島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~   作:伊吹恋

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Round.24

耳かきとは簡単に見えて結構奥深いものでもある。大抵の人間は1人で出来るものだが、1人やる欠点は自分の耳の状態が見えないので耳垢の状態がわからない。

幼少期には誰もが1度母親に耳かきをしてもらったことがあるだろう。耳かきをする根本的な理由というのは存在しない。しなくてもしても特に生活上影響は無いのだ。ならばなぜ人は耳かきをするのかと言うとそれは快感を得るためだ。

 

耳かきをするに当たっている物は耳かきのみだと思う人も少なくないだろうが、実は結構奥深く、必要なものは結構あったりする。梵天(耳かきの上の部分についてるモコモコの毛)付きの耳かきや他にも数本。消毒液、耳垢水(じこうすい)等も出来ればあった方が良い。

 

今では耳かき愛好家などという物もある。

耳かき愛好家とは耳かきの技を極意を学ぼうとする人たちのこと。彼らのこだわりは耳かきから始まり、綿棒や耳垢水に至ってまでこだわりを持っている。

 

一樹もその一人らしく、手には何本もの耳かきが握られている。

 

「あ、あの…お兄さん?なんでそんなに耳かきを持っているのでしょうか…?」

 

「幸子ちゃん、たかが耳かきと思っているようだが、耳かきっていうのは…一期一会なんだぜ」

 

実は耳かきとは市販で製造されているものは大抵同じ形をしているのだが、名の職人が作っている物だと同じ素材は一緒でも形が若干違ってたりする。だからもしお気に入りの耳かきが壊れたりしたらその同じ銘柄の耳かきを購入しても反り具合が違ったりしたりするので二度とお目にかかれない。まさに一期一会という言葉がふさわしい。

 

「じゃあ始めるぞ…と言いたいところだが、まずは幸子ちゃん緊張しすぎじゃね?」

 

「へっ!?い…いや…そんな事は…」

 

流石に好きな人にいきなり膝枕というのも恋する乙女たちにはハードルが高いらしい。ガチガチになった体は見ただけでも一樹でも分かるほどだ。こうなるとまずは緊張を解すには

 

「…じゃあ、耳かきに入る前に、マッサージからな」

 

一樹は幸子の耳たぶを指で挟む。

 

「ひゃっ!?」

 

小さくて可愛い悲鳴を出しながらも、幸子は鼓動を早くさせているが、いざ始まると後はなるがままだ。

 

マッサージをする理由としては緊張を解すという効果だ。更に指ですというところがポイントらしく、指で行うことによりリラックスするといわれている。

一樹は耳を優しく手で包み込み押し込むような感じで動かすが指に隙間を少し開けて空気を圧縮しないようにしる。さらに指で耳たぶを挟んで軽く引っ張ったりしながらマッサージをしていく。

すると安心したのか幸子の緊張しきった体から力が抜けていき、強ばっていた顔も緩くなりリラックスした顔になってきた。

 

マッサージを5分ほどした後、一樹は手を離す。その頃には幸子の顔はとろとろにとろけてしまっていた。

 

「あ…あああ~…」

 

赤みがかったその顔と口から涎をたらしながら少女がしてはいけない顔をしている中で一樹は慣れているようで目を細めやさしい目つきになっている。幸子は思い知ったのだろう。。卯月の言っている母性溢れるという意味がどういう意味なのかを。

 

「さて、緊張はほぐれてきただろう。んじゃあ今から耳かきをするぞ~」

 

荒れだけ少し嫌そうにしていたにも関わらずいざするとなると心なしかウキウキしたような感じに耳かきを手に持っている一樹は幸子の耳の中に耳かきを入れた。

その力具合は本当にヘビーパンチャーの力なのかと言うほど弱すぎず、強すぎずという感じで手前からコショコショと耳かきを動かしていった。

 

「あ、あ、あぁぁぁ~…」

 

耳かきの基本はまず手前から耳垢を取っていくのが基本。そうすると耳垢を奥に押し込むという行為を阻止することにもつながる。更に奥に行き過ぎると痛みを感じることもあるため、基本的に耳かきの深さは1㎝から2㎝が基本となっている。

医者などに進められる平均の深さは1㎝だが、耳の大きさとはほとんど個人差によりそれぞれであり、一樹の場合は大抵の人は2㎝まで大丈夫と考えている。そして深いところまで耳かきを進めていき幸子の快感は頂点にまで上り詰めていた。

 

「うへぇ…」

 

アイドルとして出してはいけない顔をしているのは誰でもわかるであろうその状況。好きな人の前でなんて顔をしているのだろうと思ったが、その思いはすぐに「どうでもいいや」という考えに塗り替えられた。

 

「き、気持ひい…い…れす…♡」

 

「おう、そうかそうか。おっと…」

 

一樹は満足そうな顔でもう片方の耳を掃除するために顔と身体を動かし幸子の口から涎が垂れてきていたのに気が付きティッシュでふき取ると耳かきを再び手に取り動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、人は変わり、次はみくである。みくも耳のマッサージをして緊張をほぐした後にまずは耳の淵を見始めた。

 

「ほう…」

 

人によっては耳の淵にも耳垢が溜まりやすい体質の人もおり、みくはそれに該当するらしく、耳の淵に少量ではあるが耳垢が見えた。一樹はまずはその淵を耳かきで丁寧に取っていき耳垢を取り除いていく。

 

「にゃ、にゃぁぁ…♡」

 

耳を真っ赤にさせているみくの心境は知らずか、先ほどの幸子の耳かきでスイッチが入ったらしく、一樹は耳掃除に集中している。

みくも先ほどのマッサージによりすっかりとろとろの表情になってしまいもうどうでもいいやという表情だ。

耳かきも丁寧に行い、梵天を使い小さな耳垢を取り払い後は綿棒で取り払うのみだ。

 

「ほれ、綿棒いくぞ~コショコショっと」

 

綿棒をみくの耳に入れてこちらも強すぎず弱すぎずという力で少しずつ耳垢を集めていく。

 

恐らくほとんどの人はこの一樹の綿棒さばきにノックアウトしているのだろう。それは続いてのりあむも

 

「はぁぁぁぁぁ~…♡」

 

文香もノックアウトしていった

 

「っ~~~~…!♡」

 

全員し終わる頃にはみんな体に力が入らないらしく、ふにゃふにゃという表現が正しいほど全員椅子に座っていた。

 

「ぼ、ボク…変な扉開いちゃうかも…」

 

「みくもにゃ…」

 

「みんな…そんなにすごかったの?」

 

「すごいなんてものではありませんでした…」

 

「そうですね…あれは…人をダメにする耳かきです…」

 

「何を言ってんだ。たかが耳かきだぜ?」

 

末央がすっかり骨抜きにされた少女たちに問いかけている間に一樹は使用した耳かきたちを消毒液を吹きかけ、消毒液を布で拭う。

一通りの耳かきを洗浄し終わると再び一樹はソファーに座り末央に視線を向けて

 

「ん」

 

と自分の膝をポンポンと手を置きだす。

 

「えっ?私?」

 

「何言ってんだ。全員するって話だったんだろ。だったら末央にもしねえと不公平だろ」

 

「い、いいよ恥ずかしいし」

 

「いいから来なさい」

 

「あっはい」

 

何故かお母さん口調になった一樹だったが、末央は何故か咄嗟に頷いてしまった。何故頷いたのかもわからない。

これが卯月の言っていたお母さんって感じがすると思う正体なのかもしれない。プロボクサーのくせに母性たっぷりとはこれ如何に。

 

場の流れにより末央も耳かきをすることになったもうこうなればやけだと末央は意を決し一樹の膝に頭を置くことにした。

 

「(…あれ?プロボクサーって聞いてたから、脚も鍛えて筋肉ついてて固いと思ってたけど…やわらかい…ナニコレ)」

 

「それじゃあ始めるぞ」

 

まずは耳のマッサージをし始める一樹。指もボクサーと思えない柔らかさ。末央の耳をやさしく包み込み、熱が伝わる。

 

「(ナニコレ…ヤダコレ…)」

 

末央の思考はこの瞬間停止した。考えていた恥ずかしさとか、耳を他人に見られるという羞恥、その他の考えが全部どうでもよくなる。というかもうどうでもよくなる。5人が何故あそこまで骨抜きになるのかもわかるくらいに。

 

「(私…これなんて言うか知ってる…『お母さん』だ…)」

 

マッサージを終えて耳かきに突入。末央の耳を細かく隅々まで暴き出し、清掃が行われていく。自分の耳がきれいになっていく感触がわかる。

 

「(あっ…やばい…墜ちそう…)」

 

何とか理性を保とうしているが、理性という城は一樹の母性という炎に囲まれて逃げれない。落城寸前だ。

そして、そのほんの僅かの理性は綿棒を終えて次の行動で危機に陥る。

 

「ふぅ~…」

 

「(あっ…♡)」

 

理性という城は耳に吹きかけるやさしい息により小さな耳垢と共に文字通り吹き飛ばされた。

 

後に一樹に耳かきをされた人間はこう答えた。

 

『耳かきの魔術師』『耳かきフェザー級世界チャンピオン』『魅惑の母性人間』

 

一樹にとっては不名誉極まりない肩書がまた増えた。

 

その日の夜。三十分ほど動けなかった耳かきを行った少女たちを家に帰し、りあむは自室に戻り一樹の部屋には卯月がいた。

 

「さてっと、そんじゃあ始めるぞ」

 

「えへへ、よろしくお願いします。お兄ちゃん」

 

一樹の膝に卯月の頭が乗る。他の6人と同じように耳をマッサージしてあげながら、卯月の髪に触る。柔らかく、艶やかな卯月の髪は一樹の指の間を風が吹くようにサラサラと離れていく。

 

「お兄ちゃん…」

 

愛しの義妹の声が聞こえる。一樹は今のこの状態がすごく幸せを噛みしめていた。

家族を得て、やりたいことを得て、仲間たちを得て、一樹は全てが充実している。

 

「どうした、卯月」

 

「えへへ…呼んでみただけです♪」

 

「そうかい」

 

耳かきを行い問題なく両側の耳の清掃を終わらせて卯月を呼ぼうとした時、

 

「…ん?」

 

ふと卯月の顔を見るとそこには小さく寝息を立てる卯月の姿がそこにあった。

起こすのも忍びなく感じた一樹はもう少し寝かせてあげようと卯月の頭に手を置き、やさしく撫でる。

 

「おにいちゃん…大好き…です…」

 

「フッ…ああ、俺のお前が好きさ。お前も、あいつら仲間(アイドル)たちのこともな…」

 

ふと気づくと、一樹は今まで感じていた気だるさが消えていた。どうやら、一樹は誰かの世話をしないとストレスに感じるようになったのかもしれない。そう思いながら、一樹も少し休もうとソファーに座ったまま寝息を立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京介は今一人くらい部屋の中でテレビを見つめていた。テレビには前に行われた新人の試合のビデオ。それに目を離さずにじっと見つめている。

 

「…」

 

机の上に置いている水の入ったコップを持ちそれでもテレビから目を話そうとしていない。

 

相手選手の動きをじっと見続け、観察する。

 

今、京介は追い込まれている。




~次回予告~
ついに始まった京介の第二試合に向けてのトレーニング。京介は自身の力がどれだけついたか一樹に試してもらうため、三度目のスパーリングを申し込む!

次回 Round.25「サウスポー」

次回をお楽しみに ボックス!!

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