館の中で爆発音が聞こえる。きっと、霊夢や魔理沙が館の主と戦っているのだろう。その館の外には二人、構えながら睨み合う者達。
先に動いたのは美鈴だ。
「ハッ!!」
手始めなのだろうか。シンプルに右手を高速で出してきた。
護衛術は警察官に教えてもらった。だが、所詮護衛術。攻撃する手段は能力しかない。
「逃げるだけですか。あまり戦闘の経験がないようで。」
「まぁな。なんせ、監視されてたからよ。」
「監視?」
「ウラァ!!」
ヘタクソなジャブ。当然、簡単に避けられ、カウンターをもらう。しかも強烈な。
「うッ!?」
「……あ、す、すみません!!ここでは弾幕で勝負をするのがルールだったん…」
「いらねぇ。」
「え?」
彼女は肉体戦に慣れているらしい。癖で殴ってしまった。そんな感じだろう。肉体戦で自分が有利なのに気付いたか、情けをかけてきた。
だが、いらない。俺は口内の血を吐き出し、美鈴が気になっているであろう俺の言葉を続けた。
「…俺は、不向きだ。その弾幕ってのがよ。」
「ですが、これじゃあ妖怪である私が有利ですよ。」
「弾幕ってのがいまいちまだ理解してねぇし、やったこともない。だったら、慣れた方をやるのがマシだろう?」
とは言え、肉弾戦はあまりしたことない。というか、さっきのカウンターで既にボロボロの弱い人間が、どっちにしろ勝てっこない。なら、当たって砕けろ。まだ理解している方をやる。
「オラァ!!」
「フッ!!」
さっきと同じようなパンチを繰り出した。だが、美鈴はさっきと違う避け方をして俺にカウンターを食らわせようとしている。同じ避け方ではいつか逆にカウンターを食らうからだろう。
そんなことを予知していた俺は、美鈴が最初にカウンターをした方向へと避けた。何故?今さっき説明をしたろ?同じ避け方では逆にカウンターをくらう。そのことを考えたら、唯一カウンターをしてこないであろう方向は見えてくる。最初にカウンターをされた方向だ。
「…成る程ッ!!」
美鈴は俺が口でわざわざ説明したわけでもないのに、すんなり理解。流石と言えるだろう。だが、どうしたものか。理解されてしまってはカウンターは与えられない。
そうだ。
「ハァッ!!」
「フッ!!」
思い切り下からアッパーをしたが、当たり前のガードを披露させられた。想定内だ。
「重力を『解く』。」
「ッ!?」
美鈴はッ!!上空へ飛んでいったッ!!
「大気圏まで飛んでいけッ!!」
かなり上空へ行き、このまま勝ちたいなぁと思っていたが…
「考え方はいいですね。」
案の定、空を飛べた。その為、普通に降りて来た。なんか悔しいな。
「貴方にそんな能力があったとは…さっきの弾幕に慣れないと言う話から察するに、外から来た人でしょう?それで、こんなにも強い能力を持った人がいるとは、驚きです。」
「だろ?」
次の瞬間、蹴りが入ってきた。
予想外のタイミングで攻撃されたため、防ぎきれずまともに食らう。壁にキャッチされ、ズルズルと下がっていき、座り込む。俯いて、流れる血を眺めている。
そろそろヤバイ。まだ門番だ。終わるわけにはいかない。
「初心者にしては、いい戦いでしたよ。」
「……」
「貴方は強い。修行をしたら強くなれる。だから、生かしておきます。」
「……」
「私よりも強くなれば…」
「俺は弱い。」
「え?」
確信した。俺は弱い。そして……勝った。
「あんたより、もっともっと弱い。もうほんと、ビックリするぐらい弱い。」
「え、いや、玄龍さん?」
「だが、弱者は必ず強者に敗けると言うのは違う。」
「ええっと…」
「今回が、良い例だろう。」
「え…?」
目を瞑り、笑いながら、血を流す。
「
「なにを…」
「能力を『解く』ッ!!」
「なッ!?」
美鈴が、いきなり倒れた。上から押し潰される感覚。同時に下に引っ張られる感覚。重力を一気に感じた。
「いっ……たい…なに……を…」
「俺の能力は『解く程度の能力』だ。あらゆるものを『解く』んだ。」
吐血する美鈴。だが、無視して説明を続ける。
「さっき、あんたの重力を『解いた』。あの時から今までずっとな。『解いていた』間の反動があんたを襲う。もっと間を空ければ、もっと強い反動を食らう。」
「ハァ……ハァ……」
「安心しな。時期にいつも通りになる。」
「ハァ…………ハァ…………ハァァァ……」
どうやら、もう反動はないようだ。だが、十分のダメージを負ったようだ。
「完敗…ですかね……『弱者が強者を伐つ』か……」
「フゥーッ…良い名言だろ。」
「よく聞く言葉ですね。」
「うっせ」
急に静かになり、紅い雲に覆われた空を見る。
「なんか、久しぶりに楽しさと言うものを味わったよ。」
「光栄です。」
「さっきから思ってんだが、その敬語止めてくれ。戦友ってヤツあるだろ?なんかカッコいいからなろうぜ。センユーだセンユー。」
「……フフ、適当ね。なんか。」
我ながらそう思う。
「そう言えば、貴方いつの間にか敬語じゃあないものね。」
「やっと気付いた?」
「えぇ。」
「気付くの遅いねぇ。」
「うっせ。」
青春のように笑い合う。久しぶり?初めてか?どっちでも良いや。青春ってのは中々ない。そんな相手も居なかったしな。
俺は立ち上がり、手を差し伸べる。
「立てるか?」
「お人好しね。敵に手を差し伸べるなんて。」
「敵じゃあない。」
「『戦友』、でしょ?」
「分かってるじゃあねぇか。」
美鈴が手を掴み、そのまま立ち上がる。
「うわーやられたー(棒)館の中に入られるー(棒)」
「………」
「なんか言えよッ!?」
ノーコメントで館の中に入ってやった。
薬売り「やぁやぁ、みんな。勉強をやれと言われて腹が立った経験があるみんな。俺だよ」
玄龍「誰だよ」
薬売り「今日はねぇ、『八雲紫』さんに来てもらったよ」
紫「何で私なの。今回出てないでしょう?」
薬売り「穴埋め」
紫「堂々としていて逆に清々しい」
薬売り「その割りには鬼のような顔をしているが?」
玄龍「それは元からだろー」
二人「「HAHAHAHAHA!!」」
薬売り「あ、ごめん。お願いだから弾幕撃たないで。俺ら戦闘経験ないからさ」
紫「ハァ……早く進めなさい」
薬売り「うい、今回……と言うより、この作品は頭脳戦をメインにやっていきたいなと思ってるんで、今回のはそれが特に、にじみ出てたんじゃあないかなぁって思ってます」
玄龍「いかに自分の能力を活用できるかってね」
薬売り「それと、玄龍君は青春時代は刑務所だったんで、幻想郷で発散させます」
紫「だから、美鈴との会話で『戦友』って言葉が出たわけね」
薬売り「良い理解力だ。誉めてやろう」
紫「脳潰すぞ」
薬売り「君ならやりかねん。そして殺りかねん」
紫「喧しい」
薬売り「さて、今日もこんなに短く終わったが、気にするな」
玄龍「まず誰も見ない」
薬売り「悲しいことを言うね。否定はしない」
玄龍「おい」
薬売り「さて、今回もこれで終わりだな」
玄龍「また来週」
紫「幻想郷に無害だったら、いつでも画面の前の貴方達を幻想入りさせるから言ってね♪」
薬売り「言えねぇから困ってるんだよこっちは…」