殺人犯は救世主   作:薬売り

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ども、薬売りです。久しぶりに新作を出します。
どうぞ!!


紅き吸血鬼は血か月か
第一話 『殺人犯は救世主』


『お前は悪魔だ』

父の言葉

『お前を産んだ覚えはない』

母の言葉

『怖いわねぇ』

近所の奴等の言葉

『消えろ!!サイコ野郎!!』

まわりのガキの言葉

みんな

殺した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カフェで珈琲を飲み本を読んでいる彼を見て、まわりの人々は大人びた青年と感じるだろう。まぁ、実際にそうなのだが。カフェのバイトは彼を見て「あの人カッコいいね!!」「キッカケ作っちゃおうかな」等と鬱陶しい話をしている。彼自身は本に集中し、無心で読み続けている。ヒラリと頁をめくり、目を動かしている。そこらにいる、何処にでも居るような人間のようだ。

 

だがそうじゃない

 

 彼は幼児の時に親や近所、幼稚園の同じ組のガキを大量殺人した、狂気的で史上最も幼い殺人者として警察の監視下で今も暮らしている殺人犯なのだ。少年院や児童相談所ではないのだ。その理由は、彼自身の力に起因する。人智を超えた超能力のような何かを、彼は生まれつき持っていた。そんな力を持ちながら、たったの五歳だった少年は、人の血液を飲む性癖を持っていて、今は改善されてきている。

 後、二週間で監視下から解放される。その為心踊る気持ちでイッパイなのだ。正確には、ただ住む場所が変わるだけで解放では無いのだが。彼の分からないところから感じはされているはずだ。

 

「この本、ちっとも面白くないじゃないか。さ、自由時間も終わりが迫っている。帰ろう。」

 

 冷たい声をしている。

 買ったばっかりの本をゴミ箱に捨て、そのまま警視庁の方へと歩んでいった。

 警視庁が見えてくれば、同時に俺を待っている警察が見えてくる。

 

「名前、番号を言え。」

「ハァ…分かるだろう?何年一緒にいるんだよ。」

「いや、そうだが……今日を入れて14回言えばもう解放だぞ?」

「そうかそうか。そうだったな。二週間待てば、もうアンタの汚い顔を見ずに済む。」

「そいつぁ嬉しいだろうな。ポニテ男。」

「それ、罵れてないぞ。」

「罵ってほしいのか?」

「そうだ、と言ったらどうするつもりだったよ。」

「ああ、早く言え!!飯抜きにするぞ!?」

 

 それは困る。俺も生きてるので、食わなきゃ動けない。どうせ、明日も働かされるんだろうから。働くって言うか、実験って言うか……まぁいい。

 

「『鬼島玄龍』。番号358。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、就寝の時間。この時間が今日を含め14回来ればいい。それだけで、俺は自由。

 冷たいベッドと薄い毛布に体をサンドさせて、遠足の前日の夜のようにウキウキさせていた。二週間も後の事なのに。

 その時、違和感を覚えた。重い瞼を開け、鉄格子の方を見る。違和感は警戒へ変わった。

 

「ごきげんよう。」

「やぁ、ごきげんよう。こんな真夜中にどうかしたのかい?夜這い?」

 

 格子越しに女性が俺を不気味な笑みを浮かべて話しかける。金髪の長い髪を持つ女性だ。

 

「してあげても良いわよ?」

「そりゃ嬉しい。どっから来た?」

「切り替えの早いこと。」

「答えろ。」

 

 少し、殺気を放ったが女性は受け流す。否、受けてすらいない。

 

「貴方、いい能力を持っているわね。」

「狙いはこれか。」

「間接的には。狙いは貴方自身よ。」

「なにか違いが?」

「ないわ。」

「ああそうかい。」

「ねぇ、こっちの世界に来ない?」

 

 こっち……それはスパイとか暗殺者とか…etc etc…のことを言っているのか?それは困る。13年の我慢が無駄になる。

 

「こっちと言うのは、異世界のことよ。正確には違うけど、便宜上そう言わせていただくわ。」

「精神科へ行くことを勧める。」

「貴方の能力のこともあるわ。別世界だって、あっても不思議じゃないと思わない?」

「いや全く。」

「その世界は『幻想郷』という世界よ。貴方には救世主になってもらうわ。」

 

 いきなり訳のわからんことを……『幻想郷』?『救世主』?アホらしい…聞いてて虫酸が走る。だがしかし、同時に面白そうだ。普通、こんなことを聞いて『面白そう』などと思うバカは居ない。と言うより信じないだろうけど、なんか信じてしまった。

 

「行くの?行かないの?」

「そりゃあ、勿論。『今は行かない』。」

「は?いや、貴方結構行きたそうな顔をしてたわよ?」

「二週間と一日後、また来てくれ。そしたら、こんな小汚ない部屋じゃないぞ。解放されるんだ。」

「なるほど、そういうこと。良いわ。待ってあげましょう。私の名前は『八雲紫』よ。」

 

 そう言い、彼女は紫は消えていった。暗闇でよく見えなかったが、なんかしらの方法でここを出たらしい。しかし、一瞬で消えてしまったのはどういったトリックなのだろう。彼女も能力があるとかか?

 俺は、薄い毛布に顔を埋め、深い深い夢の世界に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 14回の夜を越え、この日がきた。

 昔から俺の面倒を見た警察と強い握手をした後、足を交互に出した。今日から自由。自由に生きる。そして、二週間前に来たカフェに入店した瞬間。驚愕と言っても過言…いや、そんな驚いてない。過言だった。

 

「あ、玄龍!!遅いじゃないの!!」

 

 まるで、待ち合わせ中の彼女のような振る舞い。前は、暗くてよく見えなかったが、結構な美人。

 

「悪い悪い。待たせてしまったな。」

 

 俺もノッてみた。端から見ればよく居るウザったいカップル。内心キツいが、まぁ、どこから見てるか分からない監視を欺くためにはしょうがない。きっと今頃「どこで彼女を作ったんだ?」と喚いているだろう。

 俺は、テーブルに座り。向かい合わせ。カフェのバイトは「なんだ、彼女持ちか」と、厨房で諦めた。

 

「紫…何故俺がここに来るってわかった?」

「勘かしら。そんなことはどうでもいいわ。」

 

 良くないな。

 

「何故、殺人犯の俺を救世主にしたがる?」

「そうね……私は幻想郷を管理している者よ。その幻想郷に招待するのはある条件を持っている者なの。」

「条件?」

「一つ目、能力持ち。」

 

 確かに、持っているな。

 

「二つ目、固定概念があまり無い人。」

 

 監視下で暮らしてたからそんなに無い。

 

「忘れられても構わない人。」

 

 ン?唯一分からないぞ?

 

「それは…どういう意味だ?」

「幻想郷はね…忘れられた物や者の行き着く場所なの。幻想郷へ行けばこの世界から貴方自身の記録は無くなる。また、この世界に戻ってきても一からやり直し。」

「へぇ。」

 

 結構残酷だが、そこまで驚かなかった。

 

「だから確認」

 

 真剣な目で俺を見つめる。

 

「嫌なら嫌と言って良いわ。貴方、『幻想郷に行ってみない』?」

「いいよ、別に。」

「え?」

 

 結構あっさり。答えは簡単。

 

「俺、友達いねぇし。」

「……そ、そう。」

「いんじゃねぇか?結局、俺の自由は保証されるんだろ?」

「ええ、まぁ…」

「じゃあよろしい。」

 

 きっと、粘るつもりだったのだろう。引き付ける言葉を考えて考えた末に選んだ言葉を結局使わないで済んで、ビックリした顔をしている。どんな顔だよ。

 

「さて、地味に話を反らしやがったが、俺を救世主にしたがる理由は?」

「別に反らした覚えはないわ。貴方には固定概念がないでしょ?」

「まぁ。」

「自分の考えだけを信じるものは破滅へと導く者へとなるのよ。」

「破滅?」

 

 いまいち理解ができない。

 

「そう、破滅。自分の考え及び固定概念を壊さねば、幻想郷では役立たずもしくは悪よ。」

「どう言うことだ?もっと分かりやすく言え。」

「幻想郷は『非常識』な世界よ。固定概念に非常識をぶっ混んだらなにが起こるかわからないのよ。パニックをおこして役に立たないバカになるか、非常識を壊す悪になるか。」

「ふむ…理解出来たような…出来てないような。」

「十分よ。貴方は『別世界』という単語を聞いたときすんなり信じたもの。固定概念なんてなんにもないわ。」

 

 あれ?精神科を勧めたような?

 それにしても、やっぱり理由を避けているな。何がある?俺が救世主になることでその世界はどうなる?まず、その世界は救世主を求めているのか?

 

「まぁ、いい。場所を変えよう。早速幻想郷へ行くとする。そうだな、神社はどうだ?あそこは人気がない。」

「神社って……本当に貴方すごいわね。」

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、着いたぞ。」

「そうね。……もう一回聞くけど本当に良いの?」

「しつこいねぇ。良いって言ってんじゃん。」

「そう…じゃあ、目を閉じて。」

「ン、わかった。」

 

 そうして目を閉じる。

 

「ようこそ幻想郷へ。」

 

 その言葉を聞いた瞬間、その場の雰囲気が変わった気がした。面白いじゃあねぇか。やってやるよ。




薬売り「はい、というわけで始まりました。『殺人犯は救世主』。後書きではほぼ毎回このようなコーナーをやっていきたいと思います」

玄龍「やぁ、上司に媚を売って人生にうんざりしてる諸君。俺だ」

薬売り「気の触れることを言うんじゃあない」

玄龍「いや、そうだろう?残念ながらそうしないと生きていけない世界だ」

薬売り「お、俺って学生だから分からないなぁ~」

玄龍「勉強しろよ」

薬売り「グッ…五月蝿いやい!!人殺しが何を言う!!」

玄龍「そうだな、俺は人殺しだ。だが、お前が勉強をやらない事とは関係ない」

薬売り「ウガァァァァうるせぇ!!」

玄龍「ブーメランを投げたことに気付かない愚者が。読者にこのコーナーの趣旨を教えようとはしないのかバカたれ」

薬売り「せやな。じゃあ説明します」

玄龍「切り替えの早いこと」

薬売り「お前もブーメランを投げてるやん」

玄龍「切り替えが早いってのは良いことだ」

薬売り「えー、このコーナーは、今回の物語について話し合うってコーナーです。いわば、感想です」

玄龍「今回は居ねぇが、次回からはゲストも呼びたいと思う」

薬売り「そう言うことですので、後書きは見ても見なくても良いです」

玄龍「じゃあ、なんのためにあんのさ」

薬売り「無いよ。理由なんて」

玄龍「はぁ?」

薬売り「こんな世界なんて意味の無いもので溢れているよ。例えば、ファッションとかね」

玄龍「ファッション?」

薬売り「そう。元々、服と言うのは寒さ軽減や肌が傷つく及び汚れるのを防ぐためのもの。そんな、服と言うのはファッションとして変化した。ファッションはなんのためにある?異性にモテるため?自分を輝かせるため?だとしたら、なんで輝きたい?意味はある?……切りがない」

玄龍「……」

薬売り「切りがないから、『娯楽』というくくりでおわらせた」

玄龍「つまり、娯楽というのは意味がいないと?」

薬売り「いや、そうは言ってない」

玄龍「何を言ってんだ?見事なる矛盾だ。まるで手本だ」

薬売り「いいや、矛盾なんかしてないさ。これっぽっちもね」

玄龍「は?」

薬売り「理由のない事象はいつしか『思い出』や『経験』となるんだよ」

玄龍「……お前に答えを求めたのが無駄だったな」

薬売り「無駄無駄ッ!!」

玄龍「お前も十分気の触れるようなことをするじゃあねぇか」

薬売り「だから、読んでも読まなくても良いと言っただろう?そもそも、こんな長い後書きを読みたいか?」

玄龍「逆に読みたい」

薬売り「誤算だった」

玄龍「と言うわけで、次回もやるけど見なくて良いよ」

薬売り「それでは、また来週」

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