真・カンピオーネ無双 天の御使いと呼ばれた魔王   作:ゴーレム参式

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遅れしまって申し訳ありませんでした。


紅き月夜に魔神は願う

 昔話をしよう。

 

 十世紀初頭、かの地にて、複数の神殺したちがいた。

 彼らは魔王の権威と神の権能を振りまき、かの地の民たちを苦しめた。

 

 いずれ現れる魔王殺しの勇者『最後の王』いまだ現れぬまま、その地は無垢なる民と神々の骸が転が散らばる。

 

 この魔王たちの横暴に打破するため、かの地住む魔術師たちは結託し、神殺したちを斃すべくある神を降臨すること進めた。

 

 それは神話において神を殺した魔王よりも凶悪にて残忍、純粋にて最悪最強の大魔王。

 

 目には目を、

 歯には歯を、

 魔王の皮を被る愚者には真の魔王をもって倒す。

 

 魔術師たちは神殺しの眼を盗み、まつろわぬ神の降臨を始めた。

 

 しかし、儀式は失敗に終わった。

 

 途中、ひとりの神殺しに気づかれてしまい、魔術師たちは全員殺され儀式は失敗。

 

 その結果、降臨するはずの神は三つの要素に分離してしまった。

 

 現世で動くための神の肉体、

 無垢なる神の魂、

 肉体と魂を繋げる神の精神。

 

 魂は不死の境界の置き去りになり、精神は生と不死の境界にて彷徨い、そして、肉体だけが現世に降臨した。

 

 神殺しは眼前の神の肉体を目にし、まつろわぬ神の肉体を殺そうとした。

 

 しかし、神殺しは大きな勘違いをしていた。

 

 たとえ、神の肉体だけとはいえ、それでも神本人だということを。

 

 まつろわぬ神の肉体は一柱のまつろわぬ神となり、愚かな神殺しを無残に残酷に暴殺した。

 神殺しは簒奪した権能を振るも、まつろわぬ神の肉体には届かず、逆に神話の魔王によって一方的には残虐されてしまった。

 まるで、神殺しの悪行が応報となって返ってきたように、また、己こそが悪鬼羅刹の大魔王だと愚者に言い聞かせるようにまつろわぬ神の肉体は神殺しを弄ぶように殺し続けた。

 

 その虐殺は神殺しの断末魔が、息絶える瞬間まで千里先まで木霊したという。

 神殺しを殺したまつろわぬ神の肉体は、降臨するはずのまつろわぬ神の神格とは別の神格となり地上を彷徨い歩いた。

 

 しかし、数年後。

 一人の聖女が勇者の所有物であった鎚矛を用いり、まつろわぬ神の肉体だった神格を突き刺し封殺した。

 その際、まつろわぬ神はこう言い残した。

 

―――「いずれ、我が半身が地上に降臨し、我を蘇らせる。そのとき、我らは我らの魂を取り戻し真に魔王となりこの世界を滅ぼさん」

 

 まつろわぬ神は鎚矛が刺さったまま全身竜骨となりて、大地深くに埋葬された。

 

 

 それから数百年後。

 生と不死の境界より、一柱のまつろわぬ神が降臨した。

 それは数百年前にて生と不死の境界に彷徨っていた神話の魔王の精神であった。

 

 

===========================

 

「我がこの地上に顕現して早千年…魔王と称する愚者が支配する世を千年も眺めながら、本来の神格を取り戻し、この手で偽物たちを皆殺しにし誰が大魔王なのか今一度世に知らしめる日をどれほどまちこのんだことか…」

 

 男は数キロ先の南方から、新宿のビル群をぶち破りながらこちら向かってくるザッハークを見据えた。

 ザッハークは男と目が合ったのか、それとも男の頭上にある光輪と業火を見つけたのか、雄たけびを上げ、速度をあげた。

 その姿に男は歓喜の笑みで、

 

「良くぞ来たぞ我が半身! これより我らの呪いを解く! 鋼を崩すとき我らの魂をこの地にて降臨する。さすれば、我らは真の魔王となろうぞ!!」

 

 男が後ろにある鎚矛に振り向こうとしたそのとき、

 

「――あっ」

「むぅ?」

 

 鎚矛を引き摺りながら持ち去ろうとする少女――草薙静花と目が合った。

 

「小娘だと…なぜここに…」

「くっ!」

 

 静花は一目散に、下の階につながる階段口へ走った。

 

「…火の元素よ、爆炎となりかの者を焼き殺せ!」

 

 男が呪文を唱えた途端、男の眼前に人ひとり消炭にするほどの爆炎が現れ、静花を飲み込んだ。

 鎚矛も巻き込んだが、不朽不滅の神具なので問題ない。

 

「人のモノを盗むとは愚かなことを…。しかし、なにゆえ槍を狙って――」

「けっほけほ!! 幼気な少女を攻撃するなんてそれでも大人ッ!?」

「なにッ!?」

 

 爆炎が収まると、そこには怪我一つない静花の姿があった。

 魔術が防がれたことに男が驚くが、すぐに表情を抑え、冷静に分析しはじめる。

 

「…ルーン魔術だと…? しかもそのような単純な術式で我が術を防ぐなど…」

 

 静花の周囲にルーン文字がうっすらと浮かび、風が彼女を守る様に展開されていた。

 男にとって、それがルーン魔術のものだと見抜くのは造作もなかったが、眼前の魔術がいかに出鱈目かつ強引な代物に困惑した。

 

(危なかった…北郷さんがなにか仕掛けてくれなかったら死んでたかも…)

 

 男の呟きから、この場に居ない一刀が何かを施したことを察した静花。

 炭化してしまうほどの火力を浴びてなお、まるで大人に突き飛ばされたような衝撃しか感じない。ほんと出鱈目だと思いながら命拾いしたことに安心感を得る。が、まだ安心ができない。相手は容赦なく殺しに来た。守りの魔法らしきものがあるとはいえ油断はできないし、次に命があるかどうかしら分からない。

 とにかく今はこの状況を打開すること考える静香に、男が質問してきた。

 

「小娘…貴様なにものか?」

「…ただの一般人よ…あんたが誘拐した人を助けるために来た現役女子中学生」

「アホな事をぬかすな。ただの一般人が我が術を防げるわけなかろう」

 

 いきなり魔法みたいなもので燃やそうとした人に言われたくない!?

 と、ツッコミを入れたい静花だが、ややこしくなりそうなのであえて沈黙し、男を睨んだ。

 男はさらに言葉を紡ぐ。

 

「それに助けに来ただと? ふん、ならばなぜこの者たちを連れていかぬ? しかも、我が儀式に必要な槍をこっそり持ち出そうとするとは。他に目的でもあるのではないか」

「…いいえ。最初っから誘拐された人たちを助けに来ただけよ。ただ、さすがにこれだけ全員を連れだせないから代わりにこの槍だけもっていく。なんたって、この槍が無いと儀式なんてできないからね」

「っ!? 貴様、どこで我の儀式を知った?」

「悪いけど、そこまで親切に教えるないわけないでしょう」

 

 意地悪な顔つきで、男を見据える静花。

 男は静かに口元を上げた。

 

「ふっ、それもそうだ。しかし、まだまだ幼稚だな」

 

 男の指先がガスバーナーのような火柱が放出され、その火の先端が近くにいたいまだ祭壇で眠っている少年の首筋近く置かれた。静花はその少年に見覚えがあった。昼頃、一緒に誘拐され助けを求めた少年だった。

 

「生贄の命は我が握っている。この者たちの命を欲しくば大人しくその槍を返してもらおう」

「………」

「さぁ、早くそれ渡せ――」

「…やれば…」

「ん?」

「やればいいって言ってんのよ…!」

 

 静花の言葉に男は耳を疑った。

 

「可笑しなことをいう。その言葉は目的と矛盾しているぞ小娘」

「でしょうね。でも、そんなコケ脅しに乗るほど、あたしそこまで馬鹿じゃないから」

「コケ脅しとな? なぜそう言い切れる?」

「だって、儀式にはこの専用の槍で指定された生贄を殺さないと成立しないんでしょう? だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり、アンタがその手で生贄を殺せない。そうじゃないの?」

「…クッ」

 

 核心を見抜かれ男は苦虫を嚙み砕いたように舌打ちし、指先の火柱を消した。

 静花は不屈な笑みを浮かべ核心した。

 

 今手に持っている槍こそ、この事件の重要なものであることを。

 自分と一刀だけが知っている予言。儀式の重要性を程度まで把握したおかげで、このバカげた計画の仕組みが理解できた。

 重要な点は三つ。

 

 ひとつめは儀式には条件のある生贄を17人集めること。

 

 ふたつめは専用の槍で17人の生贄を殺すこと。

 

 みっつめは上記の条件を満たして、こちらに近づいてくる怪獣がビルの真上にある炎を高ぶらせる光輪をとある方法で飲み込むということ。

 

 後半はどういうものなのか想像できないが、ひとつめの条件を満たせなければ儀式はできないことは容易にわかる。ならば、ふたつめで重要な槍さえなけば、儀式を始めらないうえ、生贄となっている男児たちの命も保証される。まさに一石二鳥であった。

 生贄にするため男児を選びに選び抜き、強引かつ手早く誘拐し執着した男だ。こんなトラブルで計画を捨てるなどしないだろう。

 そう考えた静花に男は褒めるように言う。

 

「フッ、小娘ながらよく考えたものだ」

 

 もっとも…、

 男は言いかけ、静花に手を向けた。

 

「それでもまだ幼稚なのだよ…!」

 

 途端、静花の手の内にある槍が磁石のように男のほうへ引き寄せられ、手元から離れようとする。

 何が起きたのか静花には理解できず、槍が持っていかれぬよう慌てて引っ張った。

 

「槍を手元に呼び出す術を持っていないと誰がいった? 貴様程度の猿知恵で儀式の障害にはならんよ」

 

 引き寄せられる力はより強くなり、ズルズルと綱引きのように引っ張られていく。

 それでも負けじと床に力を入れる静花だが、魔力の引力のほうが強い。あと三メートルで、槍が男の掌に収まるとした――その時!

 

カァ―! カァ―!

 

 突如として大量の烏が男に襲い掛かり、男の姿が烏の群れに覆われた。

 

「ぬっ!? この烏は!?」

 

 意識が槍から烏へ逸れたため、引き寄せる力が無くなり、引っ張った反動で静花は尻餅をついてしまう。

 

「イタタタタ…突然なんなのよ一体…」

『まったく無茶をしおってからに!』

 

 静花の眼前に二匹の烏が翼を羽ばたきながら静花を見下ろしていた。

 烏よりも大きな烏に人間の言葉を喋る烏――フギンとムニンであった。

 

『勝手な行動するな小娘!』

『お怪我はありませんか静花』

「あんたらはたしか…パシリ一号! 二号!」

『『フギンです(ムニンだ)!!』』

「あれ? そうだっけ?」

『もういいです。それよりも、東京中の烏を連れてきました。あれなら三分は持ちこたえられます』

『この隙に、その槍をもってズラかるぞ!』

 

 静花がコクリと頷き、出入り口に向かって走りぬこうとする。

 

「逃がさぬ! 燃やし尽くせ焔よ!」

 

 その後ろ姿を発見した男は、巨大な火球を眼前に放出させた。

 周囲の烏たちは危険を回避して離れ、火球はそのまま静花に直撃し、爆発した。

 

「きゃぁぁぁぁあああああああああああああ!?!?」

 

 静花の身体を守っていた風の防護服が巨大な火球の爆発防ぐも、火力と爆発の衝撃は防ぎきれず、消失。

 衝撃の爆風により、フギンとムニン、静花の身体がビルの外へと吹き飛んでしまった。

 

 

=====================

 

 

 

 身体が重力に従って下へ下へと落ちていく。

 

「はぁ…これは死んじゃうなー」

 

 風の防護服のおかげで、すこしの火傷で済んだが、爆炎の衝撃で、身体はぴくりとも動かせなかった。

 それ以前に、たとえ身体を動かせても、この状況下ではもはや風前の灯火。

 あと数秒すれば、地面に激突してお陀仏となるだろう。

 

――北郷さんの言う通り、大人しくしとけばよかった…

 

――ルリさんの忠告通り、勝手な行動しなければよかった…

 

――お兄ちゃん、おじいちゃん、みんな…

 

 後悔と無念と胸が締め付け閉じた瞼に走馬灯をみる静花。

 しかし、それでも彼女は最後の希望を抱いて、叫んだ。

 

「助けて…助けて北郷さぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 少女の幼気な悲鳴が新宿の街に響き渡らせ、その身は容赦なく地面に叩きつけ―――

 

「――呼んだか?」

 

――はずだった。

 

 恍けた声が聞こえると、誰かに受け止められたような感触が感じる。

 ゆっくり目を開けると、紅い月が怪しく照らす夜空の下で、不敵に嗤う青年の顔があった。

 

 

=====================

 

 

「余計なことで時間を浪費してしまった。はやいと槍を回収しなくては…」

 

 黒幕は嘆息しながら呟いていると情景が暗い薄紅色に染まった。祭壇に乗っていた17人の生贄と天空にあった火を灯す光輪が忽然と消えたうえ、街に人の気配がない。あるのは自身と召喚された配下の影と、こちらに向かっているザッハークだけだ。

 この異変にすこし驚きながら周りを見渡しながら上へ視線を向けた。

 いまだ、火を灯し回転する光輪があったはずの空。そこには紅い月がこちらを見下ろしていた。

 

「紅い…月…?」

 

 黒幕は数秒考えた末、一つの結論にたどり着いた。

 

「なるほど、これは貴様の仕業か…!?」

 

 気配を感じ、後ろを振り向くとそこには、青年――北郷一刀が居た。

 白いコートを羽織り、今だに頭が困惑している静花を姫様抱っこしながら黒幕を不敵な眼つきを向ける。

 

「ようやく会いえたな。黒幕。イヤ――」

 

 

 

 

「まつろわぬアジ・ダハーカより切り離された神格! 魔神イフリートこと魔王イブリース!!」

 

 

 ――イブリース。

 イスラム教において、アッ・シャイターンと呼ばれる悪魔の王であり、ユダヤ教やキリスト教のサタン、ルシファーと同一視される堕天使である。

 クルアーンによると、アッラーフ(神)が土からアーダム(アダム)を創り天使たちに彼の前にひれ伏すことを命じるも、彼は「黒泥を捏ねて作った人間などにひれ伏すことはできない」としてそれに応じずにアッラーフを怒らせ、いずれ最後の審判の後、地獄の業火によって焼かれるまで地上の人々を惑わせてやろう、と誓った魔王でもあった。

 また、アラビアンナイトにおいて、ランプ精霊などのジンとして登場しており、この場合はイフリートという名で有名で、『シャー・ナーメ』ではザッハークを堕落させる存在として登場し、人間の王であるザッハークを邪悪な魔王に変えたのもイフリートの策略といえる。

 

 そんな悪の権現である黒幕――イブリースは髭を指で弄りながら納得する。

 

「この威圧…この呪力の量…まちがいない。貴様カンピオーネか!」

 

 一刀から隠されていない威圧と呪力から、イブリースは一発で一刀の正体を見抜いた。

 対して一刀は緊迫している魔神を無視して、抱っこしていた静花を床へ降ろした。

 

「北郷さん…アタシ…」

「ていっ」

 

 涙目で言いかける静花に、一刀が軽めにデコピンをした

 

「いっだ!?」

「約束を破った罰だ。俺が居なかったら今頃死んでいたんだぞ」

「ご、ごめん…なさい…」

 

 呆れて肩をすくめる一刀に、静花は額を手で押さえながら弱弱しく謝った。

 最初の頃の強気がない。死ぬ直前であったのだ。今になって恐怖ですくんでも仕方ないだろう。

 察した一刀は嘆息し、自然と静花の頭を撫でた。

 

「でも、おかげで戦の準備ができた。――よく頑張ったな」

「……ありがとう///」

 

 微笑む一刀に、静花は下を向く。

 その頬が薄っすらと紅くなっているが、一刀の視界ではみえないだろう。

 少女を慰めた後、一刀はゆっくりとイブリースに視線を向けた。

 

「…貴様、いつ、我の正体を…我の計画を気づいた…?」

「うちには媛巫女以上に優秀な予言者がいるんでね。『悪徳を囁くもの。千夜の想いを胸に、千里の砂漠を超え、七つの海を渡り、かの地にて辿り着かん。17人の鍛冶屋の息子たち、勇者の矛で命奪えれば、二匹の蛇は目を覚まし、悪の王はここに降臨する。されど天に掲げた光輪に燃える火を飲み込めば、悪の王、真なる魔王へと覚醒せん』。二匹の蛇と悪の王はザッハークを指しているなら悪徳はザッハークを誑かしたイブリースしか他に居ないだろ?」

「フッ、たしかにな」

 

 嘲笑うように、イブリースが首肯した。

 

「この予言が指示しているのはザッハークと同一であり零落前とされているゾロアスター教最大の魔王アジ・ダハーカとして完全に降臨するための復活祭。そう、おまえらはもともと一柱の神だった。蛇であったため《鋼》…英雄スラエータオナ。定番でいえばフェリドゥーンか。彼によってアンタは三つに分離され零落してしまった。神に逆らう背徳と悪をイブリース、堕落した暴君の王としてザッハーク、そして蛇であり千の魔術を習得し人々に畏怖される竜として英雄に討たれるアジ・ダハーカ。いったいどういう経緯かはしらないけどアンタはかつての神格を取り戻すため、蛇を末路わす《鋼》の神格が邪魔だった。それを除去するために鍛冶師カーヴェが鍛えたこの槍――『フェリドゥーンの鎚矛』だ」

 

 一刀は《月衣》から一本の鎚矛を取り出した。それは静花が手に持っていた鎚矛――英雄フェリドゥーンがアジ・ダハーカを斃すために用いた槍だった。静花を助ける際に回収していたのだ。

 

「蛇の天敵、生ける剣として外敵を末路わす《鋼》。まさに最強の神格といって過言ではない。でも、こいつらにはある弱点があった。それは奴らの地位はアンタら蛇から奪ったものであり、彼らに恩恵を与えるパトロンがいたことだ。アンタも《鋼》の定義を知ってるんだろう?」

「もちろんだとも。神話の上で『石(鉱石)』、鉱石を溶かす『火』、火を強める『風』、焼けた鉱石を冷やす『水』。『大地を征する者』として、斃した竜蛇からは力や武具を、地母神が零落した乙女を恋人や支援者などといった共生関係で成り立つもの」

「その通り。この関係があってこそ《鋼》が誕生する。けど、逆に言えばその関係を無くせば、強き《鋼》は生まれはしない」

 

 鎚矛の柄を肩に乗せ、イブリースに指をさした。

 

「アンタはフェリドゥーンの《鋼》としての共生関係を崩し、彼の《鋼》としての定義を壊すために、鋼や鍛冶職人と関係をもつ息子――17人の男児を儀式に利用するため誘拐した。復讐のために創られた武具で、同業者の息子17人殺せば、フェリドゥーンとカーヴェとの関係が歪になり、フェリドゥーンの《鋼》として定石が無くなる。そうなれば、《鋼》によって末路わされた蛇は健全だ。蛇を末路わす剣が無ければ、蛇は誰にも殺せない」

「御名答だ。素晴らしい推理力だ」

 

 イブリースは拍手して、一刀を褒める。

 舌が回りやすくなった一刀は、さらに言う。

 

「ついでにいえば、天に掲げた光輪と火は、ゾロアスター教の象徴である火とその火の神であるアータルとアータルと奪い合ったクワルナフと呼ばれる光輪。ビルの上にうかんでいたアレだろ? 宿敵と奪い合ったものなら、神話の象徴でもあるゾロアスター教の火と光輪なら食べれば、それだけでアイアンティティが上がる」

 

 まつろわぬ神の強さは、その魂に抱く妄執・個性によって違ってくる。

 宿敵の象徴であり、自身の神話を象徴するモノを飲み干せば、それだけ鼓舞となり地力が底上げとなるだろう。まつろわぬ神の妄執を高ぶらせるセレモニーとして十分すぎるデザートだ。

 

「精霊を部下にしてたのは万が一ミイラになっていたザッハークを一時的に蘇らせるための生贄でもあったんだな」

「そうだ。忌々しき《鋼》の神具で力が枯渇したが、奇跡的に竜骨として全身が地上に残された。その肉体を一時的に復活させるための儀式がもしも失敗したときのための贄として呼び出したのだよ。精霊や妖精は元は大地より生まれし、生命の塊。《蛇》でもある肉体の栄養分としては申し分ない。ただし、あくまで最後の手段。この方法で無理やり復活させても、顕現できるのはわずか一時間程度。それを過ぎれば神力は枯渇し、肉体は完全に消滅してしまうが、水の精であり魔女神を贄にしたのだ儀式の間なら大丈夫だろう。なにせ竜の生贄は大抵は乙女と相場が決まっておる」

 

 薄笑するイブリースだが、一刀は彼の言葉ですこし疑問を感じたため、質問をした。

 

「ちょっと気になってんだが、アンタ、どうやってあの魔女神を操った? 素直に聞いてくれる人種じゃないぞアレ?」

「召喚する前にちょっとばかして騙して脅しただけさ。この本を使ってな」

 

 ポケットから取り出したのは一冊の本だった。

 〝ミーミルの瞳〟よりその名称が表示される。

 

「―――ソロモンの小さな鍵。写本か」

「ほほぉ、その異形の瞳は魔眼の類か。その通り、人外たるものたちを呼び出す禁書のひとつ。オリジナルと違って召喚ができるが制御はできぬ代物だ。格下程度なら我が呪力で支配すればいいが、それ以上の神格となると統制ができぬが、召喚者と召喚したモノとすこしの間だけリンクすることができる。そこからすこしばかり圧力を与えて、命を握っていると錯覚させたまでだ。もっとも貴様が助けてたせいでい、力の一部しか奪えなかったがな」

「そりゃどうも。でもお互い様だろう。()()をもってたくせに買い物と偽って美女を売りやがった畜生魔神さん」

「気づいてたか。貴様の言う通り、博物館の鎚矛はフェイクだ。アレは私の手作りでね。オリジナルと違って、まつろわぬ神の気配と呪力を封じる代物。造った本人も間違えるほどの力作だ。おかげで間抜けどもを騙して、すんなりと肉体をこの国も持ち運べたよ。間抜けすぎて呆れてしまったわ」

「ほんと、うちってどれだけザルなんだろなぁ…」

 

 怪力乱神な事件を解決するエージェントたちに、呆れてしまった。

 

「けど、まだ分からないことが一つある。まつろわぬ神の降臨にはその神と深くかかわる土地で行うはずなのに、なんでこの日本で儀式を? アジ・ダハーカと日本は縁もゆかりない地だぞ?」

「たしかに、まつろわぬ神の降臨には、降ろす神と関り持つ土地で行うべきだろう。しかし、我々はすこし特別な生い立ちがあるのでな。その理由のおかげだ。我ら――アジ・ダハーカはカンピオーネの支配を憎んだ者たちが密かに招こうとした神格。だが。いつ、どこでカンピオーネに気づかれ、召喚される際に不意に殺されるかもしれない。そう思った当時の魔術師たちはある方法を思いついた。それは我が神話の神――おもに宿敵の関係となる神格がカンピオーネと深くかかわった場所、そのカンピオーネの生まれ故郷を拠点に、儀式を行うということ。そうすれば、ある程度の刺激となって降臨しやすくなるのだよ」

「よーするに、因縁の相手が赤の他人に殺されたから、扇動して、赤の他人の生まれ故郷の地に来いっとそうこうことか? はた迷惑というか手間のかかるというか面倒というか…」

「ウチのシマの輩に手を出したお返しに、相手のシマを荒らすとかチンピラの猿知恵にもほどがあるわよ」

 

 一刀は嘆息し、その後ろで静花が物騒な例えをして呆れていた。

 ふと、一刀があることに気づく。

 

「ん? でもまてよ。その方法だと、お前ほどの神格と深く関わりのある神が日本とどうかかわっいるんだ? もしかして、日本のカンピオーネがお前の神話の神を殺したか? いっとくけど、日本人のカンピオーネは俺以外知らないし、俺自身もイラン神話の神様を殺してなんていないだけど…?」

「クククッ、残念ながら今日の朝…イタリアのサルデーニャでは夜だったな。その地にて悪である我らの宿敵、善の一柱である勝利の神格ウルスナグラが一人の青年に殺された。そやつはカンピオーネになったが、まぁそんなことはどうでもいいことだ」

「まてまてまてまてまて! いま重要なこといわなかったか?」

 

 先ほどまでの冷静さがはがれ、少々動揺する一刀。

 ただでさえ、正体不明を含めカンピオーネが10人以上いるこのご時世。その上、さらに増えたという事実は人類史(おもに表の組織)においてもっとも重要なことである。

 もし、このことが賢人議会等の耳に入れば、間違いなく頭痛を通り越して脳挫傷となるはまちがいない(腹黒姫なら逆に面白がるが)。

 

「要するに、どっかの誰かさんが罰当たりに神様を殺しちゃったせいで、こんな事件になったわわけね…」

 

 一刀とイブリースの会話からある程度、把握し原因がサルデーニャにいる神殺しだと結論付けた静花は、眉間に指をあてて怒りに身体を震えさせた。

 その同時刻、サルデーニャにいたカンピオーネは何かしらの悪寒を感じ取っていたのは余談である。

 

「さぁ、雑談は終わりだ。宿敵である正義と勝利の神を殺したカンピオーネがいるこの地を触媒に我らの魂を降ろす。同時に、世界を屈服させ、魔王の名を騙るカンピオーネに引導をわたす! それが我らの宿願! それがわが悪道! そのため我は――アジ・ダハーカは必要悪として顕現するのだ! 偽物たちに蹂躙され嘆きつづけた弱き者たちの手向けとして、貴様らにはけっして邪魔はさせん!」

 

 イブリースと一刀の間に、頭上から町中に蔓延っていた異形の影たちが十八人ほど降り立った

 

「ザッハークの代わり、我が汝らの主であり神である。いまこそ、その神威を地上に降臨し、我らの敵を斃さん」

 

 イブリースが呪力を高め、呪文を唱えると、色無き影たちに色彩が浮かぶ。いや、色彩を取り戻したほうが適切か。

 影たちは心臓の音がする魂をもった悪魔と人間の戦士の軍団となった。

 

「…なるほど。この街に出現したのはフェリドゥーンと対面したときザッハークが編成した悪魔と人間の混成軍だったか」

「その通り、我の代わりに受肉を許した。この町の中に居る奴はすべて受肉が完了している。その数は億を超える。全員をこの結界に招いたのは失敗だったなカンピオーネ」

 

 この数では手に余るだろう、と嘲笑う。

 しかし、不敵な笑みを浮かべて言葉を返した。

 

「英雄の軍団と戦った化け物たちか…それなら()()()()も退屈にはならないだろう」

「それはどういう意味――」

 

 どういう意味か?

 イブリースが言いかけたとき、受肉したばかりに軍団の頭上より無数の槍と矢が降ってくる!?

 軍団はすぐに対処して頭上へ防御する。が、横ががら空きになったとき、真横より砲弾と銃弾が飛び交い、悪魔と人間の戦士は爆破され、肉塊へと変えられた。

 

「な!? いったいなにが!?」

「戦争に勝つ方法はまず勝つための準備をすること。考え無しにアンタらを《月函》に閉じ込めるわけないだろ」

 

 周りを集中してみろ、と一刀が言う。

 なに? と、意思を周囲にむけると、町中に放っていた受肉したザッハークの混成軍の気配が一体一体消滅していった。同時に、自軍とは別の軍団の気配があり、つぎつぎと自軍を倒していっているではないか!?

 困惑するイブリースは、上空より気配を感じ上を見上げた。そこには、白き軍馬に跨る十人の戦士たち。戦士たちは魔神と一刀の間に着陸し、一刀を守る形で陣取る。

 それは混成軍よりも神秘的なオーラを放つ白銀の全身甲冑姿の戦団。その手には剣から槍、はたまた弓から銃や大砲など装備していた。

 その姿勢は幾千の戦場で戦った強者であった。

 

「貴様、配下なる者共を事前に配置しておったな!」

「その通り。お前も知ってるだろ? 北欧神話において勇敢なる戦士が死んだあとどこに行くのか…」

 

 答え合わせとばかりに、ミーミルの瞳をイブリースに見せつける一刀。

 イブリースはその右目がどのようなものか見抜き、驚愕の顔で納得した。

 

「そうか、その右目は北欧神話の主神オーディンの権能!? ならばわが軍を斃しているはヴァルハラの戦士たちか!!」

 

 正解。と一刀が頷く。

 オーディンの権能『北欧の軍神』のひとつ『勇敢なる戦士(エインヘリャル)』。

 内包している『天に召した戦士たちの館(ヴァルハラ)』より召喚された無名の勇敢な戦士たちを召喚・使役するものであり、戦士たちひとりひとりが神話の英雄とはいかなくても神獣と同格の実力者揃いである。

 また、彼らを構成しているには純粋な呪力。つまり、戦士の形に圧縮させた膨大な呪力の塊だ。たとえ、彼らを消そうが殺そうが、一刀の呪力が尽きぬ限り、なんどでも甦ることができる。まさに不死なる神々の戦団であった。

 ぐぅ、イブリースは舌打ちし、唸った。

 この戦況を掌握しているのは自身ではなく、眼前の偽物だ。

 冷静さを保ちながら腹の底では忌々しさに腹を立てる。

 対して、一刀は愉しげに嗤い、

 

「この世界は俺の遊戯盤。この天下は俺の領土。迷い込んだのは英雄に敗れた敗北者。さてさて、中途半端な策士はこの戦場をどう制するか。見ものだな」

「おのれ! 神をためすか! ならば貴様の蛮勇たちより強いものを呼ぶまでのこと!」

 

 一刀の挑発に触発されイブリース。

 魔導書を開き、高々と呪文を唱える。

 

「来たれ、四大元素に宿りし聖霊たちよ! 我、イブリースの名をもって我の手足と成れ!」

 

 イブリースの背後によっつの魔法陣が展開。

 赤、青、緑、燈、四種類の巨大な陣より人の形に近い異形が出現した。

 火の背びれに鋭い爪牙をもつ竜人、水色の鱗で覆われた水の羽衣を纏う美女、新緑の肌で風を纏う少女、とんがり帽子を被り筋骨隆々で小柄な戦士。

 まるでRPGから出てくるキャラクターのようであった。と、静花は後に語った。

 

――『敵性、精霊の召喚を確認。対象、サラマンダー、ウィンディーネ、シルフ、ノームと断定。位置――世界守護級の聖霊と認定。危険レベルA』

「神話じゃなく万物の一部を無理やり精霊にして顕現させたか…。なるほど、精霊の一面を持ったまつろわぬ神を召喚したのは伊達じゃないか」

 

 先ほど述べた通り神話の神々は伝承の地位や持って生まれた力ではなく、個性や妄執でその強さが決まるもの。

 しかし、眼前の精霊たちにはその常識は関係ない。あれは神話に生きる者たちではない。世界(システム)を正しく運営するための一部(パーツ)である。万物を構成するための基礎、純粋な力の結晶。神話の神と違い、意思や個性の強さなどなくても、災害規模の権能を行使できる存在だ。

 本来なら形をもって現世に顕現するこはできないはずだが、魔神と魔導書によって一端だけを世界からひっぺ返し無理やり神話の精霊を器として顕現させている。しかも、四体とも魔神に操られているようだ。おそらく、力が魔神のほうが優っているためだろう。精霊を縛る鎖のイメージ映像が、ミーミルの瞳で映し出されていた。

 

「ゆけ、万象守るし四柱の聖霊たちよ! 世界の理を壊す愚者に鉄槌を下せ!」

 

 イブリースが命令すると、精霊たちは戦闘態勢をとる。

 同時に、戦団が迎撃しようと動くが、まてっ、と、一刀が制止させた。

 

「基礎状態のおまえらには手が余る。そこで草薙を守ってくれ」

 

 拡張させれば無名の英雄でも精霊を倒せるかもしれいないが、そのための過程を待ってくれるほど敵はそこまで御人好しではない。

 戦団は不満げに肩をすくめるが、魔王の命令に従い、静花を護衛するように陣取る。

 一刀は戦団の先頭に立つと、四体の精霊が一気に間合いを詰めた。

 

 先頭にサラマンダーが全身を炎と化し鞭のように体当たりしていくる。一刀は手に持った鎚矛で捌きしのぐ。つつげて、ノームが重量感のある斧を振り下ろすも、鎚矛で受け止め、逆にノームの胴を蹴り飛ばす。

 左右からウィンディーネとシルフが水と風の槍を作り投擲するが、それも鎚矛で弾き防いだ。

 

(やっぱ《鋼》と比べて武技はない分、素の火力と膂力は神獣以上だな)

 

 鎚矛から感じる衝撃を感じながら、涼しげな顔つきで分析する一刀。

 優勢であるが、それは彼が出鱈目なだけで、精霊の一撃は大型の神獣が突撃と同様の攻撃力があった。

 おそらく、自分や武侠王など強靭な肉体が無ければ、カンピオーネでさえ軽症ではすまないだろう(もっとも、彼らならスペック以上の相手に正面から立ち向かいことを前提はしないだろうが)。

 

(まずはアイツとこいつらから離さないと…)

 

 連携して襲い掛かる精霊たちを棒術のように鎚矛で捌き続えねがら、一刀が奥に居る親玉をチラ見する。

 魔神は魔導書に描かれた呪文を唱え続けてきいた。普通の人が聞いたら言葉の意味が分からない綴りを口にしている。その呪文が詠唱されるたびに、精霊たちの動きと膂力が強くなっている。そればかりか、矛先でサラマンダーを傷をつけても直ぐに完治してしまった。

 その原因は、いまだ参戦しないイブリース、と手に持った魔導書であった。

 魔神が唱えているのは魔導書による、強化魔術と回復魔術だ。

 魔神の呪力と呪文を停めない限り、精霊たちを傷つけるところか無制限に霊基拡張されてしまう。

 そこまでされると面倒なので、一刀はイブリースに悟られぬよう、視線を精霊たちに向けたまま立ち回る。

 そして、四方から精霊が同時に奇襲するのを狙って、一刀は鎚矛を垂直に突き刺し、その衝撃で頭上に十メートル以上跳躍。咄嗟に避けられたため、精霊たちは同士討ちの形でぶつかり、互いの攻撃で眼を回し、ふらついていた。

 何やってるんだバカどもめ! と、イブリースが怒鳴るが、その隙を一刀はまっていた。

 

「強引すぎるけど、少しの間だけ我慢してくれよ」 

 

 精霊たちを上から見下ろしながら、一刀の左目が黒白目で瞳が回転式弾倉の断面に変貌した。

 

「支配者の眼よ。命を縛る醜悪たる左目よ。王に仇名す弱者共をその呪われし視線で、彼らを服従させろ」

 

 聖句を唱え、正面に居る対象たちを視界に捉えた瞬間、左身に痛みが生じる。

 精霊たちは一端硬直し、膝をついて服従の姿勢をした。同時に、イブリースは精霊たちとの繋がりが途切れる感覚を感じとった。

 その感覚と目の前の光景から、ある仮説が浮かんだ。

 

「邪眼かっ!? しかも、上位の聖霊を視線だけで支配下に置くとは!?」

 

 一刀が使用した権能の種類を見抜き驚愕していた。

 自分より格下の神格とはいえ、魔神の支配を上回る力で、四体の聖霊のコントロール権を奪ったのだ。

 たとえ、新たに援軍を召喚しても、逆に相手戦力を与えてしまう。強力な権能な分、なにかしらの制約や制限があるにしても、分が悪すぎる。

 イブリースは考える。この状況を打破し、儀式を成功するための策を――と、そんな暇を羅刹王は与えなかった。

 いまだ宙に浮いたまま、一瞬で鎚矛を《月衣》に収納、代わりに口径88mm大口径高射砲アハトアハトを装備し、銃口をイブリースに向けた。

 

「なっ――」

「――吹っ飛べッ!!」

 

 反応したがもう遅い。88mmの銃口より放たれた(魔術的技術で加工された魔法金属製の)砲弾がイブリースに着弾。魔神はその衝撃に耐えきれず、後方へと吹き飛んでいった。

 一方、一刀もアハトアハトの砲撃による作用反作用の法則に従い後方へ吹き飛ぶが、うまいこと態勢をとり、クルクルと回転しながら、静花の前に着地した。

 

「うんうん。さすがドウェルグ製。注文道理の強度と火力だ。この重量感と神をも吹き飛ばす衝撃…やっぱ時代錯誤の巨砲主義は最高だな」

 

 モノづくりの妖精の技術に驚嘆し、七トンもある巨砲を片手で持ち上げながらその威力にほれぼれしていた。

 なお、その背後では、大砲で魔神を吹き飛ばす光景に時代錯誤の戦士たちが呆れ、戦団に守れている少女は出す言葉を見つからず口を開けたまま呆然としていた。

 そして、五秒後。喉に引っかかっていた言葉をようやく思い出し、息を吸い込み紅い月が輝く空に響くよう叫んだ。

 

「あんたはどこの婦警よぉぉぉぉ!!」

 

=====================

 

 砲撃で新宿の街へ吹き飛んだイブリースは、新宿の道路をぶち抜き、地下鉄の線路にて大の字に寝そべっていた。いや、正確には、めり込んでいるほうが正しいだろう。どうやら、あの大砲、どこぞのギャグみたく激しく吹き飛ばすほどの威力があったようだ。

 服は砲撃の爆破と衝撃でボロボロとなり、上半身裸の裸だ。ただし、その四肢に目立った傷は一つもなかった。内臓が外側に破裂し血まみれの腹を除いては。

 現代の兵器ではまつろわぬ神を傷つけることはほぼ不可能なのが常識だ。しかし、一刀が撃った砲弾は北欧神話において、神話の武器を作った職人たちの手製である。彼らが手掛けた神具はまさに神や英雄を象徴になるほどの権威と力を秘めている。その神すらも殺してしまう余計な殺傷能力も。

 現代兵器の形をしても、その本質は伝説の武具とはなんな変わらない。

 しかし、そんな凶悪な道具を製作する妖精が手掛けた大砲をまともに受けたためか、逆に頭が冷静であった。

 

「――致し方ない」

 

 魔神は決意したかのような声色で発した。

 

「完全を取り戻すまで力を温存しておきたかったが、あれほどの者を相手にするなら全力でいかねばならぬ…」

 

 儀式を優先に魔王を無視し悪王とともに結界から脱出…という戦術的撤退を考えたがそれはもはや不可能だと悟った。その理由は二つ。一つは、この結界が異界の異能を元に創られた世界ということ。世界を揺るがすまつろわぬ神であれ、その世界の頂点であるだけ、あらゆる次元に影響する存在ではない。人間では太刀打ちできぬ神であっても生まれた世界でしかその猛威を振るうことはできないのだ。

 そして、重要なのは二つ目。儀式に必要な鍵はあちら側に分かっていること。たとえ、この結界を抜けることができても、鎚矛がなかれば儀式の意味がない。

 どちらにしろ、一刀と戦い、鍵を奪うのが妥当だと、魔神が答えを得た。

 

「偉大なる主よ。アッラーフよ。我は汝に言った。最後の審判まで貴様が人間共を惑わすと。この身、地獄の業火に焼かれるまで、泥を練った人形に膝をつかぬと。ゆえに否定する。神を超える泥人形に地につけられ屈辱を! この醜態、まつろわされる前に返上しなくてはいけず! たとえ、最後を迎える日よりも、この命尽き果て様とも!」

 

 上半身を起こし、黒人の肉体が変化し始める。

 筋肉が膨れ上がり、ビリビリ、とスーツが破ける。一刀を見下ろすほど背丈が伸びあがり、筋骨隆々な巨漢と成長。顔はさらに悪魔的な形相に変貌し、頭には太い双角が伸びる。

 黒い肌が赤胴に変色、その上から血管のような文様がドロドロに流れる灼熱のマグマの如く浮かびあがる。

 下半身は煙に包まれたのか、それとも煙と化したのか最中ではないが、床に地面を付けずその巨躯を宙に浮かせている。

 最後には背中に黒翼が生え、身体から蒸気のような煙を、吐く息から火花を出す。

 その姿はまさに人類に畏怖される魔神。もしくは、神に仇名す業火の魔王そのものだった

 

 

=====================

 

 

「あの魔術師モドキ、どこまで飛んだだ…?」

 

 新宿の上空にひとつの影が浮かんでいた。

 馬の様なデフォルメの頭部に、大鷲のような足と鋭いかぎ爪、蝙蝠か翼竜のような巨大な黒い羽、首から尻尾まで伸びるドラゴンのような胴体。黒い鱗のような外殻に覆われ、紅い瞳が町の全体を見渡すその奇怪な空飛ぶ生き物。

 その生物の名は『シャンタク鳥』。クトルゥフ神話の生物であり、這い寄る混沌の眷属であった。

 もともとはかつて一刀が殺めた神の部下だったが現在は一刀のペットになっている。

 愛称は『シャンタ』である。

 

「シャンタ、念のためザッハークに接近してくれ。気づかれないようにたのむ」

『ピシャァァァ!!』

 

 怪鳥は奇鳴をあげ、ビル群の隙間を通りながら身を隠し、都市のど真ん中で停止する悪王の背後に回り込んだ。

 で、なんで一般人荒SAN値が減る奉仕種族でフライトしているのは、大砲で吹き飛ばしたイブリースの捜索だ。もちろん、死んだとは一ミリも思ってない。あの程度でくたばるならカンピオーネなんて必要ない。

 ちなみに、静花は危険と勝手な行動をしないようさきほどのビルに置いてきた。むろん、一部の騎士団と隷属させた精霊たちにお守りを任せた上、最上階が破壊されているがビル自体が巨大な魔術工房になっているため魔術と権能で堅牢な要塞に改造したので、この世界で一番安全な場所といえる(別に着いていくとかうるさく言うので精霊たちに足止めをさせて置き去りにしたわけではない)。

 なに? だったら《月函》の外に避難させばいいのでは?

 残念ながら、一度発動したら解除するまで閉じ込められる仕組みなので無理。

 指定はできるが、緊急時だったためしかたがない。

 

(あの様子だと、あと数分ってところか…)

 

 一時的に竜骨の状態から復活したとはいえ、それは数刻だけの命。本来の神格を取り戻すため、本能に従って歩いてた獣だ。目標を見失い、どうするべきか分からず、その場に佇むのも無理もない。

 少々、同情してしまうが憐れみは神に失礼のため、無情に冷徹に、悪王の死を見届ける。

 が、その前に魔神の魔の手が迫った。

 

「ッ!? 緊急旋回!」

 

 第六感が危険を告げる。いそいでシャンタク鳥を右に迂回させた。

 頭上より太陽と思わせる火焔の球体が飛来し、アスファルトの道路を抉り取った。

 火球が飛んできた方角を見上げると、紅い月が浮かぶ天空に、一柱の魔神が見下ろしていた。

 賢者の眼でみなくてもわかり。あれはイブリースだ。

 

「人の皮を捨て、完全な炎煙魔神に顕身したか…」

「カンピオーネよ! ここから先は小細工無用! 畏怖される魔神として! 恐怖される悪魔の王として! 我が信念のため、この手で葬らん!!」

 

 魔神の両手からさきほどとおなじ巨大な火球が出現し、それを投球する。

 轟轟と燃える二つの火の球がストレートに飛んでくるが、シャンタク鳥は道路スレスレの低飛行で余裕で回避。外された火球は道路とビルの壁を木っ端みじんにする。

 

「なかなかのスピード。ではこれはどうだ! 大地よ突起せよ! 大軍阻む厚き壁となり、歩むを停めよ!」

 

 イブリースが魔術らしき呪文を唱えると、地面より高層ビルまでありそうな分厚い絶壁が突如として出現し、前方を阻んだ。

 前方に壁が現れたため急遽、右の角を曲がるも、その先でも壁が現れ、まるで誘導させてるかのように次々と壁が進路を塞ぐ。

 ビルより高い位置から飛行し、シャンタク鳥の背後を追いかけるイブリース。

 魔神は次の呪文を唱える。

 

「走れ! 雷鳴よ! 茨となって、かの黒き鳥を捉えよ!」

 

 電柱や電話ボックス、さらに電燈まで、電気が通っている無機物より、茨の形をした電気が生え、捕食植物みたくシャンタク鳥を捕まえようと茨を伸ばし、追い詰める。

 しかし、シャンタク鳥の機動力が上であった。ほぼノータイムで現れる壁を即材に感知し、緊急旋回。周囲から襲い来る電撃の触手を態勢を変えながら速度を落とさず低飛行を続けた。

 

「シャンタ、あのデパートに入れ!!」

 

 前方にあったデパートに、出入り口をぶち壊しながら逃げ込んだ一刀とシャンタク鳥。怪鳥が羽を広げても通れるほどの広く突き抜けのフロアにて、そのまま屋上にむかって垂直に飛翔する。

 外から魔神がこれでもかと大量の火球を、ガラス窓と壁を突き破りながら投げ飛ばしてくるが、怪鳥は身体を回転しながら火の弾幕を回避しつつ、天井を突き破り魔神の頭上へ周りこんだ。

 

「碧き烈風よ、風圧の鉄拳となりて外敵を圧迫させろ!!」

 

 制空権を奪い、シャンタク鳥から飛び降りた一刀が、聖句を唱え右腕を掲げる。

 右腕に膨大な空気が集束し、十メートルもおよぶ風圧の棍棒となり、イブリースに叩きつけた。

 魔風の鈍器に殴られたイブリースは、抵抗するまもなく霧散してしまった。

 

「手ごたえがおかしい…??」

 

 あっけなく消えた魔神に違和感を感じると、ミーミルの瞳が自動で緊急表示された。

 

――『判定。イフリートを打破を確認。敵性、イブリースの接近を確認。迎撃モードに移行してください』

「イフリート…ッ!? しまったっ、おとりか!?」

 

 

 ドッゴォォォン!!

 

「――フンヌゥッ!」

 

 空中で驚嘆している一刀の足元――つまり道路より、本物のイブリースが地面より飛び出してきた。

 おもわぬ奇襲に、一瞬硬直。その隙にイブリースは一刀がいる高度まで上昇し、両手を握りしめハンマーで殴るようにシャンタク鳥ごと隣のビルに叩きつけた。

 

―――『報告。鑑識の結果、敵性イブリースが魔導書よりイフリートを召喚。おとりにつかったもようです』

「わかってるよ…くっそ。ソロモンの小さい鍵もってたの忘れてた…」

 

 ビルの壁に激突し、オフィスらしき部屋にて壊れた机をパソコンをソファー代わりにする一刀。そばにはシャンタク鳥が目を回して倒れていた。

 

「どうしたカンピオーネ! これでおしまではあるまい!」

 

 吹き抜けなった壁の向こうで、本物の魔神が見下したように叫ぶ。

 無機物のソファーから立ち上がった一刀は床に転がった机を魔神に向けて蹴っ飛ばす。魔神はそれを手で払ったが真っ白い机が視界を覆った瞬間、床を蹴り上げ間合いを縮めた一刀が魔神の顔面を右ストレートで捉えた。

 

「ごっほ!?」

 

 先ほどの仕返しとばかりに向かいのビルに激突された魔神。

 

「こうでなくては――」

「そっりゃッ!!」

 

 瓦礫に生まれたイブリースに踵落としを降ろす一刀。

 イブリースはとっさに煙に顕身し、空中に避難した。

 躱された踵落としがビルを一刀両断しながら、ビルの一階まで止まらず道路沿いに足を付けた。

 

「チッ、シャンタク!!」

『ビッシャァァァァ!!』

 

 一刀が叫びに気絶していた怪鳥が呼応し、ビルの一階を突き破りって一刀の前にその姿を現す。

 

「もうちょっと付き合ってもらうぞ」

 

 了解。と、シャンタク鳥は頷き、首根っこに一刀を乗せ、巨大な黒羽を広げ飛翔する。

 

「カッァァァ!!!」

 

 イブリースは上昇する怪鳥に向けて口から火炎を吐き出す。

 炎の津波とおもせるその息吹を、怪鳥はひらり、と躱した。

 それでも魔神はさらに火の玉を何百も錬成し、弾幕を張った。

 

「そんなもん…!」

 

 片手にパニッシャーを取り出し、砲弾で火の弾幕を撃ち落とす。

 紅き夜の下、高速で飛び回る火の魔神と黒き怪鳥。

 航空ショーみたく、互いに近づかせず、距離を保ったまま飛行をつづける異形。そんな追いかけっこの途中に一刀は疑問を抱く。

 

(おかしい。挑発したわりに逃げてばっかで攻撃もなんか抑えている感じ。カンピオーネ相手に出し惜しみしているのか? …いや、何か策でも考えてるのが妥当だろう。だった何を狙って…)

 

 魔神の考えを推理するも、ヒントが不足しているため答えが出てこない。

 しかし、このまま追いかけっこをつづけてもらちが明かないため、少々汚い手であるものの、ある行動をとった。

 

「…シャンタ、アイツを無視してザッハークのほうに飛んでくれ」

『ビィ?』

「いいからッ」

『ビッシャァァァァ!!』

 

 黒羽を羽ばたかせ、停止しているザッハークへと飛ぶ怪鳥。

 

「ッ!? いかせぬ!?」

 

 その後ろで魔神が火球を飛ばして追いかけてくるが、旋回性能は怪鳥が軍配をあげている。

 迫りくる無数の炎の弾を避け、加速。前方にザッハークを捉える。

 空いた片手で鎚矛を《月衣》から取り出した。

 

「ハァァァァアアア!!」

 

 空を駆ける竜騎士のごとく。鎚頬の矛先を悪王の向ける一刀。

 悪王も、衰退してるとはいえ、まつろわぬ神の本能か、突撃する一刀に反応し、両肩の蛇が牙をむく。

 

 英雄の矛対悪王の双蛇。

 

 剣先と二つの牙が交差し……、

 

「ごっほ!? 」

 

 先回りしたイブリースの胸ごと、ザッハークの眉間を貫いた。

 

「やっぱり、守ったか」

「ぐぅぅ、卑怯者めが…」

 

 ヌップリ、と刃を血肉から抜き取る生々しい音。

 ザッハークはゆっくり倒れこむ。その頭部にイブリースが寄りかかる様に吐血する。

 たとへ独立した神格とはいえ、元は蛇の分身。蛇殺しの《鋼》の武具には効果覿面であった。

 

「アンタはアジダハーカの復活をまだあきらめていない。そのために別の策を考えていたようだけど、そのために重要な器を捨てることはできない。胸糞悪い手だが、これもだ。さすがにゾロアスター教の大悪神の最高傑作を戦うほどこっちは戦闘狂ではないんでね。…悪く思うなよ」

「…フッ、それもそうだな…」

 

 穴の開いた胸を押さえながら不敵に言う魔神。

 その笑み一刀が眼光を鋭くする。

 

「まだなにか小細工を……」

「くっくく、もう手遅れだ。この勝負(いくさ)()()()()()

 

 途端、地面から紅い光があふれ出した。

 シャンタク鳥は危険を感じ、イブリースから離れ上空に避難した。

 一刀は街を見渡すと、紅き光は陣らしき線を倒れ伏す悪王に中心に形成し、禍々しい魔力を精製していた。

 

「魔法陣!? いつのまに…!?」

「この町の地下鉄に…魔導書のページを散らばせておいた…もはやこの町全体が巨大な儀式の中心。その矛が…生贄がいなくとも、儀式をはじめることができるッ」

「なっ!? だから分身で注意をそらして、地面から現れたわけか!?」

 

 先ほどの行動はすべて布石。

 この巨大な魔法陣を作るための時間稼ぎだった。

 

「この異界から脱出することはもはや不可能。貴様を斃しても結界がとける保証がない。しかし、この結界に呼び出すことはできる。我が精霊を召喚できたことが証明している。ならば、召喚に特化した不朽不滅の神具(ソロモンの小さな鍵)を用いて、我らを犠牲に我らの神話を口寄せする!!」

「犠牲…まさか、自分を生贄(触媒)に自分自身を錬成(召喚)する気か!?」

「もともと、我は偉大なる魔王の分霊。元の神霊に戻ることになんの躊躇もないわ」

 

 神を材料に新たな神を生み出す。

 そんな方法に似たものを一刀はふたつ知っている。

 ひとつは、あらゆる怪物が悪魔として統一された別世界で、悪魔同士を融合・合体させて別の悪魔を生み出す外法。

 もうふたつは、特殊な召喚法でだれでも神話の住人を召喚させる別世界で、神話の向こうにいる住人を呼び出すため神々を踏み台に錬成する技術。

 (この世界の)常人では思いつくとができない神秘を汚す方法があることに、また、死にかけの魔神がやろうとしていることに驚きを隠せずにいた。

 

「たしかに、その方法なら確実に暗黒竜を招来することができるけど、無茶すぎる。そもそも、そんな欠損した神格(おまえら)じゃ大魔王の器として脆すぎる。犬死になるだけだぞ!」

「未練を果たせず朽ちるなら、一人でも魔王を殺すほうが本望なりッ!」

 

 血の色に輝く魔力が瀕死の魔神と悪王を包み込もうとする。

 一刀は「させるか!」と鎚矛を握りしめ、もう一度特攻をしとうとシャンタク鳥に命令しようとしたが、

 

「それに…この命を犠牲にしなくては、死して我らを呼び出した者たちに顔向けができぬ…」

 

 魔神が呟いた悲しげな言葉に思考が停止してしまった。

 

「我らの悲願は真の大魔王の復活。そのためながらこの神格、偉大なるアンリマユに捧ぐ!!」

 

 その僅か隙に、光は完全に魔神と悪王を包み込み、卵のような形を形成する。

 

「…暗黒竜よ。いまこそ魔神と悪王の血肉をもって生と不死を繋がん」

 

 卵のなかではイブリースとザッハーク、二体の神が溶け合う。

 芋虫が、美しい蝶に生まれ変わるため、蛹となって殻の中で血肉をドロドロに液状に変えるように。

 自身のすべてを無に戻し、新たな形を形成するかのように。

 

 それは、原初の宇宙の誕生。

 無から有が生まれ、有が混ざり合い混沌と化し、新たな生命を創り出す生命循環の理。

 

 

 どんな世界でも適応できる力強い生命と強靭な肉体。

 

 それは不死に近し大いなる龍の息吹。

 

 善神を英雄を、あらゆる外敵を討ち滅ぼす無敗のと最凶の力。

 

 それは外敵をまつろわす偉大な魔王の暴力。

 

 己の信条のため人類の未来を奪うし黒き妄執と最低な信念。

 

 それは悪の理を背負うし悪しき神の傲慢。

 

 生まれる理由はただひとつ、ひとつの宿命を達成するため。

 

 偽悪に満ちた世界を暴力的な真の悪をもってこの世を制す!! 

 その宿願のため、卵に不死の領域から命が宿る。

 

 ドッグン! と、卵の中で鼓動が鳴った。

 ビッキ! と、卵に亀裂が生じる。

 亀裂は卵全体に広がり、その殻の欠片が宙で霧散する。

 

 赤き夜の世界が歪む。

 まるでブラックホールかのように、その存在が発する威圧に世界が引き込まれそうになる。

 そんな圧倒的な存在力に、一刀は息をのんだ。

 そして、

 

――GYEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!

 

 卵の殻を破り、神話の魔王が誕生した。

 産声らしき雄たけびが赤い夜の空に響き渡った。

 

「我こそが悪! 我こそが魔王! 我こそが悪神の代行者! 魔王を騙る背徳者どもよ! 真の魔王の威光がどういうものか、神の暴力がどのようなものか、ちり芥な脳髄に叩きこんでやろうぞ!!」

 

 

「我こそが神話史上最大の大魔王アジ・ダハーカ! 魔王の称号、この我を斃してから語れ!!」

 

 

 三頭三口六眼の白き暗黒竜は宣言する。

 ゾロアスター教、最凶最悪の大魔王、今ここに降臨した。

 

 

 




そろそろ登場した権能記入しないと(汗)。

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