ。

アルーペ
・HP 64 物理攻 16 物理防 0
・MP 64 魔法攻 128 魔法防 16
・素早さ 16
・装備補正 万年筆:物理防+128、魔法防+256 箒:MP+16、素早さ+16

桔梗
・HP 96 物理攻 32 物理防 16
・MP 32 魔法攻 32 魔法防 8
・素早さ 64
・装備補正 箒:素早さ+32

iPhoneのメモ帳がクラウド経由で同期できるのでパソコンからも数行書いてみました。
たしかに文字は打ちやすいですが、パソコンが10年前の骨董品なのでiCloudのページだけでもカックカクです。よくこれで数行も書けたな、と自分に関心すらします。
いや、普通に入力する分には変換エンジンとかも含めてパソコンのほうが優れているんですけどね。うp主はスマホでもフリック入力使ってないですし。

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