殺人犯は救世主   作:薬売り

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第十三話 『殺人犯と笑顔と恐怖』

 ただいま、絶賛ピンチ中である。

 これ程の力量とは恐れ入った。南無三、やっぱり来なければよかった。

 しかしそんな遅い後悔もしてられない。高速の弾幕が大量に襲いかかってくる。

 

「フフフ……」

「フフフじゃあねぇよ!!こえーよ!!危なッ!?」

 

 仕方無い。ここは逃げるしかない!!

 

「きゅっとしてドカーン!!」

「おい、マジかよ!?」

 

 彼女が右手を握った瞬間、天井が崩れてドアが瓦礫に隠れてしまった。こんな絶望的状況、泣けるぜ。

 とは言え、更々死ぬ気は無い。殺人鬼だって人間だもの、死にたくない。

 

「時を『解く』。」

 

 どうも、『時を解ける少年』です。

 停止したモノクロの世界をゆっくりと移動して、物の陰に隠れる。バレなきゃ良いのだが…

 

「能力を『解く』。」

 

 そして、反動で世界は加速する。ちなみに、時間の加速を感じられるのは俺から半径100m以内。彼女は確実に影響を受けるためバレたら一巻の終わりである。

 

「あ、あれ?身動きが速くなった…?ていうか、彼はどこ…?」

 

 お願いだから気付かないでくれ。

 これだけ破壊したんだ。きっと美鈴達が助けてくれるはずだ。

 

「んー、まぁ、めんどくさいから適当に壊しちゃえ☆」

 

 それは困る!非常に困る!どうすればいい!?

 

「エイッ!!」

 

 響く爆発音。なんだこの恐怖心は…背筋に寒気が走る。

 純粋な殺意が伝わってくる。まるで無邪気な子供…否、もうそれだ。

 

「む~!!私は弾幕ゴッコがしたいの!!隠れん坊じゃないー!!」

 

 俺はそんなつもりじゃないー!!

 にしても、彼女の人格がコロコロ変わる。時に少女。時に淑女。時に悪女。時に……限り無く怖い。いつバレるか……

 

「ドカーン!!」

「んなッ!?」

 

 俺が隠れていた捲れあがった床が破壊された。その際に驚き、声を出してしまった。

 

「逃げなければ……ッ!?」

 

 それはもう出来ない。もう無理だ。

 少女が目の前にいるのだから。

 

「みーつけた♪」

 

 彼女は笑顔だった。それは、あどけない笑顔であり、悪魔の笑顔だ。

 あぁ、可愛げな笑顔をしている。故に恐怖である。死への恐怖じゃない、彼女への恐怖だ。

 

「うふふ……」

 

 彼女は俺の首を鷲掴みし、そのまま空中に浮遊した。

つまり、俺は首が絞まっている。

 絞殺される前に何かを……しなければ……

 

「は……な…せ……」

「イヤよ。離したら、逃げてっちゃうもの。みんなみんな、私を怖がってね。」

 

 恐怖と共感。同時に感じる不思議な感覚。

 だが、そんな感情は薄れていった。そう、恐怖さえも。首が絞められている所為で頭に血が上らない。血の気を感じれないのだ。

 

血を感じたい

 

 ヤバイ、久しぶりに出てしまう。

 抑えなければ。いや、抑える必要があるか?この危機的状況、抑える必要性を感じない。血も気も感じない。身体を感じない。空気を感じない。

 

血を感じたい 血を感じたい

ちをかんじたい ちをかんじたい

チヲカンジタイ チヲカンジタイ

 

ならば、血を飲もう

 

 刹那、彼女の腕が折れた。玄龍のただの拳で。

 

「なッ!?」

 

 痛みで離してしまった。これで、彼は暴走する。折れた腕を持ってフランを床に投げつける。

 力はほぼ人間じゃあない。化物だった。理性を失った化物。玄龍は、玄龍ではなくなっていた。

 

「な、なにが……」

「逃げんなよ?」

「ッ!?」

 

 床に叩きつけられたフランに、踵落とし。血ヘドを出すが知ったことか。今は逃げることだけを考える。立場の逆転。

 

「……おい。」

「ひっ!?」

「血を感じたい……だから………」

 

俺の餌になれ

 

 須臾、彼女の首元に傷が出来た。血が垂れる。玄龍は彼女の肩を掴み、そのまま……首にある傷を吸った。

 

「あっ……」

「………」

 

 何故だろう。彼女の中で瞬間的に恐怖が消え失せた。恐怖とは裏腹に快感を感じる。気持ちいい……彼女はもっと吸ってほしかった。そのまま無意識に玄龍に抱き付く。

 玄龍も、やめなかった。

 

「んっ……」

 

 その時、瓦礫が破壊された。煙が立つ。その煙から、幾つかの影。

 

「フラン!!…これはッ!?」

「妹様!!」

 

 咲夜はナイフをあの男に投げようと、ナイフを取り出すが…無理だった。

 恐怖、フラン自身が咲夜に殺気を放っていた。

 

「………え?ハッ!!ヤバイ、やってしまった……」

 

 フランはそのまま気絶。そこにレミリアが歩み寄る。咲夜はナイフを取り出す。

 

「妹様に何をした。」

「…血を吸った。」

「…ッ!!」

 

 咲夜がナイフを降り下ろすが……止められた。それは、レミリアによって。

 

「お、お嬢様!?」

「彼は貴女じゃ殺せないわよ、咲夜。彼はもう人間じゃあない。」

「……すまない。確かに、もう人間じゃあないのかもな…責任はとるよ。」

「玄龍。私は貴方の心配をしているの。フランは大丈夫。」

「え?」

 

 その言葉は不思議だった。普通、心配するのは妹へ。俺の心配は無い。

 それが普通なのだ。そうなのだが…

 

「お嬢様!?彼を心配する必要性がどこにあるって言うんですか!?」

「黙りなさい。」

「ッ!!」

「貴方は、フランの血を吸ったのよね。」

「あ、あぁ……」

 

 なんなんだろう。だからこそ、妹を心配すべきではないのだろうか。

 

レミリア「自分の歯を触ってみなさい。」

 

 言われる通り、歯を触った。すると、奇妙なことがわかった。

 

「これは……牙?」

 

 犬歯が鋭く尖っていたのだ。まるで……そう、吸血鬼。

 

「貴方は吸血鬼になったのよ。フランの血…基、DNAを体に取り込んだ為ね。」

 

 それは、人生の中で一番残酷な言葉だった。




薬売り「どうしてこうなった」

玄龍「知らぬ」

薬売り「どうも、皆さん。薬売りです」

玄龍「さあ、今回のゲストは!?」

薬売り「いません、今回はお知らせしたいことがあります」

玄龍「実はリアルで忙しくなるため、後書きは暫くおやすみになります」

薬売り「申し訳ございません。次回もお楽しみに」

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