殺人犯は救世主   作:薬売り

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第六話 『殺人犯はお人好し』

 館の中で爆発音が聞こえる。きっと、霊夢や魔理沙が館の主と戦っているのだろう。その館の外には二人、構えながら睨み合う者達。

 先に動いたのは美鈴だ。

 

「ハッ!!」

 

 手始めなのだろうか。シンプルに右手を高速で出してきた。

 護衛術は警察官に教えてもらった。だが、所詮護衛術。攻撃する手段は能力しかない。

 

「逃げるだけですか。あまり戦闘の経験がないようで。」

「まぁな。なんせ、監視されてたからよ。」

「監視?」

「ウラァ!!」

 

 ヘタクソなジャブ。当然、簡単に避けられ、カウンターをもらう。しかも強烈な。

 

「うッ!?」

「……あ、す、すみません!!ここでは弾幕で勝負をするのがルールだったん…」

「いらねぇ。」

「え?」

 

 彼女は肉体戦に慣れているらしい。癖で殴ってしまった。そんな感じだろう。肉体戦で自分が有利なのに気付いたか、情けをかけてきた。

 だが、いらない。俺は口内の血を吐き出し、美鈴が気になっているであろう俺の言葉を続けた。

 

「…俺は、不向きだ。その弾幕ってのがよ。」

「ですが、これじゃあ妖怪である私が有利ですよ。」

「弾幕ってのがいまいちまだ理解してねぇし、やったこともない。だったら、慣れた方をやるのがマシだろう?」

 

 とは言え、肉弾戦はあまりしたことない。というか、さっきのカウンターで既にボロボロの弱い人間が、どっちにしろ勝てっこない。なら、当たって砕けろ。まだ理解している方をやる。

 

「オラァ!!」

「フッ!!」

 

 さっきと同じようなパンチを繰り出した。だが、美鈴はさっきと違う避け方をして俺にカウンターを食らわせようとしている。同じ避け方ではいつか逆にカウンターを食らうからだろう。

 そんなことを予知していた俺は、美鈴が最初にカウンターをした方向へと避けた。何故?今さっき説明をしたろ?同じ避け方では逆にカウンターをくらう。そのことを考えたら、唯一カウンターをしてこないであろう方向は見えてくる。最初にカウンターをされた方向だ。

 

「…成る程ッ!!」

 

 美鈴は俺が口でわざわざ説明したわけでもないのに、すんなり理解。流石と言えるだろう。だが、どうしたものか。理解されてしまってはカウンターは与えられない。

 そうだ。

 

「ハァッ!!」

「フッ!!」

 

 思い切り下からアッパーをしたが、当たり前のガードを披露させられた。想定内だ。

 

「重力を『解く』。」

「ッ!?」

 

 美鈴はッ!!上空へ飛んでいったッ!!

 

「大気圏まで飛んでいけッ!!」

 

 かなり上空へ行き、このまま勝ちたいなぁと思っていたが…

 

「考え方はいいですね。」

 

 案の定、空を飛べた。その為、普通に降りて来た。なんか悔しいな。

 

「貴方にそんな能力があったとは…さっきの弾幕に慣れないと言う話から察するに、外から来た人でしょう?それで、こんなにも強い能力を持った人がいるとは、驚きです。」

「だろ?」

 

 次の瞬間、蹴りが入ってきた。

 予想外のタイミングで攻撃されたため、防ぎきれずまともに食らう。壁にキャッチされ、ズルズルと下がっていき、座り込む。俯いて、流れる血を眺めている。

 そろそろヤバイ。まだ門番だ。終わるわけにはいかない。

 

「初心者にしては、いい戦いでしたよ。」

「……」

「貴方は強い。修行をしたら強くなれる。だから、生かしておきます。」

「……」

「私よりも強くなれば…」

「俺は弱い。」

「え?」

 

 確信した。俺は弱い。そして……勝った。

 

「あんたより、もっともっと弱い。もうほんと、ビックリするぐらい弱い。」

「え、いや、玄龍さん?」

「だが、弱者は必ず強者に敗けると言うのは違う。」

「ええっと…」

「今回が、良い例だろう。」

「え…?」

 

 目を瞑り、笑いながら、血を流す。

 

弱者(オレ)の勝ちだ。」

「なにを…」

「能力を『解く』ッ!!」

「なッ!?」

 

 美鈴が、いきなり倒れた。上から押し潰される感覚。同時に下に引っ張られる感覚。重力を一気に感じた。

 

「いっ……たい…なに……を…」

「俺の能力は『解く程度の能力』だ。あらゆるものを『解く』んだ。」

 

 吐血する美鈴。だが、無視して説明を続ける。

 

「さっき、あんたの重力を『解いた』。あの時から今までずっとな。『解いていた』間の反動があんたを襲う。もっと間を空ければ、もっと強い反動を食らう。」

「ハァ……ハァ……」

「安心しな。時期にいつも通りになる。」

「ハァ…………ハァ…………ハァァァ……」

 

 どうやら、もう反動はないようだ。だが、十分のダメージを負ったようだ。

 

「完敗…ですかね……『弱者が強者を伐つ』か……」

「フゥーッ…良い名言だろ。」

「よく聞く言葉ですね。」

「うっせ」

 

 急に静かになり、紅い雲に覆われた空を見る。

 

「なんか、久しぶりに楽しさと言うものを味わったよ。」

「光栄です。」

「さっきから思ってんだが、その敬語止めてくれ。戦友ってヤツあるだろ?なんかカッコいいからなろうぜ。センユーだセンユー。」

「……フフ、適当ね。なんか。」

 

 我ながらそう思う。

 

「そう言えば、貴方いつの間にか敬語じゃあないものね。」

「やっと気付いた?」

「えぇ。」

「気付くの遅いねぇ。」

「うっせ。」

 

 青春のように笑い合う。久しぶり?初めてか?どっちでも良いや。青春ってのは中々ない。そんな相手も居なかったしな。

 俺は立ち上がり、手を差し伸べる。

 

「立てるか?」

「お人好しね。敵に手を差し伸べるなんて。」

「敵じゃあない。」

「『戦友』、でしょ?」

「分かってるじゃあねぇか。」

 

 美鈴が手を掴み、そのまま立ち上がる。

 

「うわーやられたー(棒)館の中に入られるー(棒)」

「………」

「なんか言えよッ!?」

 

 ノーコメントで館の中に入ってやった。




薬売り「やぁやぁ、みんな。勉強をやれと言われて腹が立った経験があるみんな。俺だよ」

玄龍「誰だよ」

薬売り「今日はねぇ、『八雲紫』さんに来てもらったよ」

紫「何で私なの。今回出てないでしょう?」

薬売り「穴埋め」

紫「堂々としていて逆に清々しい」

薬売り「その割りには鬼のような顔をしているが?」

玄龍「それは元からだろー」

二人「「HAHAHAHAHA!!」」

薬売り「あ、ごめん。お願いだから弾幕撃たないで。俺ら戦闘経験ないからさ」

紫「ハァ……早く進めなさい」

薬売り「うい、今回……と言うより、この作品は頭脳戦をメインにやっていきたいなと思ってるんで、今回のはそれが特に、にじみ出てたんじゃあないかなぁって思ってます」

玄龍「いかに自分の能力を活用できるかってね」

薬売り「それと、玄龍君は青春時代は刑務所だったんで、幻想郷で発散させます」

紫「だから、美鈴との会話で『戦友』って言葉が出たわけね」

薬売り「良い理解力だ。誉めてやろう」

紫「脳潰すぞ」

薬売り「君ならやりかねん。そして殺りかねん」

紫「喧しい」

薬売り「さて、今日もこんなに短く終わったが、気にするな」

玄龍「まず誰も見ない」

薬売り「悲しいことを言うね。否定はしない」

玄龍「おい」

薬売り「さて、今回もこれで終わりだな」

玄龍「また来週」

紫「幻想郷に無害だったら、いつでも画面の前の貴方達を幻想入りさせるから言ってね♪」

薬売り「言えねぇから困ってるんだよこっちは…」

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