あれから、数日経った。住む場所が無いため人里で家を買い、呑気に過ごしていた。平和すぎて暇だと思って、筋トレをしていたら初めて『異変』が起きた。
「これは……異変だよな?」
空一面、紅い雲に覆われ、ほぼ毎日俺を照らしてくれていた太陽は消えていた。
返せ。寒いじゃねぇか。暖かい太陽を返せ。
「ハァ……博麗神社に行くか。」
太陽を取り戻すため、せっせと足を運ばせた。暫くすると神社が見え、巫女が見えた。
「おはよー。生憎の天気ね。」
「そうだな」
呑気に座りながら、空を眺める霊夢はため息をついていた。
「さぁ、異変解決にでも行こうか。」
「待って、まだよ。」
「え、だが……何故?」
「呼んでもない奴がもう一人来る。」
そういった瞬間、ドンガラガッシャンと何かが神社に突っ込んできた。霊夢は手を顔にあて、やれやれと疲れはてた顔をした。
「おーい霊夢!!異変だぜ。早く行こう。」
「修理してよね。」
「いつかな。」
魔女のような格好をしていて、金髪の若い女性がいた。服をパンパンとはらい、ニッコリと登場してきた。
「こいつは?」
「殺人鬼。」
「珍しい名前だな。」
「違う。オレの名前は鬼島玄龍だ。」
「『霧雨魔理沙』だ!!宜しく!」
と、これまたニッコリと挨拶。霊夢と違い、フレンドリーな彼女。霊夢の言葉から察するに、彼女も異変解決をする人なんだろう。
「じゃあ行きましょう。」
「え、こいつもか?」
「こいつもよ。」
「ふーん。ま、いいや。」
そう言って、彼女は箒をまたぎ、中に浮いた。なるほど、本物の魔女か。
「行きましょう。」
「あーすまない。ある事情により、飛べない。」
「え?」
「先に行っててくれ。」
「あら、そう?首謀者は多分アッチにいると思うから。先に行ってるわよ。」
霊夢が西を指し、そのまま飛んでいった。あっという間に彼女らは豆粒ほどの大きさになり、見えなくなった。
「じゃあ、行くか。」
一人寂しく歩くことにした。
いつの間にかまわりは森になっていた。
この森に入って二十分。気持ち悪くなってきた。吐きそう。この森に何かヤバイ粒子でもあるのだろうか?
「ハァ……ハァ……早く帰りたい。」
「お兄さん、どうしたの?」
「えぁ?」
知らぬ間に、女の子が後ろに立っていた。青鬼だったら頭を喰われて死んでただろう。青鬼じゃなかったことを感謝しつつ、質問。
「この先に行きたいんだけど、あとどれくらいでこの森をぬけられる?」
「そーだなー……二、三分じゃない?」
あと少しだ!!喜びを覚えた。森を抜けた暁には何をしよう。あ、そういや異変解決中だった。目的を間違え、恥ずかしい。
「でも、貴方は永遠ここから出られないわ。」
「え?」
「だって、『私に食べられる』のだもの。」
私に食べられる?どういう意味だ。性的な意味だったら断るが…ここから出られないと言うことを言っている。つまり、俺をランチとして食う訳か。
「こんな天気の日に死ぬなんて嫌かもだけど、私のために死んでちょーだい。」
「えぇーやだ~。いや、俺も人を殺してその血液をがぶ飲みしたことはあるから、ヤダとか言う権利無いかもだけどヤダー。」
「結構クレイジーね。」
よく言われるよ。さて、普通に嫌なので抵抗をさせていただこう。その前に…
「俺は鬼島玄龍。君、名前は?」
「ルーミアよ。」
「んで、どう殺す?この俺を。」
「暗闇にする。」
「暗闇?」
瞬間、まわりが闇に包まれた!!こいつも能力者か……
「え、この程度の闇でもう見えないの?鳥目なの?」
「暗いところは好きさ。」
「うれしーわねー。」
棒読みでパンチをされた。音のする方に耳を傾ける。更に闇が深まった。
「じゃあ、夜も好き?」
「大好きだね。」
音のした方に顔を向けたらその顔を殴られた。更に闇が深まった。
「冬は夜が長いから好きだよ。」
「あー!!私もー!!」
おかしい。『スペルカードルール』は?これは一方的な戦い。ルールなんてない。
どう言うことなんだ?そう言えば、能力者は幻想郷の住民全員ではないらしい。これが原因か?ごく一般の人間は弾幕なんて出せないから、妖怪はそれを狙っている?
なるほど。一人で納得した。更に闇が深まった。
「さあ、お話もおしまい。貴方を食べるわ。」
「なあ、闇が好きなんだよな?」
「好きよ?」
「そうかそうか。なら、『完全な闇を君にあげよう』。嬉しいだろう?」
「え?」
「闇を『解く』。」
辺りの闇は消えた。そのひとつの言葉だけで、俺とルーミアが大好きな闇が消えたのだ。アッサリと消えたその闇。だんだん濃くなっていくのに消えるときは一瞬。まるで、「今流行りの人気芸能人」と言われたにも関わらず、半年でTVから消える芸能人みたいに。アッサリと消えた。
「なんで!?」
「さて……」
右を見たり左を見たりして焦るルーミアの頭に手を置いて、囁きかけた。
「君の視力を『解く』。」
「え!?」
ルーミアの視界には何も写っていない。見えるのは闇。
「どこなの?お兄さん…」
「………」
暫く無言で眺めてようか。さていつまで続けよう。俺は木に凭れその光景を眺める。
そこら辺の木にぶつかり、必死になりながらも俺を探している。暫くして、俺のところまで辿り着いた。
「…見つけた。」
ルーミアは俺を殴ろうと右手を振り上げる。
「解け。私の視界を返せ。」
「よしよし、すまないな。能力を『解く』。」
ばーか。それが狙いだよ。
「うっ…ぐああ!!眩しい!」
ルーミアは目を抑えながら地面で転げ回る。
「ずっと光がなかったんだ。いきなり光を得たらそうなるだろ。まぁ、それだけじゃないけど…」
「ぐっ……」
よく考えてみればひどいことをしている気がする。まぁ、生きるためだと言い訳をしておこう。
「さて、それそろ行かなくっちゃあな。」
「待て…逃げるなぁ…」
「異変解決しないといけないんでな。それじゃあな。」
そういって、手をふりながら森を抜けた。結局、森を抜けても気持ち悪かったので吐いてしまった。
薬売り「はい、始まりました。後書きコーナー」
玄龍「あ、おい。始まったから膝から降りろ」
ルーミア「はーい」
薬売り「今回のゲストはそーなのかーでお馴染み。『ルーミア』さんでぇぇす」
ルーミア「本作じゃあ一回しか言ってないけどね」
玄龍「メメタァ」
薬売り「さて、玄龍よ。魔法の森はどうだった?」
玄龍「貧血より酷い目眩に、船乗りよりも酷い吐き気がした」
ルーミア「そうね、私もあそこは苦手よ」
薬売り「じゃあなんであそこに?」
ルーミア「作者なのに知らないの?食料探しよ」
玄龍「人間?」
ルーミア「キノコ」
薬売り「どっちの意味?」
玄龍「今すぐ警察に行け」
ルーミア「いやさ、人間が居なくてさ。仕方なく今日はキノコにしようって思ったら、お兄さんがきた」
玄龍「なるほどな」
薬売り「まぁ、その前に霊夢たちにも会ったんだろ?」
ルーミア「うん。案の定負けた」
薬売り「知ってた。さて、今日の感想だね。今日はねぇ……初めての戦闘なんだけど、やっぱスペルカード戦の描写がチョイとめんどくさいから、こういう風になった」
玄龍「この手抜き野郎!!」
ルーミア「サイテーね。私にトラウマを植え付けやがって」
薬売り「すまない……俺はMじゃあないから嬉しくないんだ」
玄龍「お前の趣味など知らん」
ルーミア「私はSよ」
玄龍「おい」
薬売り「因みに玄龍もSです」
玄龍「オイィィィィッ!!」
薬売り「それでは皆さん。ありがとうございました」
玄龍「おいちょ待てよ!!」
薬売り「キムタク?」
ルーミア「そーなのかー」