島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~   作:伊吹恋

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今回は前回の予告とは異なる内容になっています。

そもそも短期間でこいつら何回スパーしてんねんと自分で突っ込んだので変えました。

申し訳ございません。

Round24が二つあった…修正しました!


Round.25

ボクシングの基本はまず自分にあった戦い方をすることだ。例えば一樹は古典的なヘビーハードパンチャー。力に任せ技をねじ伏せるという特徴を持っている。京介のスタイルはアウトボクシング。足を使い多彩な技で相手を翻弄しリズムを崩し隙が出来たところに重い一撃を入れるという特徴を持っている。

 

だが、ボクシングには更に多くのスタイルで戦う選手もいる。

 

「俺の苦手なボクサー?なんだよ、いきなり」

 

フライパンを持って厨房から現れたのは島村家義長男島村一樹。そしてフライパンに乗っているハンバーグを皿の上に乗せて京介が居るテーブルの前に出した。

 

「実は、今度試合相手が決まって…でも、相手がサウスポーの使い手でして、どう戦えばいいか分からなくて…」

 

「なるほどな。そうさなぁ…俺もサウスポーとは戦ったことないな…」

 

京介の料理を運んだ後に厨房に戻るとすぐに4人分のパフェを持ち出し卯月、末央、凛、りあむの前に出して、パフェにスプーンを差した。

 

「ねえ、サウスポーって何?」

 

凛の質問に答えるように一樹はエプロン姿のまま拳を構え、右のジャブを数回振った。

 

「今の、何か違うところがあったんだが、わかるか?」

 

「えっ?」

 

今の一樹の姿を見ていた四人は何が違うのか分からず、頭を抱えだした。

すると一樹は「じゃあ、もう一度」と言い、右のジャブを数回振りなおす。

 

「次は、俺のいつものスタイルだ」

 

と言い、拳を構えなおし次は左ジャブを振った。

 

「あっ!右手と左手が違う!」

 

とりあむがいち早く気づいた。

 

「流石だ。りあむのくせによく気づいたな」

 

「えへへ~……あれ?さりげなくボクディスられた?」

 

嬉しそうにしていたりあむだったが、すぐに何気に貶されたことに気づいて頬を膨らませて拗ねた。

 

「サウスポーは利き手のことでな、簡単に言えば左利きか右利きかって話だ」

 

「ふぅん、ボクシングにも利き手ってあるんだ。でも、利き手が違く手もお兄さんみたいなボクサーがいるんでしょ?なら、対策の使用はいくらでも…」

 

「ところがどっこい、世界の左利きの人数って何人か分かるか?」

 

「えっ…わ、わかんないけど…20%未満…?」

 

「まあ、大まかに言って15%ってところだな。利き手が違う選手とかち合うってことは、すなわち、慣れてない相手と戦い読み合うってことだ。例えば、お前らが今から利き手を変えて字を書くとする。そうするとなれない手で字を書いてるから当然汚くなる。それと同じように、ボクシングでも今まで基本的に左でジャブを打つものと考えている思考で、右でジャブを打たれると…頭で思っていたことが通用しない。つまりは混乱してしまい精神的に負担になるんだ」

 

「でも、それを考えておいて警戒すれば…」

 

「まあ、それが出来ればいいんだがなぁ…」

 

一樹は椅子に座り足を組んでコーヒーをすする。

 

「どういう意味なの?」

 

凛が疑問の声をあげると、一樹は後頭部に手を置き、天井に視点を置く。

 

「例えば凛は一生懸命に練習をした曲のダンスの振付に「ここの振付をなくしてこういう踊りを加える」とする。そうすればどうなる?」

 

「…いきなりは覚えれないかな…万が一覚えていてもくせで前の振付をしちゃうかも…」

 

「まあそうだよなぁ…例えは少し違うがそういう事なんだよ。俺たちボクサーは大体の相手は右利きだ。左でジャブを打つと頭で思い込んでることが多い。確かに頭で考えれば警戒できるが、頭で考えることと身体の覚えてる事はそうそうリンクしないもんだ…で、本題なんだが、今のままの練習で確実に京介は負けてしまうだろう。誰から見てもな」

 

「……」

 

「だが、対策がないわけじゃない」

 

一樹は一枚のDVDを手に取り、それをDVDプレイヤーに入れるとテレビを操作して画面にボクシングの試合風景を出す。

 

「会長から情報をもらってDVDを貸してもらった。選手の名前は葛城啓二。成績は二戦の内二勝してる。パッと見てもオーソドックスな構えをした教科書通りのボクシングって感じの選手だ。だとしたらここを突くしかないな」

 

「つ、つまり…?」

 

「お前の足、つまりヒット&アウェイのアウトボクシングだ!

 反撃の隙を与えず、相手のリズムをかき乱し続けて着実にダメージを与える。だが今のお前には徹底的に足りない部分がある!」

 

「そ、それは…?」

 

「スピード!そしてそのスピードを継続させるための体力!だからお前は走れ!走り続けて限界を超えるまで走り続けるんだ!その為に下半身を鍛えるメニューを中心にした方がいい。そうだなぁ…例えば…プールとか」

 

「「「プール?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

というわけで来ました346プロダクションのプール。なんとここは屋内と屋外の二つのプールがあり、温水にすることも可能らしい。俺がいつも思うのはここのプロダクションは無駄なところに金掛け過ぎではないのかな?と思うことが最近あるが慣れてしまえば「まあ、346だから当然か」とか思ってしまうこともある。

というわけで俺と京介は海パン姿でプールサイドで準備運動をして体を慣らしている。

 

「というわけで、訓練と行くか」

 

「あの、一樹さん…プールサイドでどうやって訓練するんですか?」

 

「まあまあ、まずは水につかって、スクワットしてみ?」

 

「は、はぁ…」

 

京介は何か信じれないという顔をしている。それもそうだ。体を鍛えるのとプールなにが関係されているのかと思うであろう。

だが、その考えは開始数分後に改められる。

 

「はぁっ…!はぁっ…!な、何だ…!足の力が…!」

 

京介はプールから上がり地面に手をついて疲れ切っている。

 

「どうだ?水中に力を吸収されて上手くスクワット出来ねえだろ。水泳選手も下半身の筋力が上がってたりするからこのトレーニングは効くんだよおそらくそれを続けてると下半身の筋力は安定するだろう」

 

「こ、これを…続けるんですか?」

 

「まあまあそう嫌そうな顔をしなさんな。それにお前としても悪い練習でもねえと思うぞ」

 

一樹は京介から視線を外して違うところを見る。

そこに居たのは

 

「それそれー!」

 

「にゃっ!?やったなー!」

 

プールで騒いでいるアイドルたち。

その光景を見て京介は喉を鳴らした。

 

そして一樹は耳打ちするように京介に近づき

 

「ここはアイドル事務所のプール。俺らボクサーはこの346プロダクション内の施設を使う許可も貰ってるんだよ…ここなら自由に使えるし、目の保養にもなるだろ?」

 

悪魔の囁きを耳元から聴き、京介の顔は熟した林檎のように赤くなり一樹の肩を持ち口を開く。

 

「な、なんてこと言うんですか!アイドルたちを俺がそんな目で見れるわけないでしょう!?アイドルって言うのはみんなに笑顔を見せて元気を与えてくれる存在なのですよ!?そんな穢れた目で見れるわけがないでしょうが!アイドルは尊い存在なんです!」

 

とまるでりあむのようなことを口走りながら怒鳴り散らす京介に流石の一樹も驚いてすぐに苦笑いに変わった。

 

「そ、そうなのか…でもよ、これはチャンスにならねえか?」

 

「話を変えないでくださいよ!」

 

「まあ聞けって。…ここはアイドル達も使う練習用プール。主に使われる理由としては体力増強トレーニングのため…掴んだ情報だと、ラブライカの二人もここを使うこともあるとか…お前がここで練習を口実に使ってれば確実にラブライカと親密になれるチャンスだってあるんだ。お前もこんだけ近いのにずっと顔見知りのままってのも嫌だろ」

 

「…確かにアイドルファンとしては、近づきたくなるのもわかる気がしますけど…ですけどぉ…」

 

「いいか、これは特権だ。俺たち里中ジム選手は大手のアイドル育成社である346プロダクションに置かれたボクシング選手。他の連中からしたら喉から手が出るぐらいの特権だ。だからお前が必死に練習する姿は必ずアイドル達の目に届くんだ。特権があるなら有効活用して人生を楽しくしようぜ」

 

などと言っているものの、単に京介のやる気を出させるための口実を作っているに過ぎない。この数か月京介は隠しているつもりでも隠しきれていないアイドルヲタク心をくすぐりながら一樹はあれやこれやと口上手く出しただけに過ぎない。それに対して京介は…。

 

「お、お近づきになれるでしょうか…」

 

「(食いついた!)」

 

何と一樹の口車に乗せられた。

 

「おお!お前は努力を忘れない男だ。その努力を見ればラブライカの二人だって「京介君カッコイイ!」って思うさ!(多分な!!)」

 

「…それを聞いたらやる気が出てきた…!俺、通い続けることにします!プール!」

 

やる気を満ち溢れている京介の姿を見て上を向いて笑いをこらえて口を膨らませている一樹の姿があったのは言うまでもないだろう。

 

「まーたお兄さんがあれやこれや言ってるよ…」

 

「流石、現代の法正って言われるだけあるね…」

 

「オイ待て本田。俺はそんな呼ばれ方されてるの初めて知ったぞ。何で法正?俺はあそこまで性格悪くないわ!せめて周瑜だろ!」

 

などとわけわからないことを言いつつ、その日は終わった。

 

346プロダクションには女子寮というものがある。全国各地でスカウトしてきたアイドル達の宿泊する場所であり、他県から来たアイドルは大体ここに泊まっている。

例を挙げれば、シンデレラプロジェクトメンバーである前川みくやアナスタシアなどがこの女子寮で住んでいる。そんな彼女たちの食事は寮の食堂で行われる。更に自室には料理器具一式が置かれているため自室での調理もできる。

 

そんな女子寮に問題が発生した。

 

「あ?女子寮の食堂の調理人が全員休み?」

 

「はい。なんでも風邪で全員寝込んでいるみたいで、誰も調理する人間がいないとのことでして…」

 

本日もドラマ収録で346プロに寄っていた俳優兼プロボクサー島村一樹は事務所で休んでいるところ千川ちひろに声を掛けられ話を聞くことになった。

 

「そこで、島村さんにご依頼をしたくて…」

 

「大体予想付くことだけどどうぞ」

 

「一週間でいいので、アイドル女子寮の食堂の調理人をお任せしては頂けないでしょうか!?」

 

「ホラ予想通り」

 

ハァと缶コーヒーを口に付けて飲み干してテーブルの上に空き缶を置き、手に持っていた雑誌をテーブルの上に置いた。

 

「大体なぜ俺なんですか?俺は男ですよ?アイドルの女子寮に入るなんて考えられますか?」

 

「いえ、島村さんのことですからそのような煩悩を持っている方ではないと全員が知っているので」

 

「何故俺はここまで絶大な信頼を得ているのかすごく不思議でならないんですが、俺も男ですよ。アイドル達をそんな目では見ないとは言え、性欲だってちゃんとあるんです」

 

「ですが島村さんはアイドル達に手を出すことはありませんよね?」

 

「そりゃあそうでしょ。今の俺の立場からして、アイドル達に手を出すのはハイリスクすぎるし、俺からしたらみんな妹みたいなものですよ」

 

「ですよね!?ですから、そこを何とかお願いしたいのです!これは島村さんにしかできないお願いなのです!」

 

必死の表情でちひろは一樹に顔を近づけながら答える。とりあえず一樹は手でちひろの顔をやさしく押しのけながら口を開くことにした。

 

「…とりあえず何でそんなに必死なんですか?」

 

「へっ!?」

 

「俺に頼るより、世の中良い料理人は一杯居るでしょうが。探すのが面倒なのか、それとも金銭的な問題なのか俺には分からないですがね…俺の予想で言うと後者じゃないかなぁ~……と思いまして」

 

その話を終えるとちひろはバツの悪そうな顔をしている。どうやら一樹の予想は的を当てているらしく、顔を背けだした。

 

「…まあいいや、依頼は受けてもいいですが、食材は俺は指定したものを出してもらいますよ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

背けていた顔を一樹に向けて笑顔で答えるちひろ。どうやら相当金銭的な問題だったに違いない。

一樹はどれだけ余裕ないんだよと心の中で突っ込みながらも電子タバコを吸いながら顔に出していた。

 

 

 

 

 

 

 

マジで来ることになるとはな…みんなから信頼されるのは嬉しい限りなんだがな、だが俺も一人の男であり、性欲を持った異性であってだな…24歳でも俺はまだ女性に対して興味はあるんだがなぁ…

だが俺もボクサーであり一端の料理人だ。寮のアイドルたちを空きっ腹状態で放置というのも気が引ける。

俺はちひろさんに食材を指定したメモを渡しているから、既に調理場の保存庫に食材を運び終えているらしい。更に、俺はこの寮に一週間いることになっているので、俺とりあむもこの寮に寝泊まりすることになっている。

とりあえず時間は昼の16:00を差している。そろそろ調理をした方がいいだろう。

 

今日のメニューというと、流石に俺みたいに動き続けるわけじゃないアイドルたちの為にヘルシーな物の方がいいが…スタミナをつけた方が確実にいいし…おっ注文通り鶏モモ肉ちゃんとあるじゃん。よし、メニューは決まった。

 

「お兄さ~ん、ごはん何作るの?」

 

荷物を置きに行っていたりあむが戻ってきたところで鶏のもも肉を手に取り冷蔵庫を閉じると俺は手に持っているそのもも肉をまな板の上に置く。

 

「今日は揚げない唐揚げだ」

 

「揚げない唐揚げ?普通唐揚げって油で揚げるよね?」

 

「おう、今回は小麦粉と卵を使って作るぞ」

 

包丁を手に取り鶏肉を一口大サイズの大きさに切っていく。全て切り終えると用意したボールの中に肉を入れていき塩、しょうゆ、チューブ入りのおろしにんにくを少し入れて料理酒を入れる。因みに分量は完全に目分量だ。

そしてボールの中にある調味料ともも肉を手で揉んでいく。当たり前のコツだが、揉んだ後は肉を寝かせておくと味がしみ込んで美味くなる。今回は時間もあまりないから一時間ほどでいいだろう。

揉んでいった肉が入ったボールを人数分並べていき一時間放置。その間に付け合わせの野菜とトマトを切り、更にポテトサラダを作っておこう。

まあ、面倒だしキャベツの千切りでいいだろう。

 

一時間経過すると寝かせておいたもも肉に小麦粉と溶き卵を入れてよく混ぜる。混ぜ終わったらフライパンにオリーブオイルを敷いて温めておこう。後は肉を焼いていく。こまめにひっくり返して狐色になったら食べごろだ。

俺は一つ焼きあがった唐揚げをりあむに渡してみる。

 

「ホレ」

 

「…見た目は確かに唐揚げだ…でも味はどうなんだろう…」

 

「いいから食え」

 

何を警戒する必要があるのか、りあむが唐揚げを少し観察しているとやっと口の中に入れた。

 

「っ!!美味しい!!」

 

「まあ、当然だな。正直油使おうがオリーブオイルだろうが摂取カロリーは変わらんが、健康面で言えばオリーブオイルの方がいいからな。まあ、その分油の摂取量は減らしてあるから従来の唐揚げと比べると低カロリーだ」

 

「肉汁が溢れるぅ~♪ホントに油使ってないのか疑いたくなるレベルで美味しい~すこ~♡」

 

「んじゃ、沢山作るぞ。りあむ、悪いがポテサラ作ってくれ。俺は肉を焼いていくからよ」

 

「え〜もっと食べたかったんだけどなぁ〜」

 

「あ~はいはい後でな」

 

りあむのことを適当にあしらって、再び肉を手の取り、どんどん肉を焼いていった。




料理のレシピ?
実際に私が作った内容です。正直オリーブの方が健康的と言うのは私が思い込んでいることなのであまり突っ込んでほしくないですぅぅ~

次回予告?今回はありません!

次回をお楽しみに!!

ボックス!!

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