島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~   作:伊吹恋

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番外編「日常」その2

少女の小さな悩み

 

 

 

 

幸子「お兄さん!また可愛いボクが遊びに来ました!」

 

一樹「幸子ちゃんこんにちは。今仕込みをしてる所だから適当な席で寛いでてくれ」

 

幸子「分かりました!」

 

グツグツと煮込まれている鍋をおたまでグルグルと腕を回す。

そんな姿をカウンター越しではあるが幸子はジッと一樹を見ている。

 

幸子「やっぱり…かっこいい…」

 

頬を赤くしながらだらしなく顔を緩ませる中学生。

しかし、彼女には多数のライバルがいるのも事実だった。

 

りあむ「お兄さん!今日の晩御飯なに?」

 

一樹「まだ昼前だぞ…気が早ぇよ。今日はシチューだ、あとパンとサラダを作る」

 

りあむ「やったぁ!お兄さんのシチュー凄く美味しいんだよね〜」

 

年上に見えない一樹と1つ屋根の下で暮らす巨乳の少女。

 

文香「お兄さん…この借りた本、ありがとうございます」

 

一樹「文香ちゃん、その本実は続きがあるんだ。今日貸してあげるから読んでみてくれ」

 

文香「はい♪」

 

おっとりと物静かな、でも大人の魅力をそこはかとなく感じさせる巨乳の少女。

 

みく「お兄さん!みくの食べてる定食にお魚が入ってるにゃ!」

 

一樹「嫌いなものは少しでも良いから克服させなきゃずっと嫌いなままだろう。残してもいいから少しでも食べてみな。千里の道も一歩から、だ」

 

みく「うぅ…わかったにゃ…」

 

高校生の猫キャラの巨乳少女。

 

みんなは一樹に好意を抱いているのは確かだ。一樹は全く気づいていないが誰もが見てもそう思える表情だ。

 

幸子「うぅ…ボクだって…」

 

幸子は自分の胸を触りながら虚しい感情を押し殺す。みんな共通点があるといえば巨乳であること。それは一樹にアピールするとなると大きなアドバンテージ。巨乳(大きな)なだけに。

等と馬鹿な考えをしている場合じゃない幸子の心情。幸子は「はぁ…」と小さなため息を漏らす。

 

一樹「幸子ちゃん何か悩み事か?」

 

幸子の目の前にサンドイッチと紅茶を置いて悩んでいる少女に問いかける一樹。

 

幸子「お…お兄さんは…大きいのと小さいの(胸囲的な意味で)どっちが好きですか!?」

 

一樹「…は?」

 

突然の幸子の言葉によくわからず首を傾けてしまう一樹。

 

一樹「うぅ~ん…大きいのと小さいの…?そりゃあ大きな方がロマンはあるよな(パンチ力的な意味で)」

 

幸子「うぅ…やっぱり…」

 

一樹「だが、小さなものにも価値はあるんだ(ジャブ的な意味で)」

 

一樹はその場で拳を軽くに三回ほど振るう。

 

一樹「小さく積み込んだ事っていうのは時に大きなものより勝ることもある。確かに大きい力は憧れるさ…だが小さなことの積み重ねを俺は馬鹿にはしない。俺、ボクサーだからな」

 

幸子「お兄さん…!」

 

幸子の目から涙が浮かべると一樹はその涙をハンカチでふき取り、笑った。

この日から幸子は大きいとか小さいとかそんなことを気にせず堂々と胸を張って一樹に会いに行くことを決意した。

 

これは、日常の中でとある少女が抱えた小さな問題をストレートで打ち砕いた。というお話。

 

 

 

 

 

 

 

完璧じゃないです。苦手は誰でもある

 

とあるインタビュー記者が一樹にインタビューした際の問いがあった。

 

一樹「趣味ですか?………家事全般ですね」

 

一樹は無類の家事好きで知らされている。料理をさせればミツボシレベルではなくともどんな人間でも美味いと言う腕前。掃除をさせれば部屋にはチリ一つ落ちていない綺麗な部屋になり、本や小物が手に取りやすく整理され、洗濯をさせれば頑固な汚れも彼にかかれば落とされ、尚且つフローラの香りがする。

ここまで説明すればだれもが完璧な主婦であろうが、そんな彼にも苦手なものがある。それは先ほど説明した洗濯だ。

 

一樹「………」

 

義母が風邪で寝ている中、実家のことをしていた際だ。洗濯を回そうとしていた際に、洗濯物かごの中にあるものに注目してしまう。

 

一樹「………」

 

卯月の下着だ。こういう物は男である一樹にはどう対処していいのかわからない。というか、洗濯自体は一樹が一人暮らしをする際に覚えたもので、今まで男物の下着やらを洗ってきたからこういう物をどうすればいいか分からないでいた。

 

一樹「どうしよ……」

 

どうやって選択したらいいのか…伊達メガネをクイッと上げながら一樹は途方に暮れていた。

 

島村父「一樹何やってるんだ」

 

一樹「うわっ!びっくりした!」

 

後ろから突然声を掛けられて一樹はビクッと身体を震わせ後ろを向く。そこには仕事が休みで部屋の掃除をしていた義父がいた。

 

島村父「何をそんなびっくりしているんだ。何かやましいことでも……」

 

義父は一樹に近づくと一樹の目の前にある洗濯物かごに目が入るとその中にある卯月の下着らしきものを発見し、黙り込んだ。そして少しすると一樹の肩に手を置き口を開きだす。

 

島村父「…一樹よぉ…いくら彼女がいないからって…義理の妹の下着を使うつもりか?」

 

一樹「はっ?何言ってんの義父さん?」

 

島村父「まあ、お前も男の子だから気持ちはわかる…だから母さんには内緒の父さんの秘蔵DVDをお前に貸して…」

 

一樹「何を変な誤解してるんだよアホ親父!ちげえって!洗濯したいんだがどうすればいいのか分からねえんだ!」

 

島村父「そういう名目で使うつもりだったのか…そこまでお前は苦しんでるのか」

 

一樹「今すぐその哀れなものを見る目をやめろ!じゃねえと一発ぶち込むぞ!」

 

十分ほど義父に事情を説明して誤解はまず解けたのだが、やり方を聞いても義父がわかるはずもなく。

 

島村父「普通に洗濯機の中に入れていいんじゃないのか?」

 

一樹「そうなのか?でもブラだって内側にパットが入ってるんだ。それは取り外すべきなのか?それともそのままなのか?」

 

島村父「やけに詳しいな…もしかしなくても…お前少し触ったな?」

 

一樹「ノーコメント」

 

しばらく考えていると玄関から卯月の声がした。

 

卯月「ただいまー」

 

一樹「こうなれば苦肉の策だ。卯月に聞きに行こう」

 

片手に持っているブラをそのまま握りしめた状態で一樹は玄関に向かおうとしている。

 

島村父「ちょ!一樹待て!」

 

しかし、その静止の言葉が届かなかったらしく、一樹はそのまま玄関に向かっていった。

 

一樹『卯月、少し聞きたいことがあるんだ』

 

卯月『お兄ちゃん!来てたんですね。……あれ?その手に持ってるの…?』

 

一樹『ああ、実は女性ものの洗濯の仕方を教えてほしくて…』

 

卯月『っ……!!」

 

一樹『あれ?どうした卯月…顔が赤く――――――』

 

卯月『キャーーーー!!!』

 

バチン!!

 

一樹『グオッ!』

 

卯月『じ、自分で洗いますから返して下さーい!!』

 

ドタドタドタドタ!

一人取り残されていた義父は顔を青くさせながら玄関を見ると、そこには恐らく卯月にぶたれたであろう左頬に手の形をしたもみじを作り地面に伊達メガネと共に倒れている一樹を見つけた。

因みに一樹の手に握られていた下着は既に無くなっている。

 

島村父「言わんこっちゃない…卯月も年頃なんだから考えてやれ…お前はもう少しデリカシーを学んだ方がいいな」

 

一樹「解せぬ…」

 

※ブラを洗う際は洗濯ネットに入れて洗いましょう。パットは出して手で濯いで洗いましょう。

 

 

因みに義父の言っていた秘蔵DVDの存在を一樹は義母に密告している。

その数日後、義父はゲッソリした顔をしていた。義母から「弟がいい?それとも二人目の妹がいい?」と質問されて一樹は「はっ?」としか答えられなかった。

 

こうして、一樹は家事の苦手を克服し、見事家事フェザー級世界チャンピオンの防衛に成功させた。


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