島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~   作:伊吹恋

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失敗したなら再挑戦すればいい。諦めた時、それは敗北だ。


Round.12

ついに始まった合宿特訓。今回の合宿は一樹と京介による次回試合の為の練習。そしてCPメンバー達は次のライブの合同楽曲のダンス練習。更に一樹と京介、CPメンバーの交流会も含まれこの合宿を計画していた。だが一樹の1番の目的は復活試合の為力をつけること、それを第一にしている。昼食を済ませて一樹と京介は動きやすい服装で外で準備運動をしていた。

 

「シッ!」

 

「シシッ!」

 

2人は軽いシャドウをしながら体を温めている。

 

「まずはロードワークだ。その後は...ってお前は本格的合宿は初めてだったか?」

 

「は、はい...」

 

今回の合宿は一樹の復活戦がメインだが、それ以前に京介は次回の試合がもう決まっていた。そしてそれが終われば次は新人王戦が始まる。一樹はその間に試合をこなしなんとか順位を上げていきいち早く日本チャンピオンの座に戻るのが第一目標としている。

 

「練習メニューは紙に書いて渡してやるから後でチェックしてくれ。とりあえず今日は俺と一緒の練習メニューをする」

 

「えっ、いきなり一樹さんと同じメニューを…?」

 

と京介はいかにも嫌な顔をした。

 

「なんだ、なんでそんな嫌そうな顔をするんだ」

 

「いやだって、一樹さんの練習メニューってはっきり言ってオーバーワーク過ぎですし…そう今からやると思うとさっき食べた物が込み上げてきて…」

 

そんなことを話していると一樹は暗い表情をしながらゆっくりと京介の肩を持つ。

 

「京介…俺たちは皆生命を頂いて生きている…」

 

「…は?」

 

突然の話に混乱している京介だがそんなのお構いなしに一樹は淡々と話を続けていく。

 

「俺たちは食事をするな。食事とは生命を頂くということだ。米も、野菜も、肉も、みんなたどれば世界中の生き物を頂いているということだ。それを吐き出すなど、生命に対しての冒涜!吐くなよ…」

 

シリアスな顔をしながら説教じみた話。しかも内容は壮大に見えて実は今の京介にとっては結構どうでもいい話。それを聞き、京介の苛立ちは加速していった。

 

「もう!普段はボクシングのことしか頭にないボクシング馬鹿だったのになんで最近はくだらないことをそんな淡々と話せるようになったんですか!?」

 

「くだらんとはなんだ!?お前は全ての世界の恵みをありがたいと思わんのか!?」

 

「今するような話じゃないじゃないですか!!昔はこんなんじゃなかったのに最近どうしたんですか!?」

 

京介のその言葉を聞き、一樹は日差しが激しい太陽を見上げながら口を開いた。

 

「世間は広い…俺も、世間のことをもっと知ろうと思ってな…」

 

「明後日の方向を向きながら明後日の方向で世間を知ろうとしないでください!」

 

そんな話は、ロードワーク開始時間を30分ほど遅らせて延々と続いた。

 

 

 

 

 

 

 

話を何とか…というより強制的に終了させた京介は一樹とともにロードワークをする。目的地は特に決めていないが、海開きするにはまだ早いためか人は全くいない。そんな中で一樹たちは走りにくい浜辺を黙々と走る。

だが、京介は足を砂によりバランスを崩したのか、態勢が崩れる。

 

「わっ!」

 

「大丈夫か?砂場はコンクリートや土手とか違って凸凹してるし砂で力を吸収しやすいから走りにくいんだ。油断していると捻挫するぞ」

 

「は、はい!気をつけます」

 

「よーしその意気だ。あとこの周回を10セット!」

 

「はいっ!」

 

今回のメニューを考えたのは一樹だ。だが一樹の練習量は世界を目指した際の練習量。プロ入り新人の京介からしてみればオーバーワークなのは間違いないだろうが、それでも京介は付いていくことにした。その理由は次の試合の後のことだ。

 

『東日本新人王戦』

 

東日本に集まるプロ入りの新人王を決めるトーナメントだ。それに勝ち進めば東日本新人王に、さらにその次には西日本と東日本の新人王同士の全日本新人王決定戦が始まる。それに勝ち進めばA級トーナメントが待っている。そこまでいけば一樹に大幅に追いつけるのだ。

だがそれまでには何人もの猛者がいるのは間違いないだろう。しかも京介の初試合はKO勝ちとは言え、満身創痍だったことには変わりはない。悪く言えば瀕死の状態で勝ったのだ。だから京介はほかの誰よりも強くなりたがっていた。その一番の近道は自分の身近にいる。元日本フェザー級チャンピオンにして世界フェザー級1位の実績をもった島村一樹の下で練習すれば強くなれる。

 

あれだけ文句を言っていたにも関わらず、京介は見事に一樹の後を追う。一樹も時折後ろを見て様子をうかがっているが足を止めることはない。

 

「(流石元日本チャンピオンだ!この人の体力の底が見えない!!)」

 

浜辺で8セットほど走っても一樹との空いている距離が一行に縮まない。それどころか京介は息が乱れているにも関わらず、一樹は肩で息をする程度だった。

 

ここで京介はわかった。一樹は本気で走っていないことを。

 

 

 

 

 

 

10セットものロードワークを終えた一樹達は汗を拭き卯月たちが練習している場所に戻る。

 

「いい汗が流せたな」

 

「えぇ...そうですね」

 

正直京介はショックを受けていた。今日は一樹と同じ練習を行った。一樹と同じ練習量、一時期世界に手を掛けた男の練習を、だが京介はそれについて行けなかった。そして、一樹を自分レベルに合わせてしまった。一樹なら息を荒げず肩で息をする程度。つまり一樹は本来の練習をすることが出来なかったということだ。京介は腹立たしかった。自分の無能っぷりを、腹を立て、そしてもどかしかった。表情が自然と暗くなってしまう。

 

「お兄ちゃん、お帰りなさい!」

 

「おう、ただいま卯月」

 

練習していた卯月が一樹の元に駆け寄る。そんな卯月の頭を撫でる一樹。

 

「お兄さん、おかえり」

 

「おかえんなさーい!」

 

卯月に続きニュージェネの二人も一樹の元に駆け寄る。

 

「お兄さん、トレーニングどうだった?」

 

「何だよ唐突に、そうだな、かなり昔に戻ってきたかもしれねえ。だがまだまだだ、京介に追い越されそうになるし・・・焦ったよ」

 

「(ウソだ・・・)」

 

そう京介は思った。

 

「ロードワークを欠かさなかったとは言え、数年間リングに居なかったんだ。衰えるのは当たり前のことだ」

 

「(やめてください・・・)」

 

「いつか、京介が俺を超えるのも近いだろう」

 

「やめてください!」

 

練習場は沈黙になった。その場に居た全員が京介に注目していた。その場に居る全員が京介の気持ちに理解が出来なかった。それは一樹もだった。何が不満なのか、一樹は疲れた頭をフルスロットルで働かせる。

 

「一樹さん・・・今日本気じゃなかったですよね?」

 

「本気?何のことだ・・・?」

 

「今日の練習ですよ!少なくとも俺は全力で練習してました。だけどあなたはそうじゃなかった!世界を狙っていた男がこれで肩で息をする程度で済むはずが無い!一樹さんはいつもオーバーワーク気味の練習量をしていました!・・・・・・正直に言ってください、俺は足を引っ張ったんでしょう」

 

「ッ・・・そういうことか・・・」

 

一樹はハァと小さくため息を付く。

 

「そんな事かよぉ・・・何か悪いこと言ったと思って焦ったぜ・・・確かに俺は今日全力を出していない。いつもの3分の2程だ」

 

「じゃあやっぱり…」

 

「だがこんな初日に、しかも戻りかけの選手とプロ入り新人がこんな長期間合宿でオーバーワークを毎日続けるのか?そんなんで次の試合を万全のコンディションでいけるのか?いけねえだろ。練習量だってそうだ。俺とお前はボクシングスタイルも体力面もキャリアも全てに置いて違いがある。だが、それでもお前には俺には無い才能を持っている・・・お前は自分が無能であるだとか、足を引っ張ったとか思ってんだろうがそれは無い。それを、今証明してやるよ」

 

一樹はリングの近くに置いているグローブとヘットギアをを京介に投げる。

 

「えっ」

 

同じく近くにあったもう一組のヘットギアとグローブを手に取る。

 

「リングに上がれ、京介・・・お前の全力を引き出してやろう・・・」

 

一樹の瞳には炎のような熱い情熱が伝わってきた。ピリピリとした空気がその場にいる全員に伝わってきた。

 

「京介のセコンドは・・・武内さん、お願いします」

 

「えっ、私がですか?」

 

「俺はいりませんが、俺をデビュー当時から見てきているなら、ある程度俺の試合のやり方とか、打ち方わかるでしょ?そして武内さんはこのプロジェクトを集め、選別し、そしてここまで押し上げた統率力と洞察能力がある。俺の次の行動などを逐一京介に教えて上げられるでしょ?」

 

「で、ですがセコンドなんて初めてで何をすれば良いのか・・・」

 

「あなたなら出来ますよ。あ、あとギャラリーたちも俺では無く京介の応援に回ってくれ。俺では無く、京介を見て上げてくれ。そしてそれを目撃してくれ。俺以上の爆発力が京介にあるということを」

 

一樹はロープを掴みリングの中に身を入れる。

 

「来い京介。あの時の続きだ・・・第2ラウンド開始だ」

 

京介は拳を握りしめる。

自分は無力じゃない。一樹はそう言った。世界に手を伸ばした男も言葉、それを信じないのか?いや、自分には力がある。一樹に挑めばそれを証明できる。

 

「やります。全力で」

 

京介はヘットギアを付け、リングに上がった。

憧れた男に再挑戦(リベンジ)する為に。




友人「おいおい、何時になれば水着シーン出てくるんだ...読者は若いJK達が水着姿でキャッキャウフフするのが見たいというのに...」

自分「お前犯罪者みたいな顔になってるぞ。しかもJKばかりじゃねえんだが...」

友人「んなもんどうでもいいんだよ!いいから水着シーン出せぇぇぇ!!」

友達の目が血走ってて物凄く怖かった。そして、折角の夏イベントでまだ水着姿が出ていない...穴があるならくぐり抜けたい!

友人「どこに行くんだよ…」

次回をお楽しみに、それでは…ボックス!!

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