島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~   作:伊吹恋

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描いていったら9000字超えた…ボクシング描写恐ろしや…。

そして今回はあれが発動します!
ボクサーが不屈の闘志で選手と打ち合う際のあの眼が、鴨川ジム必須とされるあの眼が…!!


Round.29

ついに始まったフェザー級3位を掛けた戦い。

カァン!

ゴングと共に一樹は相手選手に拳を向けた。

 

一樹「(落ち着けぇ…落ち着けぇ…)」

 

相手選手である真島もそれを受け入れるようにゆっくりと拳を近づけてくっつけた。

彼もスポーツマンシップに乗っ取った行動だろう。

 

そして互いにくっつけた拳は弾かれ、それが開戦の合図になった。二人はすぐにバックステップで距離をとり各々の構えに入る。

一樹はいつも通りのピーカブースタイル。そこから頭を上下左右とリズムよく振り出す。

一方の真島は両腕をまるでカマキリの腕の様に折り、拳を一樹に向けた状態でリズムよくステップを踏んでいる。

 

一樹「(今は音姉とシアのことは忘れよう…。さて、真島はどう出る…?)」

 

一方観客席にいる京介たちは。

 

京介「間に合ったか!」

 

みく「後輩君遅いにゃ!試合始まってるにゃ」

 

美波「でもまだ始まったばっかで二人とも動いてないよ」

 

杏「ねえ、プロデューサー。ボクシング詳しいんでしょ?どっちが勝つと思う?」

 

杏の問いに武内はすぐに後ろの首元を手で撫で始める。少し考えて、口を開いた。

 

武内「4:6で、一樹さんが不利かと…」

 

智絵理「で、でも、お兄さんはすごく強いですよ…?」

 

末央「そうだよ!元日本チャンピオンなんだよ!?負けるはずがないじゃん!」

 

京介「確かにキャリア的な話を言えば一樹さんに理はあると思う…だが、あの真島のボクシングは、異質な何かを感じる…」

 

李衣菜「異質ってどういうことさ?」

 

京介「一樹さんを料理で例えれば、スパイスのパンチを利かせた辛口カレー。だがあの真島は…食べてみないと分からない。食べた瞬間、意外にもその外見以上のうまみが出る…いわば珍味だ」

 

「「「珍味?」」」

 

京介「まずあの構え。カマキリみたいに腕を折り曲げて両手首を曲げて拳を一樹さんに向けている。俺からしたらいつ飛んでくるかわからないミサイルみたいなもんだ。あれは手を出しづらい。タイミングがまるで読めねえんだよ」

 

凛「迂闊に出たら…」

 

武内「真島選手のパンチが飛んでくるでしょうね…」

 

一樹と真島はリングをまるで円を描くように左に移動しながら様子をうかがっている。一樹は今のウィービングのタイミングを一定に保ちながら対する真島は時折拳をクイックイッと前に出しフェイントを織り交ぜている。

その行動は焦りを誘発させるためか、精神的にジリジリと追い詰めていくような感じだった。

 

そして十数秒ほど経ち、ついに動き出した。

 

一樹「フッ!」

 

仕掛けたのは一樹だった。

正に電光石火という名にふさわしいダッシュで真島の懐に入る。

一樹がこの数か月で考えた真島対策、それは開始ブッパ。重い一撃を与えて相手のペースを乱して一気に流れに乗る作戦だった。

 

真島「っ!」

 

フェイントを織り交ぜながらの移動を行っていた真島の拳が引いた瞬間を狙っていたこともあり、真島の拳は前に出して止まっている。これでもしカウンターが飛んできたとしても威力は半減。そこまでの力はないはずだ。

 

一樹「(一気に行かせてもらうぞ!)」

 

一気に詰め寄った一樹は自分の技のなかで一番信用でき、尚且つ確実に相手にダメージを与える技を選別していた。

リバーブロー。

これを喰らえば相手は悶絶して動けないハズ。

 

一樹「(頼むから喰らえこの野郎ぉぉぉぉぉ!!!)」

 

美波「いきなり大技ですか!?」

 

京介「だが当たれば相手は動けなくなる、そこにもう一発キツイ一撃を与えれば一樹さんの勝ちだ!」

 

末央「いっけええええ!!」

 

卯月「当たって下さい…!!」

 

誰もがその瞬間、当たると思っただろう。

しかし忘れてはいけない。真島のボクシングスタイルは、異質的な教科書に載っていないものだということを…。

 

一樹がその拳を振り切ろうとした瞬間だった。

 

シュッ

 

一樹「(はっ?)」

 

真島の姿は一樹の前から消え、一樹のリバーブローは空を切り、空振りに終わる。

 

一樹「(き、きえ―――――――――)」

 

ドガァン!!

一樹の意識が消えた真島に取られている瞬間、一樹の顎から痛みと身体には浮遊感が襲いかかる。

 

そして会場に響き渡ったのは何かが叩きつけられたような鈍い音。

それと同時に皆の視線には信じられない光景がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

大の字で倒れている一樹の姿だった。

 

 

 

 

 

全員がその光景に口を開けて驚愕としていた。

 

一樹「(何が…起きた…?)」

 

顎から伝わる鈍い痛み。ぼやけた視界の中で頭上にあるはずのライトを見上げる一樹。体は鉛が付いたように重く、動かない。

 

視界に入るのは指を突き上げて何かを言っているであろうレフェリーの姿。

 

一樹「(俺が…倒れた…何を受けた…顎の痛み…?アッパー…?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

末央「な、なにあれ!?」

 

武内「何を受けたのでしょうか…!?あ、アッパーだったような…」

 

京介「分類できねえ…!なんつうボクシングしやがる!こんなの、教科書どころか、だれも考えたことねえぞ!」

 

卯月「お兄ちゃん…!」

 

両目を閉じて祈りを唱えるように両手を合わせる卯月。それにたいし、全くわからないボクシングに会場の京介たちも翻弄される。

 

京介「不味い…顎は人間の急所の一つだ…意識を消えたことによりそちらに集中させて追撃を放つ…!一樹さんが今の一撃の正体に気づかない限りもう一度さっきの技を食らうぞ!」

 

武内「もしさっきの技を受ければ一樹さんに後はありません。だけどあの様子じゃ気づいてませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

何が…起きたんだ…消えたと思ったら下からのアッパーだぞ…?何が…どうなってやがる…?あの野郎…しゃがみやがったのか…?しゃがんだ状態から下からジャンプしてアッパーを繰り出したっつーことか…!?

 

どうやったらそんな発想のボクシングができるんだ…!

 

身体には力が入らねえ…普通のアッパーじゃねえな…これ…

だからって負けられるかぁぁ!!

 

一樹「くっ…!」

 

グラグラと周りの景色が揺らめいて見えるなか、俺は地面に拳を突き立て、体を支え起こす。しかし、足はぐらつき、うまく立てないでいた。

 

チクショウ…!脳震盪を起こしてるのか?

 

足が滑って倒れそうになるがロープを掴んで再び倒れこむのだけを阻止させる。

 

レフェリー「5!」

 

やべえ!カウントがはえぇ!

 

一樹「ぐっ…ぅぅ…!!!」

 

足を踏ん張らせろ!

 

レフェリー「8!」

 

 

 

 

卯月『お兄ちゃあーーん!!!』

 

 

 

 

 

ッ!!!

 

嗚呼、そうだよなぁ…当然見に来てくれてんだろうなぁ…だったら、こんなところで…こんな場所で、寝てられねえよなぁあああ!!!!!

俺は、あいつの、あいつらの、兄貴なんだからなぁぁぁ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

一樹「ふっ!」

 

両拳を構えて足をちゃんと立たせたる。足がまだ震えているがそんなのどうでもいい!早く試合を再開させろ!

 

レフェリー「……ボックス!」

 

よしよし!試合を再開させれたぞ…だけど持ち直したがまだダメージが抜けてねえ!足に来ちまってろくに頭も振れねえ状態になっちまった!

 

どうする!どうする!どうする!

 

真島「はぁ!!」

 

しまった!近づかれたか!

 

俺の目の前までやってきた真島は一気にけりを付けようと手数の連打が俺に向かってきた。拳を固めてガードをして拳をブロックしていく。

よし!拳はそこまで重くない!これなら1ラウンド持ちこして回復を…

などと思っていた俺が甘かった。固いブロックを馬鹿正直に撃ち続ける選手がどこにいる?それは今までにも経験済みであるにも関わらず俺は油断した。

突如真島の連打が止んだのだ。ブロック越しに真島を見ると、両手を上げていた。

 

何だ?攻撃とフェイントを織り交ぜてるのか!?どっちだ、右か、左か!?

 

真島「おらぁ!!」

 

真島の両拳が俺のブロック目掛けて飛んできやがった!なんて滅茶苦茶な戦い方しやがる!!

だがこのままじゃあジリ貧なのも変わりねえ!足が動いてきた。こっちも反撃するなら今だ!!

 

一樹「シッ!」

 

軽く放ったジャブが避けられる。だろうな。そう来るよなぁ…!あのビデオで見た同じ動きだ。

真島は低い位置で頭を左右に振りだし、グネグネと身体をひねり始めたのだ。

 

出やがったよ…厄介なのが…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の観客たちは真島のボクシングをまるで見世物のように見て笑っていた。

だがこの状況で笑えない人もいる。

 

京介「出やがった…なんだかよくわかんねえボクシング!」

 

凛「ねえ、後輩君…世の中あんなボクサーって結構いるの?」

 

京介「いねえよ!いたら怖いわ!」

 

末央「現にあそこに一人いるんですが…」

 

京介「あれは特殊なだけ!俺でも考えたことない!!」

 

智絵里「でも、考えてる人…あそこに…」

 

京介「……」

 

莉嘉「あっ黙った」

 

ついに黙りまじめた京介だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

畜生めぇ!!攻撃が当たらねえぞコイツ!

どれだけジャブを撃とうがコイツのくねくねした動きで全部避けられる!

 

もうこいつの考えてることがわからねえよ!!

 

真島「てい!!!」

 

バシィン!

したからテンプルに向けられた拳を何とか両拳を使いガードに成功する。

ちくしょう!なんつー所から拳を出して来やがる!

 

カァーンカァーンカァーン!

 

レフェリー「ストップ!1ラウンド終了だ!」

 

チクショウ!結局空振りで1ラウンド終了かよ…得点は奴のリードか…。いや、これでいいのかもしれねえ。一度落ち着くぞ…。

俺は息を荒げた状態でニュートラルコーナーに戻り、椅子に座る。

 

一樹「ハァ…ハァ…」

 

里中「しっかりせい!相手のペースに飲まれるな!」

 

もう飲み込まれてんだよ!このままじゃあズルズルと引きずり込まれていく。今まであんなクネクネした動きの奴……待てよ……動きを見ていてもあのクネクネした動きにはタイミングという物が発生している…例えば俺がジャブを撃とうとしたらそのジャブの動きに合わせて避ける…だとしたら…。

 

『Round2!』

 

少し思考を変えた動きをしてみるか…。

 

マウスピースを再び口の中に入れて俺は椅子から立ち上がり、拳を構える。

 

すると真島は再びあの動きをし出した。クネクネと動くその動きを目で追いながら俺も頭を振り始める。

さっきまでの打ち合いとは打って変わって真島はクネクネの動きから動こうとしない。様子見なのか、それとも攻撃の隙を狙っているのかはわからねえ。だが、ここからだ…。まず右っ!

 

ジャブを見て真島の身体が大きく動いた。今だ!!

 

足を大きく前に出して、ダッキング!奴を俺の射程距離に入れた!

 

右と見せかけて左のストレートだあ!!

 

真島「何っ!?」

 

ドガァン!!

捕ったァ!!!

 

俺の左ストレートは、真島の顔面を捕らえ突き刺さり、そのままリングに叩きつけた。

 

実況者『だ、ダウンだーッ!!1ラウンドとは打って変わって島村一樹の重い反撃が、真島に突き刺さるーッ!!』

 

「「「わあああああああ!!!!!」」」

 

よしっ!奴からダウンを取った。拳に手ごたえもしっかりとある。効いてるはずなんだ!

 

レフェリー「ダウン!ニュートラルコーナーへ!」

 

一樹「はぁ!はぁ!」

 

里中「一樹!はよ戻れ!」

 

言われなくたって、戻るさ……。

チクショウ…1ラウンドでだいぶ体力削られたのか…息が上がっちまってらぁ…!

 

レフェリー「1!」

 

レフェリーのカウントが始まった。頼むからそのまま立つな…!

 

レフェリー「2!」

 

レフェリー「3!」

 

立つな立つな立つなっ!

 

レフェリー「5!」

 

それはさっきの俺の再現なのか?それともレフェリーの声でこいつが意識を戻したのかはわからねえ、だが、

 

真島「くっ…ぐっ!」

 

真島は立ち上がろうとしていた。

 

それはベルトを掴むための執念か、それとも意地か、だがそうだよなぁ…こんなもんで、日本フェザー第三位なんて狙えないよなぁ…!考えが甘いのは俺なのかもしれない。何が『立つな』だ。こんな一撃で倒せた簡単な試合なんて今までなかったもんなぁ…!

 

良いぜ…これでこそボクシングだ…この泥臭さこそボクシングというもの!

 

まだまだ相手してやるよ!!

 

実況者『おおっと!真島立ち上がりファイティングポーズを取った!』

 

レフェリー「…ボックス!!」

 

カァーン!!

 

再戦のゴングが今まり響いた。

 

さっきの一撃で警戒しているのか、真島は露骨に俺から距離を取り始め、そのまま動かない。ということは…。

 

ダン!

 

リングを足で蹴り大きめの振動を起こすと、真島の身体が少し揺らいだ。

間違いねえ。コイツ、足に来てるな…だったら…!

 

今ならあのヘンテコな動きはできないってこったぁ!!

 

俺は真島との距離を一気に詰めて打ち合いに持ち込む。俺の左のパンチを真島に放つと真島はそれをブロック。次に真島が右の拳が俺に飛んできた。

 

一樹「おごぉっ!!」

 

真島の拳は俺の腹に入る。だがまだまだぁ!!

反撃と言わんばかりに俺の右拳を真島の顔に叩きつける。それをやり返すように次は真島の拳が俺の顔目掛けて飛んできた。これを左でブロック!

 

実況者『おおっと!両者とも譲りません!激しい攻防がリング上で繰り広げられています!!』

 

クソッ左目が腫れてふさがってきやがった!だがまだ、右目がついてる!見えているウチがお前を倒す!!

 

真島「ごあっ!!」

 

一樹「ぐぅっ!!」

 

互いにガードを捨てて打ち合いになっていき、殴り、殴られの繰り返しを互いにし続ける。

 

腹を、頭を、横腹を、顔を、あらゆるところを殴り殴られていき、ボロボロになっていく。

 

 

気をしっかり保て!緩めたら終わるぞ!

 

そう自分に言い聞かせて打つ、打つ、打つ!

 

一樹「ゴォ!」

 

腹を打たれ、息が詰まってくる…!気が…遠のいていきそうだ…!だがそれは相手だって同じだ!これはもうボクシングの頭脳戦じゃねえ!単純のタダの、『喧嘩』だ!!

 

俺たちの殴り合いは、時間が経つのを忘れさせるほどの打ち合いになり、ゴングが鳴り第3ラウンドへ、第4ラウンドへ、またまたいで現在5ラウンド目に入った。何度も気が遠のきながらも俺たちは必死に打ち合った。

殴り、殴られの繰り返し、俺たちはまるで獣の様に殴り合った。

 

 

 

握りしめた拳を再び真島に放つ。しかし、その時、真島の姿が1ラウンド目と同じように消えた。

 

 

 

 

 

 

 

未央「ヤバい!またあの技だ!」

 

李衣菜「あの技がまともに入ったら!」

 

武内「一樹さんの…負けです!」

 

蘭子「お兄さん!!!」

 

みく「お兄さん!!!」

 

かな子「お兄さん!!!」

 

 

 

 

 

卯月「お兄ちゃん!!!!」

 

 

 

 

 

消えた真島の姿はどこに行ったのか、それは一樹の下、つまり真島は屈んでいた。そこからジャンプをして相手の顎目掛けてパンツを繰り出す。ジャンプした際の足のバネの力により威力は大幅に上がる。これが真島の消えた姿の正体だった。

近くにいれば目の前に集中してしまうため放たれた瞬間何が起こったのか分からない。それがこの技の正体だった。

 

真島の足が地面を離れ、放たれる拳は一気に一樹目掛けて飛んで行った。だが

 

シュッ!!

 

一樹はそれを見据えていた様にバックステップを使い距離を離した!

 

真島「(えっ!?)」

 

それは極限状態での集中力からか、はたまた野生の勘なのか、それは分からない。しかし一樹はこの瞬間を狙っていたかの様に拳を再び固く握りしめ、真島に向かって放った。

一樹の拳は空振りとなった真島の技で殆どがら空き状態。

 

拳は吸い込まれるように真島のリバーに突き刺さった!

 

ドゴォォォン!!!

 

それはまさに剛拳。それはまさに鉄の拳と呼んでも良いほどの一撃。

真島の身体は殴られた拍子に横に折れ曲がり、苦悶する。

込み上げる吐き気、視界が白い景色に塗り替えられた。

 

だが追撃は終わらない。

 

一樹「ぬあああああああ!!!!」

 

獣の様な咆哮。そして真島のぼやけた視界に入ったのは…

 

反時計回りに回っている一樹の姿。

ギュルギュルという異音を放ちながらまるで身体にブースターが詰め込まれているかのような速度で反時計回りに回った反動を利用し、右の拳が勢いをまして迫ってくる。そして振り向きざまに見えたのは…

 

闘志という炎を燃やし、目に輝きを宿らせた一樹の瞳だった。

 

ガゴォォォォォン!!!!!!!

 

拳は吸い込まれるように真島の顎を捉えた。そして顔をはねあげられた真島の身体は中に浮き、そのままリングに大の字になるように倒れていった。

 

レフェリー「ダウン!!」

 

実況者『だ、ダウンだーッ!!!!まさかの逆転!!!島村一樹1ラウンドの雪辱を晴らすように一撃を真島に決めたああああ!!!』

 

一樹「っだーー!!はぁ…はぁ…!」

 

詰まっていた息を一気に吐き出し、ニュートラルコーナーに戻った一樹はほとんど満身創痍の状態でロープにしがみついた。

初めて技が成功した。それは一樹が全神経を集中させた渾身のS(mash)ingだった。それは同時に疲労をピークを達していることを物語っている。

 

一樹「ハァ…ハァ…(こ、ここまで全集中力を使ったのは初めてだ…5ラウンドでこれだ…打たれ過ぎた…!正直、もう体力の限界だ…!俺も歳…か)」

 

レフェリーは倒れた真島の前に立ちカウントを開始し始める。

 

レフェリー「1!」

 

これで立ち上がるようなことがあれば一樹は体力が削られている分戦いが不利になるであろう。里中を初めとして会場にいる京介達もそれに気づいている。それゆえに願った。

 

もう立つなと

 

だがそれは儚くも打ち壊された。

 

ピクッと真島のグローブが動いた。

 

真島「うぐっ…」

 

真島も満身創痍のはず。なのにも関わらず、顔から鮮血を流しながら立ち上がろうと身体を起こそうとしていた。

 

京介「マジかよ…!」

 

かな子「立とうとしてます!」

 

京介「不味いぞこれは…!この5ラウンドで一樹さんは打たれすぎた。前半はブロックで攻撃をを回避してたのに後半からは殆ど殴り合い。体力の消耗が激しい筈なんだ!」

 

莉嘉「じゃあ、次もし立ったら、お兄さんどうなるの!?」

 

京介「…考えたくないことだが、負けるかもしれねえ!」

 

真島の片足が地面に付き、拳をリングに突き立てる。ダメージが抜ききれてない重い身体を起こそうとしている。

 

レフェリー「8!」

 

両拳を構えて拳を構える。

 

レフェリー「9!」

 

真島「ふぅぅぅぅぅッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

レフェリー「10!」

 

 

 

 

 

 

 

カァーンカァーンカァーン!!!

 

10カウント数えられた。

真島の足を見ると片足は確かに地面をちゃんと着いていた。だが、もう片方の足を見ると、膝を地面に着けていた。ファイティングポーズを取っても両足が立って居なければ意味が無い。

 

それは試合続行不能を意味していた。

 

実況者『試合終了〜!!!激しいインファイトを打ち合い壮絶な幕切れ〜!!!元王者はやはり強い!!!島村一樹、凱旋して間もなくフェザー級3位に勝利〜!!!!』

 

「「「わあああああぁぁぁぁあああ!!!!!!」」」

 

歓声が響き渡り、一樹は緊張の糸が切れたのか、背にしていたコーナーからズルズルとへたりこんだ。

 

一樹「…マジかよ…」

 

完璧といかないコンディションで何とか勝ちをもぎ取った一樹。すぐにセコンドの里中が一樹を担ぐ。

 

里中「よくやった!よくやったわい!!」

 

一樹「か、会長…俺…やっちまったよ…!第3位に勝っちまったぞ…!?」

 

里中「そうじゃ!お前が勝った!紛うことなき現実だ!」

 

現実。それは一樹がボクシングをしている実感を得て初めての勝利。込み上げてくる喜びを隠しきれず、顔がニヤける。

 

一樹「よっしゃあああああ!!!!」

 

両手を上げて溢れんばかりの喜びを表現すると歓声が再び上がった。

 

それは観客席にいた京介達も伝わった。

CPメンバーが総出で喜び、抱き合い、手を繋いではしゃぐ。

 

卯月「や、やりました!お兄ちゃん勝ちましたよ!京介君!」

 

京介「おう!!これで第3位は一樹さんだ!ベルトまでもう少しだ!!」

 

そう、第3位はチャンピオンまでもう少しという意味。第1位で無くてもチャンピオンから指名されることもあれば、一樹自信が挑戦状を叩きつけることも可能。今、一樹の世界再挑戦への道は、大きく歩を進めた。

 

フェザー級第3位争奪戦

 

島村一樹 19戦 18勝 1負 16KO

 

日本フェザー級第3位獲得

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

一樹が控え室にて激闘の果てに寝てしまった。静かに寝息を立てながら、武内が車を回し一樹を送る準備をしていた。その際にCPメンバーは総出で一樹の控え室で心配そうに見ていた。

 

卯月「お兄ちゃん…」

 

一樹の手を握りしめ、心配そうに見守る卯月。そこにある人物が控え室に入ってきた。

 

音々「やっほー!弟く〜ん。ってあれ?」

 

控え室にて寝ている一樹の姿が目に入りキョトンとさせている天草音々とアレクシアだった。

 

音々「ありゃりゃ〜…まああれだけ打たれてれば当然かな?」

 

コツコツと一樹の元に近づく音々とアレクシア。

一樹の前まで来るとしゃがみこみ一樹の顔をつんつんと指でつつく。

 

音々「ふふっ、可愛い♪」

 

シア「音々姉様ばかりずるいです」

 

そう言いながらつんつんとアレクシアも指で一樹の頬をつつく。

 

卯月「す、すいません、お兄ちゃんは疲れているのでそっとして置いて欲しいんです」

 

音々「それもそうだね。ごめんね。妹が出来たと思ったらちょっとからかっちゃった。卯月ちゃん…で良かったわよね?」

 

卯月「あ、は、はい!」

 

音々「貴女も、弟くんの事好きなんでしょ?」

 

卯月「……へっ!?」

 

突然のことを言われ少し反応に遅れて顔を真っ赤にさせてあわあわと両手を胸のあたりで横に振り始める卯月。

そのことに関してCPメンバーの二人ほどがガタッ!と立ち上がりそうになるが末央が二人の肩を抑えて立ち上がることを阻止させる。

 

音々「わかるよ。同じ人が好きなら特にね」

 

後ろの二人が立ち上がりたそうにしているが末央はそれを許さない。

卯月は未だにあわあわと目をグルグル回して混乱している。

 

卯月「ああ!えと!わ、わたひとお兄ちゃんわわあわわ!」

 

シア「卯月さん、落ち着いて」

 

音々「じゃあライバルだね!これからよろしくね♪」

 

音々は笑顔で卯月に手を差し出した。

 

卯月「あ…えと…は、はい!」

 

卯月と音々は互いの手を取り合い握手をする。

 

だが、この後卯月はとんでもないことをしでかす。

 

握手した手を放すと卯月は再び寝ている一樹の前まで来て、両手を一樹の両頬に置き、顔を近づけた。

 

音々「えっ!?」

 

寝ている一樹の唇と、卯月の唇が近づき、

 

ついに付いた。

 

宣戦布告である。

 

蘭子、みく「ええええええええ!!!!」

 

末央の手を放し別の意味で立ち上がる二人。

 

他のCPメンバーも唖然としている。

卯月は唇を離して赤らんだ顔を音々とシアに向けて涙目で口を開いた。

 

 

 

 

卯月「負けません!」

 

 

 

ガチャ

 

京介「おーいみんな、車の準備が出来………」

 

皆が唖然としている中、京介が控室のドアを開けてやってきた。

辺りは重い空気が支配しており、京介は何が起きているのかわからない状態。

 

京介「……何この空気」

 

勿論一樹はこのことを知らない。本人の知らないところで勝手にファーストキスを奪われた一樹だった。




~次回予告~
休養生活に入った一樹は店を休みにしてゆっくりと体を休めていた。そこに勝手に居候してきた二人が恋する乙女たちと激突する!?今、恋の第1Roundのゴングが鳴らされる。

次回Round.30「恋せよ乙女達!大志を抱け!」

一樹「俺の居ないところで何が始まるんです?」

京介「大惨事対戦じゃないですか?」

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