ただいま、絶賛ピンチ中である。
これ程の力量とは恐れ入った。南無三、やっぱり来なければよかった。
しかしそんな遅い後悔もしてられない。高速の弾幕が大量に襲いかかってくる。
「フフフ……」
「フフフじゃあねぇよ!!こえーよ!!危なッ!?」
仕方無い。ここは逃げるしかない!!
「きゅっとしてドカーン!!」
「おい、マジかよ!?」
彼女が右手を握った瞬間、天井が崩れてドアが瓦礫に隠れてしまった。こんな絶望的状況、泣けるぜ。
とは言え、更々死ぬ気は無い。殺人鬼だって人間だもの、死にたくない。
「時を『解く』。」
どうも、『時を解ける少年』です。
停止したモノクロの世界をゆっくりと移動して、物の陰に隠れる。バレなきゃ良いのだが…
「能力を『解く』。」
そして、反動で世界は加速する。ちなみに、時間の加速を感じられるのは俺から半径100m以内。彼女は確実に影響を受けるためバレたら一巻の終わりである。
「あ、あれ?身動きが速くなった…?ていうか、彼はどこ…?」
お願いだから気付かないでくれ。
これだけ破壊したんだ。きっと美鈴達が助けてくれるはずだ。
「んー、まぁ、めんどくさいから適当に壊しちゃえ☆」
それは困る!非常に困る!どうすればいい!?
「エイッ!!」
響く爆発音。なんだこの恐怖心は…背筋に寒気が走る。
純粋な殺意が伝わってくる。まるで無邪気な子供…否、もうそれだ。
「む~!!私は弾幕ゴッコがしたいの!!隠れん坊じゃないー!!」
俺はそんなつもりじゃないー!!
にしても、彼女の人格がコロコロ変わる。時に少女。時に淑女。時に悪女。時に……限り無く怖い。いつバレるか……
「ドカーン!!」
「んなッ!?」
俺が隠れていた捲れあがった床が破壊された。その際に驚き、声を出してしまった。
「逃げなければ……ッ!?」
それはもう出来ない。もう無理だ。
少女が目の前にいるのだから。
「みーつけた♪」
彼女は笑顔だった。それは、あどけない笑顔であり、悪魔の笑顔だ。
あぁ、可愛げな笑顔をしている。故に恐怖である。死への恐怖じゃない、彼女への恐怖だ。
「うふふ……」
彼女は俺の首を鷲掴みし、そのまま空中に浮遊した。
つまり、俺は首が絞まっている。
絞殺される前に何かを……しなければ……
「は……な…せ……」
「イヤよ。離したら、逃げてっちゃうもの。みんなみんな、私を怖がってね。」
恐怖と共感。同時に感じる不思議な感覚。
だが、そんな感情は薄れていった。そう、恐怖さえも。首が絞められている所為で頭に血が上らない。血の気を感じれないのだ。
ヤバイ、久しぶりに出てしまう。
抑えなければ。いや、抑える必要があるか?この危機的状況、抑える必要性を感じない。血も気も感じない。身体を感じない。空気を感じない。
刹那、彼女の腕が折れた。玄龍のただの拳で。
「なッ!?」
痛みで離してしまった。これで、彼は暴走する。折れた腕を持ってフランを床に投げつける。
力はほぼ人間じゃあない。化物だった。理性を失った化物。玄龍は、玄龍ではなくなっていた。
「な、なにが……」
「逃げんなよ?」
「ッ!?」
床に叩きつけられたフランに、踵落とし。血ヘドを出すが知ったことか。今は逃げることだけを考える。立場の逆転。
「……おい。」
「ひっ!?」
「血を感じたい……だから………」
須臾、彼女の首元に傷が出来た。血が垂れる。玄龍は彼女の肩を掴み、そのまま……首にある傷を吸った。
「あっ……」
「………」
何故だろう。彼女の中で瞬間的に恐怖が消え失せた。恐怖とは裏腹に快感を感じる。気持ちいい……彼女はもっと吸ってほしかった。そのまま無意識に玄龍に抱き付く。
玄龍も、やめなかった。
「んっ……」
その時、瓦礫が破壊された。煙が立つ。その煙から、幾つかの影。
「フラン!!…これはッ!?」
「妹様!!」
咲夜はナイフをあの男に投げようと、ナイフを取り出すが…無理だった。
恐怖、フラン自身が咲夜に殺気を放っていた。
「………え?ハッ!!ヤバイ、やってしまった……」
フランはそのまま気絶。そこにレミリアが歩み寄る。咲夜はナイフを取り出す。
「妹様に何をした。」
「…血を吸った。」
「…ッ!!」
咲夜がナイフを降り下ろすが……止められた。それは、レミリアによって。
「お、お嬢様!?」
「彼は貴女じゃ殺せないわよ、咲夜。彼はもう人間じゃあない。」
「……すまない。確かに、もう人間じゃあないのかもな…責任はとるよ。」
「玄龍。私は貴方の心配をしているの。フランは大丈夫。」
「え?」
その言葉は不思議だった。普通、心配するのは妹へ。俺の心配は無い。
それが普通なのだ。そうなのだが…
「お嬢様!?彼を心配する必要性がどこにあるって言うんですか!?」
「黙りなさい。」
「ッ!!」
「貴方は、フランの血を吸ったのよね。」
「あ、あぁ……」
なんなんだろう。だからこそ、妹を心配すべきではないのだろうか。
レミリア「自分の歯を触ってみなさい。」
言われる通り、歯を触った。すると、奇妙なことがわかった。
「これは……牙?」
犬歯が鋭く尖っていたのだ。まるで……そう、吸血鬼。
「貴方は吸血鬼になったのよ。フランの血…基、DNAを体に取り込んだ為ね。」
それは、人生の中で一番残酷な言葉だった。
薬売り「どうしてこうなった」
玄龍「知らぬ」
薬売り「どうも、皆さん。薬売りです」
玄龍「さあ、今回のゲストは!?」
薬売り「いません、今回はお知らせしたいことがあります」
玄龍「実はリアルで忙しくなるため、後書きは暫くおやすみになります」
薬売り「申し訳ございません。次回もお楽しみに」