努力と言うのは哀しいモノだ。
『塵も積もれば山となる』との言葉。塵という努力を積んで、山という結果が出る。だが才能のあるやつらはいきなり山を出してくる。そんなやつ極僅かの存在だが、いや、だからこそ憧れた。
勿論、無理だ。だから、気付かれないように努力した。
人の前で『努力した結果』を出せば努力家と言われるが、いきなり『結果』を出せば才能持つ者とされるはず。そう思い、努力した。でもダメだった。あいつらに届かない。
才能を持つ者を追い掛けようと手を伸べるが、あいつらは結果に辿り着くスピードが違う。
どうせ私は、所詮……
光るレーザーが顔の横を過ぎる。危なかった。もう少しで被弾するところだった。
「すばしっこいわね…!」
「だろう?人間も捨てたもんじゃあないぜ?」
「どうかしらッ!!」
紅魔館の図書館。私はそこに住む魔女『パチュリー・ノーレッジ』と戦っている。本物の魔法使い。私のような中途半端じゃない。
勝たなければ。そしたら、私は才能のある者だ。
「もうそろそろ危ないんじゃあないか?敗けを認めりゃなにもしないぜ。」
「余計なお世話よ!!」
咳き込むパチュリーに追い討ちをかけるように弾幕を撃つ。案の定、パチュリーは被弾して、なかなかのピンチだろう。勝ったも当然、なんて余所見をしていたらフラグ立てて負けになるだろうから、そんなことはしない。
「おーい、弾幕が弱まってきてるぞ?」
「そんなことないわッ!!」
いや、明らかに弾幕が弱くなっている。効いてる、私の力が!!これで決めるか……
私はミニ八卦炉を出し、アレをする。
「恋符『マスタースパーク』ッ!!」
「え、ちょ…」
魔理沙の放った大きなレーザーがパチュリーを覆う。ふぅ…と一息つき、まだ戦闘可能な状態かを確認するべく、登りゆく煙が薄まるのを待つ。
人影。どうやら、まだ戦えるような状態だ。
「おっと!!」
「クッ!!」
いきなり出てきた弾幕を避け定位置に戻る。
「卑怯じゃあないか。いきなり弾幕を撃つなんて。」
「貴方のスペルカードの方が卑怯よ!!ッゴホ!!ゴホ!!」
「よせよ、照れるぜ。」
「……いいわ、人間相手だから手加減をしてたけど本気を出すわ。この際喘息とか気にしないわ!!」
喘息なのか。にしても、脅しだろうか?本気だろうか?本気、かなぁ?ま、このままいけば勝てそうだし、大丈夫だ。っと、余所見は禁止だな。
「火水木金土符『賢者の石』!!やった最後まで言えた!!」
いや、最後まで言えるだろう。って言うかすごい名前だな。長い長い。感覚的にExtraっぽい名前だな。
喜ぶパチュリーは、ハッ!!っと我にかえる。
「食らいなさい!!」
「やなこった………えぇ…」
思わずドン引き、あり得ない弾幕の数。更に、種類の異なった弾幕が流れてくる。上手く避けれず、被弾しそうになる。
久しぶりに辛いのが来た。
「うッ!!あっぶねぇ!!」
「ク~~当たりなさい!!」
まるで競馬で「前の馬を抜けッ!!」と、叫んでるオッサンみたく見てるだけのパチュリー。
今のところ避けているが、微かに触れているとかバランスを崩しそうだとかの連続。
「うくッ…ボムが少ねぇ……」 ※『ボム』とはスペルカードのこと
「当たれ~……」
そしてついに……
「うわぁッ!?」
バランスを崩したッ!!そして、運悪くそこに弾幕が攻め混んでくるッ!!パチュリーは勝ったも同然と既に喜んでいる。魔理沙は、思わず目をつぶる。
終わった……絶望感が襲う。結局、努力家止まりか……
「あぶねぇあぶねぇ」
急な浮遊感。そして、どっかで聞いた声。
目を開けると、口を大きく開けて驚いているパチュリーと……奇妙に笑い、私と私の箒を抱っこしている玄龍が居た。
「いやいや、すごい弾幕だな!!」
「あ、貴方なにしてんのよ!?」
「人助け」
「ハァ!?」
明らかに怒っている。折角並べていたドミノを倒されたかのように、やっと倒しそうになった魔理沙を助けやがったのだから、当たり前と言えば当たり前。
「にしても、ここの図書館広いねぇ。俺の好きな本とかありそうだな。」
「え、そうかしら?まぁ、伊達に私が管理してる図書館じゃないからね。じゃなかった……折角倒せそうだったのに!!」
「日本書紀とかある?」
「レプリカならって、おい!?」
なにやってんのコイツら。
「いや、すまんね。なんとなく助けちゃった。」
「許さない。」
「なぁ、魔理沙」
「どうした人助け」
パチュリーを無視して私に話しかける。
「今度さ、スペルカードルールっての?やり方教えてくれない?」
「え?このタイミング?」
「いやさ、お前の弾幕の避け方とかさ、才能の固まりに見えるしさ。」
「……なに言って…」
「だから師匠になってくれないかなぁっとか思ったりして。」
才能ね………負けかけた私を見たはずだろう?そんなもんない。お前が居たから被弾しないで済んだが、結果的には負け同然。
「イヤだね」
「そっか、じゃあ明日から宜しく。」
「おい!?」
「まさか、今ので負け同然だから師匠になんてなれっこないと思ってる?」
………こいつは一体何だ?私の心の隅から隅まで見透されている感じは、なんなんだ。
「……その通りだろ。」
「だが、当たってない。」
「結果論だ。」
「良いじゃあないか結果論。ほら、まだ弾幕は終わってない。空気読んでじっとしているアイツの身にもなってみろ。」
「そういうこと言うなよッ!?」
……なんだかバカバカしくなってきた。だが、悪くない。良いぜ。
「やってやるさ!!
「あの男嫌いだわぁ……」
結果から言おう。勝ったぜ。パチュリーの喘息が再発してね。なんか、勝った気がしないぜ……
「今年で一番最悪な日よ……」
「やったぜ。」
「お前普通に嫌な奴だよな。」
「フッ、よせよ…」
とは言え、勝ったことは勝った。才能がある証明にはならなかったが……ま、良いだろう。
「さ、霊夢のところに行こうぜ。」
「わかった。えっと、パチュリー。」
「なによ。」
「また来るからな。」
「来るな!!ゴホッゴホッ!!」
なんとも変わり者の男。だが、悪いやつじゃなさそうで何よりだ。
薬売り「魔理ちゃんに、こんな悩みがあったなんて!!気付いてあげれなくてゴメンね!!」
魔理沙「お前は私の何だ」
玄龍「勝手にやらせとけ。じゃあ始まったぜ」
薬売り「今回のゲストは『霧雨魔理沙』さんです!!」
魔理沙「よッ!!私だぜ!!」
薬売り「さぁ、玄龍に抱っこされた感想はッ!?」
魔理沙「うぇ!?い、いきなり聞かれてもなぁ……うーん…何も感じなかったぜ」
薬売り「え~…つまんね」
魔理沙「なッ!?…んだとォッ!?」
玄龍「うるさい」
薬売り「全くだぜ」
玄龍「いや、お前もだよ」
薬売り「さて、今回は魔理沙の心を少しだけ開いた回になりますね。恋愛に発展させるかどうかは未定」
玄龍「そう言うこと本人達の前で言うか?普通」
薬売り「大丈夫大丈夫、君は俺が作ったキャラクターだから、実際には存在しないから」
魔理沙「そう言うことを言うんじゃあない!!」
玄龍「なるほど、納得した」
魔理沙「ここにはバカしか居ないのか!?」
薬売り「んじゃあ、もう終わろうかな?」
玄龍「それじゃあ、次回も見なくていいぜ」
魔理沙「なんだよ、その終わり方。次回もお楽しみに~とかだろ」
玄龍「じゃあ、次回もお楽しみに」
魔理沙「えぇ…」