真・カンピオーネ無双 天の御使いと呼ばれた魔王 作:ゴーレム参式
その次は原作に突入する予定なのですが、仕事とかほかに書きたいSSがあるのでおくれるかもしれませんのでご愛顧お願いします。
「ハーイ! いつもニコニコ勝者に愛される偶像パンドラママです♪」
「……………………」
決めポーズをとる絶ぺk――もとい美少女系奥様女神様に一刀はポカーンと呆然としていた。
「ありゃ、受けなかったかしら?」
「受ける以前にあまりにも似合いすぎて言葉が出ないだけだよ。つーか、なんで俺ここにいるわけ?」
「そりゃーもちろん、貴方が昨日の疲れですこし眠りこけていたところ精神だけブチって無理やりこっちにひっぱてやったのよ♪」
「うわ~、さらっと物騒なこと白状したよこの幼妻…」
現在、一刀がいるのは現世と神話の世界の境界線である生と不死の領域と呼ばれる場所。
引退したまつろわぬ神や精霊など、神話の住人達が暮らしている現世に近い幻想の世界だ。本来、この場所に来るにはある程度の手順、もしくは、とある権限がなければ気軽に足を運べない。
例外として目の前で可愛くウィンクするカンピオーネのゴットマザーごと真なる神パンドラがカンピオーネの簒奪の時、たまに我が子たち呼び込む場所として使っている。が、今回は少々強引すぎる。
ブチって完全に引き千切ってはいませんかママ?
「要件があるならこっちから出向くことができるんですけどママさま」
「だって~早くアレをアタシに還してほしかっただもん。新しい息子が殺されそうな状況だし」
「ん? 新し息子ってイブリースが言ってたイタリアに生まれたカンピオーネのこと?」
「えぇ。ごど――彼ったらウルスラグナ様に勝ったのはよかったんだけど、なんやかんやでバアル様と勝負することになっちゃって結構危ない状況なのよねぇ~」
「なんやかんって…ってか無謀だろう。俺もカンピオーネに転生した矢先に、クトゥグアとイタカに絡まれたけど、初心者相手に続けて神越しはキツイぞ、それ」
「(転生して数分で二柱の邪神に勝った人が言うと嫌味にしか聞こえないけど…)それにちょうど、初めての神殺しの疲労で権能が奪われていることに気づいてないから今の内に返しておきたいわけよ」
「ふーん…ん? あれ、それだとほかの奴らは気づいてるわけ?」
「……念のため、事情を説明しておいたわ。一部、説教と小言を言われたけどね…」
面倒くさい子をもつ母親みたく疲れた様子で嘆息したパンドラ。おそらく黒王子か武侠王あたりだろう。正座する義母に上から目線でくどくどとと説教する娘息子たちの姿が安易に想像できる。
そんな義母にやれやれと肩をすくめながら、一刀は月衣から一本の矛を取り出す。
それはかのアジ・ダハーカを封印した矛―――を模した造れれた贋札であった。
そして、そのアジ・ダハーカ…アズダハ・ドーラを仕留めた槌矛である。
槌矛をパンドラに渡すと、彼女は満悦な笑みで喜んだ。
「これこれ! いや~運命も最後の王もさすがにこんな裏技使わないから無用心だったけど、まさかアタシの偽物――アジ・ダハーカ様が簒奪の秘儀を奪うなんてね。簒奪の秘儀が簒奪されるとはこれいかにだわ」
「ほんと、皮肉なもんだよ。やり方もえぐいし」
「もっとも、簒奪されたものを簒奪する貴方も捻くれてえぐいけど。投擲しただけで次元断裂引き起こすってどんだけ~って感じ」
「それは誉め言葉?」
「もちろん♪ なにせ、アタシのために頑張ってくれたもの。パンドラちゃん大感激よ♪」
「だったら、親として取られたものは自分で取り返したらどうですかママさま」
「それは無理。親として子の役目に手を出さない主義だから」
ただ面倒くさいだけでしょうこのニート。と、この場にルリがいたらそう罵倒するだろうが俺はあえて言わない。拗ねると面倒だし。
「それにしても、考えたモノね。蛇と《鋼》の関係を利用してアジ・ダハーカ様の命と同化した簒奪の秘儀を英雄の武具で奪うなんて。しかも、それの贋作でやってのけるなんてすごいじゃないの」
「まぁねぇ。咄嗟だったけど、うまくいってよかったよ」
槌矛を大事に掲げるパンドラ。なにせ、その槌矛には彼女の大事な簒奪の秘儀が入っているのだからうれしいのは当たり前だ。
アズダハ・ドーラ。彼女はパンドラからかすめ取った簒奪の秘儀でカンピオーネ全員の権能と秘儀を自分の命に繋ぎ留め、自身の死をスイッチに、簒奪の秘儀を消失させる仕掛をほどこした。
カンピオーネは神殺しだ。神を殺すしか能がない生物。神を助けることを前提とはしない。しかも、その神は短命であり、数十分で自動で死ぬ定めとなっていた。どちらにしろ人類の希望であるカンピオーネの力と簒奪の秘儀はまつろわぬ神の死によって完全に失っていただろう。
それこそがアズダハ・ドーラ…アジ・ダハーカの秘策であり狙いでもあった。
しかし、それはアズダハ・ドーラの死――命を失ったことを前提としたことだ。ならば、神の命を失わせず、その命を奪えばおのずと簒奪の秘儀は手に入るのではないだろうか?神を死なせず、その命ごと奪えば…そんな荒唐無稽がパンドラがもつ矛が証明している。
神話での関係上、《鋼》は蛇のすべてを奪う、権力も純潔も、そして命までも。そして、その時の俺の手元にはその《鋼》の英雄の武具が二つあった。ひとつフェリドゥ―ンの槌矛。もうひとつは魔神イブリースがフェリドゥ―ンの槌矛を模して造った紛い物。
この場合、本物を使えば神話の魔王を殺せるだろうが、その命ごと簒奪の秘儀を一瞬のうちに消し去ってしまう恐れがある。ならば偽物ならどうだろうか。偽物のため蛇に対する致死量が少ないが、即死性はない。さらに、もともと竜骨となったアジ・ダハーカの神格であるザッハークをある程度封じていた代物だ。アズダハ・ドーラの命を奪い、簒奪の秘儀ごと矛に取り込み封印するには申し分はないだろう。
「でも、大変だったよ。偽物だったとしても、神様が作った神具類で、しかも権能不能だから創作系能力も使えない上、短時間で封印仕様に作り替えるのはすこしばかり骨が折れたよ」
アズダハ・ドーラに曇天まで吹き飛ばされた後、飛行魔術で曇天に身を隠れ、月衣に収納していた本物を影分身の術で生んだ分身に持たせ、落下の軌道上に分身を落とし囮に。さらに時間稼ぎとさらに分身を生み出し街中にばら撒き、その間、贋作をアズダハ・ドーラの命と秘儀を簒奪するためだけの武具に改造。そして、隙をついて、上空から矛を投擲して狙撃。分の悪い賭けでもあったが、確実に勝利条件を満たせる方法だ。
――分身が落ちた先に静花がいたビルだったのは想定外だったけどね。
「で、ソレまだ使えるのか?」
「う~ん、見た感じだいぶ改竄されるけどまだ想定内ね。権能の簒奪だけならできるけど、新しい子を転生させるのは無理ぽいわ」
「直せるのか?」
「アタシと旦那はあくまで使用者だから整備とか専門外。お父さんたちなら直せるかもしれないけど、ここまで変わっちゃうと原型に戻すまで時間はかかるわ。最低でも数十年、最高で一世紀くらいかしら?」
「それは、ちょっとまずいな…」
常識的に人が神を殺すことは0%に等しい。そのため新たなカンピオーネが誕生するのは一世紀にあるかないかの確率だ。
しかし、近年、カンピオーネの数は確実に増えてきている。非公式であるが一刀が把握してる情報からして、ウルスラグナを殺したカンピオーネを合わせておよそ15名以上。最古の王たちを除けば最低でも新世代が10名ほど5年から2年の間に誕生している。
賢人議会や魔術結社がどれだほどカンピオーネの数を把握してるかさておいて、頭痛の種になることは明白だろう。
「俗にいう出産ラッシュっていうのかしら。多産のはママとしてはいいけど、生みすぎてもうへとへとよ。今ならエロ同人誌で孕まされたヒロインたちの気持ちが分かるわ。あそこがガバガバになるはいただけないわ。夫のアームストロング砲が感じられなくなるのはごめんだわ」
「俺としてそれはそれで興味があるけど、息子の前でリアルな夜の話は後にしてくれません? 俺、どっちかといえばボケよりだから、ツッコミにも限界があるからね」
「……それもそうね」
忍術を披露して力技で神を倒した息子の言い分に、パンドラは静かに頷いた。
彼がもうすこし常識人ならボケに走れるのだが、致し方がない。ちょうど、新しい息子は妹共々ツッコミ役の才能が有るし。と、パンドラは内心、思ったのであった。
「それじゃー本題に入るわね。ちょっと離れていなさい」
パンドラに言われた通り彼女から離れると、パンドラは槌矛を両手で掲げて詩を詠った。
「暗黒の聖誕祭に生まれうるは愚者の落とし子。汝は罪深くも神を贄としてその血肉を貪った魔の獣。醜くいその暴力を人々は汝を魔王と畏れ拝める。されど神は賞賛する、汝は勝者だと。されど神は罵る、汝は神殺しだと。勝者に与えらし神々の祝福と呪詛。汝ら顕現たる神の首級をもって、不俱戴天の狼煙をあげろ!」
彼女の言霊に反応して槌矛は眩い光を放出。すると、一刀の身体にまるで取り外された歯車のようなものがまた組み込まれていく。
一刀はそれがなんなのか即座に気づいた。
「……起きろ、ミーミル」
―――『マスターの認証確認。起動。情報修正。―――ミーミルの瞳、再起動完了』
「おかえり相棒」
数日間だけなの相変わらず文字列が引き詰められた空間ウィンドが懐かしく感じる。また、彼の中にあった神々からの呪いが戻ってきたことに、一刀は微笑みをこぼした。
「これで良し。アジ・ダハーカ様が奪った権能はカンピオーネ全員に還してあげたわよ」
「ありがとうパンドラ。おかげであいつらとの約束を証を失わずにすんだよ」
「別にいいわよ。今回は特殊な例で、アタシの不注意もあったし。でも、一度、奪われた権能は自分の手で取り返しなさい。毎回毎回、ママが助けてあげるわけないからね」
「わかってますって……ん?」
そのとき、一刀の視界がゆがむ。
どうやら肉体の方が目覚めかけてるようだ。
「時間切れのようね。まぁ、こっちでの用事が終わったし頃合いちゃー頃合いね」
「それはいいんだけど、パンドラ、ちょっと聞いていいかな?」
「ん? なにかしら? 時間がないし手短にお願いね」
「あぁ、実は今回の神殺しについてなんだけど……
「………………」
猜疑の視線で問いかえる一刀。その問いに、一瞬、パンドラの目が細く鋭くなった。
が、すぐさま蠱惑な笑みにもどし、下から目線で一刀の顔を覗く。
「……一体、それはどういう意味なのかしら?」
「ある条件を揃えなけれまつろわぬ神の招来でも絶対に姿を現せない
「あらあら、素敵な想像なこと。でも、それを決定づける根拠はないわよ」
「根拠がなくてもアンタの息子がそうだと思ったら、それは事実に繋がることじゃないのか。希望も夢も奇跡も災いも混沌も、あらゆるものすべてを与える女――
「…………うっふふふ、アナタのそういう所、嫌いじゃないわ」
にっこりと微笑み女神は魔王から数歩、後退する。
「でも残念。
「それはつまり、あんたらとは別の何かが動いてる…。そう捉えていいのかな」
「さーて、どうでしょう~」
小悪魔的な笑みを浮かべ、スカートの裾を指先を摘み、軽やかなステップで踊る。
そして人差し指を宙をなぞるように走らせ、先端を一刀に向けた。
「その答えを掴むのが、アナタの本業ではなくて? 我が愛しい愛しい
その言葉を最後に、一刀の意識がぷつりと切れ、視界が黒一色に一転した。
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一刀が目を開けたると、そこには見慣れた天井があった。
ソファーから上半身を起こし、右に視線を移動させると、部屋の中心に置かれた机の上には、バラけた書類と書きかけのワープロソフトを起動させたままのPCが散乱していた。
「そういえば、報告書を書いてる途中、ちょっと仮眠を取ろうとしてそのまま…」
壁にかけていた時計を一瞥すると針は昼の12時を過ぎていた。どうやら眠気に負けて昼まで寝てしまったようだ。窓から昼の日差しが差し込み、街の喧騒が聞こえてくる。
「もう、こんな時間か…及川のほうも徹夜で夕方まで来ないし、それまでに書き上げないと」
一刀のカンピオーネとしての情報は及川など一部の正史偏差委員が隠蔽してくている。そういう契約になっている。
おかげて情報漏洩がなく、日常では普通の一般人として生活ができている。ただし、組織としてはことの顛末をくわしく記録する必要があるため、事件の当事者であるカンピオーネ)自らが報告書をまとめなくてはいけなかった。もちろん、公式には記録せず、機密情報として保管されている(最低でも室長クラスではないと閲覧不能)。
「はい、眠気覚ましのコーヒー」
「ありがとう、草薙ちゃん」
机に置かれた白い湯気の立つコーヒーを片手にキーボードを叩く。
昨日の夜は事件の発端となったまつろわぬ神であるイブリースと竜骨から復活したザッハークに関して書き上げたので、次は顕現したアジ・ダハーカのついて記述しておこう。ビルや博物館の被害については、及川たちがやってくれるから最小限で添えておけばいいだろう。
むろん、混乱させないよう、人類悪やカンピオーネが権能を簒奪されたことについては抜いておいて―――
「―――ちょっとまて」
そこで、一刀は気づく。
視線をパソコンの画面から自身の横へずらすと、鼻歌交じりに掃除機で床を掃除する少女がいた。
「……どうして草薙ちゃんがここにいるわけ!?」
「へ? いちゃ悪かった?」
昨晩、正史編纂委員会の職員を誤魔化しながら家まで送ったはずの草薙静花であった。
「悪くない。悪くないけど、どうして君がここに? 連絡先も住所も教えていないのに?」
たまに、一般人が客としてオカルト系の依頼を頼む者もいるし、逆に巻き込まれた者もいる。彼女もまたそのうちの一人に該当される。一般人には一般人がいるべき日常がある。命を落とすかもしれない危険地帯に二度と足を入れぬようこちら側に関わらないためにいくつかの処理や処置をするのは常識だ。
最低でも、自身に関する情報などはある程度教えてはいないはずだが……、
「そんなもん、これを渡されたら来てくれって言ってるもんでしょ?」
ポケットから取り出したのは一枚の名刺だ。その名刺に見覚えがった。一刀が渡したいえっさの名刺だ。むろん、名刺のため事務所の住所と電話番号も書いているので。
「………やっちまった…」
昨日からうっかりミスが続くことに、すこし頭を抱える一刀。
あれか? あかいあくま(紅き悪魔で非ず)に大量にガントを受け続けたせいか? それともポンコツ魔王のポンコツが感染したのか?
…どっちにしろ、カンピオーネ固有のAクラスの対呪力でも、防げる自信がないからあっさり納得しちゃうけど。
「なによ。急に頭を抱えちゃって? アタシがここにいることに不満でもあるわけ?」
一刀の横に立ち、不機嫌にそうに耳元で言う静花。
別にそんなことはないよ、と、一刀は苦笑気味に言いながら話を進めた。
「それで、何しにここにいるわけ? 昨日のことならあらかた説明したし、これ以上関わらないほうがいいって忠告したはずんなんだけど…?」
「たしかに、その通りよ。アタシだってこれ以上、オカルトに関わりたくないわ。――でも、昨日、いろいろと助けてくれたから、そのお礼しないとね」
「そういうこと……」
それについては口ごもってしまう一刀だった。たしかに、彼女の貞操と命を救った。しかし、結果的には彼女を危険な目に合わせること前提に行動したため感謝される資格がなかった。
それなのに、怒りをぶつけず、良心で恩返しされるのは残り少ない良心に痛む。
「それに北郷さんって観ているとなんでかほっとけなし。ほら、アタシって無茶をする人や厄介なことに巻き込まれた人を見捨てられない質みたいだから」
「余計なお世話だ」
「そこで、不束ながらこのアタシ、草薙静花が北郷さんが無茶をしないようにサポートすることに決めたの。もちろん、変な事件に関わりたくないからその代わり、昨日みたいな危険――っていうかオカルト関係な仕事じゃないほうとか家事掃除とか手伝ってあげるわ」
どう、嬉しいでしょう? とばかりに不敵な笑みを浮かべる静花。
その条件に一刀は腕を組んで考えて、
「うーん、中学生の家政婦ってのは魅力的だけど…何日まで続けるつもり?」
「もちろん、アタシが満足するまで♪」
あぁ、ダメだこれ。あの顔は最後まで我を押し通すタイプだ。リアル中学生通い妻は萌えるが、やはりここは彼女の安全ためにはっきり断ったほうがいいだろう。
そう結論付け、うまく説得しようと試みようとした矢先、ぐぅぅ、と、一刀のお腹の虫が鳴った。
「…おなか減ったみたいね。あたしもまだお昼食べてないし、ごはん作ってあげるわ」
静花は調理場がある部屋と向かう。その背中を止めようと声をかけようとする一刀。
しかし、彼女は足を一瞬止め、
「そうそう、ついでにアタシのことは静花って呼んでね。アタシも一刀さんって呼ぶから」
それじゃーこれからもよろくね♪ と、無邪気な笑顔で振りまき、静花はキッチンのある部屋へと移動した。
ロビーに残された一刀はソファーにもたれ掛かりながら天井を仰い、
「はぁぁ、あんな顔で云われちゃー断れるわけないじゃん」
卑怯すぎるでしょうに
頬杖しながら、一刀は呟くのであった。
一方、そんな流れ流されまくる魔王を他所に、事務所の屋上では、
「やれやれ、まーた変なフラグが立ってしまいましたよ」
「相変わらず、我が主人の性癖は困ったものだ」
「同感、ご主人様のハーレム体質には呆れて言葉もできません」
静花が土産に持ってきた高級せんべいを一人と二羽がバリバリと食べながら、口をそろえて呆れていた。
こうして、便利屋『いえっさ』に不本意ながら新しい従業員が増えたのであった。
〝アズダハ・ドーラ〟について
イブリースによって顕現したアジ・ダハーカがパンドラの神格を獲得したことで誕生した神。もともとアジ・ダハーカはとある人類悪の分霊であり、同時に独自に確立された人類悪の一柱である。原罪は文明技術の発達によって滅びにつながる『進歩』。その性質上、禁断の力や発明・技術などを『パンドラの箱』として表現するため、安易にパンドラと同質として彼女の神格を会得することができた。その結果、生まれたのが新たな神であるアズダハ・ドーラである。
まつろわぬ神でもなく、真なる神ではない彼女は、神話とはかけ離れた独自の世界観をもっており、それを軸として行動している。ただし、今回の召喚において、まつろわぬ神であるイブリースとザッハークが自らを生贄になったためか、その妄執が彼女の神格にまで混ざったため、悪を自覚してしまい完全な人類悪にはならなかった(人類悪は己を悪とは思わない獣である)。いわば、人類悪のなりそこない。その結果、アジ・ダハーカとしての権能も不完全のままで、人格も神話寄りに傾いてしまった(魔王としてのやたら主張したがるのはこのため)。もしも、本来のスペックであったならば、カンピオーネやまつろわぬ神、真なる神ですら安易に葬ることができるだろう。それほど人類悪は業が深く、神々から危険視されている特別な存在なのだ。
ちなみに、アジ・ダハーカと同質とされたため、パンドラもまた人類悪に属することになりゆることにつながっていた。その証拠に彼女は災いとひとつの希望を世界に解き放ち、人類に人としての試練を与えたいる。また、災いと希望の両面を兼ね備えたカンピオーネを夫と朋美産み落としているため、現役の人類悪である可能性が高いと、兼宝石爺が指摘している。
ただし、これはあくまで推察の領域であり、本人曰く「そこまでヤンでない」と供述しているため、真意はいまだ不明。