殺人犯は救世主   作:薬売り

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第十四話 『殺人犯は人外で』

「……は?」

 

 弱々しく発した。疑問と絶望、そして哀しみの声だった。

 レミリアは同情するように目を閉じ、彼の肩に手を乗せた。それが、玄龍を更に絶望させる。

 この男は、トコトン運がない。輪廻転生でこんな性を持ち、周りからは邪険に扱われ、現実を照らす灯台も消え失せた。そんな闇の中で、追い討ちをかけるように襲う現実。俺なんかでも人間だと誇れたのに、今となってはもう遅い。

 

彼は『吸血鬼』となったのだ

 

 しかし、そんな悲劇のヒーローぶるのもまた違う。どんな理由でさえ、彼は殺人犯。勿論、その場に居る者達も、数多の人を殺し、食べてきた。咲夜は人間で、玄龍のような性を持っていないが、殺してきてはいる。

 そう、この場に居る者たちは、心の囚われから逃れる身である。その為に抗っている。にも関わらず、抗っている根元の『人間である』ことが無くなってしまった。

 玄龍はもう、廃人になるか修羅へと進むこと、どちらかしか考えられなくなる。

 

「悪いが、一応君にも責任はあるんだよ。玄龍。」

「………」

「責任を背負うか?逃れるために死ぬか?」

「お嬢様!?いくらなんでもそれは…」

 

 先程の態度とは打って変わって非情な言葉をかけるレミリアに美鈴は言葉を飲み込むことが出来なかった。

 

「……少し、一人にしてくれ。」

 

 レミリアは俯き、咲夜にフランを運ぶように指示する。そのまま、部屋を去っていった。

 

「………」

 

 よく見れば、床には血が広がっている。誰の血だろう。もう、分からない。

 

 そして……

誰もいなくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!?なによそれ!?」

「………」

「そ、そりゃねぇぜ!?アイツは、私と弾幕ごっこの練習を申し込んできたんだぜ?」

 

 霊夢と魔理沙は今の話を素直に受け入れることが出来なかった。当たり前だ、一緒に戦った男がいなくなってしまったのだから

 

「でも、そういうことになったのね?玄龍は……『死んだ』のね?」

 

 紫の言葉にレミリアは頷き、今にも泣きそうな声で喋り続ける。

 

「あの時は、冷たくしすぎたのかも知れない」

「いいえ、貴女の言葉なんて耳には入っていなかったはずです」

「何故?何故そう言えるの?」

 

 紫は扇子を閉じ、目を閉じた。

 

「彼のような人間は、最早何もない。音も光も感じる力も。」

「……」

「しかも、彼は『廃人』として死んではない。『修羅』として死んだわ」

「……どういうこと?」

「良かったわね魔理沙、彼の練習が出来て。」

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでだ!!四季さんよ!!閻魔なら確り判断しろよ!!」

「いえ、ちゃんとした結果です。」

「何でだよ!?俺は『クロ』だ!!地獄行きなはずだ!!」

 

 閻魔である『四季映姫・ヤマザナドゥ』による判決は『シロ』、つまり天国行きである。

 死神の『小野塚小町』も驚いていた。

 

「貴方の性は私達閻魔の手違いが引き起こしがものなのです。よって、貴方は『シロ』です。」

「テメェ、頭のネジどっかに行ってんじゃあねぇのか!?」

「来世では、その性は無くなりますよ。」

「聞いてんのか!?チッ、キリねぇよ……」

 

 頭を掻き、後ろをチラッと見た。そう言えば、熱気が伝わってくる。穴が空いている。

 もしや、あれは地獄へと続いているのではないか?

 

「おい死神、地獄には灼熱地獄ってのはあるのか?」

「え?あ、あるけど?」

「だったら、アバヨ。」

 

 玄龍はそのまま穴の中へと飛び込んでいった。その行動にその場にいた者は驚いた。特に閻魔。

 しかしそれは……

 

「えぇ!?そこって……」

「旧地獄……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧地獄にて、彼女は今日も死体集めをしていた。そう、彼女の名前は『火焔猫燐』。

 

「うにゃ~、死体が沢山だね!!」

 

 趣味が死体集めという、なんとも女の子らしい趣味だ。うん、ほんとね。

 しかし、実は少し飽きてきていたのだ。いつも似た様な死体があるだけで、最近は刺激を求めてきた。

 

「あ~あ、空から面白い死体でも降ってくれないかな~。」

 

 そう思っていた矢先、何かが落ちたような音が遠くからした。音の響き的に結構大きい筈。死体か?面白い死体をよろしく。

 

「ン~あっちからだ。」

 

 ゆっくり近付いてみる。すると……

 

「イテテテ……あれ、俺って死んだ筈なのになんで痛みを……そうか、思い出した。地獄の痛みを知るために、感覚神経が通っているんだ。」

「……」

「…ン?どうかしたかい、そんなに口を開けて。顎外れないか、それ。もう外れてる?」

 

 驚いた。私達は彼が鬼島玄龍というおかしな殺人犯であることは知っている。

 殺人鬼で吸血鬼で幽霊で救世主である、玄龍だ。しかし、彼女はすっかり死体だと思ってた。というか、現在進行形で思っている。

 

「しゃ……」

「しゃ?」

「しゃべったァァァァァァァッ!?」

「当たり前だろ。」

 

 そうして、玄龍の人生は続くのであった。




そう…続く筈なんですが、作者の薬売りのリアルな忙しさで、今回で『殺人犯が救世主』を活動停止にさせていただきます。すみません。
ですが、飽くまで活動停止なのでまたいつか再開することは確かです。私情で小説を停滞することになり、申し訳ございません。

では、またいつかお会いしましょう。

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